このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2014年8月30日土曜日

『クライマー パタゴニアの彼方へ』

天才クライマーのデビッド・ラマの挑戦を収めたドキュメンタリー映画『クライマー パタゴニアの彼方へ』がついに公開となったので、さっそく見に行ってみた。


内容については公式サイトに譲るとして、結論から言えば、スゴイの一言。
この日の午前中、僕はあるベンチャー企業の社長の講演を聴きに行っていたのだが、その講演内容が全部ぶっ飛ぶぐらい。
(その講演だって、かなり色々と考えさせられる良い講演だったのだが・・・。)

手に汗握るとはまさにこのことで、両手がぐちょぐちょになってしまった。
もう、心臓に悪い事この上ない。

それだけでなく、緊張の連続で、終わった後には全身の筋肉が悲鳴を上げていて、手が震え、首が寝違えたようになり、足が突っ張ってちゃんと歩けない状態になってしまった。
こんなことなら、自分でクライミングやってるほうが余程楽だ・・・。


映画が終わったあと、先着でクリフバーを配っていました。
でも、オートミール味かぁ。
美味いのかなぁ。。。


それにしても、観客の手荷物、バックパック率が異様に高くてちょっと笑った。(自分もそうだが、、、)
トレランパックあり、アークテリクスあり、グレゴリーありと、皆さん山が好きでらっしゃるのねー。

中にはトレッキングパンツを履いて来てる人もいたが、もしかして普段着にしているのだろうか。

2014年8月23日土曜日

【トレック&フライへの道】 パラグライダー体験 タンデムフライト @スカイ朝霧

今回はパラグライダーをやってきたよ、という話。



以前、ヨーロッパアルプスでガイド業をしている方の講演を聞いた際、その方はオフの日にはヨーロッパアルプスの山々からパラグライダーで飛行するのが趣味だという話が出た。

そんなことができるのか!

そもそも、そんな行為の概念すらも頭に無かった僕は、それに強い衝撃を受け、自分でもやってみたいと強く思うようになった。
その後購入したムック本によると、トレッキングとパラグライダーを組み合わせて、パラグライダーで下山するというスタイルが、最近ヨーロッパで注目されているとのこと。(「トレック&フライ」と呼ぶのだそうだ。)

これは、日本でもやらなければ!

とはいえ、そもそもパラグライダーなんてどうやってやればいいのかもよく分からないわけで、インストラクター同伴でフライトするタンデムフライトの申し込みをしてみた。

場所は、スカイ朝霧パラグライダー・カヌースクール
8/23(土)、会社の同僚3人を誘って行ってみた。
野郎ばかり4人でのむさ苦しい一行だ。


予約したのは朝9:00からの部だったのだが、気合を入れすぎて7:30に着いてしまった。
当然、スクールの受付には人影どころか、灯りさえ無かった。
仕方がないので、車の中で寝て待つ。

全員、前日は遅くまで仕事をしていたため、2~3時間しか寝ていない。
車内で爆睡である。

すると、8:30頃、スクールのスタッフと思しき男性が声をかけてきた。(あとで知ったが、この男性はスクールの校長だった。)
聞くと、もし良ければ9:00まで待たず、前倒しで始めてしまわないか、とのこと。
というのも、天気が微妙すぎて、フライトできるかどうか分からないので、できるだけ早くスタンバっておいて、いけそうなタイミングを見計らったほうが良いということなのだ。

こちらとしては願ったり叶ったりなので、さっそく受付開始。

この手のアクティビティでの受付時に書く誓約書の定番である「死んでも文句は言いません」的な文言にサインをする。
これまで何度、この手の誓約書にサインをしてきたことだろう。命の大安売りである。


さて、実際のフライト場までは、受付のある建物から車で5分。
広い芝生の敷地が着地点として利用される場所だ。
向こうに見える富士山には笠雲がかかっていて、どう見てもヤバそうである。

富士山と反対側を向くと、我々の直前に受付をされていたグループが飛び始めたところだった。
写真中央、一段凹んで平らになっているところが飛び出し場所である。

途中でわざと、ものすごく左右に振ってみたりとか、アミューズメント要素まで盛り込んでくれている。

5分ほどで着地。

なるほど、こういう流れか。
などと納得していたら、スタッフのオジチャンに「早く車に乗って!」と指示される。
どうやら、停めてあったワゴンで、インストラクターも客もまとめて移動するらしい。

移動する車の中では、インストラクターとの会話に花が咲く。
ここで、自分は登山が趣味で、将来的にパラグライダーで下山したいと思っている旨を伝えたところ、大歓迎された。
話によると、同乗しているインストラクターの1人が、富士山の山頂からパラグライダーで下山したとのこと。
あんなに気流が複雑で風も強い富士山頂からフライトできるのならば、日本のどこの山でも飛べるのではないか。自分のプランが決して無謀ではないことを証明する事例の存在を知り、非常に心強く感じた。


飛び出し場所に着いて見ると、そこは思ったよりも広かった。

ここで、スタッフの人にハーネス類を装着してもらい、ヘルメットを被って、我々4人は次々に飛び出す。


タンデムのときだけかもしれないが、キャノピー(傘の部分)は走って広げるわけではなく、あらかじめ開かせてから飛び出した。

先に同僚3名を見送り、いよいよ最後に僕の番が回ってきた。
なかなかの高度感に、アドレナリンが湧いてくる。

そして、飛び出す!
飛んでる! すばらしい!
素敵な高度感だ!

近くを飛ぶ同僚を撮影しようとするも、シャッターを押そうとすると、あっという間にフレームの外に行ってしまう。(これは、ギリギリフレームに収まったもの。↓)
聞けば、このとき時速35kmほど出ているそうで、すれ違いの速度は時速70kmということになる。
パラグライダーってフワフワ浮いてるイメージだったのに、けっこうスピードあるのね!

足の下には針葉樹林。
この距離感、この角度で杉の木を見たのは初めて。すげー違和感!
同僚の姿も足下に見える。

このままずっと飛んでいたい衝動に駆られる。
そのとき、同伴のインストラクターから、
「ちょっと操作してみますか?」
という提案が。
これは願ってもない!

パラグライダーの操作は、左右に1本ずつ付いているブレークコードと呼ばれるヒモを引っ張ることで行う。
左のヒモを引っ張れば左に、右のヒモを引っ張れば右に曲がる。
インストラクターの指示に従って、恐る恐る右やら左やらのブレークコードを引っ張ると、思ったようにパラグライダーがターンする。
これはおもしろい!

3、4回ターンさせてもらって、ブレークコードをインストラクターに戻す。
すると今度は、
「左右に振るのはお好きですか?」
と言って、ブンブン振り回すように飛び始める。まるでブランコのようだ。不規則にGがかかってジェットコースターよりもスリリングだ。
楽しすぎて思わず歓声を上げてしまう。

インストラクターの話によると、スクールに入って半年もすると、この左右に大きく振る練習をするとのこと。
正確には、左右に大きく振られた状態から体勢を立て直す練習をするのだそうだ。
操作は左右のブレークコードで行うわけだが、独り立ちするには色々学ぶべきことが多そうだ。


そうこうするうちに、着陸地点に迫る。
先に到着していた同僚たちが迎えてくれる。

そして着地。
ストン、といった感じで、ほとんど衝撃もスリップも無い。やはりインストラクターの腕が良いのだろう。


こうして、正味7分間のフライトが終了した。
たった7分と思うなかれ。こんな充実した7分間がこんなにも濃密だったことは、ここ10年間を振り返っても記憶にないほどだ。
こんな爽快感は味わったことが無い。


そんなわけで、パラグライダーの練習をしようと決めた。
あとは、どうやってスクールに通うかを検討しないと。
はやくパラ下山ができるようになりたいものだ。




2014年8月14日木曜日

ツアー登山について

まず最初に断っておくが、僕はツアー登山そのものを否定するつもりは無い。
ちゃんとした先達に連れられて歩くのは、心強いものである。

僕がここで述べたいのは、ツアー登山に参加する客についてである。


今年3月、登山帰りに日帰り温泉に立ち寄った際、休憩所で登山ガイド風の2人の男性が、ツアー客の愚痴をこぼしあっていた。
内容は、客が事前の説明を全然聞かず、現場に行ってテンパるケースが多いことについてだった。
こんなところで大の男がネチネチと客の愚痴かよ、と思って大変残念な気持ちになったものだ。

また、先日山小屋に泊まった際に、今度はツアー客の一部が大声でガイドの悪口を言っているのが耳に入った。
内容は、ガイドが自分たちを大切に扱っていない、というものだった。
曰く、せっかく花が咲いていてもその花が何という花なのかの説明も無い、とか、写真を撮るヒマも与えてくれない、とか。我々は客だぞ、客あっての商売じゃないのか、と息巻いていたのが印象的だった。

どうやら、ガイドとツアー客の意識には大きな隔たりがあるようだ。


ここで、僕の論点は2つ。


1つ目は、「お客様」として登山に来ている、ということに対する違和感。

登山をするにあたっては、己の面倒は己で見るというのが大原則だと、僕は昔から教わってきたし、登山関連の本や雑誌を読めば、どれにだって書いてある。
もちろん、ツアー登山においては、スケジューリングやルート案内の部分をツアー企画者側にお金を払って委託するものである。その部分においては自己責任の原則を当てはめるわけにはいかないのだが、それでも主体性は必要だろう。ただただ連れてこられるだけの「お客様」として登山に臨むのは危険すぎやしないか?


2つ目は、ガイドに対する不満の在り方に対する違和感。

キレイな花が咲いていれば気にもなるだろう、写真も撮りたいだろう。
しかしながら、20人もの団体で歩いていて、1人が歩みを止めるたびに全員が止まらなければならないような状態では、とても各人の好きなタイミングで立ち止まるわけにいかないのは自明のことである。
ましてや、その20人は、自力で登山をすることもままならない「お客様」な中高年である。
雨が降り出せば事故のリスクが高まるし、雷も来るかもしれない、岩場が濡れれば滑落するかもしれない。それらのリスクを廃するためには、とにかくいち早く目的地にたどり着くことことそがトッププライオリティだ。好き勝手に立ち止まらせては、この優先順位が大きく逆転してしまう。

しかも、もし何か事故があれば、注意を払っていたとしても責任を問われるのがガイド業の悲しいところだ。

そもそも20人もの、自立していない中高年の面倒を1人や2人のガイドで見きれるわけがない。
逆に言えば、ツアー客が払っている代金では、この程度のケアしかできないのが実状であることは、金勘定がまともにできる人であればすぐに気付くのではないだろうか。
それを、過分なサービスを要求すること自体が間違っている。
もしガイドにそんなにフレキシブルな対応をしてほしいのであれば、個人でガイドを雇うのが一番だ。(それなりの代金を払わなければならないけれど、それが経済原則というものだろう。)


僕としては、ツアーのような不自由な形態の山行はできるだけ避けたいと思っているが、モンブランやマッキンリーに行くのであれば、ツアーで行くしかないのだろうなぁと思っている。
その時には、口が裂けてもガイドに対して
「オレは客だぞ」
などという残念な言い草はしたくないものである。


山行記 : 2014年8月3日~ 後立山連峰縦走 総括



(この記事は「3日目 キレット小屋~八峰キレット~鹿島槍ヶ岳~爺ヶ岳~扇沢」の続きです。)


もともと3泊4日の予定だった山行スケジュールが、結局2泊3日で歩ききることができた。

1日当たりの余裕をどの程度見るべきかは人ぞれぞれだろうけれど、僕の場合は、「寝坊」「雨」「渋滞」「シャリバテ」などが一度に発生しても大丈夫なスケジュールを組むことにしている。
このため、逆に全ての問題がクリアになると、想定よりも大幅に行程を進められるのだ。
とはいえ、何も山に来てまで貪欲にタスク消化をする必要は無いので、早く行程を消化した場合には、その分たっぷりノンビリすれば良いのである。そのために本も多めに持参している。


今回のコース全体としては、もっとも気にしていた八峰キレットが意外と拍子抜けだったことで、やはり主観的な難易度は行ってみないと分からないものだと痛感した。
何度でも言うが、八峰キレットよりもG5の方がしんどかったのだ。


昨年の大キレットと比較して考えた場合、やはり荷物の重さは大きな違いだった。
大キレットは山小屋泊だったので16kg程度、今回はテント泊で20kg程度なので、その4kgの違いは足場の十分でない岩場でのトラバース時に大きく影響した。
谷側に背を向けると重さに引っ張られそうになるので、進行方向に体を向けてザックが谷側を向かないようにしなければならず、トラバースの鎖場では多少やりにくさを感じた。
やはり、テント泊での岩場は、それなりの覚悟で臨まなければならないと再認識した。


来年の夏は、もう少し長い山行を計画したいものだ。


(完)

2014年8月13日水曜日

山行記 : 2014年8月3日~ 後立山連峰縦走 3日目 キレット小屋~八峰キレット~鹿島槍ヶ岳~爺ヶ岳~扇沢



(この記事は「2日目 五竜山荘~五竜岳~キレット小屋」の続きです。)


山の朝は早い。
それが必ずしも本意でない場合も多い。


山小屋泊りの難点の一つは、午前2時ぐらいから荷物をいじり出す早発ち登山者の存在だ。
早発ちはいいのだが、お願いだからレジ袋をガサガサさせたり、ハイビームのようなヘッドライトの灯りをチラチラさせたりしないでくれ。

早発ちの方々には是非、レジ袋ではなくスタッフサックの使用と、ヘッドライトの灯りを赤色灯にしていただくことを切に願う次第だ。
山小屋でのマナーとして、是非ご理解いただきたい。


さて、午前5時前ぐらいになると日の出のモルゲンロートを期待するわけなのだが、残念ながら僕の寝床の窓は西向きのため、ぜんぜん日の出が見えない。
玄関を出てみたが、これも西向きのため、ただの朝だ。

失意のまま山小屋の中に戻ると、朝食タイムになっていた。
シンプルながらも大変美味しい朝食である。
味噌汁の加減も良く、梅干もなかなかのものだ。
なにより、焼きサバの脂の乗り具合がすばらしかった。
ご馳走様である。

朝食を掻き込んで、早々に出発することにする。
今日はついに八峰キレットだ。
今朝出発する客の中には20人程度のツアー客も含まれているため、その人たちよりも先に出発しなければ渋滞に巻き揉まれる。
こんな難易度の高いルートをたった1人のガイドと1人の世話人で20人も連れてくることについては、僕にもいろいろ思うところがあるが、それはまた別の稿で。

5:34、荷物をまとめて山小屋を出た。
西の空は微妙なモルゲンロート。

登山道は山小屋の南側から始まる。
すぐに八峰キレットがやってくるので、覚悟を決めつつ登り始める。

登り始めてすぐにハシゴ登場。

ハシゴの上には、小さな板だけが足場となっている鎖場。
「戸板一枚、下は地獄」とはよく言ったもので、まさにこの小さな板の下は断崖絶壁。
とはいえ、ここまでのルートではこんな足場さえも無い場所があったわけで、それを思えば大変楽である。
あとは、この板が折れたり外れたりしないことを祈りつつ足を乗せるばかりである。

続いて、それほど難易度の高くない鎖場を登り、


崖の上に至る。

さらに鎖場は続くが、やはり難易度は大したことがない。

このあたりの鎖場は東側の斜面に付けられているため、朝日がよく見えたのだが、そんなひとときを切り取った奇跡の一枚がこちら。↓
タフなだけが取り柄の僕のコンデジと、僕の貧弱な技量では、年に数回も撮れないレベルの写真ではないかと、自画自賛する次第だ。
こういうステキな風景を見るために山に来ているんだよなぁ。

引き続き鎖場。今度は角材で足場が作られている。

5:48、いよいよ八峰キレットに突入する。

まずは木製(!)のハシゴを降りる。
このハシゴの上からは、いよいよ「キレット」部分が見える。
どうやらあの切れ込みの向こう側に行くらしい。

ハシゴを降りると、小さな木の札に何事か書かれていた。
「ここがキレット お互いに声を掛合い ゆずり合い」?
字がかすれているので、正しく読み取れたか自信が持てない。

ハシゴの下からは、細いながらも道が付けられていた。
この道からは、鹿島槍ヶ岳の北壁から続く尾根が見えた。

切れ込んだ部分にたどり着くと、そこから反対側の斜面に付けられた登山道に降りる。
ここにはハシゴがかけられていて、それを降りれば登山道に無事に降り立てる。
そのハシゴを、登山道に降りてからパシャリ。

ハシゴから先の登山道にはクサリが手すりのように設置されていたが、決して歩きにくいわけではない。
ここですれ違うのはかなり嫌だけれど。

なぜか、手すりとしてハシゴが設置されている箇所も。

岩場もあるが、あまり大したことがない。


あれ、もしかしてもう八峰キレット終わっちゃった??
これが大キレットに匹敵すると言われる八峰キレットなのか?
うーむ。。。
これなら昨日の五竜岳~キレット小屋のほうがよほど難しい箇所が多かったように思う。
もちろん、登山道やハシゴなどのメンテナンスをしてくれている方々がいるからこそ、こんな簡単に通り抜けられたわけだが。

牛首尾根(?)のドテっ腹に、スポットライトのように日差しが当たって不思議な感じ。

引き続き簡単な岩場を越えて、
高度を稼ぐと、五竜岳がよく見えた。
昨日はあの岩峰を越えてきたのだなぁ。
あの岩峰に比べたら、今日の岩場は小粒だなぁ、などと思いながら登る。

6:06、それなりに歯ごたえのある岩場が現れる。
とはいえ、これも昨日に比べたら楽勝。

その先はゆるやかなハイマツ帯。

決して歩きにくい道ではない。

6:15、尾根に出た。ガスの向こうに鹿島槍北峰が見える。
尾根上には、新芽ばかりで花が咲いたようにも見えるシラビソ。

尾根は、西側が緩やかで東側が断崖絶壁。
急峻に切れ込んだ谷にはまだまだ雪が残っている。

さらに多少ガレた道を上り、
岩場をよじ登って、
稜線に出た。
目の前にはすげぇ壁。
これがあの有名な鹿島槍北壁か?
だとすれば、今年3月に野田賢氏が亡くなる直前に登っていたのはここだ。僕のようなチンケな登山者は、この壁の下に立つことすら難しい。
謹んでご冥福をお祈りしたい。

当然この絶壁から遠ざかるように登山道が付けられていた。
ちょっとした岩場を登り、
なだらかな斜面に付けられた登山道を歩く。

6:28、再び稜線に上がる。

尾根上から見た五竜岳方面は、本当に険しい峰々が連なっていた。
僕には、この峰々を歩くので十分にキツかった。
とても鹿島槍北壁など、挑もうなどという気持ちも持ってはいけないのだろう。

反対に、南側の稜線の先には、いよいよ鹿島槍ヶ岳の北峰が見えた。

鹿島槍ヶ岳の山頂があまり見えない分、ついつい五竜岳を振り返ってしまう。

このまま北峰まで稜線を上がれれば話が早いのだが、途中から西側斜面をトラバースする。

富山湾方面を見ると、なんか変な雲が見えた。
あれって、雨柱じゃないか??(写真中央左)
まさかこっちに来ないだろうな。。。

6:41、岩場が登場。

再び稜線へ。

そして、山頂を南側へ巻く。

6:56、北峰山頂への分岐に到着。
キレット小屋からここまでで、「山と高原地図」ではコースタイムが2時間半となっていたが、1時間半足らずで着いてしまった。

北峰はすぐそこ。

ここで雷鳥発見。
ガスっているので外敵にヤラれにくいのだろう、完全に油断してウロウロしている。
ひとしきり雷鳥を観察した後、ザックをデポして北峰へ向かう。

7:05、鹿島槍ヶ岳北峰の山頂に到着。

本当のピークはこっちか?

ガスってて、風景もほとんどワケが分からん状態。
晴れそうにないので、さっさと降りる。

7:13、南峰へのルート、吊り尾根に踏み込む。
雪渓がまだまだ分厚く残っていた。

ここに来てホッとしたのだろうか、やたらに花が目に付いた。

ミヤマリンドウ。

トリアシショウマか?

ヨツバシオガマ。

ヤマハハコ。


ダイコンソウ。

アカモノ。

尾根は次第に険しくなってくる。



やたらと尖った岩。

7:29、急な岩場を登る。
まだこんな険しいところがあったとは。

山頂直下には、初めて見る花が。
イワオウギというらしい。

7:40、鹿島槍ヶ岳南峰の頂上に到着。

三角点もある。

眺望はゼロ。無念であるがやむを得まい。
眺望が無いなら長居は無用である。

南峰の南側はガレた登山道。
なだらかなので、トレッキングポールを使うのにも適している。

相変わらず稜線に花が多い。

ジャコウソウ。

なんだこの花は?

しばらく歩いても、ガスは容易に晴れない。

晴れないまま、布引岳が見えてきた。

8:09、布引岳の山頂に到着。
ちなみに、地図では布引「山」になっている。

このあたりは、晴れていれば絶好の稜線ポイントらしいが、鹿島槍方面は呪わしいほどに何も見えなかった。

それでも、爺ヶ岳方面は、稜線から西側だけは見通しが利いた。
稜線上には、豆粒のように種池山荘も見える。
今日の予定ではその種池山荘でテントを張るつもりだったが、どうやら時間の余裕が大幅に発生しそうだ。
どうせならこのまま扇沢まで下ってしまって、今日のうちに下山してしまったほうがいいかもしれない。
一方で、1日の余裕が出来たのならば、針ノ木まで行ってしまいたいという考えも脳裏に浮かんだが、さすがにそれは足を伸ばしすぎだろうと思い止まる。

布引岳を過ぎ、稜線を歩いていると、イワヒバリが僕を先導するかのように稜線を飛び跳ねながら歩く。
この警戒心の無さは、巣立って間もない幼鳥だろうか。可愛らしい。

8:28、登山道はいよいよ樹林帯に突入する。

こうなってくると、俄然、花が多くなってくる。



やはり花畑はウキウキするものだ。

8:34、池塘を通過。
いかにもボウフラがわいてそうな色をしている。

8:44、冷池山荘のテント場に到着。
けっこう傾斜があり、あまり快適そうには見えない。

テント場のすぐ先には、冷池山荘が見える。

8:50、冷池山荘に到着。

空には幾ばくかの晴れ間も見えてきた。

冷池山荘前のベンチで小休止。
この日初めての、座っての休憩だ。

再び歩き出す。

9:18、冷乗越に到着。
振り返ると冷池山荘が見える。
鹿島槍は先っぽだけがちょっと見えた。

剱・立山も雲の中。

冷乗越から爺ヶ岳に向かう登山道には、たまにハイマツ以外の樹林もある。
こういう場所には、やはり花もたくさん咲いている。


稜線の、向かって左側は基本的にガスで満ち満ちている。

種池山荘と、その先にある岩小屋沢岳が素敵だ。

足元から伸びるのは棒小屋沢か。

わずかな樹林を抜けると、あとはほとんどがハイマツ帯のなだらかな道だ。

こちらがジワジワと標高を上げると、爺ヶ岳や種池山荘、岩小屋沢岳の見え方が少しずつ変わってくる。

次第に迫ってくる、爺ヶ岳の中峰と南峰。(北峰はいつの間にか過ぎていた・・・。)

10:00、爺ヶ岳中峰山頂への分岐が現れる。

爺ヶ岳中峰の山頂への道は、そこそこ急登。
何もない急斜面からの景色はなかなかのものだ。

10:08、爺ヶ岳中峰の山頂に到着。

鹿島槍ヶ岳方面はガスが優勢。

南峰方面はまだいくらか視界が利く。

大町方面も、雲の切れ間からいくばくか下界が見えた。

次は南峰だ。
中峰を降り、10:17、巻道との合流点に至る。

南峰を目指す。

山頂の手前がちょっとザレているのだが、
そこには漏れなくコマクサの花が。

10:27、南峰への分岐に到着。

10:30、爺ヶ岳南峰の山頂に到着。

迷い込んではいけない南尾根。

扇沢も雲の切れ間から見えた。
が、その向こうの蓮華岳や針ノ木岳は雲のモザイクの向こう側だ。

山頂で、ほかの登山者と軽く雑談し、再び種池山荘方面に向けて出発。

種池山荘に近づくと、少し樹木の背丈の高い場所などもある。
樹木の背が高くなると、途端に暑さを感じる。

11:03、種池山荘に到着。
元々の計画では、ここに到着するのは15時のはずだった。
4時間も早く着いてしまった。
やはりこれは、このまま扇沢に下ってしまおう。

その前に、種池を見ておこう。
え、こんな小さいのか・・・。別にキレイでもないし。。。

失意を抱きつつ山荘前にもどり、ベンチで行動食を食べた。
残念ながらまたガスが濃くなってきて、眺望は無し。

とりあえず腹を満たし、11:19、扇沢へ向かって下山開始。

しばらくは開けた登山道。
よく整備されていて、歩きやすい。

ここでゾウムシ発見。

5分も歩くと、道は樹林帯に突入する。
樹林に入ると、風も吹かずムシムシする。
その湿度を反映して、敷かれた石が湿っていてよく滑る。とてもイヤだ。

この石畳は、ずいぶん標高を下げるまでキレイに敷き詰められている。
滑るのはイヤだが、敷設するには大変な労苦があっただろう。頭が下がる。

11:27、「鉄砲坂」という看板が現れる。
どのへんが鉄砲と関係するのだろう?

11:33、「富士見坂」という看板が現れる。
どう考えても富士山なんか見えないだろうに、なぜこの地名が付いたんだろうか。

ただただ下るだけで飽きるので、こういう地名案内版は非常にありがたいのだが、どうせなら由来なども掲示してくれると嬉しいなぁ。
これだけでは何がなんだかサッパリ分からない。

11:36、なにやら注意書きの看板が現れる。
書き起こすと、
------------------------------
ガラ場通過注意事項
・この場所で一呼吸おき息をととのえて下さい。
・落石注意
・耳をすまして足元・上方に注意を払って下さい。
・雪面を転がり落ちる石はほとんど音がしません。
・サルやカモシカが上方にいる時、石が降ってくる事もあります。
・前後の人と間隔をあけ静かにすみやかに通過して下さい。
・扇沢下山までまだまだ長い道のりです。最後まで気を抜かずにお気をつけて!
大町警察署、種池山荘支配人
------------------------------
とのこと。
つまり、この先にガレ場と雪渓がある、ということか?

道なりに回り込むと、果たして雪渓があった。
雪渓の幅は20mぐらいか。大した大きさではない。

と、油断していたら、ガラガラと落石の音が聞こえた。
よく見ると、上方にサルが10頭ぐらいいて、無造作に歩くたびに落石が起きるというヒドイ状態だった。
サルには悪気が無いのだろうけど、こっちにとってはたまったものではない。
タイミングを見計らい、足早に雪渓を抜ける。

11:43、「ガラ場」という看板。
これのことのようだ。
その下は、一気に沢へと続いている。

11:49、蓮華岳と針ノ木峠が見えた!

11:50、「黄金岬」の看板。
やっぱり何が「黄金」なのか分からず。

11:51、アブミ沢に到着。
標高的には、ここが扇沢と種池山荘のおおよそ中間地点だ。

岩小屋沢岳方面もはっきり見えた。

11:56、石ベンチ。
休むかどうか迷ったが、そのまま素通りして先を急ぐことにした。
実は先ほどから便意を催し、いち早く扇沢に着きたかったのだ。
扇沢に着きさえすれば、清潔な水洗トイレで用が足せる。早く到着したい。

12:01、水平岬。
もう、地名のつけ方がいい加減すぎやしないか?

12:03、水平道。
もう、名前つけなくていいんじゃないか?

水平道からは、よりはっきりと蓮華岳と針ノ木峠が見えた。

12:08、急に道が岩っぽくなったと思ったら、
すかさず現れる「一枚岩」の看板。
さすが、外さねぇな。
だが、どう見ても1枚ではないぞ。

12:35、駅見岬。
たしかに扇沢のターミナルが見える。
この手の地名って、もしかしてけっこう最近になって付けたのか??

対面の斜面には大きな雪渓も見えた。

その先、巨大な根曲がり杉の横を抜け、
12:47、ケルンに到着。
ケルンの道標。
扇沢まで1.7km。

ここまで来ると、完全に樹相が変わって、松だの杉だのが多くなる。

12:55、金属製の階段が現れる。
こういうのを見ると、人里が近そうな気になる。
早く水洗トイレに駆け込みたい。

13:03、八ツ見。
たしかに、方角的には八ヶ岳が見えそうな気もするが・・・。
あれは八ヶ岳なんだろうか。

木製の階段を降り、
13:35、まだアジサイが咲いていた。

13:37、ついに登山口(駐車場)に到着。
ちなみに、ここにはトイレが無い。
トイレがあるのは扇沢駅、ここから歩いて15分のところだ。

橋を渡り、
洞門を抜ける。
路側帯が狭く、大きなバスが通ると怖い。
交通量も多いので、岩場よりも恐怖を感じながらの歩行だ。

洞門を抜けると、やっと扇沢駅のロータリーに入る。

13:54、扇沢駅に到着。

そしてトイレに駆け込む。
セーフ。


こうして僕の後立山連峰の縦走が終わった。


(「総括」につづく)