このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2014年7月31日木曜日

山行記 : 2014年7月20日~21日 南八ヶ岳 編笠山・権現岳縦走 2日目



(この記事は「1日目 幕営編」の続きです。)


未明から腰痛で寝られなくなった。
痛みと戦いながら横になっていると、夜中の2時に、連れのテントから鼻歌が聞こえてくる。
おそらく、テント内の物音が筒抜けだということを理解していないものと思われる。事前に注意しておいたのに、聞き流していやがったに違いない。
幸いにしてすぐに止まったが、朝になって顔を合わせたら、まずその注意をしなければなるまい。


4時すぎ、まったく寝付けず、諦めてテントを出てお湯を沸かした。
一晩シュラフの中に入れて温めておいたので、ガスストーブは問題なく点火した。なんなんだこの仕様。

日の出前のテント場はまだ薄暗いが、各テントでは人が動き出した気配があった。

隣の知人パーティもテントから出てきていたので、朝のご挨拶をする。
彼らは今日、テントをそのままにして権現岳に行き、再び青年小屋テント場に戻ってきて撤収後、編笠山山頂を経由して観音平に下山するそうだ。

一方、我々は、昨日登れなかった編笠山か西岳のいずれかに登り、その後テントを撤収して権現岳経由で三ツ頭方面に下山する。

ルートの順番は異なるが、また途中で会うこともあるだろう。


朝飯後、撤収の際に荷物がまとめやすいようにある程度整頓しつつ、向かう先を編笠山に決定。
ただし、編笠山の山頂からの眺望が欲しいので、ガスが抜けるのを待つことにする。
日が昇れば、おそらくこのガスは晴れるだろうという読みだ。

読み通り、6時頃になるとガスが概ね晴れたので、早速出発。
6:12、青年小屋前を出発。

スタート直後は岩場。
ここからは、富士山がうっすらと見えた。

6:22、岩場が終わり、背丈の低い樹林帯に入る。
ちょうどここで下山してきたパーティとすれ違う。
そのパーティが山頂にいたときはガスで何も見えなかったそうだ。まさに紙一重。

樹林帯の入口から振り返ると、ギボシと権現岳が見えた。
手前の樹林にはまだ少しガスが残っていて、それがまるで湯気のようだ。
いい山だなぁ。

山頂へ続く樹林の植生は、ジャクナゲ、シラビソ、マイマツといったところか。

ハイマツも花を付けていた。

登山道は狭く、すれ違うのも苦労するほど。

この樹林を歩いて15分、山頂が見えてきた。

6:39、編笠山の山頂に到着。

山頂からは見事な雲海。
が、雲海が見事すぎて、南アルプスも雲の中。
八ヶ岳の山々もほとんどガスの向こう。

富士見高原への登山道。

少し待てばガスが晴れるかと思ったが、逆にどんどんガスが濃くなっていく。

あきらめて下山を開始した。

下山中の登山道で、まるで僕らを誘導するかのように、1羽の小鳥が岩から岩へと伝い飛ぶ。
ヒタキの仲間のような姿だが、種の同定はできなかった。
誰か教えてください。

樹林帯を出ると、ガスがかなり発生していた。
まさかこのまま天気が崩れていくのか?

7:13、青年小屋に到着。

テント場にもどり、撤収する。
昨夜の激しい雨で、テントに泥が跳ね返っており、撤収しながらテンションが下がる。
グランドシートとして使用していたタイベックシートの汚れ具合からも様子がうかがえる。

手集作業を終えてテント場を後にしたのが8時すぎ。
ちょっと時間をかけすぎてしまった。

青年小屋から権現岳に向かうトレイルは、最初は樹林帯だ。

樹林帯だけあって、花も豊富。目を楽しませてくれる。

ヨツバシオガマ。

シシウドかな??

振り返ると、うっすらとガスのかかった編笠山が見えた。

次第に斜度はキツくなっていき、
8:29、本日初の三点支持ポイントが現れる。
微妙に濡れていてイヤな感じだった。

岩場を越えると一気に樹木の背丈が低くなり視界が広がるが、残念なほどの白一色。

登山道にはハイマツとシラビソとシャクナゲ。
シャクナゲはまだツボミの状態のものも散見された。

コケもフワフワ。

8:40、のろし場に到着。

のろし場からは、ギボシ手前の大絶壁を見ることができる。

ギボシへと向かう稜線にはヤツガタケキスミレ。
いや、それとも、季節はずれのキバナノコマノツメか?? 今年は花の時期が遅いので、よく分からない。。。

さあ、いよいよギボシに向かうガレ場だ。
本日の核心部は、まさにここから始まる。

第一の岩場。
特に気にせず登ろうとしたら、連れの表情が固まった。
ここで思い出したのだが、この連れは、この手の岩場は初めてだったのだ。
僕自身は権現岳のこの岩場を怖いと思ったことが無かったので、全く気にせずに連れてきてしまった。反省である。

といっても、進退極まっている場合ではないし、そもそも岩場としての難易度も低いので、三点支持を教えて、手足の置き場を教えながら手本を見せる。

そうやって指導していたら、頭上から僕の名前を呼ぶ声がした。
見上げると、テント場で別れた知人だった。権現岳からの帰りのようである。
再会を喜び、しばし立ち話と記念撮影をして別れた。

その後、さらに険しい岩場に、連れの顔色が悪くなる。(※写真は僕の連れにあらず。)

さらにトラバース気味の鎖場。(※写真は僕の連れにあらず。)

ここで一息ついていると、三世代家族連れ(お子さんは小学生ぐらい)が下りてきた。
すこし立ち話をしていると、その小学生ぐらいのお子さんが僕の連れに
「あと3箇所ヤバいところがあるよ!」
と元気に告げた。
それを聞いて絶句する連れ。思わずみんなで笑ってしまう。

たしかに、その小学生が言うとおり、初心者には怖そうな場所が3箇所ぐらいあった。

その1。トラバース。
そのまま奥までトラバース。

トラバースしきった辺りには、岩にへばりつくように咲くいじらしいコケモモ。

その2。地味に足の置き場を選ばなければならない登り。

その3。谷側に傾斜する濡れた一枚岩の上を歩く。
濡れていなければどうということもないのだが、濡れていると怖い。

なんとか連れもこれらの岩場を乗り越え、ギボシを振り返る。

稜線に生えるこの植物、白い花はゴゼンタチバナだけれど、赤紫のひょろっとしたヤツはいったいなんなんだろう。。。

ハクサンイチゲ。
『でこでこてっぺん』のせいで、「ハクサンチ○ゲ」と反射的に口を付いて出そうになるのが呪わしい。

シシウド?? 

そうこうするうちに、9:37、権現小屋に到着。

権現小屋の周りには、ミヤマキンポウゲが風に揺られていた。

小屋の向こうには権現岳の山頂が見える。

ここでしばしの小休止。行動食にクリフバーを食う。美味いんだけど、胃にもたれる。

9:56、権現小屋のすぐ上、赤岳への分岐に到着。
左に行くと赤岳、右へ行くと権現岳だ。
もちろん右へ行く。

稜線の向こうに、ガスのかかった権現岳山頂が見える。

9:59、山頂には人影があるものの、非常に空いている模様。

山頂直下にはミヤマダイコンソウ。
やはりこの時期は花が楽しいなぁ。

10:03、権現岳山頂に到着。
弱いながらも携帯電話(au)の電波が入ったため、なんとかFacebookのチェックインができないかと悪戦苦闘するも、挫折。連れのdocomoは入ったので、チェックインしてもらう。

山頂から下りると、ガスって何も見えない稜線を歩き、
桧峰神社の横を抜ける。

南南東には、三ツ頭へと続く登山道が1本の筋のように連なっていた。

このあたりの岩には、赤い色をしたものが多く混じっている。
酸化鉄を含んでいるのだろうか。
考えてみれば隣の赤岳は、酸化鉄を多く含む岩肌にちなんでその名が付けられたということだし、地質的には同じようなもんなのだろう。(根拠も無く断定。)

ガスが濃くなってきたことで天気が下り坂になっているのではないかという危機感を覚え、できる限り急いで下山していると、三ツ頭方面のガスが一瞬だけ切れた。

手前の小ピークとの鞍部まで下りると、斜面に生える樹木の様子が興味深かった。
風も無いのに、強風に煽られたような生え方をしている樹木たち。
おそらく、常に西からの風に苛まれているのだろう。
だからこのあたりは、西側の斜面がなだらかで、東側の斜面が切り立っているのだろう。(憶測)

道はその、稜線のやや西側、なだらかな方の斜面に付けられている。

チシマギキョウがちんまりと咲いていた。というか、閉じてた。

10:33、小ピークから三ツ頭を見る。

ついでに編笠山も見る。というか、一瞬だけ見えた。

小ピークから降り、三ツ頭へ登り返す。
ふと振り返ると、権現岳の山頂がかろうじてガスから顔を覗かせていた。
こちら側から見ると、全然岩っぽい山には見えない。

引き続き、ゆるやかな斜面を登り、
10:48、三ツ頭の山頂に到着。

山頂には、判読不能な石碑が立てられていた。
もうちょっと晴れていれば、バックに権現岳がバッチリ入ったのに、無念だ。
しばらく待ってみたが、これ以上ガスが晴れることはなかった。

10:55、前三ツ頭分岐に到着。
ここから先は隣の尾根が邪魔をするので、編笠山も見納めである。

ここからしばらくヤンチャな登山道を下り、
もはや違う世界に引っ張り込まれそうな道を通り、
遠くに小ピークが見えた。

その小ピークにたどり着いても、特段何も無い。
ふむ。。。

その2分ほど先に、やっと前三ツ頭が現れた。
11:16、前三ツ頭到着。
ここからいよいよ樹林帯に入る。

登山道の両側は笹だらけ。

11:32、2,200mと刻まれた石碑を発見。

すぐ近くにイブキジャコウソウが群生していた。
一心不乱に蜜を貪るマルハナバチがカワイイ。

引き続き、地味に急な坂道を下り、
11:57、2,000mと刻まれた石碑を発見。
そこからさらに10分ほど下ったところで、今度は木製の看板に「標高約2,000m」の記載が。
この10分間、急な坂道を下ってきたのは何だったのかと、ちょっとイヤになる。
標高が下がってきたことや、樹林の中であることなどから、体感温度がぐんぐん上がってきていてツラいところに、追い打ちをかけるような仕打ちだ。

たまに見かける花々だけが心の支えだ。
キバナノヤマオダマキ。

ジャコウソウとマルハナバチ再び。

そしてヒョウモンチョウ。

13:09、やっとの思いで天の河原に到着。

天の河原には立派なベンチとテーブルが設置されている。

ここまで来れば、天女山までもう少しだ。
もう歩きたくないので、天女山からはタクシーに乗ることに決めた。

13:19、やっと天女山の駐車場に到着。
ここでタクシーを呼ぶ。
ついでなので、待ち時間の間に天女山に行ってみる。

天女山は、あんまり山じゃなかった。
が、展望台にはなっているので、見晴らしはいくらかある。
まあ、それも樹木が茂っていて何も見えないのだが。。。

天女山の由来も。


このあとすぐにタクシーに乗り、信濃大泉駅前の日帰り温泉に行く。
こうして、久しぶりのテント泊山行は終わった。



(完)