このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2014年2月1日土曜日

笹本稜平 『その峰の彼方』

僕は昔から、「ここではないどこか」に行きたいと願っている。
それが水平方向に向かえば「移住」になるし、垂直方向に向かえば「より良い未来」ということになる。(どっちが水平で、どっちが垂直でもいいのだが。)

ただ、1つ問題なのは、僕には実行力が無いということだ。

沖縄や北海道に移住したいと思っても、思うだけで終わる。
より良い未来のために社会的課題に取り組もうとしても尻つぼみになる。
結局、どこにも行けないのだ。

そんなヘタレな僕が最近夢想するのは、アラスカだ。
もう不惑を過ぎた僕が、何のツテもアテも無くアラスカに移住するなどということは荒唐無稽もいいところなのだが、もし日本に居辛くなった際の逃避先はアラスカにしようというのが、ここ2年ぐらいのマイブームだ。

きっかけは、星野道夫のエッセイだった。
(いい年をして、思春期みたいな話で恥ずかしいのだが。)

心に染みとおるような文章で綴られたアラスカの風景。
そこに添えられた写真には、真っ赤な絨毯のように紅葉したアラスカの大地が広がっていた。
ただそれだけで、行ったこともない場所がまるで心のふるさとのように思えてきた。

そう考えるうちに、やはり登山を趣味とする僕としては、マッキンリーにどうしても行きたくなってきた。
金も時間も無いのに。

いや、最悪、金のことはなんとかなるとしても、問題は時間だ。休暇を貰わなければならない。
が、ヨーロッパアルプスのモンブランすら「危険だ」ということを理由に勤め先からの許可が降りないのに、マッキンリーに至っては許可なんか降りるわけがない。サラリーマンの難しいところだ。

ちなみに、不確かな記憶で間違っているかもしれないが、日本テレビの社員は就業規則で8000m峰に登ってはいけないことになっているそうで、過去のエベレスト中継なども全て外注スタッフが登っているのだそうな。
『イッテQ』のディレクターの石崎氏はイモトと一緒にマナスルに登っていたが、調べてみると株式会社コールという制作会社の社員のようなので、やはり日本テレビ社員は登っていない。

僕もあんまりダダをこねると、自分の勤務先の就業規則に「4000m以上の山への登山禁止」とか追加されかねないな。。。


そんなモヤモヤを抱えているときに見つけたのが『その峰の彼方』だ。著者のサイン本が、東京駅前の八重洲ブックセンターに平積みされていたのだ。

惹句には
-------------------------------------------------------
目指すは極寒の
北米最高峰・マッキンリー。
史上最高のクライマーが、
そのすべてを賭けた挑戦の
果てに見たものとは?
-------------------------------------------------------
とある。
こんなもん、心惹かれないわけがない。

これがまた500ページ近い大著で、厚さも4cm近くある。
これから1泊で出張に行かなければならないというタイミングで出会ってしまい、カバンに入るのか??と躊躇いながらも購入。
抗いがたし。

読み始めると、当然ながらぐいぐい引き込まれる。
登場人物もそれぞれに魅力的で、なんでこんな魅力的な人しか登場しないのかと嫉妬を覚える。
その中でも、最も強い嫉妬の対象は、なんといっても主人公の津田だ。

男の嫉妬はみっともないと言うし、ましてやその対象がフィクションの存在とあっては目も当てられないわけだが、こんなに能力に恵まれて、こんなに仲間に恵まれて、こんなに強運に恵まれて、僕の憧れの地アラスカ・マッキンリーで何をやっとるんや!
こんな人物に対して嫉妬を抱かないでいられるわけがない。
僕がこれまでの人生において成し得たこととは何なのか、振り返るだに虚しくなる。

何度でも胸と目頭が熱くなるストーリーは、さすが巨匠の作品。
くやしいかな、著者の意のままに(かどうかは分からないが)、僕の心は翻弄されるのである。


やっぱり50歳までには、会社を辞めてでもマッキンリーに登ろう。
そう改めて心に誓った。


0 件のコメント:

コメントを投稿