このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2012年7月22日日曜日

山行記 : 2012年7月14日~ 吾妻連峰縦走【3】 1日目その2 「ガスの東吾妻山から吾妻小舎」編

(PREV:1日目その1「浄土平・吾妻小富士」編へ)


吾妻小富士を早々に下り、いよいよ東吾妻山へ。

浄土平から東吾妻山へのルートは、大まかに北回りと南周りがある。
北回りは、鎌沼という大きな沼(池?湖?)と広々とした湿原が楽しめる風景の良いルートだ。
それに対して、南回りは、多分安達太良山などが見えたりするルートなんじゃないかと思ったのだが、今回は北回りルートを通ったので確認はしていない。いずれにせよ、天気が悪すぎて、安達太良山はガスの向こうだろうと。

12:07、浄土平を出発する。
出発するとすぐに、登山者カードのポストと、





















一切経への閉鎖された登山道の入口が現れる。
















竹の棒をクロスさせた閉鎖のされ方が、まるで江戸時代の閉門蟄居のようで、なんとなく和む。

それを過ぎると、一切経の手前のピークと蓬莱山の間の谷筋を登る。

やはり東北の山。緑が濃い。





















その後、すぐに分岐が現れる。
















この分岐は、どちらからでも北回りで東吾妻山に至るルートなのだが、行きは向かって左のルートから入り、帰りは向かって右のルートから下りる予定とした。
距離が短いのは向かって左側のルートなのだが、風景が楽しめるのは右のルートなのだ。

黙々と登る。
そこそこの斜面で、気持ちの良い負荷が体にかかる。

振りかえると、吾妻小富士の火口がぱっくりと見える。
















浄土平から見た時はピンとこなかったが、こうして見るとけっこうイイじゃないか。

引き続き登ると、最鞍部が見えてきた。





















この最鞍部から切れ込む谷筋にはいくばくかの水が流れていたが、おそらく夏の渇水期には枯れるんだろうなと。

さて、ここの登山道や、この周辺は湿地帯が多いことから木道が敷設されている。
木道は歩きやすい一方、木が腐ると、それを固定していたボルトやクギが露出してしまい、非常に危ない。
実際に、浄土平からたった30分歩いただけでも、何箇所もの朽ちた木道を目にすることになった。





















この近辺で1箇所、まるで何かのトラップのようにクギの先が上を向いているのを見かけた。
いくら登山靴だったとしても、重い荷物を持った状態で全体重をかければ、踏み抜いてしまう恐れが充分にある。ましてや、今回の僕はトレランのシューズである。簡単に靴底を貫通するだろう。
そんなサビたクギなんかを踏み抜いてしまったら、山行は完全に終了である。早く下山して医者に行かないと破傷風になってしまう。
(危ないので、このクギは脇に除けておいた。)


このように、木が腐って金属だけが残る状況というのは安全性に大いに疑問がある。
クギの素材を竹や木にするなどできないものだろうか。

さて、話は戻って、最鞍部の右手に見ながら歩を進めると、12:45、一気に視界が広がった。
















右前方には酸ヶ平避難小屋も見える(写真中央)。
前方には、てっぺんをガスで覆われた前大嶺の姿が見える。
















この先に広がる湿地が酸ヶ平だ。

その酸ヶ平の手前で、木道が分岐している。
















上の写真は、分岐から北(一切経方面)へ向かう登山道。その先に酸ヶ平避難小屋が見える。
翌日はこの道を一切経に向かって歩くのだが、この日は引き続き西に向かう。

そして、ここがまさに酸ヶ平。
















天気はいつ降りだしてもおかしくない重たい曇天だし、花もパラパラとしか咲いていなかったのだが、そんなことに関係なく気持ちが伸びやかになる場所だ。
厳しいスポーツ登山も楽しいが、こういうのんびりした散歩のような山歩きも好きだ。

この伸びやかな風景の中、湿地帯の木道を歩く。
















水辺にはコバイケイソウ?
















残念ながら花は咲いていない。もう少し時期が後なのかな?

12:56、鎌沼が見えてきた。
















「鎌沼」は、その形が鎌のようだというそのまんまの理由で付けられた名前だ。
たしかに、地図で見ると、湾曲した形といい、先端がシュッっと尖っているところといい、鎌っぽい。

木道が、岸に降りられるように敷設されていた。降りてもいいんだろうか・・・。















この沼(沼というより、池とか湖といった感じだが)に沿って木道が敷設されているので、自然と岸辺を歩くことになる。
やはり水辺にはコバイケイソウが群生していて、なかには花を咲かせている固体もあった。





















やっぱり花が咲いてるとウレシイ。

鎌沼の岸辺に沿ってぐるっと回り込む。
















対岸に見えるピークは蓬莱山だ。

こうして木道を辿っていくと、姥ヶ原の分岐に辿り着く。
















このあたり一帯、東に向かってゆるやかに傾斜した広々とした場所が姥ヶ原だ。
この分岐から、東吾妻山の登山口を目指して、いったん西へ折り返す。

折り返しのルートは、まさに姥ヶ原のど真ん中を突っ切るように敷設された木道を歩く。
















姥ヶ原は強い西風の通り道で、樹木は全体的に背丈が低く、かつ、木立が東側になびくように斜めに生えている。過酷な自然を物語っている。
















姥ヶ原分岐から10分も歩かずに、東吾妻山へのルートへの分岐が現れる。
ここは木道が四辻になっている。
















このまま東吾妻の山頂を目指してもいいのだが、この分岐から5分程度のところに姥神の石像があるそうなので、それを見に行く。
















わざわざ山と高原地図に記載されているぐらいだから、大きかったり祠があったりするのかと思ったら、路傍のお地蔵さんのようなたたずまい。
でも、よく見ると、向かって左側の石像は、いわゆるお地蔵さんのような柔和なお顔ではなく、厳めしいお顔をされている。こちらが姥神様に違いない。

姥神様の詳しい由来はよく知らないのだが、日本では方々に、女人禁制を破って神の怒りに触れて石仏にされてしまったという話があるそうで、この姥神様もそれかもしれない。なにしろ、東吾妻、一切経あたりは古来修験道の山なのだから。

13:40、来た道を引き返し、東吾妻山へ向かう。
四辻を南下するとすぐに木道が切れ、登山口の標識が立っている。
















ここから先は本気の登山道が待っている。

というのも、さすが東北の山。北アルプスや奥多摩などのしっかりした登山道に慣れている人にはなかなか過酷な悪路なのだ。

連日の雨で、登山道は沢のようになっている上に、生い茂る木や草が行く手を阻む。





















上の写真はまだまだ登り口付近の緩やかな場所だが、ここから先かなりの急登と、登山道にせり出した太い枝や熊笹に悩まされることになる。

この日は風も強く、空も分厚い雲に覆われて気温が低めだったのだが、樹林帯の中を歩く分にはやはり暑さを感じた。
ふぅふぅ言いながら登山道を歩いていて、ふと、高校時代にこの道を通ったような気がした。
当時は今よりも明らかに体力が無く、半分気を失ったような状態であるいていたので、もはや記憶が全く呼び起こせないのだが、それでも、遠い記憶の中に何か引っかかるものはあるような感じがあった。

30分ほど登ると、樹林が突然切れた。
















ここから先はハイマツばかり。
東吾妻山は標高が2,000mに届かない山だが、常に強い西風が吹いていることもあって森林限界の高度が低いようだ。

ハイマツ帯に出てすぐに、山頂への道標があった。
















ガスが濃すぎて、山頂直下のはずのこの場所からも山頂の様子は伺えない。
そして、風が強い。
樹林帯で掻いた汗が冷えて、寒い・・・。

枝や笹で行く手を阻まれることもないので、さっさと歩こう。長居は無用だ。

14:20、山頂が見えた。
















山頂の標識と三角点。
















山頂から見た安達太良山方面。
















同じく、中吾妻山方面。
















ようは、何も見えないってことですよ。
山と高原地図にはわざわざ「展望良い」って書いてある場所なんだけどねー。。。
無念。

というわけで、早々に下山開始。

30分で登山口に到着。コースタイム通りか。。。

あとは再び姥ヶ原分岐まで戻り、浄土平へ向けて下山するわけだ。

この下山路は、吾妻小富士が真正面に見える。





















15:30、浄土平手前の分岐に到着。

その先で、浄土平ビジターセンターのほうには向かわず、浄土平湿原の木道を通ってスカイラインを渡り、桶沼経由で吾妻小舎に向かう。

スカイラインを渡り、桶沼に入る道の入り口はこんな感じだった。





















入り口の時点でこれでは、このあと間違いなくヤブっぽいに違いない。
とても躊躇したが、もう仕方が無い。
突っ切ることにした。

思ったとおり、枝やら草やらが生い茂り、非常に歩きにくい道をとおり、桶沼のほとりに到着。
















ヤブをかきわけて見に来るほどのものかと言えば、うーん、、、、、

で、ここから吾妻小舎の手前の分岐までの道が、さらにひどいヤブで、呪いながら歩いた次第だ。
やっぱりあまり歩く人がいないのだろう。
明日は吾妻小舎から早めにスカイラインに出るルートを使おう・・・。

そんなわけで、15:56、地味に苦労しながら吾妻小舎に到着。
















本日の山行、約7km。

客は僕のほかに6人。布団は40組ぐらいあったので、ものすごくゆとりのスペースだ。
混んだ山小屋は平日の朝の山手線より嫌いだが、このぐらい空いていると天国と言っても差し支えない。これなら、小屋泊の山行も好きになれそうだ。

僕以外の泊り客のうち、2人は素泊まりのようで会話をするタイミングがなかったが、他の4人とはご飯の時間に会話が弾む。

そんな夕飯はこんな感じ。
















普段下界で食ってるメシより豪華で、ビックリした。
しかも、春巻の具は、何らかの山菜(おそらくはウドか)が入っていたり、山のものがふんだんに使われていて非常に得した気分。

吾妻小舎の消灯は21時。
ふかふかの布団で就寝。



2日目その1「一切経と五色沼」編につづく)

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