このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2014年10月13日月曜日

山行記 : 2014年10月11日~ 南八ヶ岳 赤岳・阿弥陀岳 1日目 美濃戸口~行者小屋



(この記事は「計画概要」の続きです。)


山の朝は早い。
いつもの新宿7:00発のスーパーあずさに乗るのだが、指定席が取れなかったため、自由席確保のために発車30分前からホームで並んだ。いつもより早い朝だ。

が、発車30分前の時点ですでに長蛇の列。
やはりみんな、この3連休の1日目と2日目に賭けているのだろうか。

なんとか席は確保できたものの、連れとはバラバラの席となった。熾烈な席争いだった。
隣の席の、僕より少し年上だろう女性が手にしていた計画書がたまたま目に入ったのだが、行き先は編笠・権現。
今日あたりはやはり、この電車で松本まで行く人は少ないんだろうなぁ。


9時過ぎ、定刻通り茅野駅に到着。
美濃戸口行きのバス停には、すでに人が並んでいた。

登山客を満載したバスは、30分ほどかけて美濃戸口に到着。

美濃戸口の八ヶ岳山荘前には、たくさんの登山者達が身支度をしていた。
駐車場も、見たことがないぐらいに満車だった。

登山届を出し、靴ヒモをしっかり結んで、10:29、いよいよ登山口を出発。
すでに林道の先にある駐車場は満車だそうで。
そりゃ、こっちの駐車場が満車状態なぐらいだから、当然だよなぁ。。。
幕営地が確保できるか、不安がよぎる。

ここから美濃戸山荘の分岐まで、退屈な林道歩きだ。
と思っていたら、今年はこんな標高の低いところにまで既に紅葉が降りてきているようで、黄色や赤に色付く樹林が目に楽しい。
この林道歩きが、まさかこんなに楽しいとは。
嬉しい誤算である。

たびたび通過する自動車を避けつつテクテク歩き、11:17、やまのこ村に到着。
やまのこ村の建物前を通過すると、駐車場の向こうに阿弥陀岳が見えた。
最初僕はこれを赤岳だと思ったのだが、連れに訂正されて地図を見ると、たしかにここから赤岳は見えない。
ずっとあれを赤岳と誤認していた。恥ずかしい。。。

赤岳山荘の駐車場は、まさに紅葉真っ只中。
このあたりはツタウルシとカエデが多いので、赤い色がよく目に付く。

11:28、美濃戸山荘に到着。
「無料休憩所」の張り紙に甘え、お茶をいただきながら持参したおにぎりを食べていると、山荘の方がお漬物を出してくれた。
これがまた、しその風味が効いた美味しいお漬物で、下山時にはここで蕎麦を食べて帰ろうと心に決めた。

のんびりしすぎて、再び歩きだしたのは20分後だった。
分岐を右に進む。

南沢ルートに入るのは、実は僕にとって初めてのことだった。
そもそも僕は、八ヶ岳よりも奥秩父に足が向いてしまうマイナー思考なので、全山縦走をしたことに概ね満足してしまい、あまり八ヶ岳には来ないのだ。(今回も、もしソロだったら甲武信ヶ岳に行っていた気がする。)

そんなわけで、南沢ルートも行者小屋もまだ未経験だった。
そんなこともあり、どうせ赤岳鉱泉への北沢ルートと同じようなもんだろうとタカをくくっていた僕は、南沢ルート1歩目から驚いた。
これは登山道じゃないか!
いや、山なんだから登山道であるのは当然なのだけれど、北沢ルートのような林道みたいな道を想像していたので面食らったのだ。
赤岳鉱泉も行者小屋も経営が同じ系列なので、ルートもてっきり同じようなもんなんだろうと思ってしまっていた。やはり現地まで来てみて初めて気付くことも多いなぁ。

それでも、分岐からしばらくは逍遥ルートという感じで、なだらかな傾斜が続いていた。
素敵な樹林で、この道が好きになった。

が、次第に登山道が石でゴロゴロしはじめ、勾配もきつくなってくる。
「今日はテント場までだから」と軽く考えていた僕の脳裏に、「計算外」の3文字がよぎる。
(連れは何度もこのルートを通ったことがあるようで、それなりに覚悟してきていたようだ。)

11:57、小さな橋を渡る。
南沢は素敵な渓流だった。

沢を渡ったあとに続く、地味に筋持久力を削る上り斜面。

12:09、長めの橋を渡る。
この橋を渡ってから、斜面がさらにキツくなる。

12:18、傾斜をさらに増した斜面に、階段が現れる。
沢沿いのなだらかな登山道としか考えていなかった僕には、イメージとのギャップに最も苦しんだ場所だった。

沢から離れるように付けられたこの急登を登ると、木々の間から御小屋尾根のカラマツ(たぶん)の紅葉がよく見えた。

12:21、眼下に砂防ダムが見えた。
そうか、こいつを高巻くためにこんな急坂を登らされたのか。

この高巻きを終えると、再び沢沿いに道がつけられている。

登山道の山側の斜面はふわふわのコケの絨毯に覆われていた。


12:33、登山道の脇に大岩が現れる。
やはりこういう大岩には、大小もろもろの木の棒がつっかえてある。

12:34、砂防ダム発見。
またもやこれを高巻く。
急登がしんどい。

色付いたカエデに目をやり、気を紛らわせる。

地味にしんどいが、
景色は良い。

登山道の石のサイズは、徐々に大きくなっていく。

13:04、道端に小さなケルン発見。
ちょうどこの脇に座りやすそうな場所があったので、小休止を取る。
連れは既に何度か足が攣っており、ゆっくり歩くことを余儀なくされていた。

ここで休んでいると、近くで母子(子供はどちらも小学校の3~4年といったところ)2組の編成と思われる4人パーティのうちの、男の子の1人がケルンを指差し、
「これ、なんで積んであるの?」
と母親らしき人に聞いている。
母親は、バテていたのか嫌になっていたのか分からないが、まともに答えない。
僕が、
「1つ積んでは父のため、2つ積んでは母のため」
という言葉が喉まで出かかるのを頑張って飲み込んでいると、その男の子はあろうことかケルンを破壊して去っていってしまった。
母親もちゃんと注意せんかい!
きっとあの男の子は、今晩あたり冥府に引きずり込まれるんだろうな。できることなら安曇潤平の作品を小一時間朗読して聞かせてやりたいものだ。

10分間ほど休憩し、再び歩き始めた。

連れのペースはやはり上がらない。このペースで歩いていて、果たして幕営地の確保は大丈夫なのだろうか。焦りは募るが、この状態ではどうしようもない。
僕だけ先に行くということも考えたが、連れのこの様子だと、無事に一人でたどり着ける保証も無い。
思案に暮れながら歩いていると、後ろから声をかけられた。
見ると、Aさん夫妻だった。
僕らより1時間遅い特急で新宿を出発していたはずなのに、もう追いつかれてしまった。

AさんはTシャツ1枚なのに汗ダク。かなりペースを上げて歩いてきたことが見て取れた。
おそらくそのペースに合わせて歩いたのだろう、奥さんからは既に生気が失われていた。
聞けば、やはりテント場の確保を急いだがために、かなりハイペースで来たようだ。

その後、少しの間だけ4人で歩いたのだが、Aさんは奥さんを我々に託し、テント場の確保のために先に行ってしまった。
Aさん夫妻と登山に出かけると、必ず見る風景である。


13:15、渡渉。
といっても、水量が少ないため、靴底を濡らす程度で渡れる。

13:18、石碑が奉納されている大岩が現れる。
何らかの由縁のある場所なのだろうか。
ちょっとした岩屋という感じでもあるので、もしかしたら昔、行者が修行に使った場所なのかもしれない。

13:20、折れそうな木の橋を渡る。
見た目もさることながら、実際に歩いているときの撓みっぷりが不安を煽る。

さらに険しい道が続く。
舐めててホントにゴメンナサイ。

空が青いのだけが救いだ。

ペース落として、テント場の空きスペースが有りますようにと祈りながら黙々と歩いていると、しばらくして、道がなだらかになってきた。
やっとか。。。

13:55、横岳が見えた。
一瞬テンションが上がるも、横岳までの距離を考えるに、行者小屋はもうしばらく先であることを思い知らされ愕然とする。

もともとの行動予定では14時行者小屋着であったが、その14時を過ぎても到着する気配は全く無い。

14:16、登山道が南沢上流の水が枯れた沢にぶつかると、より広い範囲で横岳が見えた。
やー、雄大だなぁ。

さらに進むと、赤岳も姿を現した。

14:24、まだ小屋は見えなかったが、「行者小屋」の看板が現れた。

14:26、やっと行者小屋に到着。

小屋前のテーブルも混み混み。

テント場もすでにかなり混んでいる。

テント場に行ってみると、Aさんがすでにテントを設営し終わっており、そのテントの隣の隣に奇跡的に良い場所が空いていた。
急いで向かったが、ほんの10mの差で、別な人がその場にたどり着き、場所取り合戦に敗北。
やむを得ず、小屋の脇の平地に数張りのテントが一列になって立てられていたので、その一番端に立てさせてもらう。
通行人がガイラインに足を引っ掛けないよう、張り方に配慮しつつ、設営完了。

テント設営後、中山展望台に行こうかと思っていたが、ふと周りを見渡すと、中山展望台と何も変わらない展望が広がっていることに気付く。

赤岩の頭と硫黄岳。

大同心と横岳。

赤岳。

阿弥陀岳は撮り忘れた。

これなら、わざわざ中山展望台に行くまでもない。
ここでもう飲み始めることにする。

行者小屋で生ビールとつまみを買い、Aさん夫妻と合流して飲み始めた。
結局、小屋で買ったビールや、Aさんが担ぎ上げたワインやウィスキーのご相伴にあずかりながら、雪崩式に夕飯に突入。
こちらもまた、Aさんの担ぎ上げたハムとズッキーニとナス。
その隣の器には、連れが担いできたキュウリ。
焼肉の写真は撮り忘れた。。。

そうこうするうちに、どんどん陽は傾き、急激に気温が下がっていく。
ダウンの上下を着込み、まだまだ居座る。

次第に山が夕日に照らされて赤くなっていく。

結局、18時半ぐらいまで四方山話などをしながら飲み食いした。
その頃には、辺りはすっかり暗くなり、星も素晴らしい眺め。
明日も好天が保証されたような空だった。


(「2日目 縦走本番」につづく)




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