このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2014年3月29日土曜日

【ニュース】 『岳人』がモンベルグループに! (追記アリ)

東京新聞が発行している月刊誌『岳人』が、9月号から株式会社ネイチュアエンタープライズというモンベルグループの企業から発行されることになったそうだ。


東京新聞web「「岳人」9月号から モンベルの発行に 本社、商標権を譲渡」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/yama/CK2014032902000249.html


ネイチュアエンタープライズという企業は、会社概要を見ると事業内容は「野外環境事業コンサルティング、プランニング、物販、不動産管理」となっている。
http://about.montbell.jp/profile/

出版事業を手掛けたことのないモンベルグループだが、独特のコアな誌面で他誌と一線を画してきた『岳人』をどのように舵取りしていくのだろうか。

総合アウトドアブランドであるモンベルの受け皿雑誌のような位置付けになってしまうとしたら、『岳人』の持つ妙味が薄れてしまいかねないので、すこし心配だ。
願わくは、自転車やカヌーの話などは取り上げす、山岳雑誌としてのエッジを磨き続けてもらいたい。



(2014.4.7追記)

アウトドア関連のニュースサイト「A kimama」に詳細が掲載されていた。

A kimama 「『岳人』が選んだ新しき道。めざすは山の文藝春秋」
http://www.a-kimama.com/culture/2014/04/18019/

これによれば、やはり出版不況のあおりが譲渡の要因であるやに匂わせている。

記事によれば、これまでの『岳人』の硬派な路線を引き継ぐとのことなので、今後も期待したい。

2014年3月26日水曜日

【ニュース】 全国の山の標高が改定に!

3月26日、国土地理院は、全国の主な山のうち87山について、4月1日付で標高を改定すると発表した。

国土地理院ホームページ「日本の主な山岳標高の改定」
http://www.gsi.go.jp/kihonjohochousa/kihonjohochousa60009.html

87山のうち、1m高くなったのが48山。1m低くなったのが39山。

1m高くなった48山のリスト↓
http://www.gsi.go.jp/common/000091072.pdf

1m低くなった39山のリスト↓
http://www.gsi.go.jp/common/000091073.pdf


これにより、なんと、南アルプスの間ノ岳の標高が3,190mとなり、奥穂高岳に並んで日本で3番目に高い山となった。

一方、低くなっちゃった山の中にもなじみ深い山がけっこうある。
栗駒山、安達太良山などの東北のメジャーな山や、去年キイロスズメバチに付きまとわれた大室山、金太郎の金時山、九州の霊場・英彦山などが、標高が低くなってしまう山だ。

「山高きが故に貴からず」とはいうものの、こういうのってやっぱりインパクトがあるものだ。

早いところ剱岳も1m高くなって3,000m峰にならんかなー。


2014年3月23日日曜日

Montrail (モントレイル) 「Rogue Fly (ログフライ)」

これまで、トレランシューズを軽登山にも使用する都合上、あまりキャシャな作りのものではなく、ソールの固いトレランシューズを中心に履いてきた。
が、そういうタイプでアスファルトを走ると非常にしんどい。

そこで、ロードも違和感なく走れるタイプを購入してみた。
それがこのMontrail (モントレイル)の 「Rogue Fly (ログフライ)」だ。

決して新作でもなんでもないので、すでに履かれている方も多いと思うが、実際、アスファルトの上でも違和感なく走れる。
その分、ソールは柔らかいし、爪先のガードも極端に少ない。
たぶん、根っこや岩につまづくと、すごく痛いに違いない。

アッパーも柔らかい素材で、足を優しく包み込むが、もちろんガードは弱い。

ソールパターンはこんな感じ。
最近のトレランシューズは突起が大きくスパイクのようなソールも多い中、突起が極端に小さい。
これで本当にグリップは効くのだろうかと不安になる。
が、実際に走ってみると、ちゃんと地面を捉えてよくグリップする。
なかなか快適だ。

足入れ感としては、モントレイルとしてはやや細身の作りのような気がしたが、気のせいかもしれない。

昨年のキタタンではスタートして間もなくのロード区間で大幅に遅れを取ったので、今年はこのシューズでしっかり関門をクリアするのだ。


OMM が日本でも開催されることに

OMM といえば、山岳レース用のカッコ良くて機能的なアイテムのメーカーだが、もともとはイギリスの山岳レースそのものの名前だ。

山岳レースといっても、トレランではない。
2人1組で出場する、ビバーク用品とクッカーを持参しての1泊2日のレースで、読図でチェックポイントを探しながら走るという、山の総合力が試されるレースなのだそうだ。

そのOMMが日本でも開催される。

OMM JAPAN RACE
http://theomm.jp/?page_id=1063

第一回は今年の11月29、30日に、伊豆で開催される。
エントリーは6月1日開始だ。

上級者向けと初心者向けの2つのコースが用意されているが、残念ながら僕には一緒に出場してくれる相棒が居ないので、来年の大会に向けて相棒を育てたいと思う。

単に走るスピードを競う競技であるトレランよりもモチベーションを感じるレースだ。
(だいたい、トレランやってる人には読図をできない人が多すぎる。)

今から開催が楽しみだ。




Inov8 (イノヴェイト)のパックのアクセサリー

普段のトレイルランニングのトレーニング時は、下山後の入浴&着替えの一式も全部背負って走っている。
このため容量の大きいトレランパックが必要で、Inov8のRacePac16を使っている。
(今Inov8のサイトをみたら、RacePacが無くなって、RaceProという新シリーズになっていた。)

このパックに装着できるアクセサリーは3種類。
ボトルホルダーと、ポーチと、チェストポーチ。

これを、全部装着して走ってみたらどうだろうか。
やってみた。

結果、走ってもほとんど邪魔にはならない。ブレないし、腕の振りも妨げない。
さすがだ。
チェストポーチの大きなポケットに地図を入れておくと、面倒なルートチェックも捗る。

が、16リットルのパックに荷物満載の上に、フロントにもいろいろ物を詰め込むと、さすがに重い。

とはいえ、先々OMM JAPANにも出場してみたいので、この程度の装備を背負って楽々走れるようにならねばならない。
トレーニングにはちょうど良さそうだ。


2014年3月21日金曜日

日本野鳥の会のショップ

日本野鳥の会オリジナル長靴がなかなかの優れものだという評判を聞いて、日本野鳥の会の直営ショップに買いに行ってみた。

日本野鳥の会 直営店
http://www.wbsj.org/shopping/shop/bird-plaza/

事務所に併設されたショップなので、オフィスビルの3階にエレベータで上がる。

お店の入口はこんな感じ。

まず、目を見張るのが、野鳥に関する本のラインナップ。
ジュンク堂などの大型書店でもこんなに取り揃えてないだろうというほどの充実ぶり。
思わず3冊購入してしまう。

その他にも、バードウォッチングに必要なグッズ、フィールドで活動するためのウェアや双眼鏡も充実。

もちろん、長靴も購入。
(長靴に関しては後日レポートします。)

お店の様子をブログにアップすることを快諾してくれたお店のスタッフのお二人に感謝!
お客に対する親切丁寧で、かつ、温かい対応にホッコリしました。

今後も本を買いに行きたいお店だ。


山行記 : 2014年3月16日 三浦アルプス トレランのトレーニングのはずが・・・

今年こそ北丹沢12時間山岳耐久レースの完走を達成したい。
が、仕事に追われてトレーニングをサボりがちな毎日で、3月も半ばのこのタイミングでやっと今年のトレラン初めを迎えることができた。

今回は会社の後輩と2人。
場所は三浦アルプス。
コースは去年と同じく尾根一周を予定していた。

朝10:20頃に逗子駅を出発し、アスファルトの道を走る。

10:43、葉山教会への急坂に取り付く。
トレーニングするには非常に良い坂だが、走って登るとやっぱり吐きそうになる。
しかも、久しぶりのランで、心肺機能も筋力も低下してしまっているため、全然足が上がらない。
自分の体とは思えないぐらいに重い。

急坂を登りきり、教会の横からトレイルに入る。
すぐに階段状の上り坂が現れる。
それを登りきると、仙元山の頂上だ。
相模湾方面の眺めがすばらしい。
この日は快晴の上に、そよ風が吹いていて絶好のヨット日和なのだろう。
海にはたくさんのヨットが浮かんでいるのが見えた。

次に目指すは189ピーク。
その手前には、このコース一番のサディスティックポイント、約250段の階段がある。
すでにこの時点で、僕はバテていた。
なんとも情けない話だが、最近の不摂生が祟ったとしか言いようが無い。

11:06、189ピークに到着。
ここから先は、道が明瞭ながらも、紛らわしい分岐がいくつか現れるところなので、地図と記憶を頼りに進む。(詳しくは去年の記事をどうぞ。)

道すがら、やたらとアオキの赤い実が目に付く。

11:25、観音塚に到着。

ここから先は、道が極端に細くなる。
ひたすら南尾根のアップダウンを進む。

この陽気に誘われてか、中高年ハイカーの団体や、山ガールのグループと何度もすれ違う。
去年はこんなに混んでなかったのに。

道すがら、こんなに幹の捻れた木を発見。
どうやったらこんなふうになっちゃうのだろう?

ツバキの花はもう終わりかけで、トレイルに散らばっていた。
それでも、まだツボミも残っていた。

12:34、乳頭山の山頂に到着。
この犬がやたら元気で人懐っこく、癒された。

山頂からの眺め。

ここで大休止。
昼ごはんを食べた。

さて、ここからどっちに進路を取るか、連れと相談する。
馬頭観音経由で二子山に行くか、それとも、中尾根や南沢方面から二子山に行くか。

結局、南沢に降りてみることにする。

乳頭山からの下りの道は明瞭。

だが、この先の斜め十字路を過ぎ、南中峠から南沢に降りるところから、道が極端に荒れ始めた。
もはやこれは道と言えるのだろうか。。。
むむむ。。。
・・・・・・もはやこれは道ではないな。。。
とはいえ、わずかながら踏み跡はあるし、他に道となるような場所もないので、これが道なのだろう。。。
三浦アルプスにこんな場所があるとは。
もはや走るどころの話ではない。

道が崩落しているような場所もあった。
なんだか、川口浩探検隊のようだ。

道端に落ちているアオキの木には、謎の工作物が付着していた。
植物の繊維のようなものが、何らかの粘液のようなもので固められていた。
小動物の巣かなにかだろうか。

山は、樹木にツタがやたらと絡んでいて、荒れた感じ。
人の手が入らないと、山はこうなるんだなぁと。

次第に道はマシになっていったが、倒木なども現れる。

橋の無い渡渉箇所を2箇所越えて、13:56、やっと林道終点に到着。
この向こう岸が林道終点だ。

ここには、ここから乳頭山までのルートの案内がある。
ただし、ここから二子山へのルートは記されていない。

ここから二子山へは、ここから南沢に合流する支流を遡る。

遡りはじめてすぐに、水場があった。

ここから先も、たびたび渡渉する。


もはや、これは遡行だ。
シダもやたら元気だ。

しばらくすると沢から離れ、尾根に向かって詰める。
すると、見慣れた登山道に出て、その後すぐに二子山に向かう林道に出る。

その林道の先、KDDの中継所を左折すれば山頂だ。

14:25、二子山(上ノ山)の山頂に到着。


しばらく休憩。クリームパンを食べる。

ここから、次は二子山の下ノ山に向かう。

14:57、二子山の下ノ山の山頂に到着。

ここから阿部倉山の山頂までは、特に道が荒れる。

地図によると、二子山の下ノ山と阿部倉山との鞍部には尾根の南側へのエスケープルートがあるようなのだが、実際には閉鎖されていた。

15:17、阿部倉山の山頂に到着。

阿部倉山の山頂から先は、いくらか道が良くなる。

15:31、下山。


今回は、そもそもの主旨であるトレランのトレーニングは10km程度に留まり、残りはただただ荒れたトレイルの探検をしていたようなものだった。
これでは7月のキタタンが思いやられる。
もう少し追い込まなければ、、、


2014年3月18日火曜日

Exped (エクスペド) 「EXPEDITION 80」がカッコイイ!

福岡の大名にある好日山荘に行ったら、Exped (エクスペド)の初めて見る大型ザックが売られていた。
どうやら「EXPEDITION」というシリーズらしい。

僕が見たのは80リットルだったが、100リットルのものもあるらしい。

80リットルのもので本体重量が2,450g。
耐荷重は35kg。
僕の持っているオスプレイのイーサー85が、耐荷重26kgぐらいなので、10kg近く違う。
なんと頼もしいことか。

それだけに、ショルダーハーネスやウエストベルトがゴツい。
が、実際に背負ってみると、包み込むように体を覆ってくれる。

また、背面にはデイジーチェーンが3本縫い付けられており、スノーシューの固定などにも便利そうだ。

そして何より、凄まじくカッコイイ。
どこまでも歩いていけるタフガイをそのままザックにしたような、無骨で無駄の無いフォルム。
タマらん。
これを背負って、残雪期の奥秩父を1週間ぐらい彷徨いたい。


好日山荘での店頭価格は約6万円。
日本での展開は無いようなので、並行輸入ものか?


山行記 : 2014年3月8日~9日 西穂高(独標まで) 2日目 快晴と腹痛



(この記事は、「1日目」の続きです。)


未明から、腰が痛くてたびたび目覚める。
寝床が硬かった燕山荘ならまだしも、普通の畳の上に布団を敷いている西穂山荘で腰が痛くなるということは、やはり原因は僕のほうに有りそうだ。

腰痛と戦いながら、うつらうつらしては目が覚め、またうつらうつらするということを繰り返しているうちに、山荘のスタッフから朝食の声掛けがなされた。
寝覚めとしては、あまり良くないコンディションだ。

朝食前に外を見てみると、かなり天気が良さそう。
すこし気分が上向く。

が、食欲はイマイチ。
それでも朝食を掻き込む。

朝食を早々に切り上げ、出発の準備をする。
その最中にトイレにも入ったのだが、なんとなく腹の中でわだかまるものがあるにもかかわらず、便意につながらない。
これが後の悲劇につながろうとは、この時は考えていなかった。

6:34、パッキングの合間を見て、日の出を見に山荘の外た。
ご来光と言うにはやや高く上がり過ぎだが、すばらしい朝日だ。
前日の天気予報では、昼間では快晴で風も凪ぎ、絶好のコンディションだという。
その予報を十分に確信させる好天だった。

その後すぐに荷物をまとめて山荘を出た。
山荘前は、出発準備にいそしむ人で大賑わい。
僕もアイゼンを装着し、7:03、いよいよ出発する。

歩き出してすぐ、笠ヶ岳の美しい姿が目に飛び込んでくる。
山荘からこんな近い場所で、こんなにすばらしい姿を見ることができたのか!
昨年は100m先の視界も怪しい中で歩いていたので、初めて目にする景色だった。

同じ場所から振り返れば、西穂山荘の屋根と焼岳、そしてその向こうには乗鞍が見える。
嗚呼、、、なんという景色だろうか。

小ピークの上に出ると、独標、ピラミッドピークがはっきりと見える。
ピラミッドピークの先にちょっとだけ見えているのは、西穂高岳だろうか。

ふと右手を見ると、ちぎれた小さな雲が、日差しを受けて虹色に色づいていた。(写真ではちょっと分かりにくいか・・・)

尾根に出ると、風が強くなってきた。
傍らには、発達したエビの尻尾が。

7:19、丸山山頂に到着。
標識の向こうには笠ヶ岳。
去年ここにたった時には、独標すら、いや、その手前の尾根道すらも見えなかった。

反対側には、遠くに孤島のように浮かぶ八ヶ岳の姿が見える。
結局今年の冬は、八ヶ岳に行けなかったなぁ。。。

来し方には、ゆるやかな稜線と乗鞍岳。

これから向かう先には、独標とピラミッドピーク。

前回は吹雪のためここで引き返したが、今回はあくまでここは通過点に過ぎない。
目指すは独標。あわよくばピラミッドピークまで行きたい。

丸山を過ぎると、風がさらに強くなってきた。
雪面は表面を風にと日光に撫でられ、完全にクラストしている。

独標手前の小ピークまでの斜面は、地味にキツいが、雪が締まってくれているので歩きやすい。

空の青さが雪にも写る。

次第に近づいてくる独標。
独標の上に何人もの人が立っているのが分かる。

7:53、独標手前の小ピークまでもうすぐ。
ここまで来ると、もう独標は目の前だ。

尾根の反対側に目をやると、西穂高岳手前の支尾根が厳めしい姿を横たわらせている。

8:00、小ピークを越え、ついに独標に取り付く。

これが独標直下の岩場だ。

ここで驚いたのが、渋滞が発生していたこと。
エベレストじゃあるまいし、冬の北アルプスで渋滞に巻き込まれようとは思いもしなかった。。。

下の写真の右上に写る岩を回り込んで山頂に詰めるのだが、そこに降りてくる数人の初心者が張り付いてしまって全然動かない状態になっていたのが原因だった。

しばらく待っていたが、風は風速10m以上20m未満といった勢いで常時吹き付けてくるので、いい加減寒くなってきてしまった。
僕の装備は、グローブやアウターシェルが速攻向けのアイテムなので、あまり立ち止まる時間が長くなるとシンドイ。
仕方がないので、他の登れそうなルートをすぐそばに見つけて、ザクザク登ることにした。

雪がよく締まっていたので、ピッケルをダガーポジションに握り、アイゼンの前爪を効かせて登れば、非常に快適に登れるコンディションだった。
僕のアイゼンは前爪がやや短いタイプなのでやや不安もあったが、実際に蹴り込んでみると何の問題も無く安定した。
ボルダリングで指の先ほどの小さなボールドにつま先を乗せるよりも、短めとはいえアイゼンの前爪に乗るほうが、よほどバランスを取りやすい。

立ち往生している初心者を尻目に、数十秒でその場を突破。
8:15、西穂独標に到着した。

来し方を見れば、焼岳、乗鞍。上高地も見える。

支尾根も全容が顕に。

そして西穂方面。
これを見るために、ここまで来たのだ。
空が深く青い。


このコンディションであればピラミッドピークまでの往復も問題なさそうだと思ったその瞬間。
お腹に若干の違和感を感じた。
まさか、これは・・・。

そう、遠くの空から雷が聞こえてきた時のような不吉な気配。
これまでの人生で何度も経験してきた、そうあの感じだ。

つまり、


下痢の予兆


である。


嗚呼、、、なにもこんなときに。。。

おそらく、待ち時間が長すぎて冷えてしまったのだろう。
これはイカン。最寄りのトイレ(西穂山荘)までは1時間ほどの道のり。果たして間に合うのか?

急いで下山を開始するも、山頂直下はまたもや渋滞。
もうちょっと練習してから来てくれればいいのに。。。

早くしてくれないと、西穂山荘どころか、丸山までも持たなくなってしまう!

どうにかこうにか核心部を降り、次の小ピークとの間の鞍部のナイフリッジに差し掛かったところで、20名ぐらいの団体さんとすれ違う。
これもまた初心者の集団のようで、遅い。その団体さんが通り過ぎるのを待つ間も、お腹の時限爆弾は確実に時を刻んでいく。

正直、その後のことはほとんど記憶にない。
ただただ、お腹の大暴走を括約筋と大殿筋で押さえ込みつつ、迫り来る波状攻撃の凄まじさに歩を前に出すことすらできずに立ち尽くすことも度々だったことだけは覚えている。

これが無雪期ならば、あるいは登山道を離れてハイマツの中へと緊急避難したかもしれない。
本当に申し訳ないことだが、それぐらいに切羽詰まっていた。

が、今は見渡す限り雪ばかり。
こんなところで用を足そうものなら、2km先からも丸見えである。なんなら、笠ヶ岳山荘からも視認可能かもしれない。

あと、たぶん、ケツが凍傷になる。

ひたすら耐えるしかなかった。耐えて歩き、耐え難くなって立ち止まり、波が引いたらまた歩き出す。
それを繰り返して、なんとか西穂山荘にたどり着く。

荷物を放り出して、トイレに駆け込む。
厳冬期装備なので、オーバーパンツ、登山パンツ、タイツ、パンツと4枚ずり下ろすと同時に開放。
本当にタッチの差での滑り込みセーフだった。

深く安堵のため息をついたところで、ふと気付く。
このトイレにはトイレットペーパーが無い。

やってしまった。
昔のコントによくあったやつじゃん。
今どきこんなことってある??

手元にある、利用可能な紙はただ1つ。
2万5000分の1の地図のコピー。
あとは下山するだけだし、iPhoneにもダウンロードしてあるし、5万分の1の地図も持っているので、2万5000分の1の地図が無くてももう差し支えないだろう。
このコピー紙を利用するしかない。

いい年して、こんなことになるとは、なんとも情けない・・・。

ちなみに、下山後に気付いたのだが、僕はストッパを携行していた。
山では落ち着いた行動を心がけなければならないと、改めて痛感した。


さて、なんとか危機を脱して、トイレから出てみると、外はガスっていた。
山の天気は変わりやすい・・・・・。
この時点で時刻は9:19。
西穂独標から西穂山荘まで、渋滞があったにもかかわらず50分ちょっとで歩いた計算だ。

もはや完全に虚脱状態でヨロヨロと西穂山荘のレストハウスに入る。
それでも、去年食べ損ねた西穂ラーメンを食わなければなるまい。

西穂ラーメン(みそ)。900円也。
これで思い残すことは無い。

10:20、下山の途につく。

山荘の裏手を抜ける際に、樹間から西穂方面が見えた。
ここを通るときはいつも視界が悪かったから、こんなふうに見えるなんて思いもしなかった。

その後も下山の最中に、木々の間から名峰が顔をのぞかせた。

南岳、中岳、槍ヶ岳。

ノコギリの歯のような西穂高の峰。

11:15、ロープウェイの西穂高口駅に到着。

ロープウェイの乗り場から見た錫杖岳もすばらしかった。


帰りには、平湯温泉でのバスの乗り継ぎ時間を利用して入浴。
平湯温泉バスターミナルの日帰り温泉は源泉かけ流しで、湯船から笠ヶ岳が遠望できる絶景の湯だ。
ちょっとサビっぽく濁ったお湯は温浴効果がバッチリで、家に帰るまでホカホカだった。


こうして、今年の僕の冬山は終わった。
来年はせめて、ピラミッドピークまでは行きたい。
このあとキタタンまでは、トレランのトレーニングをメインに据える生活がやってくる。
しんどいなぁ。。。


(了)