このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2015年10月31日土曜日

山行記 : 2015年10月3~4日 奥多摩・長沢背稜 2日目 後半




(この記事は「2日目 前半」の続きです。)



眺望の良いヘリポートで秋の陽射しに照らされていると、せかせかと先を急ぐことがバカバカしくなってきてしまった。
ここで、少し早めながら昼飯にすることにした。

昼飯は、コンビニで買ったカステラ。
軽いのに、カロリーは400kcal越え。登山向きの食料である。

15分ほど滞在して、名残惜しさに後ろ髪引かれながらも、ヘリポートをあとにする。
少し上ると、ヘリポートに関する看板が立っていた。
納得である。

このあたりからは、奥多摩工業の石灰石採掘場が見えた。
普段コンクリートの恩恵を受けているわけだが、このように切り崩されている山肌を見るのはやはり心が痛む。

その後しばらく、滝谷ノ峰を巻くようにトラバースする登山道をたどる。
巻かなきゃいけないほど厳しい尾根でもなさそうなのになぁ。

9:42、タワ尾根ルートとの分岐に到着。
分岐といっても、タワ尾根は破線ルート。そっちに向かう踏み跡はほぼ無い。
それでも、タワ尾根方面の顕著な尾根はいかにもルートのように見え、うっかり迷い込みそうになる。
こういう迷いそうなポイントには道標が立っている。感謝である。

ここで、今日初めてのトリカブトをみつけた。

タワ尾根との分岐からは、ルートは北へ向かって折り返す。
登山道は相変わらずの山腹トラバースだが、石垣で補強された道になる。
ここまでウィルダネス感のある場所が多かっただけに、急に雰囲気が変わって戸惑う。

尾根との合流地点が近付くと、だんだんダダッ広くなってくる。

この付近で、僕の目の前を、登山道を横切るように小動物が駆け抜けた。
反射的にドブネズミを思い浮かべたが、よく見たらリスだ。
普段の下界での生活で見る、そのサイズの哺乳類がドブネズミだけなため、脳が悲しい反射をしてしまったのだ。
ドブネズミよりもリスが身近な生活をしたい。。。

10:13、酉谷山の山頂へ向かう道と巻き道との分岐に到着。
迷わず酉谷山頂を目指す。

まずは緩やかな稜線。

たまに岩っぽい。

あそこが山頂か?と思ってたどり着くと、
まだまだ先に道は続いている。
が、これを上りきると、山頂だ。
10:32、酉谷山の山頂に到着。
多少の眺望はある。

ここからはしばしのなだらかな稜線歩き。

10:43、急激な右折。
尾根を直進するのではなく、尾根の南側につけられた登山道へと下る。
すると、すぐに巻き道と合流。
ここからそのまま東に向かっても良いのだが、せっかくなので、眼下に見える酉谷避難小屋の様子巣を見ていこう。

10:46、酉谷避難小屋に到着。

小屋の前には年配の男性が一人立っていて、僕に気付くと話しかけてきた。
聞けば、長沢山の山頂で出会った男性が話していた、3泊4日の予定で入山したオジサンであるようだ。

小屋のドアを開けると、中にはそのオジサンのものと思しき荷物が広げられていたので、撮影は自粛。

小屋の前からの展望はなかなか。
石尾根は見えたが、富士山は見えなかった。

水場の水は豊富で、冷たくて美味しい。

水場近くに咲くキキョウ。

5分ほども滞在したろうか。
小屋をあとにして、再び歩き出す。

11時すぎ、長い木道にさしかかる。

この木道(というか、橋に近い)を歩ききったところに現れる、崖沿いの道がえらく狭い。

が、その先は再び普通のトレイルになる。
杉林もある。

尾根に復帰すると、北側に秩父の街並みが見えた。
手前には秩父さくら湖。(たぶん)

11:37、七跳山の山頂直下の分岐に到着。

山頂への踏み跡は一定明瞭。
山頂へ立ち寄ろうかと思ったが、「山と高原地図」に書いてある、
「山頂は雑木林に囲まれ展望なし」
の言葉に萎えて、先を急ぐことにする。

引き続き、変哲のない道を行く。
そろそろ飽きてきた。

12:00、ハナド岩の道標に到着。
道標の柱に小さく手書きで「ハナド岩」と書いてあったから気付いたものの、これが無かったら素通りしてた。
この道標から南に逸れたところに、ハナド岩がある。
踏み跡をたどっていくと、
崖の上に出て、一気に視界が広がる。

動画を撮ってみた。



今思えば、ここで休憩しておけば良かった。
天目山までもう少しということもあり、天目山の山頂で休憩しようとがんばってしまったのだ。

ふたたび、変哲のない登山道をたどる。

12:11、えらく広い尾根に出る。
まるで代々木公園のようだ。

このなだらかな尾根を上り、
平坦な尾根を歩き、
12:19、天目山と巻き道の分岐に到着。
もちろん、天目山のピークを目指す。

そこそこの上りだ。
汗が噴出す。

最後の1ピッチ。

12:31、天目山の山頂に到着。
山頂はけっこう狭い。
この狭い山頂に、僕が今日ここまでに出会った人の数よりもたくさんの人々がひしめき合っていた。
ここまでほとんど人に出会うこともなく深山気分を味わってきたので、急に現実世界に引き戻されたようでガッカリしたが、人でひしめくこの山頂で、少しばかりの腹ごしらえをすることにした。
ハナド岩で食っておけばよかった。。。

この状態では、他の登山者が話しているのが嫌でも耳に入ってくるわけだが、どうやらここを目的地として東日原あたりから登ってくる人がけっこういるようだ。
たしかに、眺望の良い山頂ではある。

せっかくなので動画も撮っておいた。

秩父方面の眺め。

奥多摩方面の眺め。


12:41、南東斜面を下り始める。
なかなかの急斜面である。

これを一定下ると、今度は、小ピークに上り返す。
なかなか険しい道だ。

小ピークを過ぎたあたりで、道しるべのテープに何か書いてあるのに気付いた。
左が「ソバツブ」、右が「コヤ」である。
つまり、ここは分岐だ。
地図に道が記載されていないので気付かなかったが、左に行くと県境尾根を通って蕎麦粒山方面に向かうことができるのだ。行かないけど。

一杯水避難小屋に向かう斜面は、急な下り。

なんとか踏ん張りながら下る。
山頂にいた登山者たちが、一杯水避難小屋から天目山に至るルートのうち、こっちのルートを「ドMの道」と呼んでいたのがつくづく理解できた。
この斜面を下っている際に、年配の男性ばかり8人のパーティとすれ違い、「ああ、この人たちもドMなのかぁ」と思ったら、さらにテンションが下がった。

12:55、一杯水避難小屋に到着。
中を覗くと、たくさんのザックがデポされていた。
そうか、たったこれだけの距離、しかもおそらく日帰り装備だろうに、ザックをデポするのか、、、、
ちょっとよく分からない。

さて、ここで念のためトイレに入っておこうか、ちょっと迷った。
ややお腹に不穏な気配を感じていたのだ。が、あと1時間ちょっとで下山できるわけだし、問題なかろう判断した。
結論から言うと、これは立山に続きミスジャッジとなった。


一杯水避難小屋からの下り道は、まずはなだらかな尾根道。

小鳥のさえずりや、キツツキのドラミングの聞こえる、ステキなトレイルだ。
ドラミングの主を見つけようと立ち止まっていると、老夫婦と見られる男女2人パーティに抜かされた。
その後すぐに、僕もキツツキを見つけるのを諦めて後を追ったのだが、何故か差を詰められない。老夫婦がすさまじい健脚なのだ。

いや、こちらもさすがに足が疲れていたわけだけれども、それにしても早い。
どんどん引き離される。
そのうち、追うのがイヤになって歩みを緩めた。そんなにがんばって下山しても、バス停でヒマを持て余すだけだ。
すると、すぐにその老夫婦の姿は見えなくなった。
すさまじい健脚ぶり。
そして我が身が情けない・・・。

高尾山系にありそうなヤセ尾根を通り、
植林帯に入ったあたりで、完全にお腹の違和感が顕在化した。
立山に続き、またもや、僕の腸が僕の意に反してアウトプットしようとしている。
例によって脂汗が噴出す。
たしか、東日原のバス停にはトイレがあったはずだ。なんとかそこまで保たせなければならん。

が、下り斜面を急ぐためには下腹部に力を入れざるを得ない。
そんなのは自殺行為だ。
つまり、スピードを上げることと、便意を抑え込むのとはトレードオフの関係なのである。

そんなとき、ねじれた杉の木を発見。
自分の腸が捻じれそうになっていることから意識を逸らすために、「なんでこんなふうに捻じれるのだろう」という言葉を念仏のように反芻しながら、意識を現実世界から遠くに追いやる作戦。

そんな作戦、3秒後には無駄だと分かり、脂汗を垂らしながらひたすら標高を下げる。

14:17、上水道施設が現れる。
やっと下界の気配を感じ、トイレまで近いのではないかと希望が持てた。
実際はこのあと、もうしばらく地獄を見るのだが。

14:21、石灰石の採掘場が見えた。

ここから幾つかの民家らしき建物をパスし、14:27、ついにアスファルトの道路に出る。

だが、すでにこのときの僕は、ケンドーコバヤシの伝説の漫談並みに「ハッツッ!」という状態になっていた。(気持ちよかったわけではない。)
括約筋の限界が先か、トイレにたどり着くのが先か。
立山で繰り広げたチキンレースを奥多摩でもすることになるとは。

14:29、ついに東日原バス停に到着。
ザックを投げ捨て、トイレに駆け込む。
今回もセーフ。

こうして無事に山行が終わった。


(「総括」につづく)