このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2012年7月10日火曜日

斎藤惇生(編) 『北アルプス大日岳の事故と事件』

2000年3月、北アルプスの大日岳で文部省主催で大学山岳部のリーダー、リーダー候補を対象とした冬山登山研修会において、参加者が雪崩に飲み込まれて死亡するという事故が発生した。
この研修会において、指導員の配慮に落ち度が有ったために雪崩に巻き込まれたのではないかということで、遺族による民事訴訟がおこなわれ、また、富山県警により刑事事件として書類送検されるに至った。

結果、刑事事件は嫌疑不十分で不起訴、民事訴訟も過失は無かったと判決が下りた。

この事故は発生から10年以上経過した今でも、研修会やガイド登山などにおける法的責任の有り方について語るとき、非常に重要な事例として語られることが多い。

その事故の経緯や裁判の経緯などをつまびらかにしているのが、 『北アルプス大日岳の事故と事件』である。





















本書においては、事故の経緯をつまびらかにする調査において、世界有数の豪雪地帯とされる事故現場の雪庇の様子が詳しく図解や写真で解説されている。
それを見て僕は、戦慄を覚えた。雪庇とはこんなにも巨大になるものなのかと。

雪庇を踏み抜くリスクを最大限回避しようとすれば雪庇の風上側にできるだけ寄って歩くのが良いわけだが、風上側は当然風が強く当たるので、当然クラストしている。そのクラストした斜面をトラバースするように歩かなければならないので、あまり風上側に寄り過ぎたくもない。
このため、歩きやすいところを歩くうちについつい雪庇の上を歩いてしまうという状況が発生しやすいのだ。

やっぱり北アルプス北部の厳冬期は、とてもじゃないけど歩ける気がしない・・・。


なお、この事故では主催の文部省や現場の指導員の法的責任が争われたわけだが、登山における法的責任についてつまびらかにしている本もあるので、ついでにご紹介。

それが『登山の法律学』だ。






















著者は弁護士で登山家でもある。
登山者は一読して損はないだろう。



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