会社のド初心者を連れて、石老山へ。
石老山は、相模湖の南に位置する標高700mそこそこの山だ。
標高は低いが、古くから信仰の山として親しまれ、今も日帰り登山の山として人気がある山だ。
前々から気にはなっていた山だが、わざわざ自分のための登山として出かけるほどには優先度が高いわけでなく、後回しにしてきた経緯があったのだが、初心者を連れて行くにはちょうど良さそうだ。
朝、新宿駅からJRに乗って相模湖駅へ。
そこから神奈川中央バス(略称:カナチュウ)に乗って、10:21、石老山登山口バス停に到着。
登山道入口には、キレイな公衆トイレと石老山のコース概略がある。
このコース図、まさに今回予定しているルートそのものだ。
トイレに入ったり、準備運動をしたり、靴紐を結んだりして、10:30に出発。
空模様は露骨に悪い。
天気予報は曇りだが、かなり雨が降りそうな曇りだ。
雲もかなり低く、たかだか標高700mの石老山の頂上すら見えない。
しばらくは舗装道路を歩く。
随所に道標が設けられている。
10:42、この道標に従って石段を登る。
この石段を登ると相模湖病院の裏に出る。
なんだか自分たちが場違いな格好で姿を現してしまったような気がして、なんとなく申し訳ない気持ちになる。
100mも進むと、いきなりトレイルが始まる。
昨日までの雨天により、登山道は濡れていた。
このため、最初に現れた石畳が滑って、すこし怖い。
さすが奇岩の山、石段も岩に刻まれている。
この岩の質は礫岩。
このため、石畳と異なって滑りにくくて助かった。
10:48、さっそく大きな岩が現れる。
説明書きには「滝不動」とある。
たしかに、顔相だけがポツンと置かれていた。
この滝不動を形成する岩と、階段を挟んで向かいの岩とを合わせて「屏風岩」と呼ぶ模様。
まさにそこは切通し。
この石段の上には、仁王岩がある。
この先、トレイルはいよいよ気持ちの良い森となる。
さすが信仰の山だけあって、人工林とは違って野趣がありつつ、きちんと人の手が入っている快適さもある。
そして、山全体に漂う凛とした雰囲気。
天気のせいもあってか登山者が僕たちの他に全く見当たらず、その凛とした雰囲気をさらに高めてくれている。
10:54、駒立岩に到着。
ほぼ同じ場所に、力試岩、文殊岩もある。
大きいほうが文殊岩。
小さいほうが力試岩。
10:57、顕鏡寺の石段に到着。
この石段を登ると真正面に、しめ縄のかかった大きな杉の木が立っている。
この杉は「蛇木杉」というそうだ。
説明書きを読んでも、特に宗教的な謂れは書いていなかった。
仏教で蛇とか言ったら、何かしら謂れがあるのかと思ったのに。
で、肝心の顕鏡寺には寄らず。
手水舎の龍がカッコイイ。
寺の縁起を読むと、道志法師という人が居たそうな。
この道志法師、道志村の名前の由来と関係あるのだろうか。
ネットを調べたが、そこを関係付けるような話は見つけられなかった。
石老山と道志村、地理的にも微妙に距離があるし、関係無いのかなぁ。
手水舎の横には、その道志法師が修行をおこなったという岩窟があった。
おそらく、修行した当時は、もっと岩窟な感じだったのだろう。
なんだか、ブロックで囲われると残念な気がするが、中には祭壇があったので、こうして囲わないとめちゃくちゃになってしまうのだろう。
岩窟の先には鳥居があり、そこから再びトレイルが始まる。
それにしても、お寺と鳥居が同居しているのを見るたび、神仏習合がいかに日本の文化に根付いているかに気付かされる。
さて、鳥居をくぐり、いよいよ本格的に石老山へ向かう。
11:03、蓮華岩、大天狗岩に到着。
結局、この岩が蓮華なのか大天狗なのかよく分からず・・・。
11:07、地図やガイドに載っていない分岐が現れる。
右は桜山展望台経由で山頂、左は八方岩経由で山頂。
今日の天気では展望台に行っても面白くないだろうと考え、八方岩経由にする。
すると、すぐにデカい岩に出食わす。
これが噂の八方岩か?!と思ったら、全く違っていた。
この岩にメリ込むように成長している木を見て、ガードレールに食い込んでしまっている街路樹を思い起こす。
生命というものは、街でも山でも、それぞれにシブトイものであるなぁ。
11:14、吉野岩に到着。
案内板によると、この岩は「弁慶の力試岩」とも言うそうだ。
岩にある窪みを弁慶の拳の跡に見立ててのことだ。
これに「力試し」という名前をつけているのを見て、連れが「昔の人はずいぶん力試しが好きだったんだなぁ。」と言う。そう、今日の連れはチャカすのが好きなのだ。
11:16、試岩に到着。
「また試すのか!」
と、連れが嬉しそうに突っ込む。
その先で、よくいろいろな山で見かけるような、木の階段状の土留が現れる。
これを登った先に現れるのが八方岩だ。
八方岩のてっぺんはこんな感じ。
そばには例によって解説板が。
さきほどの「弁慶の力試し岩」といい、この「八方岩」といい、解説板がやや皮肉っぽいネガティブなタッチなのも面白い。
で、実際の景色はこんな感じ。
たしかに、南東方面だけ眺望が良い。(だいぶガスってはいるけれども。。。)
この先の道は、ほとんど尾根筋となる。
低山とはいえ、尾根筋を歩くのは気持ちがいい。
11:34、融合平見晴台に到着。
眼下には相模湖が一望できるが、ガスっているので、あまり見晴らしは良くない。
天気が良ければ、ここからの眺めも良いんだろうなー。
11:42、「石老山 1.1km 顕鏡寺 0.8km」の表示に、ド初心者の連れは顔を曇らす。
寺からまだ800mしか来てないのか、と。
寺からここまでよりも、ここから山頂までのほうが遠いのか、と。
そう思うのも無理は無かろう。なにせ、初めての登山なのだから。
ボッコボコの木の根の道。
こういう道を見ると、今年4月に捻挫をした堂所山の巻道を思い出す。
根っこは気をつけなければならない。
次第にあたりが霧に包まれてきた。
標高を上げたからか、ガスが下がってきたのか、どちらなのかは分からないが、幻想的であるのは間違いない。
気持ちの良いトレイルを進む。
あたりがガスに包まれるようになってきて、空気中の水分が多いためか、クモの巣に細かい水滴が着いて、形がハッキリと見て取れるようになってきた。
普段気付かないだけなのか、それともこのルートにやたらとクモの巣が多いのかは分からないが、とにかくやたらと目に付く。
きらきらしていてとてもキレイなのだが、こんなに目立ったのでは虫も引っかからないだろうし、クモは商売上がったりだろうな。
12:03、いかにも山頂に向かっていそうな道。
その先には、思った通りピークがあった。
なんだか三角点みたいなものもあるし、ベンチもある。
まさかここが山頂?
それにしてはまだ時間が早いような・・・。それに、山頂を示す道標もない。いくら地味な山でも、山頂に道標ぐらいあるだろう。
でも、ここから先の見える範囲では、登山道は下っているように見える。
先日の槍穂縦走時の大喰岳のように、山頂に気付かず素通りしてしまうようなケースだってあるわけだし、ここが山頂だという可能性が捨てきれない。
今回は「山と高原地図」しか持ってきていないので、イマイチ地形を読み切れないのである。
いつもなら、いくら手抜きをしても2万5000分の1の地図をiPhoneに落としておくのだけれど、今回はそれすらも忘れていて、見ることができない。
悩んだ挙句、ここを素通りすることにした。
いくらなんでも、山頂には道標ぐらい立てるだろ。
そう思って登山道を下っていくと、案の定その先で再び登り返すことになった。
これがなかなか地味にキツい登りで、こんな感じだったり、
こんな感じだったり。
けっこう山っぽいしんどさを味わいつつ、12:11、山頂に到着。
山頂には、ベンチ兼テーブルが6台あるが、いずれも「湿っぽい」と「濡れている」の中間ぐらいで、座るところを慎重に選ばざるを得ない。
山頂の展望は南側に開けており、天気が良ければ丹沢山塊や富士山が見えるはずなのだが、今日は真っ白。
無念である。
残念がっていても仕方ないので、昼食を食べる。
雨が多少パラついたりするので、あまり長居はせずに下山を開始することにする。
最初のうちは、なだらかでよく整備された登山道。
12:36、篠原との分岐に到着。
この先から、地味にしんどいアップダウンが始まる。
やや急なアップダウンを繰り返す。
ガイドには、「ラクダのコブが5つぐらい」と書いてあったが、まさに小ピークの連続だ。
そんな小ピークの1つが大明神山。
大明神と思われる小さな祠がピークに建てられている。
これを見て、例によって連れは、茶化さずにはいられない。
「大明神っていうより、小明神ぐらいのほうが丁度いいんじゃないか?」
・・・・バチが当たるからヤメテくれ。。。
さて、そんな小ピークの最後が、大明神山の先にある大明神展望台だ。
眺めはなかなか良い。
天気が良くないので、あまりパッとしないが。。。
この展望台から先は、ひたすら下り。
ガイドにも「急な下り坂」とわざわざ書かれているぐらいなのだが、実際、連れが何度かコケそうになっていた。
道は次第に谷筋へと降りて行き、最終的には沢に下りる。
ここまで来ると、舗装道路はもう目と鼻の先だ。
13:48、車止めのゲートに到着。
ゲートの向こうは、相模湖休養村キャンプ場だ。
このキャンプ場にはコカ・コーラ社の自販機があり、誘惑に負けて僕はコカ・コーラの500mlを飲んでしまった。どう考えてもカロリーオーバーだ。
ここからは、地面が舗装道路になる。
その舗装道路を歩くこと約20分、本日のゴールである相模湖温泉「うるり」に到着。
この日帰り入浴施設は、これまで登山のたびにいろいろな入浴施設に入ってきた中でもかなり快適な方だと思う。
風呂だけで考えれば、高尾の湯「ふろっぴぃ」も相当快適だし、富士急ハイランドの「ふじやま温泉」や横浜のスカイスパもかなり良いが、総合的に考えたらこの「うるり」が一番かもしれない。
この、下山後の入浴まで含め、石老山はコンパクトながら大変良い山だった。
先月の岩槻山といい、低くて良い山があるということをつくづく思い知らされる山行だった。
次回はぜひ、晴れた日に登りたい。
(了)
0 件のコメント:
コメントを投稿