このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2012年10月29日月曜日

山行記 : 2012年10月8日~ 奥秩父・奥多摩縦走 【2日目】 大弛小屋~国師ヶ岳~甲武信ヶ岳~甲武信小屋

(この記事は「【1日目】 瑞牆山荘~金峰山~大弛小屋」からの続きです。)


山の朝は寒い。

4時起床6時出発の予定だったが、寒くてシュラフから出られない。
テント内の気温は4度。寒い。外の気温を計る気にもならない。

ちなみに、この日の都心の最低気温は16.6度。これはもう標高の分の差以上だ。寒い。


それに、この時期の大弛峠は車で乗り付けられるため夜中でも人の往来があり、0時を回ってからも「星がキレ~!」などという男女の声が聞こえてきたり、落ち着いて寝てられなかった。
おかげで、頭がボーっとしている。

5時過ぎにやっとモゾモゾと起き出し、朝飯を食べる。
その後下半身をシュラフに入れたままで、パッキングを開始するも、進捗が悪すぎるので思い切ってシュラフから出てみた。
下半身がとても寒い。やっぱり夏用のショートパンツにユニクロのヒートテックだけでは、寒さが堪える。せめてテント内用に何か持ってくればよかった。これがあと4回繰り返されるのか、、、(5泊だから)

結局、出発は7時過ぎになってしまった。

無人の大弛小屋の前を通り、国師ヶ岳に向かう。


国師ヶ岳への登り口は、階段や木道が敷設されている。


夢の庭園に続く道でもあるので、大弛峠からの観光客が安全に歩けるようにという配慮なのだろう。

歩き始めて10分、分岐が現れる。


右に行くと夢の庭園経由での国師ヶ岳。左に行くと庭園を経由せずに国師ヶ岳へ至る。
大して所要時間は変わらないので、夢の庭園経由にする。

夢の庭園経由の道は非常に眺望が良い。
GWに来た時にはガスっていて全然眺望が得られなかったが、今回は金峰山や、その向こうの南アルプスまで見通せた。

というわけで、金峰山。五丈岩まではっきり分かる。

南アルプス。

川上牧丘林道も見える。

GWには、大弛峠からこの林道をトボトボ下って無念の敗退をした。今こうして見ると、非常に感慨深い。

夢の庭園の最上部あたりからは、南アルプスがよりはっきり見えた。

北奥千丈岳や奥千丈岳の方面は、前衛の山々にかかる雲海が素晴らしかった。

昨日ガスが濃くて眺めが悪かった分、今日は朝から非常に良い景色を見させてもらった。
気持ちの良い登山だ。

と思っていたら、7:45頃から急に濃いガスが出始め、

あっという間にあたりを覆い隠してしまった。


昨日といい、今日といい、いったい何なんだ・・・。

そんなわけで、前国師ヶ岳に到着した7:55には、奥千丈岳すら見えなくなっていた。


非常に不愉快だ。どうもこの山域とは相性が悪いらしい。

7:59、北奥千丈岳への分岐に到着。

眺望も無いのに脇道に逸れるのもシャクだし、出発が予定よりも1時間以上遅れているので、北奥千丈岳はパスすることにする。

8:06、国師ヶ岳に到着。

国師ヶ岳からは、なんとピンポイントで富士山だけが見えた。

他の場所は全部ガスっていて何も見えないのに、富士山の方角だけガスが晴れているなんて、そんな奇跡!

富士山を拝んだら先を急ぐ。

国師ヶ岳の山頂から先は、急に道が荒れ始める。

南東北の不人気コースと同じぐらいの歩きにくさだ。
あまり歩く人がいないのだろう。そりゃ、ここから先、甲武信ヶ岳までは目星いスポットも無いのだから。

道標も急にショボくなる。

だが、道標があるだけマシ、ということに後から気付かされることになる。

天狗尾根との分岐までは、緩やかな道が続くが、そこから先は北に向かってひたすら下る。
下る下る。
これがけっこうキツイ。


たまに、踊り場のようなフラットな場所に出るが、あとは延々と下る。


曇天模様の上に樹林帯で全く眺望は無く、ただただ何の変化も無い下り坂を歩くのは、苦痛以外の何ものでもない。

しかも、倒木がやたらと多い。
奥秩父のルートの多くは倒木が登山道を塞いでいるというのが一種の名物のように思うのだが、それにしても国師ヶ岳から甲武信ヶ岳のこのルートは多すぎる。
山と高原地図にもわざわざ「倒木多い」と2箇所も書かれているような場所だ。
跨ぐには高く、くぐるには低い倒木は本当に厄介で、それ自体がアスレチックなのだが、そんなのが何箇所も登場する。

もちろん、古い倒木はちゃんと処理されている。

おそらく山小屋の人や林業関連の人が整備してくれているのだろう。頭が下がる。
きっと、それでも整備が追いついていないのだろう。そういうボランティアって、どっかで募集してないのかな。あれば僕もやるんだけど。

国師ヶ岳から国師ノタルまでの南北に伸びるこのルートは、北側斜面ということもあって、10月だというのに湿っぽく、登山道は湿っていて、その両側の森は苔むしていた。まるで北八ヶ岳のようだ。


倒木に生えているコケは、やたらに生い茂って分厚い。


国師ノコルまではひたすら下り基調だが、何度か小ピークを越えるため、登りも現れる。
「このピークはどのピークだ?」と、その度に地形図と照合して、それでも分からなければ、今回から投入したiPhoneアプリ「FieldAccess」をチェックする。
このアプリは非常に優れもので、バッテリーの不安さえクリアできればGPS端末なんて持たなくても良いのではないかと思わせるデキだ。しかも無料。

ただ、アプリで現在地を確認するたび、「まだこのピークなのか。。。」とガッカリする。
一生懸命歩いている割に、今日は非常にタイムが悪い。コースタイムをオーバーするにも程がある、という感じである。

その理由は、いくつか考えられる。

1つ目は、トレッキングポールを使っていること。
他の人には当てはまらないかもしれないが、僕はどうもトレッキングポールを使うのが苦手だ。
スキーを滑る時もストックが邪魔にしか感じず、ストックを使わないスノーボードの方が快適に感じる。(だからスキーは初心者のままだ。)
トレッキングポールを使うと確かに下りでの足の負担が軽減されるように感じるし、だからこそこの日は珍しくダブルストックで歩いていたのだが、どうもブレーキになっていく気がして仕方がない。両手も塞がるし。

2つ目は、倒木。
先にも述べた通り、倒木が非常に多い、
これを乗り越えるのも、1度や2度なら大勢に影響は無いが、10回、20回とやっていると、なかなか時間を取られるものだし、そもそも気持ちが萎えてくる。

3つ目はルートファインディング。
途中で何箇所も、踏み跡が不明瞭な場所があり、その度に足を止めてルートを探さなくてはならなかった。
道標は天狗尾根への分岐以降、東梓の手前の2224ピークまで一切無く、登山道を示すのは赤いビニールテープによる目印だけだ。
地形が地味なので地図読みにも苦労するし、うっかりルートを逸れてしまうこともあった。

そんなわけで、国師ノタルに着く頃には、予定を変更して甲武信小屋テント場泊りを決意せざるを得なくなった。これは同時に、最終日の鋸山や大岳山を断念し、ゴールを奥多摩駅に設定せざるを得なくなったことを意味する。
非常に無念である。こんな地味な場所にしてやられるとは。

そうこうするうちに、いつの間にか国師ノタルを過ぎてしまう。
ふと気付いて、「ああ、あれが国師ノタルだったかー。」と思い当たるところはあったが、何の標識も無く、デジャブのようなアップダウンにいい加減飽きていたのだ。
たぶんこれが国師ノタルだ↓。

まさに殺風景。

国師ノタルから2224ピークにかけての登りは、下りに飽き飽きしていた僕には気分が良かった。
その気分を反映してか、わずかながら青空も見えた。

10:18、2224ピークに到着。

ここまでは北上していた登山道は、ここから東に向かう。

東梓まで、のんびり歩けて気持ちの良い比較的なだらかな尾根道が続く。

この尾根に、巨大なコブを持つ1本の木が立っている。



この木は、以前『PEAKS』か何かでこの奥秩父縦走路を取り上げていたときに載っていたのを見たことがあった。
そうか、この木はここにあったのか。

10:45、東梓に到着。


標識が小さっ!

眺望は、

うーん。。。。イマイチ。

次のランドマークは、両門ノ頭。
山と高原地図によると、
「展望よし」
「大岩壁あり」
だそうだ。

11:49、両門ノ頭に到着。

展望は、

ガスで何も見えず。

大岩壁は、

崖なのは分かるものの、岩というよりも草付きといった感じ。木も生えてるし。

なんだかもう、全然納得感が無い。

ここから先、富士見まで、わざわざ山と高原地図に「平凡な尾根道」と書かれているほど、平凡な尾根道を歩く。

相変わらず、倒木も多い。

12:34、富士見に到着。山と高原地図で「直角に曲がる」と書いてあるが、本当に直角に曲がる。

ロープが張られていなかったらそのまま北東方向に尾根を下ってしまいそうだ。とはいえ、下りきっても千曲川源流遊歩道に出るだけだ。もしそこまで下っていたら、間違いなくそのまま長野県側に下って、二度と奥秩父縦走なんかやらないことに心を決めていたに違いない。

ちなみに「富士見」というぐらいだから富士山方面に眺望が開けているのかと思ったら、ただの樹林帯だった。

ここから水師までのルートは、登山道は明瞭なものの道幅は細く、それがためにところどころで登山道にまで樹木の枝葉が伸びてきていた。


13:19、水師に到着。

特段なんということもない広場。標識が風化して、ペンキで書かれた「ミズシ」の文字が判読できず苦労した。

水師から10分ほど歩いたところで、南側の斜面に崩落箇所のようなところがあった。


おかげで展望が開け、木賊山が見えた。

真ん中の木賊山の左に見えるのが甲武信ヶ岳だと思うのだが、あんまりよく見えなくて分からない。
ちなみに、木賊山は「とくさやま」と読むらしい。別名「雲切山」だそうだ。なんか、かっこいい別名。
本来なら今日中に木賊山は越える予定だったのだが、前述したとおり、もう時刻的に無理。無念だ。

13:41、千曲川源流遊歩道への分岐に到着。

ここから甲武信ヶ岳はもうすぐ。
登山道はきれいに整備されている。


登山道は次第に岩場になる。


山頂近くになると、展望が開ける。ガスはまだ晴れていないが、限られた範囲は見ることができた。

三宝山。

南の方の山々。黒金山とかトサカとかゴトメキとか、そっちのほうだと思われ。

この岩陰に山頂があるはず↓。

14:14、甲武信ヶ岳山頂に到着。

山頂にはオッサンが3人いた。

このオッサン3人は、この日僕が国師ヶ岳以降で出会った初めての人間だ。
平日とは言え、なんと歩く人の少ないルートであることか。


そんなオッサンのうちの1人が、山頂に向かう僕に向かって、「なんだ、彼氏か」と言う。
何のことかと思ったら、どうも遠目に僕が女性に見えたらしい。
男性に対する一般名称として「彼氏」と言ってしまうあたり、おそらく年齢はアッパー60というところだろう。

それにしても、20代の頃にはよく女性に間違えられることがあったが、随分久しぶりに間違われたものだ。
つか、間違える要素はこの時何一つ無かったと思うのだが。。。

オッサンとひとしきり話をしたところで、甲武信小屋へ向かう。
もうこの時刻では、本日の目的地としていた雁坂小屋には日没までにたどり着くのは難しい。
今日は甲武信小屋テント場泊だ。

甲武信小屋方面への降り口からは、木賊山が見える。

尾根の北側にかかっていたガスは、見ているうちに少しずつ後退して、やっと少しずつ展望が得られるようになってきた。
いい感じに紅葉が始まっている。

甲武信小屋へ向かう登山道は、さすが非常に整備されている。

14:28、甲武信小屋に到着。


テント場の受付をおこない、カップヌードルを買って食べる。
ビールも買おうかと思ったら、缶を持ち帰るように書いてあったので、やめた。とほほ・・・。

甲武信小屋のテント場はこんな感じ。

先客が1組(テントのサイズから考えると、たぶん1人)だけ。その後もテント泊は増えず。

幕営準備をしていると、空がすっかり晴れてきた。

一日中この天気なら良かったのに・・・。

テントは今回もモンベルのステラリッジ1型(現行の1つ前のモデル)。

現行モデルは短い方の辺に出入口を配して軽量化を図っているけれども、僕としてはこの旧ステラリッジのように長い辺のほうに出入り口があるほうが好きだ。

すっかり晴れ上がった夕方の空を眺めながら、明日の晴天を祈りつつメシを食べる。
が、そのあとにラジオで天気予報を確認したところ、明日はにわか雨の可能性があり、明後日に至ってはかなり天気が崩れるとのこと。

晴れ男である僕の弱点は、雨の中でのテントの撤収をこれまでの登山人生の中で一度もやったことが無いことだ。
どうやればいいのか、正直見当もつかない。
明日の朝は心配ないにしても、明日の夜の幕営は避けたいなぁ。小屋泊りにしようかなぁ。

などと考えながらテントの中で読書をしていると、日暮れと共に突風が吹き出した。
木々が轟轟と音を立てている。
モロに風を受けてしまう向きにテントを立ててしまったため、正直怖い。

そんななか、夜の8時頃にトイレに行くのに小屋の前を通ったら、小屋泊の人達は談話室のようなところで大画面テレビをみんなで見ていた。画面に写っていたのは雪山の風景だった。
暖かそうな室内を、窓ガラス一枚隔てて見るともなしに覗き見る気分は、マッチ売りの少女のような疎外感だった。
羨ましくなんかねーぞ!ふん!


テントに戻り、持参した村上春樹著『1Q84』の「BOOK1 前編」を読了。
そのまま就寝。


(「【3日目】 甲武信小屋~破風山~雁坂峠~雁峠~笠取小屋」編へつづく)