4月30日。
山の朝は早い。
特に残雪期の山行は、日が高くなってからだと雪がグチャグチャになって歩きにくいので、勝負は午前中だ。
というわけで、遅くとも5時には出発したかった。
と、思ってみたものの、やっぱり早起きはツライ。
3時に起きたものの、シュラフから出られず、結局動き出せたのは4時だった・・・。
とりあえず朝飯を食う。
前日のうちにお湯で戻しておいた白飯のアルファ米に永谷園のお茶漬けの素をかけて、これまた前日のうちに保温ボトルに入れておいたお湯をかける。
と、ここで誤算が発生。
先日のOUTDOOR DAYで購入した保温ボトルの保温力が残念で、すでにぬるま湯以下の温度まで下がっていたのだ。
火を起こしている時間が勿体無いので、やむなくそのままかけて食べたが、こんなマズイお茶漬けは初めてだった・・・。
夜お湯を入れて朝使うというのは、いつもテルモスの山専ボトルでやることなのだが、これはどの保温ボトルでもできることではないということを学習させられた。
テルモスすげーな。
その後、荷物が多すぎてパッキングに手間取る。特に大量のフリーズドライ食品のパックが気圧の低下で膨張し、パッキングしにくいなんてもんじゃなかった。
それでも、どうにかこうにか無理やりザックに詰め込んで、出発できたのは6時だった。
すでに1時間のビハインド。先が思いやられる。
出発してすぐに、広い尾根道に出る。
ここから大日小屋までは、変化に乏しいながらも奥秩父らしい樹林帯が続く。
苔むした風景が森の中っぽくて好きだ。
出発して50分後、鷹見岩への分岐に到着。
もちろん、鷹見岩に寄って行く余裕は無く、そのまま大日小屋方面へ。
さらに10分後、大日小屋に到着。
一昨年の夏に僕がテントを張った場所。
ソロテントを一張立てるにはちょうどいい広さでよかったのだ。
さて、富士見平小屋のご主人が言っていたように、この大日小屋のテント場はたしかに汚かった。
キャンディの包み紙やティッシュがいくつも落ちていて、利用者のモラルの低さが伝わってきた。
街中でもポイ捨てするヤツはクズだと思うが、山に来てなおそれをするヤツはクズ以下だ。
一昨年の夏はこんなじゃなかったと思うんだけどなー。。。
さて、瑞牆山荘発の情報によるとここから先の登山道は凍結箇所ばかりとのことだったが、実際はどうなのだろう?
結果、本当にガチガチだった。
大日小屋テント場を過ぎて3分も歩かないうちに、登山道の様子は以下のとおり。
大日岩の直下ぐらいまでは、大岩を越えるところに限って凍結していない箇所もあったが、それは極一部。
出発から2時間で、大日岩の直下に到着。
ここは絶景ポイントでもある。
前日に見えなかった南アルプスも、春霞の向こうに見える。
ただ、足場が広い場所ではないので、大荷物を背負っていつまでも居られるような場所でもなく、早々にまた歩き始めた。
ここから大日岩の広場までの直登が、28kgの装備を担いだ身には堪える。
時に四つん這いになりながら登り、やっと広場に到着。
大日岩の頭も見える。
この先あたりから、だんだん氷だけでなく、雪が増えてくる。
いよいよツボ足となるポイントも現れる。
延々と尾根道を登り続ける。
振り返ると八ヶ岳が見えた。
昔、『振り返れば奴がいる』というドラマがあったが、こっちは、振り返れば八ヶ岳ということで。
(すみませんすみませんごめんなさいごめんなさい)
この先、岩と氷と雪のリッジに出るにあたり、ついにピッケル投入。
でも、他にピッケルを使っている人はほとんど見かけなかった。
瑞牆山荘発の情報には、ピッケルもあるとよいかもしれませんって書いてあったのに!
実際、有れば有ったで使うけど、使う必要は全く無かった。。。
そしてついに砂払いノ頭に出る。
つまり、岩の稜線に出たということだ。
ここで久しぶりに南西方面に視界が開ける。
南アルプスとも再会。
ここから先は見晴らしの良い切り立ったリッジを伝って金峰山山頂に向かう。
すでにこの時点で、タイムに大幅な遅れが出ていた。
やはり荷物が重すぎて、雪が深いと足を取られやすいためにスピードが極端に落ちてしまう。
実は、ストックを持っていたのだが、なんとスノーバケットを忘れてしまい、雪道では一切役に立たないただのお荷物になってしまっていた。
ストックがあれば、ツボ足の際の荷物のブレを支えるのに大きく役立ったであろうに。。。
この致命的な忘れ物は、金峰山山頂以降も大きく響くことになる。
砂払いノ頭から岩々を超えていくと、どんどん展望が開けてくる。
これぞ山登りの醍醐味の一つだろう。
背後には八ヶ岳と瑞牆山。
右手には富士山。
そして、進む先には切り立つ稜線。
さあ、ここからが怖いところだ。
荷物がいつもどおりならそれほど怖くないのだが、重い荷物が体の重心をブレさす上に、もう5時間以上も登り続けているので、踏ん張りが効かなくなりつつあった。だからこそ、慎重に歩かなくてはならない。
足を滑らせたら、ひどいことになるだろう。
でも、このような場所だからこそ、素晴らしい景色を味わえるわけで。
何度も何度も、自分が歩いた険しい岩稜の向こうに見える八ヶ岳を振り返っては、贅沢な眺めを楽しんだ。
無雪期であれば、このあたりは鎖や梯子やロープなどが満載で、しかも大岩の上を飛び跳ねながら進まなければならないルートだが、今はみんな雪の下。
そういう意味では夏より歩きやすいのだが、それとはまた別な部分で、足元が不安定だったりする。
こんなところでバランスを崩したら、ちょっとイヤだ。
その先には金峰山小屋と、そこに続く道が見えた。
ここまで来れば、山頂まではもう少し。
あとは最後の登りをプッシュするだけ。
来し方を振り返ると、一昨年の夏に見たあの稜線が。
ちなみに、同じアングルからの夏の風景が以下。
(2010.7.18撮影)
印象が全然違う。。。
どっちも好きだけど。
そして、11:30、頂上直下の広場に到着。
五丈岩。
前回来たときは左大胸筋の肉離れのために登れなかったが、今回は試そうとすら思えなかった。時間も体力も余裕無さ過ぎ。
とにかく腹が減ったので、頂上を目の前にしていったんメシを食う。といっても、行動食だけ。
また、ここまでは前日の瑞牆山の際と同じく、長袖TシャツにジップアップTシャツを重ねただけの薄着だったのだが、山頂付近は風が強く、ここでソフトシェルを羽織った。でも、ベンチレーションは全開。
12:00、金峰山山頂に立つ。
金峰山の山頂は、山頂の岩360度のパノラマで、すばらしい眺望である。
となれば、やはりムービーでご紹介。
(注:動画ファイルが大きすぎてアップできませんでした。近日中にアップします。)
さあ、今回の山行では、ここはあくまで通過点。
雪道でのペースダウンを考えても、想定より大幅な遅れが発生しているので、このままではかなりマズイことになる。急がなくては。
しかも、ここまでは多くの人が登ってくるが、この先へ進む人は非常に少なくなる。
道は間違いなく雪深く、ツボ足必至で、余計に時間がかかる。
さらには、何か有っても誰にも助けを求めることなど期待できない。
僕は覚悟を決めて、金峰山の山頂から西へ向かって踏み出した。
本日の幕営地、大弛小屋へ向かって。
(つづく)
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