このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2011年7月31日日曜日

村口徳行 『エベレスト登頂請負い業』

エベレスト。
僕のような一般人には程遠い場所である。

最近はヒマラヤトレッキングのツアーも多々あるようだが、僕のような貧乏暇無しには夢のまた夢。
ましてや、8,800m以上のエベレスト山頂など、一生かかってもこの足で到達できる気がしない。

『エベレスト登頂請負い業』の著者である村口氏は、そんなエベレスト山頂に、撮影機材を背負って何度も到達している剛の者だ。
まさに仕事人。こういう仕事も世の中にあるのだなぁと、ただただ感心するばかりである。

さらに感心するのは、そのスケジュール管理である。

いかに仕事人といえど、8000m峰に登るのには事前の入念な体づくりが必要なようで、高所順応や体力づくりの細かいスケジュールをきっちりと考え、そしてそれを的確に実行しているようだ。
たぶんエベレストにアタックする人はこういったことをやるものなんだろうけど、それにしても村口氏の場合は、職人のような緻密さを感じさせる。だからこそ「エベレスト登頂請負い業」と胸を張って(ほんのタイトルにするぐらいだし)名乗れるのだろう。

2011年7月30日土曜日

購入 : ベアーベル

先日の常念山脈縦走では、熊鈴を持っていかなかった。
どうせ登山者が山ほど居て、熊が出るスキなんか無いだろうとタカをくくっていたのだ。

ところが、常念岳から蝶ヶ岳の間や、蝶ヶ岳から三股に下りるルートで、いかにも熊の出そうな場所で周りに人が居ないという状態が頻繁に発生したため、手を叩きながら歩かなくてはならないような状況が発生した。

『熊のことは、熊に訊け』では、「ほーい、ほーい」と声をあげならがポーンポーンと手を打つのが効果的だと書いてあったのだが、なかなか「ほー、ほーい」が恥ずかしくて言えない。
やっはり熊鈴が必要だなと痛感した次第である。

といっても、手持ちの熊鈴は、ストラップがただの平たいヒモで、あまりザックなどに着けやすいタイプではなく、音も鳴りっぱなしだ。



















こうなると、どうにも億劫で、ついつい着けなくなってしまう。
だから常念山脈にも持っていかなかったのだ。

ところが、そんな自分にピッタリの熊鈴があった。
COGHLANSのベアーベルだ。



















例によってA&Fのブログを見て食いついたわけだが、まさに自分の求めていたものにピッタリ。

なにせ、

・音が澄んだ高音。
・ザックへの着脱が容易。
・ザックに着けて歩いているときに、自分にぶつかったりしない。
・不要なときは音が鳴らない。

といった条件をクリアしている。
しかも、音を鳴らさないようにする方法が、単に音が反響しないようにするのではなく、そもそも鈴の中の球を磁石で動かないようにする、というコペルニクス的発想の転換で実現している。マジでカッコイイ。

オスプレーのホーネットに着けてみた。



















この熊鈴の弱点は、鈴本体を横倒しにすると、鈴の中の球の自重で磁石から離れやすく、結果音が鳴ってしまうことだ。
まー、横にして動かすようなシチュエーションはあまり無いだろうけど。

早速、9月の蔵王2泊3日に持っていく。


T-wall 大岡山店

本日は、会社の人と昼間からボルダリング。
こんな時はだいたい、自宅から近いT-wall 大岡山店に行く。

まずは大岡山の駅。















住み心地の良さそうな住宅街である。
大岡山はパン屋さんがたくさんあり、焼きたてパンには事欠かない。
なかにはメロンパン専門店もある。




















ちょうどT-wallに行く途中にあるので、いつも煩悩を呼び覚まされるのだ。
ここは、メロンパンだけでも8種類ある上に、チョコレートを仕込んだクロワッサンやフランクフルトを仕込んだパイなど、バリエーションを豊富なので、ついついカロリーオーバーしてしまう。

その誘惑を振り切ってしばらく行くと、T-wall 大岡山店の看板が見えてくる。



















本当に、民家と商店街が相半ばするような静かな場所に、突然現れるのだ。

外観はまるでT-wallらしからぬ、オシャレなカフェのようなツラ構え。



















中は非常に混んでいて、初心者から上級者までの熱気でムンムン。
やはり暑いときは、炎天下で外壁登るよりも、クーラーの効いた内壁のほうがみんな快適なんだろうね。















↑2階から壁を激写。

T-wall 大岡山店は、たしか去年できたばかり。
なので、内装もキレイで、飲食も自由。
ただし、飲み物はフタがちゃんと締まるもの(ペットボトルとか)に限定されている。

トップロープのコーナーは無くボルダリング専門のジムだが、天井が高く、壁の高さも3m以上あるのではないか。なので、十分に登り甲斐がある。

課題は、力づくなものではなく、ちゃんと頭とテクニックを使えばキャシャな女性でもスイスイ登れるような設定の課題も多い。
だからこそ、自分がトライしてもなかなかうまくいかない課題を、目の前でキャシャなキレイめのオネーサンがスイスイ登っていくのを目にするという屈辱を味わうことができる。

僕はボルダリングを始めてからもう4、5年経つのだが、あまり練習熱心でないため全然上達せず、未だに6~7級レベルをウロウロしている。
それは、使っているシューズにも表れている。

僕が使っているシューズは、まさにボルダリングを始めたばかりの頃に買った、MAMMUTの初心者向けモデルだ。



















こんなんを未だに使ってるのは僕ぐらいなもんだろう。
実際、渋谷のPEKIPEKIのスタッフには、「珍しいの使ってるね!」と驚かれる始末である。
買い換えたいのはヤマヤマだが、なんせこっちに回す金が無い。。。


とりあえず本日は2時間ほど登って終了。
例によって、前腕がパンパンになった。握力も小学生以下な状態。
頻繁に来ないと上達しないのは分かっているのだが、平日は仕事が12時間/日、ランニングを100km/月、年間に登山を10回以上、という生活をしていると、なかなかボルダリングの練習時間を確保できず・・・。

うーむ。。。


本日の反省会は、大岡山の王将で。
日が高いうちから飲むビールは、ことのほか美味かった。ふぅー。


2011年7月27日水曜日

購入 : tasco 「Essentials 568BCRD」(単眼鏡)

山に行くと、遠くの稜線の様子などを詳しく見て、地図と照らし合わせたい欲求に駆られるのだが、目の悪い僕にそんな遠くが見えるわけもない。

ということで、購入してしまったのがtascoの単眼鏡。



















まー、安物なので倍率は全然なのだが、無いよりはマシという感じか。



















7/16~18の常念山脈縦走にも持っていったが、結局使いどころが分からないままだった。
奥多摩や奥秩父などではルートの確認で使いたいケースがあるのだが、今回のルートでは全く不要だった。

うーむ、今後も有効な使い方を考えていきたい。


山行記 : 【総括】 2011年7月16日~18日 常念山脈縦走

行程の記録は以下。



今回の常念山脈縦走においては、もともと予定していたコースは中房温泉から登って上高地に降りるという、かなりの長さのコースを予定していた。
『山と渓谷』などでは3泊4日として紹介されているコースである。
それを、1日短い日程でやっつけようと思ったわけだが、結果的に蝶ヶ岳から先は、上高地ではなく三股に降りるというルート変更を行なった。
これは、天候の悪化や、公共の交通機関に乗る前に入浴したかったことなどが大きく影響してのルート変更であったが、「燕~常念~蝶」という、最も重要な部分は歩ききることが出来たので十分に満足のいく結果だ。

本編で書いた内容の他に、1日目の燕山荘のテント場では、ブロッケン現象を見ることも出来たし、山ならではの見知らぬ人とのコミュニケーションも楽しむことができたので、今回の山行は十分にフルコースを堪能したと言える内容であったと思う。

後半、かなり足がバテてしまったのが最大の反省であるが、それも、荷物の量を考えればやむを得ないことであったし、今後、荷物の再検討をすることでかなり回避できる可能性が高いと思った。

今回の最大の成果は20kgの荷物を背負って1日10時間歩けた、ということだ。
これなら、日本の夏山ならだいたいどこにでも行けるだろう。

来年の夏は野口五郎岳あたりの連山を攻めたい。


2011年7月25日月曜日

山行記 : 【3日目】 2011年7月16日~18日 常念山脈縦走 常念岳~蝶ヶ岳~下山編

7月18日。

ついに今日が最終日だ。
そして、この山行のなかで本日3日目が一番キツイ行程となっている。
朝3時過ぎ。
テントの入り口を開けるとフライシートがビチョビチョだった。夜露にしては随分激しく濡れているし、夜中に降ったんだろうか? それにしては雨音は聞こえなかったが。。。
朝飯を食い、テントをたたみ、パッキングを終えたのが4:30。
どうもやはりパッキングでいつもモタモタしてしまう。
4:40、いよいよ出発。
第一の障壁である常念岳を見ると、朝日に赤く染まっていた。
















実は今回の行程のなかで、一番気が重いのがこの常念岳越えだった。
常念乗越から山頂まで標高差にして400m。数字の上では大したことはないのだが、実際に登ってみると地味にキツイ。下りの時には景色も良いし解放感もあるのだが、登りのときはひたすらガレた山肌を見続けるだけなので、非常に気が滅入る。しかもこの日は、朝から西風が非常に強かった。
このため、僕の巨大なザックは風に煽られて非常に体勢が不安定になる。それを支えるとなると、さらに余計に体力を奪われるのである。さらには、昨日とはうって変わっての曇天模様で、体感温度がより低く感じた。実際、雨具のジャケットをウィンドブレーカー代わりに着て寒さをしのいでいたぐらいだった。

こっちが巨大なザックにモロに風を受けて踏ん張りながら登っているのに、空身同然の中高年登山者たちがホイホイと僕を抜かしていく。それも精神的にこたえた。結局、1時間半かかってやっと頂上へ。
でも、今回の目的地はここじゃない。それに、風が強くてとても寒い。去年撮影できなかった山頂の標識だけ撮影して、さっさと通り抜けることにした。





















山頂の南側に伸びるのは、この山行を1年前に決意させた素敵な稜線。




















ついにこれを自分の足で歩くのである。
常念岳の南側のガレた急斜面をゆっくりと降りる。
すでに予定時刻から遅れつつあるので気持ちが急くが、こんな岩ばかりの急斜面で焦っても仕方が無い。




















いつもならトレイルランニングのシューズで無雪期縦走をしているのだが、今回はまさにこの岩場を想定して、しっかりとした登山靴を履いてきた。
実際にそのガレ場を歩いてみて、奮発した甲斐があったとつくづく思った。
こんな重い荷物を担いでこのガレ場をトレイルランニングのシューズで歩くのは、足にかなりの負担になるに違いない。徐々に憧れの稜線に近づくにつれて、岩ばかりの状態から、次第にザレた斜面に岩がゴロゴロしている、といった感じになってきた。

ザレたところは足場が悪く、流されそうになる。そこで、なるべく足場のしっかりしたところを歩こうと思って岩に足をかけたところ、それがなんと浮き石!その浮き石もろとも10mほどザレ場を流されてしまった。スネもぶつけた。痛い。
大げさに言うなら滑落である。

這い上がるにも、キメの粗い砂のような斜面に足を取られて一苦労。
ザレ場は油断してはいけないと実感したのである。そのまま蝶ヶ岳方面に尾根道を歩き続けるのだが、見て憧れていた感じと、実際に歩いたときのシンドさのギャップに辟易し始める。こんなにキツいとは想定外だ。そこに折からの強風も加わって、早々にイヤになってしまった。



















岩稜の尾根を超えると、今度は樹林帯の道が迎えてくれた。
木々が風を防いでくれるので、とても歩きやすい。



















この狭い道を進むと、急に視界が広がり、コバイケイソウの花畑が現れた。



































このコバイケイソウの花畑越しに見る常念岳は、さっきまでの意地悪な顔つきではなく、悠然と構える穏やかな老爺を思わせるようなのどかさだった。
















次のピークで、蝶ヶ岳への標識が落ちていた。



















落ちてもなお道を指し示す標識にいくばくかの健気さを感じないわけでもないが、なんともダメな感じのほうが強いように思われる。

このあとの下りは細い道がつづら折りになっている。
ここで、下りは得意だからと油断したところ、本日2回目の滑落をしてしまった。つづら折りの折り返しで踏ん張りがきかず、そのまま滑って落ちてしまったのだ。
幸運にも大事には至らなかったが、木の根や草を掴んで這い上がるという情けない状態になってしまった。

気を取り直して歩いていると、ニッコウキスゲが群生している場所に出た。
































これは素晴らしい!
こういう楽しみというのは、疲れた心身にひとときの安らぎを与えてくれるものだ。

あとはこのまま下ったあとに、蝶槍に登り返せば、本日のめぼしい上り坂は終了だ。
下から蝶槍を仰ぎ見る。




















もうヘトヘトだが、これさえ終えればあとは概ね下りばかりだ。
と、自分を奮い立たせて登りきると、そこは大パノラマだった。



強風に煽られながらの撮影のため、手ブレご容赦。

寒いのであまり長居もできず、早々に蝶槍を出発。蝶ヶ岳ヒュッテを目指す。

途中、横尾への分岐が現れる。



















上高地に降りるだけなら、どう考えても蝶ヶ岳経由ではなく横尾経由のほうが楽だ。
強風に煽られて体力もかなりキツくなってきている。
しかも、この日は午後から天気が崩れるという予報だったので、少しでも早く下山したいという思いが強かった。
だが、蝶ヶ岳に行くことなくエスケープしたとあっては、この山行自体が完成しない。なんといっても、「燕~常念~蝶」というのが今回のテーマなのだ。
何としても蝶ヶ岳には行く。

こうして横尾の誘惑を振り払った。

そして見えてきた、蝶ヶ岳の稜線。
蝶ヶ岳は二重稜線で有名なのだが、たしかに尾根が2つあるような。。。
それがこれなのか?
















もはや風に煽られて、もう全部イヤになっているところに、いよいよ雨がポツポツ来はじめた。
地図で「瞑想の丘」と書かれている場所に着いても、もう何がなんだかワケも分からず人工物を写真に収めるのが精一杯だった。




















そしてついに、10:40、蝶ヶ岳ヒュッテに到着。
















まさに地獄に仏。朝4:40に出発して以来の大休止である。
何か飲み物や温かい食物を頼もうと中に入ると、公衆電話が目に入った。そこにはタクシー会社の電話番号と共に、三股登山口待ち合わせでのタクシーの予約が可能な旨が書かれている。

ここから上高地まで、コースタイムどおりに行っても5時間ちょっと。しかも、風呂に入れる保証は無い。
それに対して、三股登山口までは、コースタイムで3時間半。しかも下山後に日帰り温泉に寄ることも容易だ。
そして、今日の午後は天気が崩れる予報。というか、すでに崩れてきている。

【決定】
三股登山口にエスケープ。

蝶ヶ岳まで来たので、もう思い残すことは無い。三股までタクシーが来てくれるなら願ったり叶ったりだ。
さっさと下山して風呂入ってメシ食って東京に帰るんだ!

早速タクシーを予約。
14:30に三股登山口で、ということに。

三股へは、常念山脈の東側に降りることになるので、朝から悩まされていた西風にもおさらばできる!
そうなると、あとは一気に駆け降りるだけだ。

ということで、11時すぎに蝶ヶ岳ヒュッテをあとにし、蝶ヶ岳山頂を拝んでから、一気に駆け降りた。




















雨がパラついていたが、樹林帯の中を歩いているおかげで濡れることは無い。
快適な下山になると思っていた。

ところが、登山口まで残り3kmちょっとの標高2,000mあたりまで降りてきたあたりから、足が言うことを聞かなくなってきた。




















マズイ。
仕方なく、ここまで使わずにきたストックを取り出し、すがるようにして歩いた。
自分の足に
「キリキリ働け!この無駄飯喰らいが!」
とハッパをかけてはみたものの、状況は改善されない。

13時半ごろ。ついにハイドレーションの中の水が空になった。
蝶槍のてっぺんでハイドレーションの飲み口が引っこ抜けて、水がドバドバ漏れてしまうというハプニングがあり、その影響で中身が足りなくなってしまったのだ。
予定ではあと1時間は歩かなければならない。標高を下げてきたら一気に体感温度も上がってきて汗が吹き出している。このまま水分を補給しないのは危険すぎる。
一応ザックの中には1リットル弱の予備の水が入っているので死ぬことはないが、取り出すのが非常に面倒だ。

せっかくなので、登山口手前にある水場をアテにすることにした。地図によると「力水」という名前だそうで。
僕はお腹があまり丈夫ではないので、本当は生水はあまり飲みたくない。が、この際背に腹は変えられない。ザックに入っている予備の水だって、常念小屋で分けてもらった生水だし。
それに、お腹が壊れたとしても、その頃はもう下界の水洗トイレで快適に用を足せるに違いないから、気にすることはない。

そんなわけで、14:13、力水到着。




















ガブガブ飲む。冷たい。うまい。

元気を取り戻して歩き始めた。
力水からしばらくは、小さな沢をピチャピチャ歩くルートだ。
涼しくていいなぁ、などと思いながら歩いていたら、お約束のように足を滑らせて尻からコケた。
ビッチョビチョ。
どうも最近、こういう沢を歩くと必ずコケる。歩き方が悪いのだろうか。。。

しばらく行くと、本沢を渡る吊り橋が現れた。




















吊り橋から覗くと、本沢は水量豊富でマイナスイオン出まくりだ。




















ここまでくれば、登山口まではあとわずか。道もなだらかなはず。
そして程なく人工の建物の姿が見えた。これは間違いなく登山口だ!

14:35、三股登山口到着。

と、その登山口に何か立て札がある。
見てみると、















あと800mだぁ!?

その場にへたり込みそうになった。



あとは、その800mの林道をひたすら歩いて、タクシーの待つ駐車場へ。
14:48到着。

こうして僕の2泊3日は終わった。



2011年7月24日日曜日

山行記 : 【2日目】 2011年7月16日~18日 常念山脈縦走 表銀座~常念小屋編

前回の続き。

ついに今日は表銀座コース。稜線フェチにはたまらない快適なルートだ。

燕山荘を出発すると、目指す先には槍ヶ岳の勇壮な姿。
天気は快晴。















蛙岩のあたりは大きな岩の間を通り抜ける切通しになっており、少しヒンヤリした感じ。















さすが「表銀座」と呼ばれるだけあって、登山道にはたくさんの人影。



















そしてその向うには大天井岳の姿が見える。
遠く見えるが、あそこは今日の行程の真ん中ぐらいだ。ふぅ。。。

このあたりの稜線上は、なんだかとてもトンボが多かった。



















この黒い点はみんなトンボ。ちょっと驚くぐらいの数だ。
これのおかげか、ハエなどのうるさい虫が居なくて、快適な道だった。

道すがら、かわいい黄色い花がたくさん咲いていた。















シナノキンバイ? それともキンポウゲの一種?
植物はよく分からんけど、とにかくかわいい花だ。

そうこうするうちに、次第に大天井岳が近づいてくる。今回の山行で一番標高の高い山だ。
よく見ると、山頂直下の大天荘の姿も確認できる。















この先、槍ヶ岳に行くのならば喜作新道へと進むわけだが、今回は常念山脈縦走なので、喜作新道へは向かわない。
だが、喜作新道を築いた小林喜作のレリーフはしっかり写真に収めた。



















この喜作新道のスタート地点は、いきなりハシゴから始まる。



















ハシゴを登りきったところから、来し方を見ると、すばらしい稜線が続いている。















嗚呼、ここを歩いてここまで来んだなぁと感慨ひとしお。稜線フェチにはたまらない、すばらしい尾根道だった。
さすが「表銀座」と呼ばれるだけのことはある
この「銀座」にはヴィトンもシャネルもティファニーも無いけれど、それ以上に煌びやかな稜線がある。

ついに槍ヶ岳方面と常念岳方面との分岐点にさしかかった。















いまだ下山せず!』という、実際にあった遭難者捜索のドキュメンタリー作品では、冬の槍ヶ岳にアタックをかけるパーティがこの付近で天候不良により槍ヶ岳アタックを断念、常念岳方面にエスケープするという話が出てくる。
まさにこれから僕がたどるルートは、そのパーティの通ったルートと重なる。つまり、登山の難易度としては、槍ヶ岳に登るほうが常念岳方面のほうが楽だということだ。
(そのパーティが遭難したのは常念乗越から東へ下る一ノ沢なので、今回の僕のルートからは外れているけど。)
でも、それは冬山での話。
今回の僕のコースだって充分タフだ。

分岐から地味な登りを少し歩いて、10:30、大天荘到着。
小屋の裏からは槍穂の素晴らしい眺め。















涸沢カールの雪も目視で確認できた。

小屋で三ツ矢サイダーを買って一気に煽る。
晴天のため、尾根歩きは直射日光との戦いでもある。カラカラの喉に冷たい炭酸の刺激がたまらない。

そのまま小屋の外にザックをデポし、大天井岳の頂上へ。小屋からほんの20分ぐらいの距離だ。
そんなわけで、あっと言う間に大天井岳山頂。



















そして、三角点と祠。






































大天井岳からの眺めは、ぐるり360度の大パノラマ。















↑これは、野口五郎岳とか、そっちのほうの連山。どれがどれか、よく分からん。
















↑こっちは南の方。
奥に常念岳が見える。
2,922mの大天井岳の山頂にいるのに、なぜか常念岳の山頂は目線より上に感じられた。なんだか妙にデカい。本当にあれが常念岳なのか?
何度も地図と照らし合わせたが、やっぱり常念岳以外に考えられない。

今日はあの手前まで行って、明日の朝一番にあの山頂を越えるのか・・・。
遠いし大きいし、しんどかった去年の思い出がよみがえり、気が重くなった。

あまりゆっくりしている時間もないので、早々に小屋に戻って昼飯を食べた。




















山の棒ラーメンに乾燥わけぎを入れてみた。
もうちょっと塩気が強いほうが嬉しかったなぁ。

ラーメンをかき込むとすぐに出発した。

11:30、大天荘出発。

振り向くと大天井岳と大天荘が見えた。















ここから先は、今日はもうめぼしいポイントは無い。
あとはひたすら歩いて、少しでも早く常念小屋のテント場に幕営場所を確保するだけだ。

次第に常念岳の姿も近づいてくる。
















爽快な夏山の風景がひたすら続く。
















ついに最後のピーク。



















このピークを巻いて向こう側に出ると、あとはすぐに常念乗越、つまり、今日のゴールである常念小屋のテント場への下り道だ。
その下り道は鬱蒼とした樹林帯だ。



















こういう樹林帯に入ると、途端に暑くなる。
汗だくになりながら駆け降りると、やっと常念小屋とテント場が見えてきた。















13:50、常念小屋テント場到着。
このテント場も混んでいるが、昨日の燕山荘ほどではない。
さっさとテントを設営し、小屋で幕営料を支払う。
受付には「混雑のため、1畳2名でお願いしております」という札が下がっていた。やはりこの時期の北アルプスの山小屋は恐ろしい混みようだ・・・。

テントに戻ったが、まだ日が高くガンガンに照りつけるため、暑くてテントの中には居られない。
昨日の凍てついたテント場とは正反対の状況だ。

たまらず小屋に行って、生ビールを注文。800円也。















実にウマイ。
でも、去年はこれを3杯飲んでヒドイことになってしまったので、今回は1杯にとどめた。

引き続き、暑くてテントに入れず、日陰を探してさまよっているうちにやっと日が傾いてきた。
それでも暑い。。。
西の空には怪しげな雲が広がっていたが、それがこっちまで来るような気配もなく。


明日は3時起床5時出発の予定なので、早く寝ないと。
さすがに日が暮れてからは徐々に涼しくなり、テント内の温度も適温になった。

あまり眠気が来ないので、持参した本をしばらく読んだ。
その本は、刊行されたばかりの加藤則芳氏著『メインの森をめざして-アパラチアン・トレイル3500キロを歩く』。630ページもあるソフトカバーの単行本だ。どう考えても山の荷物としては無駄に重いわけだが、なんとなくこれを読むと、今回の行程に対する気合も入るのではないかと思い、わざわざ持ってきたのだ。
詳しい感想はまた別な機会に書きたいと思うが、やはり誰でも山を長距離歩くのはしんどいんだなと分かり、少しほっとした。

そうこうしているうちにやっと眠気が来たので、そのまま入眠。

夜中に遠くで雷が鳴り、風も強い状態が続いたが、気にせず寝続けた。
そしてついに、今回の日程で一番キツい3日目を迎える。