朝5時にホテルを出発するために朝の4時からモゾモゾと出発準備にとりかかった。
天気予報は雨だったが、今のところまだ降ってはいない。
前日のうちにもすでに幾つかの小さい忘れ物気付いていたが、ここで初めて非常に重大な忘れ物に気付いた。
なんと、登山靴のインソールを忘れてきたのである。
7月の山行時に帰宅後のメンテナンスのためにインソールを外して以来、そのままだったのだ。
東京を出発するときにはザックに登山靴を入れてビーサン履きで移動していたため、全く気付かなかった。
果たして、僕の軟弱な足はインソール無しに耐えられるのだろうか。。。
今さら考えても仕方がないので、とりあえず準備をしてタクシーに乗り、笹谷峠へ向かった。
笹谷峠への道は、まさに九十九折の峠の道で、冬季には閉鎖される。
今は山形自動車道が開通したため、宮城-山形間の交通は峠越えをせずに笹谷トンネルを通るそうで、峠への道は閑散として寂しい。
どれぐらい寂しいかというと、1台だけ対向車とすれ違ったのだが、その対向車が現れた瞬間、タクシーの運転手さんが「うわ、車が来た!」と驚いていたぐらいだ。
6:10、笹谷峠到着。標高906m。
広々とした駐車場があり、入り口には斉藤茂吉の歌碑がある。
その北側には二口山系の山々が連なる。が、今回は行かない。
あくまで今回は蔵王なので、笹谷峠から南下するのだ。
蔵王方面への登山道の入り口は、ちょっと地味で分かりにくい。北アルプスや関東の立派な登山道ばかり歩いている人間には、ただの踏み跡に見えるかもしれないぐらいだ。
登山口からすぐに山形工業高校の山小屋が現れる。
どうもこの近辺の高校は山小屋を持っていることがよくあるようなのだが、なかなか維持が大変なようだ。この小屋はちゃんと使われているのだろうか。
登山道の様子は、この後もしばらくは鬱蒼とした感じで、東北の深い森をそのまま体験できるのだが、北蔵王の登山道全般の特徴として、木の枝がちょうど僕の身長よりほんの少し低い位置に突き出ていることがしばしばある。
僕がかぶっているキャップが、ツバが少し長めなため、ザックを背負って前傾になって歩くと、ちょうど自分の頭ぐらいの高さは視界に入らない。
かといって、木の枝ばかり気にしていると足元に目が行かなくなり、あらぬところでコケたりする。
そんなわけで、北蔵王だけで10回は木の枝に頭をぶつけた。これが、テンプル直撃で思いのほか痛いのである。
東北の深い山を歩くときには、ツバのついた帽子はお勧めできない。
さて、笹谷峠を出発して最初に現れる三角点は雁戸山の山頂なのだが、そこに至るルートは2通りある。
今回我々が通ったルートはカケスガ峰(現地の標識では「カケスが峰」)を通らないので、展望はしばらくつまらない状態が続く。
今回のルートの初のピークである前山は、ルートが山頂を通っておらず、鬱蒼とした木々に視界を阻まれてどこがピークなのかも分からないままに通り過ぎた。
そして、ついに今回の最初の難所「蟻の戸渡り」を迎える。
「蟻の戸渡り」といえば戸隠山の絶望的なまでのナイフリッジを思い出すのだが、ここの「蟻の戸渡り」は、もう少しマイルドだ。
それでも、急な岩場であることは間違いない。
基本に忠実に、三点支持でしっかりと登りきる。
すると、雁戸のピークだと思っていた場所が、実はその手前の偽ピークであったことを思い知らされる。
「蟻の戸渡り」を登っているときには上の画像の手前のピークしか見えていないので、てっきりそこが雁戸のピークだと思ってしまうのである。「山と高原地図」の1万5000分の1の地図では、この地形までは読み取れない。ショック。
その偽ピークを乗り越え、いよいよ雁戸山の頂上に到達すると、眼下の風景はほぼパノラマビュー。
北西には山形市内。
西には蔵王ダム。
東には重畳たる山々。
そして雁戸山の頂上と三角点。標高1,484m。8:38到着。
ここで朝食のため大休憩。
前日の酒が汗と一緒にやっと抜けたので、食欲もしっかりと戻ってきた。
朝食を食べたら、体が冷え切らないうちに出発。
次に目指すのは南雁戸山だ。
途中、八方平と、そこに建てられた避難小屋が見えた。
(赤丸部分に避難小屋の屋根が見える。)
八方平というだけあって、本当に平らだ。
それにしてもあんな深い森の奥に、どうやって山小屋を建てたんだろう・・・。ヘリで運んだにしても、資材の置き場所はどうやって確保したのだろうか。先人の苦労がしのばれる風景である。
実は南雁戸のほうが標高が高い。
その南雁戸の山頂には、退蝕激しい石碑があるのだが、ぜんぜん読み取れない。。。
南雁戸から標高で200m下ると、八方平に出る。
八方平を上から見たときはひたすら平らだったが、実際にその中に身を置くと、とても濃い樹林帯だった。
このあたりは植林ではなく天然林なので、植生も豊かでいかにも深い森という感じである。
その八方平を進むと、避難小屋が姿を現す。
10:10、八方平避難小屋到着。
中をのぞくと、二段ベッド形式で全部で8面の居住スペースが用意されていて、先人が残置していったと思われる毛布なども数枚置かれていた。
また、中央には大きな囲炉裏があり、焚き火で暖をとれるようになっている。
もともと単独行で今回の縦走をやろうと思っていたときには、早朝に東京を出て、初日の夜はこの避難小屋に泊まろうと思っていた。
これなら充分快適に泊まれる環境だということが分かったので、今度泊まってみたいと思う。
また、この近辺には特にエゾオヤマリンドウが群生していて、群青色の小ぶりな花を咲かせていた。
八方平を出ると、次に目指すのは名号峰。
これがなかなかの距離をダラダラと登り続けるルートで、展望も無い。
さほど急な登りは無い。
この頃から、少しガスってきた。
10時を過ぎて、次第に地温が上がってきて、低い位置にあった雲が上昇気流に乗って上がってきたのだろう。
八方平避難小屋から1時間半程歩き、12:06、やっと名号峰の山頂に到着。
名号峰には去年、刈田岳方面からアプローチしているので、これで一応北蔵王は一通り歩いたことになった。ここから先、刈田岳までは去年歩いているので、少し緊張もほぐれる。
ここで昼飯。
風が心地よい。
30分ほど休憩をした後、再び歩き出した。
去年通った道ということもあり、「ああ、こんな感じの道だったなー」と思いながら、リラックスして歩く。
そして、道に飛び出して生えている枝に頭をぶつけて、「あー、去年もよくぶつけたなー。。」と思い返す。
12:53、追分の分岐に到着。
画像向かって左手に下ると、かもしか温泉跡地を経て蔵王寺に至る。
刈田岳へは画像中央右手の岩の奥に向かう道を進む。
画像では見切れているが、右手には下生えの生い茂った道が伸びており、延々と何時間も下ると蔵王ダムに至るようだ。
もちろん我々は刈田岳に向かった。
追分の分岐を過ぎると、今度はすぐに自然園と呼ばれる庭園風の開けた場所に出る。
ここには何故か墓標が立っていて、素晴らしい景色を睥睨していた。
(お墓を写真に収めるのは抵抗感があったので、画像は無し。)
自然園を過ぎたあたりから、どんどん登りがキツくなってくる。
背丈の低い様々な植物と、ゴロゴロの岩と、火山特有のザレた地面が待ち構えていた。
そこを過ぎれば、あとはもうエピローグのようななだらかな道を通って熊野岳に至る。
熊野岳山頂付近には避難小屋があるのだが、これが石とコンクリートでできた小さな小屋で、熊野岳の厳しい冬にも耐えられる堅牢な造りになっている。
ちなみに、冬場の入り口は高い場所に作られているのだが、雪が降るとこの入り口も埋まってしまうそうだ。
この避難小屋の南東に、有名なカルデラ湖である「御釜」がある。
避難小屋にたどり着いたときにはガスで見えなかったのだが、しばらく粘っていたら、奇跡のようにガスが晴れはじめ、ついにはその姿を現した。
初めて見る御釜のエメラルドグリーンの水面にテンションは上がりっぱなし。
御釜の写真ばかり30枚も撮ってしまった。
御釜は、五色沼という別称からも推し量れるとおり、日差しに当たり具合などによって青みがかったりなど、いろいろな色味を見せてくれる湖である。
次に来たときには、また別な表情を見たいものだ。
御釜をひとしきり堪能したあとは刈田岳へ。
もはやここまでくると、すぐそこまで自動車で乗り入れられるので、普段着の観光客が山ほどいる。
もうここは下界と変わらない。
刈田岳には観光客向けのレストハウスがあり、食堂や自販機もある。
ここで水のペットボトルを購入。
その後、今日の宿となる小屋へ。
前夜、3時間しか寝ていなかった我々は18時には就寝してしまった。
夜中に目を覚ますと、激しい雨が降っていた。
2日目の天気は大丈夫なのだろうか。。。
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