このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2013年9月3日火曜日

山行記 : 2013年8月20日~8月23日 槍ヶ岳~大キレット~穂高縦走 3日目その1 ついに大キレット



(この記事は「2日目 嵐の槍ヶ岳」のつづきです。)


夜中ずっと雨が降り続き、目を覚ます度にどうなることやらと心配が募った。

が、その雨も未明には止み、あとには強風とガスだけが残った。
天気予報でも、今日は曇りか霧だとのこと。

朝食は5時からだが、先着順なので4:45から並ぶ。
食堂前から2階まで並ぶ大行列だ。

5時ちょっと過ぎにテーブルに着き、朝食を開始。
朝はいつも食欲が無く、軽く食べて終わり。早々に食堂を出る。

玄関を出て外の様子を見ると、昨日にも増して濃いガスに覆われている。
視界は100mも無いぐらいか。
それに加え、ものすごい強風だ。
この風で、大キレットはおろか、果たして南岳までの稜線も無事に歩けるのだろうかと心配になる。

槍ヶ岳山荘に宿泊している年配の登山者たちは、口々に、
「山頂は諦めるかなぁ」
という趣旨のことを話している。ガスはともかく、風が強すぎて危ないだろうというのが、登山者だけでなく山小屋の小屋番さんの話でもあった。

団体ツアーのガイドも、山頂を諦める方向で話をしているようだ。

「こんな何にも見えないときに登ったってしょうがねーよ」
という負け惜しみの声が聞こえるたびに、
「うん、そうだね。あのぶどうは酸っぱいに違いないよね」
と皮肉を言い返したくなるのをグッと堪える。そう、僕は性格が悪いのだ。

昨日僕が登った瞬間であれば登頂だけはできたものを。


そんな年配登山者を尻目に、僕の方はとりあえず南岳まで行ってみて、そのときの天候状況などからその後のルートを考えることに決めた。
天候やルート状況が悪くなければそのまま大キレットへ。ダメなら天狗原に降りる。

風が強くて気温が低いのは昨日の経験でよく理解したので、今日は十分に着込んだ。
ファイントラックのドライレイヤー、ランニング用の長袖Tシャツ、薄手のフリース、その上から雨具のジャケットだ。
ちょっと着込みすぎかもしれないが、暑ければ脱げばいい。寒くなってから着るよりも、手間が全然かからない。
実際、暑いってことはないんじゃないかと。気温は10℃ぐらいで、風速が15mだとすると、体感温度はマイナス5℃だ。恐ろしい話だ。


帽子は風に飛ばされそうなので、出発時からヘルメットをかぶった。

6:05、山荘を出発。
ガスが濃すぎて、たった十数メートルしか離れていない山荘がモヤって見える。

槍ヶ岳山頂方面を見ても、昨日よりも濃いガスが全てを包み隠している。

もちろん、岩は濡れたまま。
もし大キレットがこの状態だったら、かなり難儀なことになるだろう。

小屋の前を離れると、いきなり西風に煽られるようになる。
油断するとヨロめく程だ。まさに風速15m。

こんな天候では、テント泊の人なんかいないだろうと思っていたら、テント場にはいくつものテントが立てられていた。
こんな状況でテント泊とは・・・。素直に賞賛したい。

6:11、飛騨乗越に到着。

ここまで来る僅かな時間にも、西風に煽られた右耳が冷えて痛い。
湿気を含んだ風なので、メガネも右目側ばかりが曇りがちだ。これだからメガネ男子は・・・。

ここからは、南岳までひたすら稜線を南下する。
この稜線、ゆるやかなのかと思っていたら、岩場のアップダウンの連続だった。

東側の谷筋には雪渓も見える。
8月下旬になっても、例年残っているものなのだろうか。それとも今年だけなのか。

まだ雪渓が見える場所はいいが、ガスが濃いままで、次第に周りにはガレた石ころばかりとなり、もはやこのまま進んだら冥土にたどり着いてしまうのではないかという佇まいだ。

6:26、やたらとケルンのたくさんあるピークにたどり着く。
このあたりは、そこかしこに「キャンプ禁止」と掲示されているのだが、たしかにテントを張るには良さそうな場所だ。

この時は気付かなかったが、後から考えたら、きっとここが大喰岳の山頂だったのだと思う。
特に道標などは見当たらなかったし、何が大喰らいなのか分からなかったが、「山と高原地図」の
「広い山頂 ケルン多し」
の記載を見るに、ここがそうだというのは、おそらく間違いない。

そのまま岩に描かれた目印に導かれて稜線を南下する。

この先、何度も雪渓を見た。
人の背丈よりも厚みのありそうな雪が、この時期にもまだ残っているとは。

ちょっとした小ピークを越え、
再び谷筋が見える場所まで来ると、やっぱりそこには雪渓があった。
稜線に咲く花と雪渓。

こんな稜線を歩いていると、正面からこちらに向かってくる登山者にであった。

その登山者は、風が強すぎるため、南岳まで行くのも諦めて中岳から引き返して来たそうな。
むむむ・・・、そんなキツいルートなのか。
登山者と別れ、気を引き締め直して再び南下を続けた。

このピークを越えてすぐに、

6:52、中岳山頂直下のハシゴが見えた。
このハシゴ、角度が緩くて、却って慎重を要する。
風も強いので、油断ならない。

道標を経て、

6:55、中岳山頂に到着。
岩がゴツゴツの山頂。
晴れていれば非常に展望の良い場所のはずなのだが、ガスで100m先も見えず。
南北に伸びる標高3,000mの稜線、見たかったなぁ。。。

中岳から南岳への鞍部に降りる道は、もはや道ではなかった。
岩の上を飛び石の要領で渡って前に進む。

岩場を過ぎると地形がなだらかになる。

ここに水場がある。

こんこんと湧き出る水は、晴れた日ならば美味しかったんだろうなぁと。
が、ガスまみれの強風に煽られていると、あまり飲みたいという気持ちもわかず、素通りしてしまった。

この水場の少し先に南岳との最鞍部があるのだが、そこからは、一瞬だけ天狗原が見渡せた。
一瞬だけガスが薄らいだのだ。
ラッキーなことに、天狗池も見えた。

天狗池は、水面に映った槍ヶ岳が美しいことで有名らしいが、この天気では何も映るまい。

この先、登山道は過酷さを増す。

ガレてみたかと思えば、
岩にへばりつくようにトラバースしてみたり、
よじ登ってみたり。

単なる稜線歩きだと思っていた僕が間違っていました。ごめんなさい。
こんなところ、昨日の嵐の中を来ていたら、確実に進退極まっていたに違いない。

7:34、天狗原方面への分岐に到着。

ここまで来れば、南岳まではあと少しだ。

ガスの向こうに絶壁が見える。

絶壁の上の小ピークを通過し、南側斜面にはちょっとした花の群生地。

7:42、険しい小ピークを越え、

ついに南岳の山頂を視界に捉えた。
晴れていたら、本当にきれいな景色だったんだろうなぁ。

7:49、南岳山頂に到着。
意外に険しいルートであった。

ここからは、ザレた斜面を下って南岳小屋へ。

7:55、南岳小屋に到着。

南岳小屋で、スポーツドリンクの調達と、ザックのパッキングの最終調整をする。
パッキングの最終調整とは、外付けしているものを全部ザックの中に入れることだ。サイドポケットに突っ込んでいるドリンクのペットボトルはもちろん、ポーチもザックの中へ。
うっかり引っ掛けたり、落としたりしてしまっては大変なので、不便さは諦めてパッキングする。

南岳小屋の小屋番さんは、この時は若くて元気で愛想の良いオネーチャンだった。
ポカリスエットを購入しつつ、今日の天気予報を聞くと、今日いっぱいは保つとのこと。
少し迷いが残りつつも、今から大キレットに行く旨を伝えると、
「がんばってください!!」
と後押ししてくれた。
こんなに元気に明るく後押しされたら、行かねばなるまい。
おかげで完全に吹っ切れた。

8:04、南岳小屋を出発。
小屋を出てすぐに大キレット方面と展望台の分岐を指す道標が現れる。
展望台は、ガスで展望台としての機能を果たしていなかった。

分岐を大キレット方面に向かうと、いよいよ下ろうとするすぐ手前に、控えめな道標が設置されていた。

いよいよこの山行のメインイベント、大キレットに突入だ。
怖さと興奮でアドレナリンが大量に放出され、叫びたい気持ちになる。
もしかしたら、鎌倉時代の武士が戦の時に鬨の声を上げるのはこんな気持ちだったからではなかろうか。

ガスが濃すぎて、どこまで下っていくのかもよく分からない。
なんだか奈落に引き込まれそうだ。

なお、出発前に最も参考にした情報はこちら
これによれば、いったん降りるだけ降りてしまえば、長谷川ピークの手前までは
「歩きやすい 石屑の縦走路」
ということになっている。
なんだ、大キレットは恐ろしい場所だと言われるわりに、怖いのは長谷川ピークと飛騨泣きだけか、とタカをくくっての出発だった。

大キレットに踏み込んで約10分。最初の鎖場が現れる。
ここは鎖を使う必然性の無い箇所。
これを抜けると、激しい岩場を登ったり降りたり。


これを越えると、なだらかな道になった。
と思ったら、すぐに崖に行き着く。

ここを下ると、途中から鎖が用意されている。
写真だと分かりづらいかもしれないが、これは、トラバースではなく、急角度で下に向かう岩場だ。

そこへ、下から年配の男性が現れた。
早朝に北穂高小屋を出発したのだろう。
あの早朝の天候で、よく大キレットに取り付こうと思ったな。。。

この男性の通過を待ち、この鎖場を下る。
下ったところから振り返ると、あまりの絶壁に、唖然とする。
実際に降りている最中には、全く怖さを感じなかったんだけどなぁ。。。

そして、さらに続く鎖場。

これを無事降りると、なだらかな道が現れるが、
ホッとしたのも束の間。
すぐに最初のハシゴが現れる。
時刻は8:30。
降りて振り返ると、ここに鎖でなくハシゴを掛けた理由がわかるような気がした。
まさに絶壁。
ここは鎖を掛けたぐらいでは一般ルートにはできないだろうな。

8:35、2つめのハシゴも降りる。

参考にした情報によれば、ここからは大キレット底部で、歩きやすいはず。
ちょっとガレているだけのヤセ尾根歩きを想像していた。
某雑誌の大キレット特集でも、ここから長谷川ピークまでの間はほとんど情報も無く、きっと厳しい箇所は無いのだろうと思い、少し肩の力を抜くことができた。

が、相変わらず、濃いガスで行く先の様子はよく分からないまま。

8:39、前方に浮かんでいたシルエットの正体をはっきり目視できた。
近付くと、
って。
これは歩きやすい石屑なのだろうか。。。

この調子で、どんどん尖っていく。

別に怖くはないけれど、決して歩きやすくはないぞ。「歩きやすい」ってのは、いったい誰目線の話なんだ?

その後も、ゴロゴロのヤセ尾根が続く。



決して歩きやすいわけではない道にややウンザリし始めた時に、東に見える常念山脈の展望が急に開けた。

なんて景色だ。
足を止めて見とれるばかりだ。

思えば、3年前、常念岳から見た槍ヶ岳と穂高岳の間、大きくえぐれた大キレットの姿を目にしてから、大キレットに憧れ続けてきた。
そう、あの時、自分はあちら側から、今立っているこの場を見ていたのだ。
今は、その場所をこうして歩いている。
これ以上の喜びがあるだろうか。

とはいえ、いつまでもここで立ち止まっているわけにいかない。
再び稜線を歩き始める。

常念山脈はすでに視界が確保されているだろうに、こちらの稜線は相変わらずガスったまま。
この先に見えるだろう、長谷川ピークも全然目視できない。

再び小ピーク(というか、コブというか)を越える。
もう、こんなところばっかり。。。
それなりにシビアな足さばきを求められる箇所が続くので、全く気が抜けない。

先の方には、引き続きしょっぱい稜線が続くようだ。

その「しょっぱい稜線」がこちら。

「歩きやすい」んじゃなかったのか?!
全然楽じゃないぞ。

こんなガスった大キレットを尻目に、ますます視界がひらけてくる常念山脈方面。
もしかしたら正解はあっちだったのか?

が、少しづつではあるものの、大キレットの稜線のガスも晴れてきた。
9:13、ついに長谷川ピークが見えてきた。
おいおい、こんなところを越えるのか。
誰か巻道を作ろうとは思わなかったのか。

さて、ここと長谷川ピークの間に、この大キレットの最低鞍部がある。
その最低鞍部に着く頃には西側のガスも標高の低いところでは晴れ始め、谷筋がよく見えるようになってきた。

9:23、最低鞍部から再び登りに転じる。
このすぐ向こうに長谷川ピークがあるのだ。

次第にガスが晴れてきたので、周りを見渡しながら歩いていると、ついに、ここまで自分が歩いてきた稜線のガスが少しづつ晴れてきて、徐々にその姿が顕になってきた。

ここまで、視界が効かない中を黙々と歩いてきたが、ついに自分が歩いてきた稜線の姿を目にすると気が来たのだ。

そしてついに、ピークが姿を現す。

見た瞬間、あまりの威容に笑いが込み上げてきた。
腹の底から笑った。
なんと頼もしい姿なのか。
なんと自分はちっぽけなのか。

あのてっぺんの、そのまた向こうから、僕はここまで歩いてきたのだ。

これが生きるということか。
これが生きるということならば、生きているのも悪くない。


できることならばいつまでも眺めていたいところだが、ここから先が難所続きでもあるので、先を急ぐことにする。

ガレた斜面の飛騨側には、鋭い突起。

この斜面を登っていくと、足元は石屑ではなく、岩となってくる。

稜線付近はすっかり岩だ。

僕が稜線にたどり着く頃には、ついに大キレットにも青空がやってきた。
こんなに嬉しい青空は、そうそうお目にかかれるものではない。

が、長谷川ピークは稜線に出てからが地獄だ。
岩の上り下りはクライミングジムで随分練習したが、クライミングジムでは練習できないようなムーブを要求されるシーンがたくさん登場する。

まずは、ここ。
「⇔」マークの向こう側は崖。そこを下る。
写真を撮る余裕は無い。

その次には、崖のトラバース。
これは渡り終わってから振り向いて撮った写真。
渡る前は、そもそも何がどうなっているのかもよく見えない状態で始まり、状況が分かった頃には写真を撮れる状態ではなくなる。
たぶん、落ちればハイマツをかすめるように何百メートルか垂直落下して終了だろう。

そして、絵に描いたようなナイフリッジにも、コースを示す「○」マークが。
こんなところを何度も信州側と飛騨側に乗っ越させられて、訳が分からなくなってくる。

エッジの上を歩かせるだけでは気がすまないらしく、ちょくちょくエッジを巻くようにトラバースもさせられる。

気付くとピークを越えていて、眼前に北穂高の崖が見える。
これを登らないとゴールできないのか、、、と絶望感を思い知らされる景色だ。
(が、実際に行ってみたら、この崖は登らないコース設計になっていた。)

振り向くと、長谷川ピークのピーク部分。
これで、難所の1つをクリアした。
はやくA沢のコルで休憩したい。

が、まだまだ鎖場は続く。
しかしながら、もはやこの程度の場所では、全く何も感じなくなっていた。

9:57、やっとの思いでA沢のコルに到着。


このA沢のコルは、大キレットの休憩場所として定番となっている場所だ。
このため、示し合わせたかのように多くの人たちが休憩していた。決して同じパーティというわけでもないのに。

ここで僕もザックを下ろし、ポカリスエットを呷る。
美味。

5分ほども休憩しただろうか。
他の人たちが出発したのを見計らって、僕も出発する。
向かうは北穂高。

背後には、さっきまで悪戦苦闘した長谷川ピークが。
この姿を見ることができただけでも、今回の山行の苦労が報われたような気がした。

ルートは、さっき長谷川ピークから見た絶望的な崖をやや東側に巻くように南下する。
といっても、どっちにしろ崖だ。
そろそろお腹いっぱいなんですが・・・。
と思っていた、10:28、ついに飛騨泣きが見えてきた。

某雑誌で飛騨泣きの写真を見て、自分にとってここが一番の難所になるに違いないと思っていた。
本当に泣いちゃうかもしれないとも思っていた。
その場所が、まさに目の前に迫ってきたのだ。

心を落ち着けて、一気に登る。

あれ??? 思ったより簡単だぞ・・・。

何の歯ごたえも無しに、すいすい登れてしまった。。。
こんなはずじゃなかったのに。。。

思うに、やはりボルダリングを中心とした屋内施設でもトレーニングは無駄ではなかったのだ。
ボルダリングの課題レベルで言えば、初心者レベルに近い難易度だろう。
屋内施設と違うのは、荷物を背負っていることと、落ちたら死ぬということだけだ。
これなら、長谷川ピークの方がよっぽど怖かった。

ここを登りきると、その向こうには再び崖。
ここをややトラバース気味に高度を上げ、またもや稜線を跨ぐと、反対側には金属製のステップがあった。
これは心強い、と意気揚々と踏み出したが、この3つのステップの向こうにも崖が続いていた。もちろん、ステップは3つでオシマイ。
なんてことだ。
あとは崖のちょっとした窪みにつま先をかけて、鎖を握って這うようにトラバースする。
普段、鎖場でも鎖に頼らないように歩行しているのだが、今度ばかりは完全に鎖を両手で握るしかなかった。
油断していた分だけ、かなりの恐怖を感じた。
こんな後出しジャンケンみたいな場所、大嫌いだ。

ここを越えると、ルートはついに北穂高岳の山頂直下の崖へ向かう。
「○」だの「→」だの「↑」だのが、やたらペイントされている。
ルート案内としてはありがたいのだが、往年のギャグ「右を見ろ、上を見ろ、左を見ろ、ざまー見ろ」を思い出す。(若い人は知らんだろうけど。)

この崖を登りきったところで、10:48、滝谷展望台に到着。
この「滝谷」は、一昨日の林道歩きで通過した、あの「滝谷」だ。
その谷筋をずーーーっと遡ると、ここにたどり着くというわけだ。

展望台に登ると、飛騨側の絶壁がすさまじい。

岩峰の上に、小さく見える北穂高小屋。
あそこが、大キレットの終点だ。

反対の信州側は常念山脈が美しい。
この対比は、まさに国境といった様相だ。

景色をたっぷり満喫して、再び歩き出す。
北穂高小屋はもうすぐのはずだ。

10:58、「北ホ あと200m」のペイントが。

まわりを見渡してみたが、ルートは崖を上に上に伸びている模様。
この「あと200m」は、きっと標高200mってことなんじゃないかと。

もうどうしようもないので、諦めて黙々と登る。

11:17、北穂高小屋がもう目の前だ。

11:19、ついに北穂高小屋に到着。

もしかしたらテラス席の登山者たちから羨望のまなざしで迎えられちゃうのかなー、などと妄想しながらたどり着いてみたら、テラス席に居たのは僕より先行して大キレットを通過していった方々ばかり。羨望どころか、「ああ、やっと着いたの?」みたいな目で見られる。
現実は厳しい・・・。

だが、何はともあれ、これで今回の山行の最低限の目標は達成できたわけだ。
もうこれで思い残すことは無い。

達成感に酔いしれながら、売店でコーラを購入し、一気に飲み干す。
思えば、僕の人生でこれほどまでの達成感を感じたことがあっただろうか。
いや、むしろ、人生において初めての達成感を感じていると言っても間違いじゃない。
僕のちっぽけな人生において、この大キレットはエポックメーキングと言うべき存在となるのかもしれない。


とはいえ、このままここで腰を落ち着けるわけにはいかない。
まだ午前中なのだ。


(「3日目その2 北穂~横尾」につづく)







2 件のコメント:

  1.  初めまして、以前からちょくちょく読ませていただいていました登山歴1年ちょっとの初心者です。
     ここ最近槍ヶ岳~大キレットについて色々な方の山行記録を読みあさっていて、久々にこちらにお邪魔したらなんとこちらも大キレット!

      ”これが生きるということか。
      これが生きるということならば、生きているのも悪くな  い。”

     今までの記事の中で一番感動しました。書いて下さってありがとうございました。
     自分もいつか岩登りの訓練を積み、ギアを揃えて長谷川ピーク~飛騨泣きにチャレンジしたいと思います。これからもブログ、楽しませていただきます!

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    1. >Manabu Hashimoto様

      こちらこそ、このような冗長な駄文を読んでいただき、心から感謝です。
      僕は臆病者なので、大キレット行きはかなり逡巡しましたが、やはり行って良かったです。
      ぜひ、万全の準備を整えてチャレンジしてください。

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