(この記事は「計画概要」の続きです。)
山の朝は早い。
前日の仕事が重たいと、よりいっそう早く感じる。
そんなわけで、前日の仕事の余波(つまりは寝不足)に苛まれながら、早朝に出発する。
奥多摩駅に到着し、鴨沢行きのバス停に並んでいると、定時のバスの前に臨時バスを出すとのこと。
さすが行楽シーズン。
がんばって早起きして一本前の電車に乗ったおかげで、バスの座席に難なく座れた。
鴨沢へウツラウツラしながら向かう。
9時過ぎ、鴨沢バス停に到着。
バス停にある駐車場では、山梨県警が長テーブルを広げて出張っていた。
登山計画書を出せとのこと。
もちろん、言われなくとも出すのだが、緊急連絡先の欄は、中高年の独身者にはなかなか書くのが難しいということをご理解いただけず、悲しい思いをする。
やはりオッサンが独身のままでいるというのは、こういう細かいところでも認めてもらえないらしい。
(もちろん、会社には登山計画を伝えてあるので、月曜になっても僕が出社しなければ誰かがアクションしてくれる手はずにはなっている、はず。)
どうにかこうにか緊急連絡先をデッチあげ、9:20過ぎ、入山する。
最初は舗装された生活道路。
ここから見える奥多摩湖はエメラルドグリーン。
そして、空は雲ひとつ無い青。
道はすぐに未舗装なシングルトラックに入る。
ここでコウガイビルを見かける。
人間には害を成さないだけでなく、ナメクジを駆除してくれる益虫なので、見るとちょっと応援したくなる。
みなさんも、ビジュアルの気持ち悪さから迫害するのではなく、是非応援してあげて欲しい。
9:42、小袖の駐車場に到着。
一瞬「すげー混んでる!」と思ったが、よく見たら、駐車場が狭くなっていただけだった。
9:46、登山口に到着。
登山口ではリア充っぽいパーティが談笑していたので、笑顔で挨拶しながら軽く呪う。
寝不足なので心がささくれだっていたのだ。
登り始めは、ブナだのナラだのの気持ちの良い広葉樹林。
9:57、廃屋に到着。
その先で、すぐに植林帯になる。
10:01、祠の前を通過。
憂鬱な植林帯が続く。
再び広葉樹林帯が現れたり。
ドングリが豊作。
今年はこの豊富なドングリを食べてツキノワグマがよく育ち、個体数も増えるのだろう。
そして、来年はドングリの凶作の年なので、個体数の増えたツキノワグマたちが食料に困って里に下りて、人間との接触事故が増えるんだろうな、と。
いつ来ても、癒される広葉樹林。
10:43、堂所に到着。
すでに汗ダク。
あんまり調子が良くない模様。
堂所から少しの間、尾根筋の登山道を歩く。
11:06、七ツ石小屋への分岐のすぐ手前、岩がゴロっとした場所で早めの昼飯にする。
チョココロネ。
座った岩は、汗でジットリと濡れてしまった。
あんまり長いこと止まっていると汗冷えするので、チョココロネを食べたら早々に出発する。
11:14、七ツ石小屋への最短ルートとの分岐に到着。
ここには七ツ石小屋へ誘導する道標やら看板やらが立っていたはずなのだが、無くなっている。
道は整備されているようだから、ルートはあるのだと思うのだけれど、どうしたのだろうか。
ここから先は、七ツ石山を西に巻くルートを通る。
11:24、七ツ石小屋への分岐再び。
谷筋を横切る橋を抜けて、
地味なトラバースの道を歩く。
地味とはいえ、明るい広葉樹林帯だ。
11:42、木々の間から飛龍山が見えた。
11:47、七ツ石小屋への分岐、再び。
このあたりからは、かろうじて、小雲取山と雲取山の山頂が見える。
11:56、ブナ坂に到着。
ここからは、いよいよ石尾根。本日のメインディッシュである。
快晴のおかげで、富士山がよく見える。
12:04、セクシーな木の脇を通過。
「これ、ほんとにナナカマド?」と思うぐらいに、大量に実をつけたナナカマド。
奥多摩の山々の向こうには、引き続き富士山の姿がクッキリ。
12:16、ヘリポート通過。
この時期の週末は、ヘリポートから奥多摩小屋までの間にはたくさんのテントが並ぶのだが、この日はまだ時間が早いためか、ポツリポツリとしか立っていない。
12:20、奥多摩小屋前を通過。
奥多摩小屋前のカラマツは、まだまだ色付く気配無し。
奥多摩小屋のすぐ先で、巻き道との分岐が現れる。
もちろん、こんな天気の良い日に巻いてなんていられない。
ごりごり登る。
この斜面の上から見える富士山は、また格別なのだ。
同じく、石尾根もなかなか良い眺め。
斜面の上からは少しずつカラマツが色付いてくる。
12:43、小雲取山への斜面に取り付く。
12:45、小雲取山の分岐に到着。
似たような写真ばかりで恐縮だが、ここからの富士山も格別。
小雲取山を回り込むと、行く手には雲取山の避難小屋が見えてくる。
そこから左に目を転じると、雲取山から飛龍山へと延びる稜線と、その向こうは奥秩父の山々が見える。
思えば、今年は奥秩父にあまり行けなかった。年内に金峰山に登っておきたいものだ。
12:49、雲取山荘への分岐を通過。
12:57、避難小屋はもう目の前だ。
山頂直下の斜面に取り付く。
13:04、避難小屋の前に到着。
石尾根を見下ろす。
動画も撮る。
13:06、雲取山の山頂に到着。
あれ?東京都側の山頂標、新しくなってる?
前はもっとショボかったような。
ついでに、三角点。
山頂からの眺めも動画に収めた。
さすがにチョココロネだけでは腹が減ったので、山頂でおにぎりを食べる。
そして、急に眠くなる。
日差しも暖かいので、このまま昼寝してしまってもいいのではなかろうかと、誘惑に駆られる。
が、汗ダクな体は、おにぎりを食べ終わる頃にはすっかり冷えてしまって昼寝どころではない。
13:15、名残惜しいが、雲取山荘に向かって降りる。
雲取山荘への道は、暗くて険しい。
11月下旬にはカチカチに凍結する場所だ。
さくさく下って、13:30、雲取山荘に到着。
テント泊の手続きをしてテント場へ。
テント場は意外にも空いていて、先客はたったの6張。
このあと混むのだろうか。
例によってテントはマウンテンハードウェアのスーパーメガUL1。
地形の関係で、前室をピンと張れなかった。
これが後の睡眠に、若干の影響をもたらす。
なお、今回は純正のペグではなく、2年ぐらい前に買ったまま放置していたアライテント製の軽量ペグを使ってみた。
これが思いのほか使い勝手の良いペグだった。
先端が鋭く、マウンテンハードウェア純正のペグでは刺さらないような固い地盤でもガンガン刺さってくれる。
細いので強度の不安は少々あるものの、このペグが曲がったり折れたりするような状況では、ペラペラのスーパーメガUL1本体も無事ではいられないだろうから、あまり気にする必要を感じない。
さて、今夜の寝床をセッティングしたら、いよいよビールタイムだ。
山荘前のベンチで、カップラーメンをつまみに一番搾りを飲む。
僕がこの至福の時にひたっていると、傍らにいた年配の男女4人パーティのうちの女性1人が、水場で水を汲みながら
「若返りの水やて!! これお土産に持って帰って水割り飲むわ!」
と騒いでいる。
ん?ちょっと待て、お土産??
と思っていたら、その4人パーティは荷物をまとめ始め、
「目標17時!」
と言いながら雲取山方面に向かっていった。
もう14時回ってるのに、今から日帰りかぁ。がんばるなー、、、
ともあれ、ビールも飲んでいい気分になってきたので、テントに戻る。
テントでゴロゴロしながら本を読んでいるうちに寝落ち。
前日に4時間しか寝られなかったのが、ここに来て地味に影響した。
目を覚ますと、もう17時を回っていた。
あの年配の4人は無事に到着できたのだろうか。(どこに向かったのかは知らないけれど。)
こちらはこちらで、雑にメシを食う。
フリーズドライの中華スープとナポリタンだ。
下界に居たら絶対にやらない組み合わせだが、山だと、こういう雑なメシが意外と美味い。
むしろ、こういう雑さこそが、ソロのテント泊登山の醍醐味ではないかとすら思う。
雑な夕飯に満足してテントの外に出ると、そこはもう夕闇。
沈む太陽の最後のアピールがそらを赤く染めているが、それももうすぐ消えるところだった。
結局この日、僕の後にテントを設営した人は思ったより少なく、僕も含め全部で10張程度のテント村となった。
昨年の同じ頃はエラく混んでいたんだけどなー。
夜の帳がおりたら、読書タイムの始まりだ。
昼寝をたっぷりしてしまったから、全然眠くない。
とはいえ、明日はなかなか長い距離を歩くわけだから、寝ておかねばなるまい。
22時には就寝。
(「2日目 前半」につづく)
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