このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2011年8月6日土曜日

南木佳士『山行記』

山に登るキッカケ、理由などは人それぞれだ。

僕の高校では春先にくだらない学校行事があり、山岳部だけは春合宿とかぶって公休扱いでその行事を休めるので、山岳部に入部した。キッカケはただそれだけだった。

『山行記』によれば、著者の南木佳士氏が登山を始めたのは50歳過ぎてからだそうな。
心の病のリハビリで始めたのがキッカケだそうで。キッカケは本当に人それぞれだなと思う次第だ。

氏は外科医師として病院勤めをする傍ら作家業を営み、芥川賞を受賞している。
その情報を聞くだけでも忙しさの程が知れるというものだが、その忙しさから氏は心のコンディションを崩してしまったそうだ。

不勉強なため、氏の他の作品は読んでいないのだが、本書によれば、小説ではほとんど登山に関して書いていないそうだ。
特に、氏による山の紀行文は現時点で本書だけだそうで、そのせいか、生い立ちや登山を始めたキッカケなども丁寧に語られている。
また、50歳を過ぎてから登山をはじめたからか、未だ初期衝動中のような瑞々しさが行間から伺われて、読んでいて自分もまた山に行きたくなるような楽しさを感じられる作品だ。

語り口の軽妙さや話の運びの上手さなどは、さすがは芥川賞作家と言うべきところで、僕なんぞが真似しようとして出来るものではない。(真似ようと思うだけでも失礼に当たるぐらいだ。)
山の紀行文と言うとどうしても文体は二の次になってしまい、「味はあるけど読みにくい」という作品が多い中で、本書はとても貴重な存在だと思う。
僕もそう遠くない将来に熟年を迎え、そして、その時まで登山を続けられていれば本書に描かれているのと同じように、ヒヤヒヤしながらの山行をすることになるのだろうなと思うと、著者にとても親近感を覚えるのである。

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