このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2015年9月26日土曜日

山行記 : 2015年9月19日~22日 立山縦走 1日目 テント場確保



(この記事は「計画概要」の続きです。)


山の朝は早い。

いつもの朝一のスーパーあずさであれば新宿を7時に出発するのだが、今回は北陸新幹線で東京駅を6:16に出発する。
となると、家を出るのも1時間程度早くしなければならない。

前日、社畜の僕にできることは、すべての仕事を投げ捨てて逃亡同然に退勤することだけだった。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

そうやって早々に自宅に戻ったが、準備に手間取り、パッキングを終えたときには既に日付が変わろうとしていた。

そうして迎えた出発当日。
東京駅で連れと落ち合い、なんとか北陸新幹線に無事乗り込んだ。
北陸新幹線に乗るのは初めてなので、否が応でもテンションが上がる。


思えば、北陸新幹線が開通したことで、剱・立山が東京からグッと近くなった。
スーパーあずさでは、朝一で東京を出発しても、その日のうちに剱沢小屋に到着しようと思うとかなりキツい。
それが、北陸新幹線であれば、どうにかたどり着ける。
もちろん今回我々は剱岳を目指すわけではなく、そのもっと手前、雷鳥沢キャンプ場を目指すのだが、このシルバーウィークのこととて、早着しないと幕営する場所が無くなってしまう。
気合を入れて乗り継ぎをし、乗り遅れないようにしなければならない。

富山地方鉄道、ケーブルカー、バスと乗り継ぐ。
バスから見える風景はガスの中。称名滝もロクに見えやしない。

が、室堂が近付くに連れて青空が見え始め、到着する頃にはすっかり雲の上に出た。

結局、11時前に室堂バスターミナルに無事到着。早い。
喜び勇んで、昼飯用の鱒寿司と、晩酌用の日本酒を買う。
この日本酒が、試飲してみたら異常に美味い。成政酒造の「佐々成政の隠し酒」という酒なのだが、日本酒なのにアルコール度数が19度もある。
冷やした状態で試飲させてもらったのだが、口に含んだ瞬間に、旨味が脳天に突き抜けるようだった。でも、味は辛口。こんな酒飲んだことない。
(帰りに買おうと思ってすっかり忘れていた。室堂限定らしく、酒造の公式HPにも、存在すら記載されていなかった。)

ホクホクしながら室堂のバスターミナルを出たのが11:20。
朝までは土砂降りだったようだが、今はすっかり晴天だ。
立山が美しい。
いつ見ても息を飲む姿だ。
明日は登ろよ、あの頂に。

心は軽いが、荷物でパンパンになった105リットルザックが両肩に食い込む。調子に乗って荷物を詰め込みすぎた。。。

室堂では、すっかり草紅葉が盛りを迎えていた。
この赤い草は、チングルマの葉っぱ。綿毛もフワフワで可愛らしい。
7月だったら、白い花畑だったんだろうなぁ。

11:33、みくりが池のほとりに到着。

池畔にはシラタマノキが実を付けていた。

池の水面に映る雄山の姿は、微風に揺れて微妙にぼやけていた。
うーん、惜しい。

11:43、みくりが池温泉に到着。
立ち寄りたい誘惑に駆られるが、先にテントを設営してしまわないと、張る場所が無くなってしまう可能性がある。
已む無く先を急ぐ。

みくりが池を離れると、稜線がよりいっそう近付いてくる。

エンマ台まで来ると、地獄谷の煙が今まで見たことないぐらいの勢いで吹き上がっていた。
全国で火山が活性化しているが、まさか、この立山でも活発化しているのか?!

その先にはりんどう池。

りんどう池と血の池の間の道を歩く。

血の池地獄。
その向こうには浄土山。

足元にはシラタマノキ再び。

12:02、雷鳥荘の前を通過。
なんだかこのあたり、今日はとっても火山ガス臭い。

雷鳥荘を過ぎると、すぐに雷鳥沢キャンプ場が見えてくる。
幸い、まだテントを張る場所は充分に有りそうだ。

雷鳥荘から少し下りたところから、地獄谷が一望できる。
立山信仰では、立山の稜線が浄土、下は様々な地獄が形成されているとされている。
先に見た血の池もそのような地獄のひとつなのだが、たしかにこんな風景を見たら、地獄を連想するのは無理のない話だ。

雷鳥沢キャンプ場に向かって石畳を下りていくすがらも、綿毛をたたえたチングルマが群生している。
このあたりに来るのはいつも9月なのだが、次は7月に来てみよう。そうすればきっと、チングルマの花畑を見ることができるに違いない。

12:15、雷鳥沢キャンプ場に到着。
まだ連休初日のこんな時間なのに、こんなにテントが設営されているとは、少々驚きである。
がんばって朝一で出発して良かった。

寝心地の良さそうな場所を見つけて、荷物と連れをその場にデポし、一人で管理棟に向かう。
2泊以上の場合は、一律で1名あたり1,000円。安い。釜ヶ崎の木賃宿で一泊1,000円とかだと、漏れなく南京虫がセットで付いてきそうなのに、3泊でも1,000円!

この管理棟にトイレと水場がある。
水場の水は塩素消毒されているそうで、僕のようなお腹の弱い人でも安心して飲める。

また、管理人から親切に、近所の温泉の外来入浴受け入れ時間についての案内まで受けられた。
大型連休で混んでいるだろうから、各宿泊施設で外来入浴を受け入れているのかどうか心配していたのだが、こうして案内してくれているということは大丈夫なのだろう。

こうして手続きを終え、荷物と連れをデポした地点に戻って、テントを設営。ここが今から丸3日間の住処となるのだ。
テントはモンベルのステラリッジ3型。2人で使うならかなり広い。


テントを設営したら、やっとランチタイム。
室堂で買った鱒寿司を食らう。
室堂に来たら、やっぱりこの鱒寿司だよなー。

色付き始めた山肌と青空のコントラストを眺めながらの、開放的なランチ。

微妙に稜線に雲がかかることが多いが、それでもまさにここは別天地である。
去年、一昨年と、剱岳の行き帰りにここを素通りするのがどれだけ無念だったことか。
念願叶い、やっとここで、たっぷりとこの景色を堪能できるのである。

そうこうするうちに、次第にテントの数も増えてきた。

僕らはもう、設営も終わり、ランチも食べたので、安心して温泉に向かう。
向かった先は、キャンプ場から一番近いロッジ立山連峰。

お風呂を覗くと、なんと誰も居ない! 独り占めである。
洗い場には、ちゃんとシャンプー、石鹸が備えられており、山小屋というよりは湯治宿といった風情。
窓からは大日三山と別山乗越が見える。(僕はメガネを外してお風呂に入るので、あんまりよく見えていない。視力は左右共に0.1未満なのだ。)

この内湯以外に、お一人様サイズの外湯もある。
外湯は、いわゆる泥湯で、ものすごく効能効果がありそう。(ただ、僕には熱すぎて、膝まで入るのがやっとだった。)
ちなみにこの外湯、キャンプ場から丸見えだ。気になる方は注意されたし。

風呂から上がったら、ロッジ立山連峰の屋外のテーブルで、立山連峰の絶景を眺めながらビールを飲む。
僕らが風呂に入っている間に、テントの数が劇的に増えたのが、遠目でも見てとれた。
稜線にかかっていた雲もほとんど消えて、秋晴れである。
ここまでのところ、全て完璧だ。

今年8月に行った前穂~奥穂~西穂が「命を燃やす山行」だとしたら、今回はさしづめ「命を洗濯する山旅」といったところか。重畳重畳。


もう今日は、残されたタスクは夕飯ぐらいで、なんもやることがない。贅沢な話だ。寿命が延びる。

散々のんびりした後、さすがにちょっと冷えてきたのでテントに戻って夕飯まで昼寝。
17時前にモゾモゾと起き出して、夕飯の支度を始める。
といっても、ハナから料理をするのが面倒なタチなので、フリーズドライのボルシチにショートパスタとソーセージをブチ込んで、あとはバケット。
「さすがにそれだけでは・・・」と思った連れが、チキンとキュウリのサラダ的なものを作ってくれた。
山で食べるキュウリはなぜこんなに美味いのだろうか。

夕飯を食べ終わるころに、日が沈む。

明日への期待を具現化したような日没。

なぜかこのタイミングで沸き起こる上昇気流のガスに包まれる大日方面。
滝雲というのは聞いたことあるが、これはその逆。(動画で撮っておけばよかった、、、)
まるで滝が逆流しているような雲のだった。剱沢方面から見たら滝雲のように見えたかもしれない。

そして、見事なアーベントロート。

もちろん、このあとはもう夜の帳があたりを包む。
明日は早朝に出発して立山三山縦走である。早く寝よう。



と思ったら、完璧だと思っていた1日の、ここから先がワナだった。

というのも、室堂から1時間、石畳を歩けばたどり着けるというこの雷鳥沢キャンプ場の立地。当然、宿泊者は登山者ばかりではない。

小さな子供のいる家族連れ、野外フェス好きっぽいキャンパーなど、異文化の坩堝である。
そんな彼らが、午後7時の段階で静かにしてくれるわけもなく、音楽は流れるわ、子供の叫び声はするわ、女の子たちが歌いだすわで、とても眠れたもんじゃない。

もちろん、19時の時点で騒いでいるのは、文句の付けようが無いのだが、果たして何時ぐらいになったら静かにしてくれるのだろうか。不安が募る。
客層が登山者クラスタでない場所での幕営は、今月頭の伊豆ヶ岳登山の際のオートキャンプ場で懲りたはずなのに、その轍を踏んでしまったか・・・。

が、それも21時になるころには大方静かになり、最後までうるさかったオートキャンパー風の自称・社会人歴18年の男性も21時半には静かになったので、上出来であった。

ちなみに、連れはそんなの気にせず、20時前には寝付いていた。幸せ者である。


さあ、明日はこの山行のメイン、立山三山縦走の日である。
しっかりと睡眠を取って備えたい。





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