登攀関連の教本は、読んでも分かりにくいものが多い。もしかして、独学を断念させるためにわざと分かりにくく書いてるんじゃなかろーかと邪推したくなるものばかりだ。肝心なところがボカしてあるし。
縦走テント泊登山なんかと違って、それこそ一手間違えたら即死につながるような危険が伴うのが登攀なわけだが、そのような事故が発生したときに自分のせいにされたくないという思いがそうさせるのか。
だが、僕は人からモノを教わるのがあんまり上手でないので、できれば独学で登攀も学びたい。
なので、イメージしやすくて分かりやすい登攀の教本が欲しいのだ。
そんななか、何冊も読んだ教本の中で、これなら従ってみようと思わせられた本が『教科書になかった登山術』である。
本書は、著者のクライミングに対する(特にワイドクラックに対する)愛情がヒシヒシと伝わってくる。それはもう、イヤというぐらいに。たぶん、著者の嗜好性は、今のクライミング界においては多数派ではないのだろうな、ということは、素人の僕でも読み取れる。
が、その深い愛情が織り成す説得力にほだされて、僕もワイドクラックから挑戦してみようかという気にさえさせられる。もしワイドクラックがメジャーでないなら、ゲレンデも空いてるだろうし。
また、本書の軽妙な語り口は、読み手を飽きさせることがない。
まさか、登攀の技術指南書を読みながら、声を出してゲラゲラ笑うことになるとは思ってもみなかった。
なお、アマゾンでのレビューは、本書を鵜呑みにすることの危うさを指摘するものばかりだが、せっかくなので僕は鵜呑みにしてしまいたいと思う。どんな種類の技術を磨くにも、つまみ食いではなく誰かのやり方を丸々真似ることからはじめるのが、習得が早いのだから。
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