このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2015年8月9日日曜日

山行記 : 2015年8月1日~ 前穂高・奥穂高・西穂高縦走 1日目その1 岳沢経由で前穂高まで



(この記事は「0日目 上高地にて」の続きです。)


山の朝は早い。
まだ日の出までたっぷり時間のある午前3時、のそのそと起き出して出発準備にとりかかった。
もともとの予定では6:00出発だったのだが、午後から天気が不安定になるという天気予報を信じて、早出をすることにしたのだ。

出発は4:30。
月明かりの中を、まずは河童橋に向かう。
1日前はスーパームーンだったが、今夜の月も負けず劣らず大きい。

前方にノソっと動く物体があってギョっとしたが、カエルだった。

河童橋に到着してみると、月明かりに照らされた焼岳がまるで油彩のような陰影を描き出していた。

河童橋の脇にあるベンチに座って靴紐を締めなおしている間にも、空はどんどん明るくなっていく。
「やうやう白くなりゆく山際」とは、まさにこのことか。季節は全く違うが。

ホテル白樺荘の前を抜け、岳沢の登山口に向かう樹林帯に入ると、再び道は暗くなる。
ここで、熊鈴を忘れたことに気付く。
ヤバイ。
仕方が無いので、50m歩くごとに、2、3度手を叩くことにした。パチ、パチ。

梓川に流れ込む支流の水面には、モヤがかかって幻想的な美しさだ。
斧を放り込んでみたら、もしかしたら金の斧がもらえるかもしれない。

5時近くなると空もすっかり明るくなり、ヘッドライト無しでも困らなくなった。
ただ、山に囲まれた上高地に日差しが降り注ぐには、まだ幾ばくかの時間がかかる。

4:59、岳沢の登山口に到着。
いよいよ、登山が始まる。
天気が崩れる前に、本日の寝床である穂高岳山荘に到着しておきたい。タイムリミットは14時といったところか。

登山口から先は、まさに鬱蒼とした樹林帯。

5:10、岳沢ヒュッテによる案内板が、木にくくり付けられていた。
この案内板の番号は「9」。
「岳沢原生林」と書いてある。
このあと、このような案内板は岳沢ヒュッテまでスゴロクのように転々と続いている。

コケのじゅうたんも鮮やか。

ノリウツギも鮮やかに咲いていた。

5:16、やたらたくさんの倒木に埋め尽くされた地帯に出食わした。
登山道はこの倒木地帯を迂回するように付けられている。

回り込んで上から見るとこんな感じ。

ほとんど眺望もないままに、引き続き歩き続ける。

登山道がここまで、石の多い印象。
滑らないように気をつけながら歩く。
そんななか、5:26、石の階段が現れた。
こんなにもキレイに整えられた道。頭が下がる思いだ。

この階段を登ったあたりから上高地方面を眺めると、山々の連なりが見えた。

5:32、岳沢ヒュッテの案内板「7」が現れる。
「風穴」と書かれている。
どこだ?

と思ったら、ここから登山道沿いに数メートル上がったところにあった。
確かにこの場所だけ冷気が流れてくる。涼しい。
快適すぎて立ち去り難いが、ここの留まっていても仕方が無い。
後ろ髪を引かれながらも、先を急ぐ。

引き続き、石の登山道が続く。

ヤマルリトラノオが咲いていた。

5:41、開けたガレ場に出た。
西穂高の稜線が目に飛び込んでくる。

岳沢ヒュッテの案内板「6」によると、「見晴台」と呼ばれる場所らしい。

実際、見晴らしは良い。

登山道はまたすぐに樹林帯に入る。

ヤマホタルブクロ。

木々の切れ間から、たまに見える西穂高の稜線。

5:53、岳沢ヒュッテの案内板「5」が中間地点をお知らせしていた。
おそらく、登山口から岳沢ヒュッテまでの中間地点ということだろう。

ゴゼンタチバナも咲いている。

樹木の種類もだいぶ変わってきた。

さらに進むと、登山道の向こうに畳岩尾根ノ頭のあたりが見えた。

登山道に生えるナナカマドは、すでに葉の赤く色付いているものが多かった。
やれやれ、もう夏も終わりか。まだ始まったばかりだというのに。(村上春樹風)

6:09、案内板「4」が現れる。
「西穂展望所」の言葉にたがわぬ西穂高っぷりだ。
こんなノコギリの歯で首を切られるのだけはイヤだ。

その先では、石段の向こうに奥穂高方面が見える。

振り返ると、いよいよ六百山の山頂が見えるようになってきた。

目の前にそびえるのは奥穂高か?

6:15、案内板「3」が現れた。「石階段」と書いてある。
確かに、立派な石階段が続く。

6:25、案内板「2」。「胸突き八丁」。

たしかに、まぁ、急といえば急。

進行方向左手、岳沢の展望が開けたら、そこには白い花が一面に点々と咲いていた。

6:35、案内板はついに「1」。「小屋見峠」だそうだ。
 たしかに、岳沢ヒュッテが見える。

6:43、岳沢ヒュッテに到着。

小屋の前には「PATROL」とプリントされたTシャツを着た、屈強な男性が2名いた。
おお、山岳救助隊だ。イカツイ。

小屋でポカリスエットを購入し、少し休憩をする。

小屋のテラスから眺めた上高地方面。
ここまで来てしまったか。。。

ここまではただの斜面歩きだが、ここから先がいよいよ岩場の連続になってくる。
6:55、いよいよ小屋を出発し、前穂高を目指す。
諦めてとぼとぼと歩き始める僕の背中に、救助隊のお兄さんが
「気をつけて!」
と爽やかに声をかけてくれた。
が、僕はぎこちなくお礼を言うのが精一杯だった。この際に待ち受ける、未知の核心部に対する緊張でいっぱいだったのだ。

岳沢ヒュッテからの道、つまり重太郎新道は、いきなり階段で始まる。

石段を上ると、水場がある。

そこからテント場が始まる。

沢にはまだ雪がしっかり残っていた。

テント場には、けっこうテントが残っている。

テント場を抜けるころから、登山道沿いに花が増えてきた。標高で2,200mちょっとというところか。

オオヒョウタンボク。

クルマユリ。

一面の花畑。

夏山の醍醐味は、やはりこれだ。

7:17、岩場がついに始まる。

登山道は岩場でも、取り囲む環境は花だらけ。

シモツケソウ。

名前が分からん。

黄色い花も点在。

岩っぽい道がだんだん険しくなってくる。

どんどん険しくなっていく。

険しさに事欠いて、7:36、やたら長いハシゴが現れる。

ハシゴの上から見た上高地方面は、六百山、焼岳、乗鞍岳がよく見える。

登山道は、なおも岩。

7:47、小さなハシゴ登場。

ハシゴを上ると、上りと下りで道が分かれていた。
小さな手書きの道標に従い、上り専用ルートを行く。

7:54、上り下りの道の合流地点に到着。
下りの人向けのメッセージと思われる注意喚起が書かれていた。
「まだまだ気を抜かず、安全に下山してください」

たしかに、前穂からここまで下りてくると、気が抜ける頃かもしれない。
だが、核心部を抜けたところが一番事故を起こしやすい場所でもあるのだ。

ところで、ここまで非常に虫が多い。
花の季節だからかもしれないが、ハエなのかハチなのかアブなのか、よくわからない虫(多分ハナアブの一種だと思う)が異常なほど飛び回っている。(岳沢ヒュッテのブログでも、今年は虫が多い旨が報告されている。)
噛んだり刺したりはしてこないので特に害は感じなかったが、ハシゴや岩に大量に留まっていて、下手に手を着くと潰してしまいそうになる。

そんな虫の大量発生を表した風景がこちら。
この光の点は全部虫だ。
若干萎える。

8:03、ハシゴが現れる。

ハシゴから見える、西穂高の稜線と裾野の長さ、そして岳沢ヒュッテ(写真左下隅)。

8:10、鎖場が現れる。
 その先にもそのまま鎖場が続く。

鎖場を上りきると、石段が現れる。

さらに岩場の連続。


イワギキョウも咲いていた。

険しい岩場を越えると、
どんどん広がる景色。

明日は、この稜線を歩くのか・・・。

前穂~明神の稜線。

前穂高へと続く道。

エッチラオッチラ岩場を上り、
 たまに下る。

延々と上る斜面。
 この斜面を上って振り返ると、随分標高を上げてきたものだと実感する。

所によっては、登山道が木枠で補強されていた。

西穂高の稜線と焼岳の展望がすばらしい。

前穂高がどんどん近付いてくる。
 この逆層の場所は、雷鳥広場と言うらしい。
さすがにこんなに晴れていると、ハイマツから出てくるライチョウはいないだろうな。

さて、ここまで来ると、紀美子平はもうすぐそこだ。
いかつい岩場を上り、
 鎖場を越え、
「○」マークを頼りに歩く。

こんなところにも花は咲く。
ウザギギク。

交互通行しながら岩場を通過し、
9:31、やっと紀美子平に到着。
紀美子平の「紀美子」とは、この重太郎新道を拓いた穂高岳山荘初代主・今田重太郎さんの娘さんの名前。
紀美子さんは23歳で亡くなったそうで、その娘を偲んでこの地に娘の名前を冠したそうです。(参考

ここからは、荷物をデポして空身で前穂高岳の山頂を目指す。

上り始めて紀美子平を見下ろす。
こうして見ると「平」といえるほど広い場所では無い。
かつて、この僅かなスペースに幕営しながら今田重太郎は道を築いたのだ。胸が熱くなる。

その紀美子平の向こうには、雄大な景色が広がる。

明神への険しい稜線を見やると、はっきりとした踏み跡がある。
よし、近いうちにあの道を歩いてやろう。
だが、今は前穂高に登る。
登る登る。


吊尾根の向こうに槍ヶ岳も見えてきた。

10:24、ついに前穂高岳の山頂に到着。

山頂は意外と広い。

前穂高の山頂で360度見渡した動画を撮ってみました。

前穂高岳は、これ単体を目指して登るだけでも価値のある山だった。


(「1日目その2 吊尾根から奥穂高岳へ」につづく)




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