大弛小屋に戻り、ご主人にコーヒーをお願いしようと思ったら、忙しそうだったので自粛。
すると、ご主人から直近の天気予報の情報が。
なんと、本日の夜から雨が降り始め、少なくとも朝まで降り続けるとのこと。
ということは、明日下山ということになると、林道を下るにしても5kmの雪道を歩かなくてはならないので、雨でグチャグチャになった雪と格闘しなければならないことになる。
ご主人とも相談して、今から出発することにした。
急いで荷物をまとめて、背負う。
嗚呼、、、重い・・・。
大弛小屋のご主人には大変お世話になったお礼を伝え、10:27に出発。
大弛峠から山梨側に下り、タクシーを呼べるところに出るまで約15km。
そのうちの5kmは雪道。残りの10kmはアスファルト。
まさに、リタイヤに対する罰ゲームのような行程。
無雪期は、ただただアスファルトが続く林道だが、今はまだ雪に閉ざされている。
例年だと、この林道が開通するのは6月だそうな。
歩いている間にもどんどん谷側からガスがせり上がってきて、視界が悪い。
標高が高いうちは、林道の山側はゴロゴロと岩が露出しており、いつ落石が起きてもおかしくない。
出発して30分もすると、ガスの下に出た。
視界はクリアになったが、眺めが良くなったわけではない。
延々と退屈な林道歩きが続くわけだが、この林道は自動車を通らせるために、路面の斜度を緩やかにするためのヘアピンカーブが多く設けられている。
そのヘアピンカーブをシリセードで下りたと思われる跡を発見。
まー、ショートカットしたくなる気持ちは分かるけどね・・・。
その後も、デジャヴュのような風景が続く。
すでに薄っすらと霧雨が降り始め、雪はぐずぐずで歩きにくい。
ソリでも有れば楽なんだけどねぇ。。。
もちろんこんな道、歩いている人なんて居やしないわけで。
出発直後に3人ほど人に会ったきり、全く人間の気配がしない雪道を、雨の中、重い荷物を担いで歩く寂しさ。しかも、その向こうに何が有るわけでもなく、ただただ負けて下山するだけの道だ。
唯一の救いは、緩やかな下り斜面だということだけ。
出発して1時間半、いいかげん雪の道に嫌気がさしてきた頃に、目の前にアスファルトが広がった。
ついに雪道が終了か?!
と思ったら、
まだまだ先は雪道だった・・・。
再びツボ足をつけながら歩くのだが、雪と路面の間には、どうやら水が流れているようだ。
雪渓みたいだ。
さらに30分歩くと、またもや雪が消えてアスファルトが見えている!
もう2時間も歩いているわけだし、いよいよか?!
と思ったら、
またか・・・。
もう2時間も経つのに、5kmも歩いていないってことかよ!
さらに5分後、
今度こそ!
・・・・・。
ホントにイヤになってきた。
大声で悪態をついてみた。コダマが返ってきた・・・。
そして、出発して2時間以上。
再び雪の切れ間が・・・。
どうせ、また、、、
だよねー。。。
もう心が乾いてきた。
標高をだいぶ下げてきたためか、雪には鹿の足跡が。
その3分後、また雪の切れ目が見えてきた。
またどうせダメなんでしょ?
ん?!
おおおお! キターーーー!!
12:55、やっと雪が消えた!
ということは、5km歩くのに2時間半か。
いくらグズグズの雪とはいえ、時間かかりすぎだな。。。
林道歩きの15kmを5時間と見ていたので、いくらなんでもペースが遅すぎる。
荷物が肩に食い込んでツライ。
そして、アスファルトの路面になってからがまた長かった・・・。
延々と、面白くもない林道を、ひたすら歩く。
そもそも登山靴はアスファルトの上を歩くようには作っていないのだから、非常にしんどい。
足の裏がどんどん痛くなってくる。
大弛峠から7kmぐらいの地点で、急に雨が強くなってきた。
慌てて雨具を着込んだが、ザックカバーは付けず。
外付けの荷物が多すぎて、カバーに入りきらないと判断したためだ。
ザックの中身で濡れて困るものは全て防水の袋に入れてあるから、実害としては、ザックが水を含んで重くなるというだけ。まあ、充分な実害だが。。。
そうして土砂降りの中を水死体のように歩いていると、前方に工事車両が。
見ると、道路が数メートルにわたって、丸々崩落している。アスファルト部分はまるっきり残っていなかった。
(作業している工事関係者の皆さんへの配慮から、撮影は自粛しました。)
幸い、山側斜面を歩いて通過できたが、これが山崩れだったりしたら、もはや目も当てられなかった。。。
あとはもう、ひたすら歩く。ただただ歩く。
肩に食い込む荷物を呪いながら。アスファルトの固い路面を呪いながら。降っては止む不安定な天候を呪いながら。
道路脇には鹿の腐乱死体が転がっているし、なんだかもう、すべてが残念だ。
そして、15:35、ようやく1つめのゲートが見えた。
そして、通過。
このゲートの次のゲートに辿り着けば、そこまでは自動車が入れるのでタクシーを呼べる。
あと一息だ。
と思ったら、その一息が意外に長かった。。。
この手の林道の横にありがちな渓流を眺めながら、延々と歩く。
16:12、道路脇にやたら巨大な岩が現れる。
近づくと、案内板があった。
呪いの言葉を吐きながら、ひたすら歩き続け、16:18、ついに2つ目のゲートが見えた。
大弛峠を出発して6時間弱。。。
本当につらかった。
早速タクシーに電話を!
auの携帯の電源を入れると「圏外」の表示。マジか。。。
どこまで行けば電波が入るのか。。。
ダメもとでiPhone(softbank)を見てみると、電波バリバリ! なんという奇跡!
おかげでタクシーを呼ぶことができた。
もうヘトヘトで、東京にこのまま帰る気力が無くなっていたので、タクシーの運転手さんに紹介してもらって塩山温泉の鄙びた宿に逗留。
僕の失敗縦走は終わった。
(「総括・反省編」へつづく)
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