このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。
2014年3月18日火曜日
山行記 : 2014年3月8日~9日 西穂高(独標まで) 2日目 快晴と腹痛
(この記事は、「1日目」の続きです。)
未明から、腰が痛くてたびたび目覚める。
寝床が硬かった燕山荘ならまだしも、普通の畳の上に布団を敷いている西穂山荘で腰が痛くなるということは、やはり原因は僕のほうに有りそうだ。
腰痛と戦いながら、うつらうつらしては目が覚め、またうつらうつらするということを繰り返しているうちに、山荘のスタッフから朝食の声掛けがなされた。
寝覚めとしては、あまり良くないコンディションだ。
朝食前に外を見てみると、かなり天気が良さそう。
すこし気分が上向く。
が、食欲はイマイチ。
それでも朝食を掻き込む。
朝食を早々に切り上げ、出発の準備をする。
その最中にトイレにも入ったのだが、なんとなく腹の中でわだかまるものがあるにもかかわらず、便意につながらない。
これが後の悲劇につながろうとは、この時は考えていなかった。
6:34、パッキングの合間を見て、日の出を見に山荘の外た。
ご来光と言うにはやや高く上がり過ぎだが、すばらしい朝日だ。
前日の天気予報では、昼間では快晴で風も凪ぎ、絶好のコンディションだという。
その予報を十分に確信させる好天だった。
その後すぐに荷物をまとめて山荘を出た。
山荘前は、出発準備にいそしむ人で大賑わい。
僕もアイゼンを装着し、7:03、いよいよ出発する。
歩き出してすぐ、笠ヶ岳の美しい姿が目に飛び込んでくる。
山荘からこんな近い場所で、こんなにすばらしい姿を見ることができたのか!
昨年は100m先の視界も怪しい中で歩いていたので、初めて目にする景色だった。
同じ場所から振り返れば、西穂山荘の屋根と焼岳、そしてその向こうには乗鞍が見える。
嗚呼、、、なんという景色だろうか。
小ピークの上に出ると、独標、ピラミッドピークがはっきりと見える。
ピラミッドピークの先にちょっとだけ見えているのは、西穂高岳だろうか。
ふと右手を見ると、ちぎれた小さな雲が、日差しを受けて虹色に色づいていた。(写真ではちょっと分かりにくいか・・・)
尾根に出ると、風が強くなってきた。
傍らには、発達したエビの尻尾が。
7:19、丸山山頂に到着。
標識の向こうには笠ヶ岳。
去年ここにたった時には、独標すら、いや、その手前の尾根道すらも見えなかった。
反対側には、遠くに孤島のように浮かぶ八ヶ岳の姿が見える。
結局今年の冬は、八ヶ岳に行けなかったなぁ。。。
来し方には、ゆるやかな稜線と乗鞍岳。
これから向かう先には、独標とピラミッドピーク。
前回は吹雪のためここで引き返したが、今回はあくまでここは通過点に過ぎない。
目指すは独標。あわよくばピラミッドピークまで行きたい。
丸山を過ぎると、風がさらに強くなってきた。
雪面は表面を風にと日光に撫でられ、完全にクラストしている。
独標手前の小ピークまでの斜面は、地味にキツいが、雪が締まってくれているので歩きやすい。
空の青さが雪にも写る。
次第に近づいてくる独標。
独標の上に何人もの人が立っているのが分かる。
7:53、独標手前の小ピークまでもうすぐ。
ここまで来ると、もう独標は目の前だ。
尾根の反対側に目をやると、西穂高岳手前の支尾根が厳めしい姿を横たわらせている。
8:00、小ピークを越え、ついに独標に取り付く。
これが独標直下の岩場だ。
ここで驚いたのが、渋滞が発生していたこと。
エベレストじゃあるまいし、冬の北アルプスで渋滞に巻き込まれようとは思いもしなかった。。。
下の写真の右上に写る岩を回り込んで山頂に詰めるのだが、そこに降りてくる数人の初心者が張り付いてしまって全然動かない状態になっていたのが原因だった。
しばらく待っていたが、風は風速10m以上20m未満といった勢いで常時吹き付けてくるので、いい加減寒くなってきてしまった。
僕の装備は、グローブやアウターシェルが速攻向けのアイテムなので、あまり立ち止まる時間が長くなるとシンドイ。
仕方がないので、他の登れそうなルートをすぐそばに見つけて、ザクザク登ることにした。
雪がよく締まっていたので、ピッケルをダガーポジションに握り、アイゼンの前爪を効かせて登れば、非常に快適に登れるコンディションだった。
僕のアイゼンは前爪がやや短いタイプなのでやや不安もあったが、実際に蹴り込んでみると何の問題も無く安定した。
ボルダリングで指の先ほどの小さなボールドにつま先を乗せるよりも、短めとはいえアイゼンの前爪に乗るほうが、よほどバランスを取りやすい。
立ち往生している初心者を尻目に、数十秒でその場を突破。
8:15、西穂独標に到着した。
来し方を見れば、焼岳、乗鞍。上高地も見える。
支尾根も全容が顕に。
そして西穂方面。
これを見るために、ここまで来たのだ。
空が深く青い。
このコンディションであればピラミッドピークまでの往復も問題なさそうだと思ったその瞬間。
お腹に若干の違和感を感じた。
まさか、これは・・・。
そう、遠くの空から雷が聞こえてきた時のような不吉な気配。
これまでの人生で何度も経験してきた、そうあの感じだ。
つまり、
下痢の予兆
である。
嗚呼、、、なにもこんなときに。。。
おそらく、待ち時間が長すぎて冷えてしまったのだろう。
これはイカン。最寄りのトイレ(西穂山荘)までは1時間ほどの道のり。果たして間に合うのか?
急いで下山を開始するも、山頂直下はまたもや渋滞。
もうちょっと練習してから来てくれればいいのに。。。
早くしてくれないと、西穂山荘どころか、丸山までも持たなくなってしまう!
どうにかこうにか核心部を降り、次の小ピークとの間の鞍部のナイフリッジに差し掛かったところで、20名ぐらいの団体さんとすれ違う。
これもまた初心者の集団のようで、遅い。その団体さんが通り過ぎるのを待つ間も、お腹の時限爆弾は確実に時を刻んでいく。
正直、その後のことはほとんど記憶にない。
ただただ、お腹の大暴走を括約筋と大殿筋で押さえ込みつつ、迫り来る波状攻撃の凄まじさに歩を前に出すことすらできずに立ち尽くすことも度々だったことだけは覚えている。
これが無雪期ならば、あるいは登山道を離れてハイマツの中へと緊急避難したかもしれない。
本当に申し訳ないことだが、それぐらいに切羽詰まっていた。
が、今は見渡す限り雪ばかり。
こんなところで用を足そうものなら、2km先からも丸見えである。なんなら、笠ヶ岳山荘からも視認可能かもしれない。
あと、たぶん、ケツが凍傷になる。
ひたすら耐えるしかなかった。耐えて歩き、耐え難くなって立ち止まり、波が引いたらまた歩き出す。
それを繰り返して、なんとか西穂山荘にたどり着く。
荷物を放り出して、トイレに駆け込む。
厳冬期装備なので、オーバーパンツ、登山パンツ、タイツ、パンツと4枚ずり下ろすと同時に開放。
本当にタッチの差での滑り込みセーフだった。
深く安堵のため息をついたところで、ふと気付く。
このトイレにはトイレットペーパーが無い。
やってしまった。
昔のコントによくあったやつじゃん。
今どきこんなことってある??
手元にある、利用可能な紙はただ1つ。
2万5000分の1の地図のコピー。
あとは下山するだけだし、iPhoneにもダウンロードしてあるし、5万分の1の地図も持っているので、2万5000分の1の地図が無くてももう差し支えないだろう。
このコピー紙を利用するしかない。
いい年して、こんなことになるとは、なんとも情けない・・・。
ちなみに、下山後に気付いたのだが、僕はストッパを携行していた。
山では落ち着いた行動を心がけなければならないと、改めて痛感した。
さて、なんとか危機を脱して、トイレから出てみると、外はガスっていた。
山の天気は変わりやすい・・・・・。
この時点で時刻は9:19。
西穂独標から西穂山荘まで、渋滞があったにもかかわらず50分ちょっとで歩いた計算だ。
もはや完全に虚脱状態でヨロヨロと西穂山荘のレストハウスに入る。
それでも、去年食べ損ねた西穂ラーメンを食わなければなるまい。
西穂ラーメン(みそ)。900円也。
これで思い残すことは無い。
10:20、下山の途につく。
山荘の裏手を抜ける際に、樹間から西穂方面が見えた。
ここを通るときはいつも視界が悪かったから、こんなふうに見えるなんて思いもしなかった。
その後も下山の最中に、木々の間から名峰が顔をのぞかせた。
南岳、中岳、槍ヶ岳。
ノコギリの歯のような西穂高の峰。
11:15、ロープウェイの西穂高口駅に到着。
ロープウェイの乗り場から見た錫杖岳もすばらしかった。
帰りには、平湯温泉でのバスの乗り継ぎ時間を利用して入浴。
平湯温泉バスターミナルの日帰り温泉は源泉かけ流しで、湯船から笠ヶ岳が遠望できる絶景の湯だ。
ちょっとサビっぽく濁ったお湯は温浴効果がバッチリで、家に帰るまでホカホカだった。
こうして、今年の僕の冬山は終わった。
来年はせめて、ピラミッドピークまでは行きたい。
このあとキタタンまでは、トレランのトレーニングをメインに据える生活がやってくる。
しんどいなぁ。。。
(了)
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