このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2012年12月29日土曜日

動物行動学

以前、『私の山小屋日記』という書籍を紹介した。
この本は、著者である動物学者が山の中に籠って動物の行動を観察しながら過ごす日々について綴ったエッセイである。

このように、生き物を観察して習性を解き明かすような作品は、古くは『ファーブル昆虫記』や『シートン動物記』などがあるが、それをさらに動物の行動を科学的アプローチにより観察を深めることによって解明する学問が動物行動学だ。

登山をしていると、さまざまな生き物に出会う機会に恵まれるが、そのようなときにどのように振舞うべきなのかを知りたいという気持ちから、今年に入って動物行動学関連の書籍を読むことが多くなった。
そんな書籍をご紹介したいと思う。

まずは、動物行動学の元祖ともいえるコンラート・ローレンツ氏の『ソロモンの指輪』。


本書は、1949年に原書の初版が出版された。
僕はつい最近まで、本書のことをファンタジー小説か何かだと勘違いしていた。不明を恥じるばかりである。

ローレンツ氏はさまざまな生き物を放し飼いにして、その行動を観察し続け、その結果を時にユーモアを交えながら記述している。特に鳥や犬の記述が多い。
鳥の種類も多岐に渡るが、ニシコクマルガラスやハイイロガンの話は、非常に興味深く、心を動かされる。

次は、カラスつながりで、松原始氏『カラスの教科書』。


本書は、カラスに特化した動物行動学の本である。
カラスがどのような生態であり、どのような行動を取る生き物であるのかを400ページ近くの項数を費やして解説されている。
と書くとものすごく重たい大著のようであるが、実際は1ページあたりの文字数は非常に少なく、また、語り口も軽妙で、軽い気持ちで読み通せる。

次に紹介するのは、小林朋道氏『先生、~』シリーズ。

先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!


先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!


先生、子リスたちがイタチを攻撃しています!


先生、カエルが脱皮してその皮を食べています!


先生、キジがヤギに縄張り宣言しています!


先生、モモンガの風呂に入ってください!


この一連のシリーズは、鳥取環境大学の教授である著者が、大学の敷地内外で観察調査を続けている生き物たちの話題を分かりやすく語っている本だ。
非常にハートウォームであり、ユーモラスな語り口に油断していると、思わず目頭が熱くなるような話が放り込まれてきて心を持って行かれてしまう。

このシリーズは完結したのかどうかわからないが、同じ著者による似たようなコンセプトの書籍も出版された。
それが『なぜヤギは、車好きなのか?』である。


本書では、『先生、~』シリーズにも登場する、鳥取環境大学で飼われているヤギたちの話である。やはり、動物行動学の見地から解説しつつ、やはり心を動かされるストーリーを放り込んでくる作品である。
著者は『先生~、』シリーズを経て、ストーリーテラーとしての腕を上げたようである。

なお、著者は非常に多作な方のようで、より学術論文に近い一般書なども多々出版されている。


このような動物行動学の本は、必ずしも山の生き物ばかりを取り上げているわけではない。
だが、このような書籍から丹念に山の動物の習性などに関する記述を拾い上げて学習しておくと、山の生き物に対するアンテナが鍛えられるに違いないわけで、山歩きがより豊かになるに違いない。

せっかく登山を趣味にするのであれば、少しでも自然に対するリテラシーを高め、たくさんのことを自然から学べるようになりたいものだ。


2012年12月22日土曜日

西丹沢登山詳細図

先日、東丹沢の登山詳細図が発売されたわけですが、いよいよ西丹沢の調査も開始されたようです。
(詳細はこちら

発売が楽しみでしかたない!

2012年12月15日土曜日

『岳人』リニューアル

登山雑誌の中でも特にエスタブリッシュな『岳人』だが、今月号(2012年12月15日発売)から誌面を刷新した。

第一に、大幅にカラーページが増えた。が、定価は据え置き。
昨今の山ブームで、収益性が向上したのだろうか。

また、新しい連載陣もなかなか興味深い。
奥多摩の山岳救助隊・金邦夫さんによる、奥多摩遭難をテーマにした連載が始まったのが特に嬉しい。

あと、気のせいかもしれないが、『岳人』編集者であるサバイバル登山家・服部文祥さんが以前にも増して誌面に登場するようになったような。
とりあえず、本人の文章による、あの情熱大陸の舞台裏についての文章は、思わず口の端で笑ってしまう。

登山3誌のなかで『岳人』は一番じっくり読めるので、僕はとても好きだ。
今後も刮目したい。


2012年12月11日火曜日

ワンゲルガイドブックス『雪山エントリーコース』

山と渓谷社から一度に出版された雪山ガイド書籍の1つは、ワンゲルガイドブックシリーズの9番目『雪山エントリーコース』だ。


作りは他のワンゲルガイドブックシリーズと同様、TIPSを散りばめつつ、主としてはコースガイドが掲載されている。

だが、内容的には同じタイミングで出版された『雪山登山』のほうが懇切丁寧だし、内容を豊富に感じたため、本書は物足りなさを禁じえない。価格はほぼ同じなのに。

「エントリーコース」というくくりの方がキャッチーなのだろうけど、それよりもやはり、同じ山域でくくっての冬山登山ガイドにするなど、シリーズとしての一貫性も欲しかった。
うーん、、、


2012年12月9日日曜日

野村仁 『雪山登山』

昨年までは、雪山登山に関する書籍なんて、ほんとに数冊もないぐらいで、特に雪山登山のコース紹介の本なんて2冊ぐらいしかなかたのではないだろうか。

それが、今年は山と渓谷社が固めて一気に3冊も出版された。
そのうちの1冊が『雪山登山』である。


本書は雪山登山のコース紹介にとどまらず、雪山の歩き方の技術について懇切丁寧に掲載されている。

これまでは雪山登山は山岳部や山岳会などで先輩から手ほどきを受けるものとされていたわけだが、最近は、山ガールブームで登山に目覚めた人たちがさらなるステップアップを目指す傾向があるようで。
それはそれで怖いわけだが、僕も山岳部にいたのは高校のときなので雪山登山の手ほどきは受けていない。(残雪期に吹雪かれたことはあったが・・・。)
これまでコツコツと独学を続けてきたのだが、体系的にまとめられた本書は、再確認のためには非常に役立った。


これを書いている今、新潟は冬の爆弾低気圧に覆われてドカ雪が降っているという報道が・・・。
年末年始、大丈夫かなぁ。。。
寒いの嫌だなー、、、



2012年12月8日土曜日

星野秀樹 『雪山放浪記』

雪山。晴れれば天国、吹雪けば地獄。
これを書きながら見ている明日の天気予報も、日本海側はガッツリと雪が降るとのこと。
寒い寒い。

そんな雪山に登る楽しみを綴ったエッセイとコース紹介を収録した本が『雪山放浪記』だ。


著者の星野秀樹氏は山岳カメラマンであり、本書にも素敵な写真がふんだんに掲載されている。
それだけでも本書を読む価値があるのだが、コース紹介と共に盛り込まれたエッセイがまさに珠玉。
読んでいるうちに、雪山に行きたい気持ちと、行きたくない気持ちとがどんどん膨らんでくる。

雪山に行って、あの凛とした空気と澄んだ景色を心ゆくまで味わいたいという思いと、寒いなぁ、怖いなぁという思いがせめぎ合って、心が乱れる。

年末年始の登山、どうしようかなぁ、、、


2012年12月3日月曜日

燕山荘の冬季営業

そろそろ年末年始の燕岳登山に向けて燕山荘の予約しなきゃなーと思っているところに、燕山荘から冬季営業のお知らせが届いた。

山小屋のCRM活動って、意外としっかりしてるよね。
けっこう学ぶべきところもあるかも。

2012年12月2日日曜日

筋肉疲労にアーモンド?

テレビを見ていたら、トレーニング時の筋肉疲労を軽減するには、トレーニング後30分以内にアーモンドを20粒食べると良いそうな。
アーモンドには抗酸化作用のあるビタミンEが多く含まれるそうで。

で、今日、10km走った後にさっそく食べてみたんだが、、、、




アーモンド20粒ってけっこう大変だぞ。



しかも、多分カロリーが200kacl弱ぐらいあるんじゃないのか?
10km走ったぐらいじゃカロリーの過剰摂取になっちゃうんじゃないのか??


うーむ。。。

今泉吉晴 『わたしの山小屋日記』

『わたしの山小屋日記』というエッセイシリーズが、「春」「夏」「秋」「冬」という4冊が出版されて完結した。

わたしの山小屋日記 「春」

わたしの山小屋日記 「夏」

わたしの山小屋日記 「秋」

わたしの山小屋日記 「冬」

本書でいう「山小屋」とは、登山でお馴染みの営業小屋ではなく、本書の著者個人が住まう、山の中の庵をいったところだ。

山小屋は、奥秩父と岩手の2箇所にある。
本書では、その2箇所の山小屋での動物達の観察記録がエッセイ調で記されている。
動物学者である著者はさすがの観察眼であり、だからこその本書なのだろう。

ムササビやらリスやら鳥やらアカネズミやら、そんな動物たちとのふれあいのある日々。
羨ましくて仕方がない。



2012年12月1日土曜日

購入&インプレッション : inov8(イノヴェイト) 「Race Pac 16」

大きめ容量のトレラン用ザックは、サロモンのスキンプロを使っていたが、どうしてもショルダーハーネスの長さが合わなくて背負いにくさを感じていた。
なんとかならんものかと悩んでいたが、ODBOXでinov8の安売りをしていたので、RacePac16を買ってしまった。


今メインで使っているグレゴリーのルーファスは、本体重量がけっこうあるので、大容量のほうは諦めてRacePac8を買うか悩んだが、なぜか8の背負い心地がしっくりこず、16のほうはすばらしい背負い心地だったので、16を購入した。

背面には大きなメッシュポケットがついているので、何を入れるかは自分次第。たぶん、上着か何かを無造作に入れるんだろうなと。

本体上部には大きめのポケットが1つある。

メインのファスナーは大きく開けられて荷物の出し入れがしやすそう。

背中側がこんな感じ。

ウェストのハーネスには右側だけポケットが付いている。左側は簡易なパッドだけ。

背中の当たる部分は当然の如くメッシュ。
パッドも入っているので背負いやすい。

16リットルの容量で、こんなにいろいろ付いて、なんと480gという軽さ。

これだけ容量があって軽ければ、冬の低山でも着替えや上着を入れて走りに行ける。
夏場なら、ツェルトなどを入れて泊まりがけのトレランだって可能だ。
考えただけでウキウキする。

さらに快適にするために、アドオンのボトルホルダーと小さいポケットも併せて購入。

ボトルポーチは、ボトルも付属しているが、普通の500mlペットボトルの方が出し入れしやすそう。

小さいポケットはケータイとかジェルとかを入れる程度のサイズ。

本体に取り付けるとこんな感じになる。

これらのアドオンは、ショルダーハーネスに付いている専用アタッチメントパーツで上下を接続し、さらにマジックテープで固定するので、走ってもズレたりブレたりしなさそう。

ハイドレーションは別室になっており、専用のジッパーから入れる。

近いうちに使ってみて、感想を追記したいと思う。


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(2012.12.2追記)

3kg程度の荷物を入れて、ボトルポーチも付けて、10kgほど試走してみた。

ボトルポーチに500mlペットボトルを入れて走っても、ブレはそれほど気にならない。
荷物の重心も、ちょうど肩甲骨の間に有るような印象で非常に快適。

身長166cm、体重50kg台の僕にも気持ち良く背負えたので、ザックの背面サイズに悩む人でも快適なのではないだろうか。


加川淳 『3時間を切るためにぼくがしたこと』

登山にかまけてマラソンのトレーニングをすっかりサボっていたために、先週の富士山マラソンでコテンパンにやられたので、少し走ることを意識しなければイカンだろうと。

そんなわけで読んでみたのが『3時間を切るためにぼくがしたこと』。


いや、サブスリーなんか狙ってないし、そんなタイムは夢想だにしていないのですが、読みやすそうだったからつい魔が差して読んでしまったのです。。。

著者は、完全に普通の市民ランナーだが、中学・高校では陸上部だったそうな。
で、ちゃんとマラソンを始めたのは29歳から。
そこから10年でサブスリーを達成し今に至る、という話。

非常に読みやすく、1時間で読める手軽さだが、内容は示唆に富んでいる。
トレーニングの組み立て方や、モチベーションの保ち方など。

モチベーションの保ち方の一つとして紹介されていたのが、SNS活用だ。
ジョグノートという市民ランナーたちのSNSを活用して、他のランナーたちを自然に意識することで、ダレそうになるのを回避しているそうだ。

実は僕もジョグノートを使っているのだが、実際、手軽に自分の練習記録もつけられるし、他のランナーたちによる情報発信も参考になるものが多く、テーマを絞ったSNSの利便性を強く感じるサイトだ。
が、僕の場合あまりにも練習しなさすぎて、恥ずかしくて最近使っていない。。。ううう、、、、



角幡唯介 『アグルーカの行方』

以前、探検家でノンフィクション作家である角幡唯介さんの書作を何冊か紹介してきたが、その角幡さんの最新刊である『アグルーカの行方』は、これまでとは少し趣が変わり、山ではなくて北極圏が舞台だ。


僕は寒いのが苦手なので、アラスカの山だの北極探検だの南極マラソンに行く人達の気が知れないのだが、せっかくの角幡さんの著書なので、出版される早々に読んでみた。

タイトルになっている「アグルーカ」。聞きなれない言葉である。
それは何を意味するのか。
答えは、序章に入る前のページに、端的に記載されている。
(僕はその記述に気付かずに読み進んだため、かなり後になってからその意味を知るまで、いろいろなことを脳ミソの棚に上げっぱなしにしておかなければならなかった。)

19世紀、この「アグルーカ」と呼ばれた男を含むイギリスの探検隊が北極圏で全滅、その理由は現在でも明確になっていない。
その「アグルーカ」の足跡を辿る旅を描いたのが本書だ。
旅といっても、荷物を満載したソリを人力で引っ張っての徒歩での旅だ。
しかも場所は北極圏。読んでるだけで底冷えする。

本書の後半には、その旅の途中の様子を写した写真が掲載されている。
そういう本の作りになっていると、僕の悪い癖で先に写真を見てしまうのだが、いきなり目に飛び込んできたのは男性の口から真っ赤なツララが垂れ下がっている写真だった。
その男性こそ、著者だ。
本文を読み始めて早々にその理由は書かれていたのだが、正直なところドン引きだ。こんな目には絶対に遭いたくない。。。


本書には僕にとって、随所に発見が散りばめられていたが、それらの中で比較的小さなトピックを紹介すると、極地で肉体労働(つまり、ソリを引きながらひたすら歩くとか)をする場合、1日の摂取カロリーが5000kcalでも足りないという事実に驚いた。
5000kcalだってたいへんな量なのに、それ以上の食料を持ち歩くなんて想像もできない。


本書を読んでも極地探検に行きたいとはとても思えなかったが、雪山登山にも通じるところがあり、非常に示唆に富んだ内容であった。
もちろん、読み物としても非常に読ませる作品であり、さすがだなぁと唸る次第だ。


なお、著者本人は、本書が書店で一般書扱いではなく登山コーナーに置かれていることを嘆いていた。(本人のブログより)


ちなみに、『考える人』2012年11月号に掲載されている著者と沢木耕太郎氏との対談で、本書の構成に関する著者の意図なども披露されているので、興味のある方は是非。