加藤則芳さんといえばジョン・ミューアという感じだが、その加藤則芳さんによるジョン・ミューアの伝記が『森の聖者 自然保護の父ジョン・ミューア』だ。
もともとは1995年に単行本で出版されたものが、先日ヤマケイ文庫から文庫化された。
単行本はすでに持っていたのだが、まだ未読で、持っていることを失念して文庫を買ってしまった。
その手の失敗は、近年非常に多くなっており、年のせいなんじゃないかと危機感を覚えている。
さて、肝心の中身だが、ミューアに対する著者の深い敬愛の情に心打たれる一方、こんなスーパーマンの話を読んでもとても真似できそうにないと、心が折れそうになる思いだ。自分はこんな年になるまで、何の成果も挙げられないまま、ただただ無駄に生きながらえてしまったなぁと、恥じ入るばかりだ。
さて、スーパーマンのミューアも、万能ではない。
自然保護に冷淡だった当時のアメリカにおいて、自然保護を訴えて勝ち取るという活動の中で、成功も挫折も疲弊も葛藤も味わっている姿が、本書では克明に記されている。
こういうときの加藤則芳さんの筆致は、とても温かい。著者の人間好きが伺われるのである。
伝記にありがちなように、前半は、どうしてもダレる。しかし、後半は作品に吸い込まれる。
さすが、の一言だ。
ミューアが一生をささげたシエラネバダに行ってみたいという思いを強くした。
なお、本筋とは関係ないが、ミューアが設立した自然保護団体・シエラクラブの会員向けに作られた食器がシエラカップの始まりだというのを、本書で初めて知った。あまりシエラカップに興味がなかったが、今度使ってみようと思う。
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