このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2011年7月25日月曜日

山行記 : 【3日目】 2011年7月16日~18日 常念山脈縦走 常念岳~蝶ヶ岳~下山編

7月18日。

ついに今日が最終日だ。
そして、この山行のなかで本日3日目が一番キツイ行程となっている。
朝3時過ぎ。
テントの入り口を開けるとフライシートがビチョビチョだった。夜露にしては随分激しく濡れているし、夜中に降ったんだろうか? それにしては雨音は聞こえなかったが。。。
朝飯を食い、テントをたたみ、パッキングを終えたのが4:30。
どうもやはりパッキングでいつもモタモタしてしまう。
4:40、いよいよ出発。
第一の障壁である常念岳を見ると、朝日に赤く染まっていた。
















実は今回の行程のなかで、一番気が重いのがこの常念岳越えだった。
常念乗越から山頂まで標高差にして400m。数字の上では大したことはないのだが、実際に登ってみると地味にキツイ。下りの時には景色も良いし解放感もあるのだが、登りのときはひたすらガレた山肌を見続けるだけなので、非常に気が滅入る。しかもこの日は、朝から西風が非常に強かった。
このため、僕の巨大なザックは風に煽られて非常に体勢が不安定になる。それを支えるとなると、さらに余計に体力を奪われるのである。さらには、昨日とはうって変わっての曇天模様で、体感温度がより低く感じた。実際、雨具のジャケットをウィンドブレーカー代わりに着て寒さをしのいでいたぐらいだった。

こっちが巨大なザックにモロに風を受けて踏ん張りながら登っているのに、空身同然の中高年登山者たちがホイホイと僕を抜かしていく。それも精神的にこたえた。結局、1時間半かかってやっと頂上へ。
でも、今回の目的地はここじゃない。それに、風が強くてとても寒い。去年撮影できなかった山頂の標識だけ撮影して、さっさと通り抜けることにした。





















山頂の南側に伸びるのは、この山行を1年前に決意させた素敵な稜線。




















ついにこれを自分の足で歩くのである。
常念岳の南側のガレた急斜面をゆっくりと降りる。
すでに予定時刻から遅れつつあるので気持ちが急くが、こんな岩ばかりの急斜面で焦っても仕方が無い。




















いつもならトレイルランニングのシューズで無雪期縦走をしているのだが、今回はまさにこの岩場を想定して、しっかりとした登山靴を履いてきた。
実際にそのガレ場を歩いてみて、奮発した甲斐があったとつくづく思った。
こんな重い荷物を担いでこのガレ場をトレイルランニングのシューズで歩くのは、足にかなりの負担になるに違いない。徐々に憧れの稜線に近づくにつれて、岩ばかりの状態から、次第にザレた斜面に岩がゴロゴロしている、といった感じになってきた。

ザレたところは足場が悪く、流されそうになる。そこで、なるべく足場のしっかりしたところを歩こうと思って岩に足をかけたところ、それがなんと浮き石!その浮き石もろとも10mほどザレ場を流されてしまった。スネもぶつけた。痛い。
大げさに言うなら滑落である。

這い上がるにも、キメの粗い砂のような斜面に足を取られて一苦労。
ザレ場は油断してはいけないと実感したのである。そのまま蝶ヶ岳方面に尾根道を歩き続けるのだが、見て憧れていた感じと、実際に歩いたときのシンドさのギャップに辟易し始める。こんなにキツいとは想定外だ。そこに折からの強風も加わって、早々にイヤになってしまった。



















岩稜の尾根を超えると、今度は樹林帯の道が迎えてくれた。
木々が風を防いでくれるので、とても歩きやすい。



















この狭い道を進むと、急に視界が広がり、コバイケイソウの花畑が現れた。



































このコバイケイソウの花畑越しに見る常念岳は、さっきまでの意地悪な顔つきではなく、悠然と構える穏やかな老爺を思わせるようなのどかさだった。
















次のピークで、蝶ヶ岳への標識が落ちていた。



















落ちてもなお道を指し示す標識にいくばくかの健気さを感じないわけでもないが、なんともダメな感じのほうが強いように思われる。

このあとの下りは細い道がつづら折りになっている。
ここで、下りは得意だからと油断したところ、本日2回目の滑落をしてしまった。つづら折りの折り返しで踏ん張りがきかず、そのまま滑って落ちてしまったのだ。
幸運にも大事には至らなかったが、木の根や草を掴んで這い上がるという情けない状態になってしまった。

気を取り直して歩いていると、ニッコウキスゲが群生している場所に出た。
































これは素晴らしい!
こういう楽しみというのは、疲れた心身にひとときの安らぎを与えてくれるものだ。

あとはこのまま下ったあとに、蝶槍に登り返せば、本日のめぼしい上り坂は終了だ。
下から蝶槍を仰ぎ見る。




















もうヘトヘトだが、これさえ終えればあとは概ね下りばかりだ。
と、自分を奮い立たせて登りきると、そこは大パノラマだった。



強風に煽られながらの撮影のため、手ブレご容赦。

寒いのであまり長居もできず、早々に蝶槍を出発。蝶ヶ岳ヒュッテを目指す。

途中、横尾への分岐が現れる。



















上高地に降りるだけなら、どう考えても蝶ヶ岳経由ではなく横尾経由のほうが楽だ。
強風に煽られて体力もかなりキツくなってきている。
しかも、この日は午後から天気が崩れるという予報だったので、少しでも早く下山したいという思いが強かった。
だが、蝶ヶ岳に行くことなくエスケープしたとあっては、この山行自体が完成しない。なんといっても、「燕~常念~蝶」というのが今回のテーマなのだ。
何としても蝶ヶ岳には行く。

こうして横尾の誘惑を振り払った。

そして見えてきた、蝶ヶ岳の稜線。
蝶ヶ岳は二重稜線で有名なのだが、たしかに尾根が2つあるような。。。
それがこれなのか?
















もはや風に煽られて、もう全部イヤになっているところに、いよいよ雨がポツポツ来はじめた。
地図で「瞑想の丘」と書かれている場所に着いても、もう何がなんだかワケも分からず人工物を写真に収めるのが精一杯だった。




















そしてついに、10:40、蝶ヶ岳ヒュッテに到着。
















まさに地獄に仏。朝4:40に出発して以来の大休止である。
何か飲み物や温かい食物を頼もうと中に入ると、公衆電話が目に入った。そこにはタクシー会社の電話番号と共に、三股登山口待ち合わせでのタクシーの予約が可能な旨が書かれている。

ここから上高地まで、コースタイムどおりに行っても5時間ちょっと。しかも、風呂に入れる保証は無い。
それに対して、三股登山口までは、コースタイムで3時間半。しかも下山後に日帰り温泉に寄ることも容易だ。
そして、今日の午後は天気が崩れる予報。というか、すでに崩れてきている。

【決定】
三股登山口にエスケープ。

蝶ヶ岳まで来たので、もう思い残すことは無い。三股までタクシーが来てくれるなら願ったり叶ったりだ。
さっさと下山して風呂入ってメシ食って東京に帰るんだ!

早速タクシーを予約。
14:30に三股登山口で、ということに。

三股へは、常念山脈の東側に降りることになるので、朝から悩まされていた西風にもおさらばできる!
そうなると、あとは一気に駆け降りるだけだ。

ということで、11時すぎに蝶ヶ岳ヒュッテをあとにし、蝶ヶ岳山頂を拝んでから、一気に駆け降りた。




















雨がパラついていたが、樹林帯の中を歩いているおかげで濡れることは無い。
快適な下山になると思っていた。

ところが、登山口まで残り3kmちょっとの標高2,000mあたりまで降りてきたあたりから、足が言うことを聞かなくなってきた。




















マズイ。
仕方なく、ここまで使わずにきたストックを取り出し、すがるようにして歩いた。
自分の足に
「キリキリ働け!この無駄飯喰らいが!」
とハッパをかけてはみたものの、状況は改善されない。

13時半ごろ。ついにハイドレーションの中の水が空になった。
蝶槍のてっぺんでハイドレーションの飲み口が引っこ抜けて、水がドバドバ漏れてしまうというハプニングがあり、その影響で中身が足りなくなってしまったのだ。
予定ではあと1時間は歩かなければならない。標高を下げてきたら一気に体感温度も上がってきて汗が吹き出している。このまま水分を補給しないのは危険すぎる。
一応ザックの中には1リットル弱の予備の水が入っているので死ぬことはないが、取り出すのが非常に面倒だ。

せっかくなので、登山口手前にある水場をアテにすることにした。地図によると「力水」という名前だそうで。
僕はお腹があまり丈夫ではないので、本当は生水はあまり飲みたくない。が、この際背に腹は変えられない。ザックに入っている予備の水だって、常念小屋で分けてもらった生水だし。
それに、お腹が壊れたとしても、その頃はもう下界の水洗トイレで快適に用を足せるに違いないから、気にすることはない。

そんなわけで、14:13、力水到着。




















ガブガブ飲む。冷たい。うまい。

元気を取り戻して歩き始めた。
力水からしばらくは、小さな沢をピチャピチャ歩くルートだ。
涼しくていいなぁ、などと思いながら歩いていたら、お約束のように足を滑らせて尻からコケた。
ビッチョビチョ。
どうも最近、こういう沢を歩くと必ずコケる。歩き方が悪いのだろうか。。。

しばらく行くと、本沢を渡る吊り橋が現れた。




















吊り橋から覗くと、本沢は水量豊富でマイナスイオン出まくりだ。




















ここまでくれば、登山口まではあとわずか。道もなだらかなはず。
そして程なく人工の建物の姿が見えた。これは間違いなく登山口だ!

14:35、三股登山口到着。

と、その登山口に何か立て札がある。
見てみると、















あと800mだぁ!?

その場にへたり込みそうになった。



あとは、その800mの林道をひたすら歩いて、タクシーの待つ駐車場へ。
14:48到着。

こうして僕の2泊3日は終わった。



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