このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2016年1月31日日曜日

山行記 : 2015年11月3日 荒地山・六甲山

稀に関西に仕事で出張することがある。
そのほとんどは日帰りなのだが、今回は自腹で延泊して六甲山に行ってみることにした。

宿泊したのは芦屋駅前のホテル。
そこから徒歩で荒地山へ向かい、六甲山を経由して、ケーブルカーで有馬温泉へ下山というルート。
背中に担いだバルトロ75には、出張用のスーツ、革靴、ビジネスバッグ、ノートパソコンなどが入っている。無駄に重い。


朝日に照らされた芦屋川沿いを歩く。

阪急芦屋川駅を過ぎてしばらく歩くと、分岐には丁寧にも道標が備えられている。

もちろんこのあたりは、マンホールのフタも芦屋仕様。

高級住宅地を、道標に導かれながら歩く。

奥に進むごとに、道幅は狭くなる。
塀がやたら長く、敷地の広い豪邸なのだろうことが推測される。

7:21、登山口に到着。
こんな登山口のすぐ脇まで立派な住宅がぎっしり立ち並んでいる景観は、東日本ではお目にかかれない。

最後の住宅の裏は、もうこんな風景。
随分切り替えのくっきりした土地利用だなぁ。。。

こんな裏山なのに、道はちゃんと登山道。

7:25、いきなりの分岐出現。
地図を見てもよく分からないので、よりトレイルっぽい右の道を進む。
すると、すぐにこんな道標が現れた。
このまま進むと弁天岩というところに出るらしい。
地図を改めて確認すると、全くの方角違いだ。来た道を引き返すしかない。
が、こちらに来たのも無駄ではない。
藪の間から、朝焼けの街を見ることができたのだ。
トレイルにいるのに、すぐそこまで街が迫っている。
こんな風景見たことない。

ともあれ、分岐まで引き返し、正しい道を進む。
すると、7:31、街でよく見るアレが現れた。
山の中で見るのはちょっとイヤ。

そのまま鬱蒼としたトレイルを歩き、
本格的な山道になってきたところで、
急に見晴らしの良い場所に出た。

そこから見えたのは、
なんて景色だろうか。
山陽地区は、本当に山のギリギリまで街が迫っているのだなぁ。

ここから10分も歩かないうちに、鷹尾山の山頂に到着。
山頂には電波塔が立っている。
NHKのものらしい。

一応、見晴らしの良い場所にはベンチが据えられている。
ベンチからの眺めはこんな感じ。
さっきの場所と、あまり変わらない。

鷹尾山からは、緩やかに下る道。下っていることもほとんど分からないぐらい。
すぐにまた上る。
あまりメジャーコースではないのだろうか。祝日なのに人と全然会わないし、道が細い。
「山と高原地図」を見たら、「静かなルート」という謎の注釈がつけられていたが、まさにそのとおりだ。

7:56、327ピークと思われるところに到着。
ほんの2、30メートル程度の岩っぽい尾根を歩くと、
東側の眺望が広がる。
大阪市内の方だろうか。土地勘が無さ過ぎてよく分からん。

その後、道はすぐに樹林に戻るのだが、登山道脇をイノシシがほじくり返していた。
ここに限らず、こういう状態になっているのをこの日はよく見かけたので、やはり六甲山系はイノシシが多いのだろう。

8:01、高座滝との分岐に到着。
荒地山に向かって直進する。

道がどんどんワイルドになってくる。
岩っぽい箇所も多くなってきて、ときめく。
ここが芦屋の住宅街から1時間も歩いていない裏山だとは、にわかに信じられない。

もうすぐ森林限界に出ちゃうんじゃないかと思わせるような風景も。
すごいぞ、荒地山! まだこのあたりは標高400mにも満たないぞ!

なんだか、八ヶ岳の編笠岳に観音平からアプローチしているような錯覚に陥る大岩も出現。

8:13、突然現れた鉄塔に、我に返る。そうだ、ここは高山じゃなく裏山だった。
背中の荷物が重くて、縦走気分になってしまっていた。(錯乱)
そもそもその荷物だって、テントやシュラフでなく、スーツやパソコンなのだ。山ではいっこうに役に立たない重いばかりのクソ荷物だ。

気を取り直して、先を急ぐ。
昼過ぎには有馬温泉に下山して、入浴後にそのまま東京に帰らなければならないのだから。

道はいったんなだらかになる。
が、すぐにまた険しくなる。

8:25、再びの鉄塔。向こうには、目指す荒地山だろうか。
鉄塔自体は興覚めなのだが、鉄塔が立っている場所は大概見晴らしが良い。

この先も似たような、なだらかな道と岩っぽい道を繰り返し、

8:42、荒地山の名所のひとつ、岩梯子が現れる。
ほぼ垂直なのだが、鎖は無い。
それもそのはず、見かけよりも余程手がかり足がかりに事欠かない、ツンデレのような岩場なのだ。
ズームすると、その様子がより分かりやすいだろう。
とはいえ、僕がこの日履いていたのはトレランシューズ。(出張の荷物を減らすためには他に選択肢が無かった。)
しかも背中には大荷物。
それなりに苦労しながら登る。

登り終えて見下ろすと、なかなかの難路のように見える。
さすがにこれだけ切り立った場所なので、見晴らしもまずまず。

岩場はこれでは終わらない。
むしろ、ここからは岩場が始まるのだ。

岩をよじ登り、
その先には、新七右衛門嵓。
この穴をくぐって向こう側に出なければならない。
そう、この狭い穴をくぐるのだ。

一方、僕の背中にはパンパンに荷物の詰まった75リットルザック。

通れるのか??

普通に考えれば、ザックをおろして、ザックだけ先に通すか、ザックを後から引っ張り上げるかするのだろうけれど、ここは穴までは急な岩場だし、そもそも狭くてザックを下ろせるような場所が無い。

困った挙句、ウェストハーネスだけ外して、ザックを担いだまま通ることにした。
幸い、穴の向こう側は、這って抜けても危険ではなさそうだ。
ただ、ここでつっかえて進退窮まった場合、他の人に発見されるまでかなりの時間を要しそうだ。なんせ、鷹尾山からこっちは、誰一人見かけないほどの静かな登山道なのだから。

這うようにして、まず上半身を向こう側に出す。
お腹とザックが、それぞれ岩にこすれる。まさにギリギリ。
続いて、腰。ズリズリと音を立てながら、なんとか無事通り抜ける。
まるで、今日の僕に合わせて作られたようなサイズの穴である。

ある意味、奥穂~西穂よりもスリリングであった。
思わず安堵のため息をもらした。

新七右衛門嵓の上は、やはり見晴らし良好。


もちろん岩場はこれで終わりではない。

8:59、ペロッと垂れたトラロープが、雑な感じで良い。

9:02、ある意味怖いハシゴが現れる。
横木に乗るとグラグラした。ヤダヤダ、、、

このハシゴの上は、ちょっと予想外に展望が開けていた。

その先には、石舞台のような場所が現れる。
ここからはロープウェイの山頂駅方面がよく見える。
本日の行程は、六甲山最高峰を経由してあそこまで歩くことにしている。
なかなか遠いな。

その後、岩っぽくない道を歩き、
9:11、荒地山山頂の手前の分岐を通過。

9:13、荒地山山頂に到着。
山頂には、荒地山について解説した案内板が立っており、七右衛門嵓の由来などについても述べられている。
こういう情報って、意外とネットで探しにくく、現地に行って始めて知ることになる場合も多い。
IT時代に取りこぼされたこういう情報をいかに拾うかが、フィールドワークの醍醐味と言えるかもしれない。

荒地山山頂からは、えぐれた登山道を西に下る。

9:22、謎の分岐が現れる。

道標によれば、僕が来た道は荒地山へ、右の道は魚屋道に続いているということなのだが、魚屋道ってなんだ?? 左に行くとどこに出るんだ??
手元の地図ではよく分からない。そもそも地図には載っていない。

とりあえず左の道を行ってみることにする。
すると、すぐに行き止まり。
ロープウェイ山頂駅方面と、その手前に芦屋カンツリークラブが見える。

分岐まで引き返し、「魚屋道」という方面に向かう。魚屋道とはなんなのだろう・・・。
とりあえず、道は快適な樹林帯ではある。

道自体はよく踏まれているのだが、「分岐か?」と思うような箇所もたびたびあり、ドキドキしながら進む。
地形もなだらかなので、地図読みがしにくい。

9:37、分岐の道標が現れてホッとする。
南へ行けば風吹山。北へ行けば芦屋カンツリークラブを経て雨ヶ峠。
時間に余裕があれば風吹岩も見たかったのだが、背中のザックが意外に重く、スピードが上がらない。風吹岩は諦めて、雨ヶ峠に向かって先を急ぐ。

なだらかな道を歩く。
分岐以降、ちらほらと他の登山者を見かけるようになった。
風吹岩や七兵衛山方面から来たのだろうか。

道端に、注意を促す案内板が現れる。
このあたりは湿原だったのか。知らんかった。あんまり湿原っぽい風景でもないんだがなー。

湿原っぽくない道を下り、
9:47、ついに水の流れる場所に至る。これが湿原か!?
単なる渓流のようだ。
この「汚染がひどく飲料には適しません」の看板の存在は、雑誌かネットで見たことがあったので、「これか!」とちょっとした観光気分になった。

9:48、分岐と、芦屋カンツリークラブに入る獣除けゲートが現れる。
この獣除けの柵は二重になっている。(見づらいかもしれないが、手前の柵の奥にももう一つ柵がある。)
随分念の入った対策だ。
六甲山周辺はイノシシが多いというから、ゴルフ場ではいくら対策しても対策しすぎるということはないのかもしれない。

ゲートを抜け、カート道を渡り、
ゴルフ客の声を遠くに聞きながら芦屋カンツリークラブを縦断する。

9:56、芦屋カンツリークラブから出る。
ゲートを抜けると階段状のトレイルになっているのだが、
この右手の茂みの中にイノシシ発見!
茂みの中に居るので全身を写真に収めることはできなかったが、若い固体のようであまり大きくなかった。(だからこそ落ち着いて写真を撮ることができたのだが。)

実は僕は、生きたイノシシを直接目にするのは、これが始めてだった。(イノシシの肉は好物だが。)
僕の実家は非常に田舎にあるので、周辺にはタヌキもイノシシもたくさん生息しているはずなのだが、一度もその姿を見かけることはなかったのだ。
そんな事情も含め、六甲名物の野生のイノシシを目にすることができ、ここまで来た甲斐があったといえよう。

その後、雨ヶ峠に向かって針葉樹林帯をダラダラ上る。

10:08、雨ヶ峠に到着。
ここでベンチに座ってしばし進路の検討をする。
というのも、元々の計画ではここから東おたふく山、蛇谷北山を経由して石の宝殿に上がろうと思っていたのだ。が、荷物の重さに手こずって、思ったよりも時間を食ってしまっている。これでは、ロープウェイの山頂駅に昼頃到着という予定が完全にくるってしまう。

止むを得ないので、東おたふく山経由のルートを諦め、七曲りから一軒茶屋に上がるルートを進むことにした。
こっちのほうがコースタイムで30分程度短いようだし。

そうなると、雨ヶ峠からは沢にいったん降りることになるの、道はいったん下りに転じる。
しばらくすると、雑木越に沢の流れが見えてくる。

10:21、飛び石伝いに沢を渡る。

その先は上りに転じる。

10:24、もう一つ小さな沢を渡ったところで分岐登場。
右へ行くとそのまま七曲りへ。左は七曲りの前に本庄橋跡というところを経由する模様。
どっちも距離的には変わらないようなので、本庄橋跡というのを経由してみることにした。

沢と着かず離れずな登山道をたどること4分、いきなり現れた案内板。
なんだこのダム。これが本庄橋の跡なのか??

見てもよく分からん。
ヤマレコに情報があった。)

ここから石段が続き、
案内板の場所から見えた砂防ダムの上に出る。
ダムの上の沢にそってつけられた登山道には、大量の土嚢が積まれていた。
出水のすごい沢なのだろうか。厳重さに驚く。

この先で、沢を渡る。といっても、涸れ沢だ。
が、その道標がよくわからない。
道は明らかに写真の奥、対岸に向かって伸びているのに、道標が指しているのは左。
「?」のまま、道標を無視して対岸に向かってオズオズと歩き出してから、やっと道標の意味が分かった。
もともとの道は、この道標が正しかったのだ。
それが、おそらく最近、本来のルートに掛けられた橋が崩落して、現在の道がつけられたのだろう。
その崩落した橋が下の写真だ。
なんともはや・・・。

対岸に渡ると、またもや石段。

道端には見たことのない花が。

10:47、いきなり現れる「七曲り坂・四合目」の道標。
三合目まではどこへいってしまったんだ??
もしかしたら、本庄橋を経由しないルートにあったのかもしれないが。

10:51、五合目通過。
随分こまかく刻んでくるじゃないか。

10:58、七合目通過。
どうやら六合目を見落としたらしい。

11:03、八合目通過。

11:07、「危険」な橋を通過。

そのまま九合目の道標を見ることなく、一軒茶屋の土台石垣が見えてきた。

11:14、一軒茶屋に到着。

この一軒茶屋は、屋内で休憩するのは何か飲食物を注文しなければならないシステムのようだ。
そのためか、屋外にはたくさんの人がいるのに、屋内にはほんの少ししか人がいない。
僕としては、ちょっと温かいものを食べたかったこともあり、中で休むことにした。

きつねうどんを注文する。(値段は忘れた。)
味は、スタンダードな関西風。澄んだつゆは東京ではあまりお目にかかれないので、非常にありがたい。
つゆを飲み干し、少し体が温まったところで茶屋を出て、六甲最高峰を目指す。

六甲の最高峰へは、一軒茶屋からドライブウェイを渡ったところからアプローチする。
といっても、その入り口は大きな駐車場となっており、多くの人で賑わっていた。ほとんどの人がここまで車でアプローチしていることが見て取れる。

駐車場からの道も完全舗装。
100人規模の小学生団体に前後を挟まれつつ、舗装された道を上る。
これまでの道とのギャップにくらくらする。

山頂の電波塔の横を通り抜け、
広場に出てみると、人だらけ。
さすが、「東の高尾山、西の六甲山」と並び称される場所である。
レジャーシートを広げてランチをしている風景は、まるで高尾山の山頂のようだ。

げんなりして、早々に広場を離れた。
山頂は周辺をススキに囲まれているのだが、
そのススキの中を、一本の細い道が通っていることに気付き、たどってみた。
すると、そこには開けた場所があり、登山者が3、4人ほど休憩していた。
ああ、ここが登山者の安息の地なのだなと納得する。

見晴らしも、むしろ山頂の広場より良く、淡路島(多分)までよく見えた。

11:37、山頂から、来た道を下る。

が、ドライブウェイまで下らず、途中で右折。六甲の縦走路に入る。
縦走路というよりも遊歩道といった感じの道が続く。
東京でいうと、多摩丘陵にある大きめの公園の道に似ている印象。

縦走路は度々ドライブウェイと交差する。


そして、やたら石段が多い。
正直、ドライブウェイを歩いたほうがアップダウンが無い分楽なのではないかと思うのだが、カーブが多くて見通しの悪い道を車がバンバン飛ばして走っているので、怖くて歩きたくない。

12:13、極楽茶屋跡を通過。
この極楽茶屋跡の道路を挟んで向かい側には、駐車スペースと展望台がある。
展望台からの眺めは、やはり良い。

この展望台でオジサン同士が「震災」について話をしていた。
僕のような東日本の人間からすると、単に「震災」といった場合東日本大震災を指すことが多いのだが、このオジサン同士は阪神淡路大震災のことを「震災」と呼んでいた。
やはり、災害の原風景は地域に根差すものなのだと再確認した。

その後10分少々歩き、やっと六甲ガーデンテラスに到着。

展望台に回り込むと、観光客でごったがえ。
大きなザックを背負ってウロウロするのは気が引けるのだが、デポするような場所も見つからず。

展望台からの眺めはさすが。


売店で豚汁を買い、この展望台のベンチに陣取って、持参した残りのおにぎりを食べる。
こうして僕の初めての六甲登山が終わった。

ロープウェイで有馬温泉に下山し、
金の湯につかって疲れを癒す。


下山後フェイスブックで六甲山に行った旨の投稿をしたところ、大阪・兵庫方面の知人数名から「事前に言ってくれれば案内したのに!」という、ありがたいお叱りをいただいた。

そう、もう少し余裕のある日程であれば是非声掛けしたかったのだが、なにせこんな弾丸系バタバタ登山だったので、申し訳なさ過ぎて声掛けをためらってしまったのだ。
この場を借りてお詫びと感謝を申し上げたい。


(了)