このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2013年9月21日土曜日

山行記 2013年9月14日~15日 剱岳(敗退) 2日目 一服剱まで




(この記事は「1日目 松本~室堂~剱澤小屋」の続きです。)


山の朝は早い。

特に、剱岳に向かう人たちはタテバイ、ヨコバイの渋滞に巻き込まれないように、朝まだ暗いうちから出発する。

が、だからといって午前3時前から大声でしゃべりながらビニール袋をバッサバッサして良いってことにはならんよな?!
少しはほかの客に配慮をしろ、ジジババども。


我々のパーティ内からも、未明に出発してはどうかという意見が出されたが、そもそもナイトハイクもやったことがないメンバーばかりなのにヘッドライトの明かりだけで初めての道、しかも岩がゴロゴロしているところを無事に歩けるわけがないので、却下した。
そもそも君たちのヘッドライトは、そんなに明るさが強くないではないか。しかも、メンバーの一人はヘッドライトではなくハンドライトしか持ってきていないというではないか。そんなんで未明出発など出来ようはずがない。
いや、それどころではなく、そんな早い時刻に出かけたところで、我々のパーティが渋滞を引き起こす要素になりかねん。


4:00、小屋の外の様子を見に出てみると、見事に雨。
これが出発時までに上がっていなければ、本日の剱岳山頂へのアタックは中止。明日は台風上陸の日なので、今日中に下山することとする。

5:00、朝食。

朝食を摂りながら、今日の行動について説明する。
当然、反対意見がメンバーから出る。行ってみなけりゃ分からない、行けるところまで行こう、と。

それを一喝する。
行けるところまで行くというのは、帰れないということだ。
1ヶ月前、谷川岳・西黒尾根の濡れた岩で、君たちはどれだけ手こずったのか。しかも、そのときは登りだけで、下りは天神尾根だったのだ。つまり、濡れた岩を下ったことなど無いのだ。
剱どころか前剱でも、その何倍もの難しい場所である上に、登りよりも下りが難しいいというのに、行けるところまで行ってしまったら下りてこれなくなってしまう。

当然、朝食の味などするわけもない。


検討の結果、一服剱までなら危険箇所もほとんど無く、このパーティの実力でも問題なく戻って来れるだろうと判断した。
行くのはそこまでだ。


前日のうちに中身を抜いておいたザックに、再び全ての荷物を詰め込み、6:11、出発。
写真にも雨粒が映り込むほどの天気。

まずは剣山荘に向かう。


6:35、剣山荘に到着。

剣山荘前から剱澤小屋方面を見る。

景色はまぁまぁなんだけどなぁ、、、、
雨がなぁ。。。

再び一服剱を目指して歩き出す。

剣山荘を出ると岩がゴロゴロ。


少し標高を上げて剱澤小屋と剣山荘を視界に入れる。

いよいよ岩場に差し掛かる。
まずは1つ目の鎖場。

これは全く難易度が低く、鎖を使う必然性は無かった。

次の岩場は鎖無し。

6:57、第二の鎖場に到着。
ここは、雨に濡れて非常に滑りやすくなっている上に、足場が谷側に傾斜しているので、慎重に歩かざるを得ない。
手の確保も、鎖以外に持つところもなく、なかなか厄介な場所だ。

2つ目の鎖場を抜けるとすぐに一服剱直下の稜線に出る。

7:04、一服剱のピークに立つ。
一服剱からは、目の間に前剱がド迫力でそびえ立つ。

剱澤小屋から見たときはあんなに遠かった源次郎尾根も間近だ。

ここでまたメンバーから、このまま引き返すことについて異論が出る。
せめて前剱まで行ってみないかと。
もちろん却下。

オレ一人なら、このコンディションなら間違いなくこのまま剱岳山頂に向かっていた。君らが未熟だから引き返そうと言っているのだ。そりゃ行きたいのはヤマヤマだ。オレだってそうだ。そして、オレには行って帰ってくるだけの能力がある。でも君らはどうだ? このコンディションで、君らのスキルで前剱まで行って無事に帰れるのか? その判断も十分にできない人間が、行きたいというだけで行こうとするな。

というような主旨のことを伝え、引き返す。
無事に帰って来れるスキルも無いままに、単に「行きたい」というだけで行こうとするのは、ワガママ以外の何物でもない。
僕はそんな彼らのワガママに非常に腹を立てながら、半ば強引に説得して一服剱を後にした。
こういうことがあると、やっぱりハードな山はソロの方が良いなと、つくづく思う。

彼らのスキルが未熟なのは、修練をしなかった彼らの責任でもあるが、修練をさせ切れなかった僕の責任でもある。
その両方に対する怒りで、腸が煮えくり返っていた。


いったん剣山荘まで下りて、トイレを借りる。
剣山荘のトイレは清潔な水洗トイレだった。

剣山荘を出発したあとは、剱澤小屋方面には向かわず、剱御前の稜線と剱澤小屋のコースとの真ん中を通るルートを取った。

8:09、黒ユリのコルに出る。
黒ユリのコルから剱岳方面を見ると、前剱までしか見えなかった。

剱御前の稜線はなかなかイカメしいが、登山道が崩壊しているそうなので、そっちには向かわない。

剱御前の山腹を走る登山道は、岩場というかガレ場というか。

悔しさと未練から、ついつい剱岳方面を振り返る。

まさに岩の殿堂とも言うべき風景。

8:52、雪渓を渡る。

9:03、ケルンが視界に入った。
よく見ると、「エミのケルン」と書いてある。

・・・・・・・。
これも永眠系か・・・?


草紅葉はすでにキレイだった。

9:18、ついに剱御前小舎が間近に見えてくる。

9:19、剱御前小舎に到着。ついにここまで戻ってきてしまった。
室堂方面も眺めが良い。

ここまで、雨が降ったり止んだりで、風もそこそこあったため、皆それなりに体が冷えている。
小舎の中に入って休憩がてら、剱澤小屋で作ってもらった弁当を食べる。
地味だが美味い。

人心地ついたところで、再出発。いよいよ雷鳥沢に向かう。
ここから先はもう剱岳の姿は一切見えなくなる。

小舎を出ると雨がひどくなっていて、室堂方面はガスの向こうとなっていた。

が、ガスの下に出ると、視界がかなり開けてきた。
もう花の季節も終わり。

剱御前小屋から向こうは、昨日来た道をたどるだけなので、さっさとスピードを上げて下りる。

10:47、雷鳥沢に到着。

いくらか増水している沢を渡る。

テント場を抜け、その先にある石段に取り付く。
ここがまさに、昨日すれ違う登山者が死にそうな顔で登っていた石段だ。

地獄谷も見えるし、
賽の河原方面のカールもキレイだ。

11:32、みくりが池温泉み到着。

風呂に入ってビールを飲んで、反省会をして、建物を出てみたらすっかり天気が回復していた。
みくりが池のほどりから見た山は、美しかった。クソッ!

本当に今年の夏山はとことんチグハグだ。

こうして、無念のうちに僕の剱岳1回目は完全敗退で終わった。


(了)







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