このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2011年10月18日火曜日

2011年10月16日 甲州フルーツマラソン大会 大菩薩コース

甲州フルーツマラソン大会の大菩薩コースは、もともとは「大菩薩峠登山競争」という名の大会だったが、市町村合併を機に「ぶどう郷マラソン」と合併して、甲州フルーツマラソン大会の種目の1つとなった。

そんな大菩薩コースは元が「登山競争」というだけあって、23kmかけてひたすら1,200mの標高を駆け上がるという、アップダウンじゃなく、アップアップのコースである。どう考えても参加者はドMだ。

そんなドMの仲間入りをすべくエントリーし、ついにこの日が来てしまった。。。


スタートは16日の朝9:30なので、前日入りした。

宿の最寄り駅である勝沼ぶどう郷駅に到着したのは午後5時過ぎ。
雨が降ったり止んだりの不安定な空模様の影響で、すでに駅前は薄暗い状態。

















そこから宿まで歩いて15分。街灯のほとんど無い道をひたすら登って到着。
ただでさえ翌日のレースのことを考えると気が重いのに、気持ちがより沈む道であった・・・。

その夜はずーーっとひどい雨が降りっぱなしで、果たして天気はどうなってしまうのだろうかと気を揉んだが、朝になってみるとすばらしい快晴。

雲海と、その向こうに南アルプスの山々が見えた。















写真左下に見えているのが甲州市の町並み。

宿の送迎で朝8時前には会場入り。
まだそれほど混んでおらず、すんなりと受付を済ませた。
といっても、そもそも大菩薩コースはエントリー自体が300人を下回るような種目なので、ピーク時でも受付には誰も並んでいなかった。

















大菩薩コースだけは、片道コースで帰りは送迎バスで受付会場に戻るため、出場者の手荷物を送迎バス乗り場まで係の人が持って行ってくれるサービス付き。
貴重品も別途預かってくれるが、僕は貴重品を持って走るのでお願いしなかった。

午前9時を回ったところで、大菩薩コース出場者は、他のコースに先んじて受付会場からスタート地点へ移動となる。
受付会場から数百メートル移動するのだが、プラカードを持ったオネーチャンが先導してくれるので非常に明示的であり、そのため他のコース出場者が「大菩薩の人たちよ、ヒソヒソ」と話しているのが聞こえてきた。恥ずかしい・・・。

いよいよスタート地点に出場者が集まり、スタートの合図を待つ。

















この時点で憂鬱さはMAX。
ずーーっと吐きそうになっていた。

が、いざスタートしてみると、なんだか急に楽しくなってしまった。
何故だかわからないけど、なんだか楽しくて顔が自然にほころんでしまう。

思えば、この日のために、ここ2ヶ月ほどトレーニングメニューを坂道中心にしてきた。
今がまさにその集大成なのである。嬉しくないわけがない。

レースは序盤からいきなり上り坂で始まる。
地元でフルーツラインと呼ばれている道へ駆け上がり、はるか左手に南アルプスを臨みながらの気持ちの良い眺めに足取りも軽くなる。

とはいえ、あまり足取りを軽くしてはいけない。
すこし抑え気味でいかないと、後半になって足が死んでしまう。

と思うのだが、どうにも気持ちよすぎて足が止まらない。
坂中心の練習メニューにしていたおかげで、上り坂が全然苦にならないのだから、気持ちよくないわけがない。

しかも、上り坂しか無いと思っていたら、10km地点ぐらいまでは何度か下り坂があり、そのうちの1つは1km近い距離がある下りだった。ついついスピードが出てしまう。
下りで足に負担をかけないようにするには、足を回転させて体重を前に逃がす。そのためには、ある程度スピードが出るのはやむを得ないのだ。
このため、10km地点あたりまでで1時間を切るようなペースで走ってしまった。

目標タイムは3時間。3時間を切れたら、来年の乗鞍天空マラソンにエントリーしようと心に決めていた。つまり、3時間以内にゴールできればいいわけで、何もそんなにあくせく走る必要はないのだが、「このペースでこのまま行けたとしたら・・・」などという邪念もついつい頭をもたげてきたりする。

が、10km過ぎたあたりから、暑さが堪えるようになってきた。
この日の甲州市の最高気温は、東京と同様に30度近くまで上がった。決してマラソンに適した気温ではない。
まだ標高もそれほど高くなく、日差しを遮るものもない一本道をひたすら走るわけだから、夏場のトレーニングと変わらないぐらいに汗が噴出してくる。
給水所は全10箇所も用意されているのだが、後半の山岳地帯に固まっているため、10~14kmぐらいのところでは、非常に喉の渇きを覚えた。

何度自販機の前で止まろうと思ったことか。

もちろん、この時期にこの気温は誰も想定できない話なので、本来であれば給水ポイントの設置の在り方は正しいはずだ。大会運営サイドには全く落ち度は無い。


そんなこんなで、その後もやっぱりそう簡単にいかせてもらえるわけがない。
開会式で大会関係者が「大菩薩コースは後半、山岳コースなので」とかなんとかアナウンスされていたが、後半に入ってすぐの13km地点あたりから、かなり様子が変わってくる。
かなり斜度のきつい上り坂が延々と続くようになるのだ。
まだ”山”という感じになる前からかなりキツイ。

そこで、14kmあたりから作戦を変更した。
上り坂は早足で歩くことにし、斜度の緩いところだけ走るようにしたのである。

トレイルランニングの際も、キツい登りを無理に走るよりも歩いてしまったほうが、体力のロスが少ない上に、タイムも早くなるというのがセオリーだ。
まさにそれを実践したのだ。

そもそも山岳コースとはいえ、所詮は舗装道路で自動車も走れる程度の道なので、登山に比べたら全然緩い斜面なわけだ。しかも、登山の際とは異なり空身である。
マラソンと考えるからシンドイのであって、登山と考えたらこんな楽なことはない。

というわけで、14km地点あたりからほぼずっと、5~6km/hを保って歩き続けた。
マラソン一筋の人から見れば邪道かもしれないが、僕はロードもやればトレランもやれば登山もやるという雑食なので、こういうシチュエーションで歩きに切り替えることに少しも抵抗感が無い。
ようは目標タイムをクリアできればいいのである。

と書くと、まるで余裕だったかのように見えるかもしれないが、斜度7~10%程度ぐらいの道を5~6km/hで歩くというのは実際のところ、主観的には、平地を10km/hで走るのとおなじぐらいシンドイ。なので、物見遊山というわけにもいかない。
そんななかで、レース中に唯一撮影した写真がこれ↓。

















山の上の方では、ぼちぼち紅葉が始まっていた。
コースわきには垂直落下の大きな滝や、おだやかなナメ滝などがあったり、なかなかの景色である。
が、路上に栗やシイの実がたくさん落ちていたり、沿道に「熊出没注意」という看板があったりして、先月南アルプスのふもとで出会った熊を思い出し、背筋が冷たくなる。。。

そんな山の中の道は、まさに峠の舗装道路で、うねうねと蛇行を繰り返しながらどんどん標高を増していく。
18km地点を過ぎたあたりから、日陰に入ると涼しさを強く感じるようになった。これぞまさに山の空気だ。

道路わきには、「上日川峠まで○km」という表示が200mおきに立てられており、まさにそれがゴールまでの距離を表している。
この距離表示のおかげで、自分のペースがキープできているのかの確認をこまめに行うことができる。
手元の時計を照らし合わせて、3時間を切るタイムでゴールするためには、どうやっても5km/hを下回ってはいけない。カチカチになった太ももやふくらはぎに鞭打って、歩く歩く。
地味に肺も苦しい。

道路わきの表示が「上日川峠まで0.4km」となったころから、ゴールにたどりついたランナーを拍手で迎える声が聞こえるようになった。
それを励みに、そこからラストスパート。
そしてゴール!

タイムは3時間をわずかに下回ることができた。目標達成!
思わずガッツポーズが出た。


ゴールゲートはこんな感じ↓。(ランナーはゲートの向こうから走ってきてゴールをする。)


















ゴール地点である上日川峠にはロッヂ長兵衛という山小屋があり、お金を持って走ってきたランナーたちは、生ビールを飲んだりジュースを飲んだりソバを食べたりしていた。


















僕も三ツ矢サイダーを1本飲んだ。たまらなく美味い。幸せ。

そして、山バッヂを購入。
















山頂まで行ったわけではないのでちょっと反則な気もするが、車でここまで来たわけじゃなく、まったく遠くの勝沼から自分の足だけでたどり着いたので良しとする。

その後、ゴールした選手たちは、送迎バスの待つ大菩薩湖北岸駐車場まで約15分の山道を下る。
去年はこの上日川峠から送迎バスまで8kmもの山道を下らなければならなかったそうなので、大幅に待遇が改善された感じだ。

15分の山道は、だいたいこんな感じ↓のどかな場所だった。























このトレイルを抜けると、急に視界が広がり、その先には送迎バスの発着所である駐車場が広がっている。
大会運営サイドがテントを張ってランナーの到着を待ってくれていた。


















テントまでたどり着いてみると、そこではまず弁当が貰え、さらには、麦茶、ワイン、ぶどうジュースが振舞われ、ぶどう食べ放題のサービスまで提供されていた。
地面には大きなブルーシートが敷かれており、そこでのんびり飲食できる段取りだ。
さらに、出発前にお願いした手荷物もここで引き渡され、男女別の更衣室用テントまで用意されていた。

実はこれも去年は、弁当は上日川峠で渡され、寒い中着替えも無く、皆ぶるぶる震えながら弁当を食べていたそうだ。
しかも、今回のようにワインやぶどうが大菩薩コースの出場者向けに確保されているということもなく、大菩薩コース出場者がバスで会場に戻った頃にはほぼ何もなくなっているという悲しい状況だったらしい。

おそらく今回は、前回のそのような点を改善するべく、こんな至れり尽くせりのサービスをしてくれているのだろうと、感謝の念に堪えない。
たかだか300人にも満たない大菩薩コース出場者のためにここまでしてくれるというのは、リッツカールトンにも負けないホスピタリティだと思うのである。

ワインとぶどうと弁当と素敵な山の風景。
















おかげですっかりピクニック気分であった。
そういや、こんなのんびりとした平和な行楽気分は、久しく味わってなかったなぁ。。。

ちなみに食べ放題のぶどうは、「甲州」↓






















と、「種なし巨峰」↓






















と、あと1種類用意されていた。

「甲州」は酸味の強いさわやかな味わいで、白ワインの原料として使われることの多い品種のようだ。

「種なし巨峰」は、巨峰の美味しさそのままに、種だけ無くなったという素晴らしい品種で、もうこれだけ食べて丸一日すごしたいという気分にさせられた。

ぶどうでお腹がいっぱいになったのは、生まれて初めての経験だった。
お土産として大量にぶどうを持ち帰った出場者も多々。
大盤振る舞いである。

その後、バスで会場まで戻り、完走証をもらって、近くの日帰り温泉「天空の湯」に徒歩で移動。


















ハーフや10kmの部の人たちはもっと早いタイミングでこの温泉に来ていたので、僕がたどり着いたころにはもうピークを完全に過ぎていた。超ラッキー。

この建物は町を見下ろす小高い丘の上に有るため、非常に眺めが良い。
しかも、温泉には露天風呂がついていて、湯船に居ながらにして町を睥睨しつつ、その向こうの南アルプスを眺めることができるのである。まさにその名に恥じない天空っぷりである。
ちなみに、備え付けのシャンプーとボディソープはぶどうの香りだった。何から何までぶどう尽くしの町である。


【総括】

走り出すまでは憂鬱で仕方なかったが、走り出した後はもう幸せ一辺倒で、非常に恵まれた一日であった。
来年も出場したいぐらいである。

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