このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2013年10月7日月曜日

山での事故について

先週、僕の知人が山で亡くなりました。

もう10年以上も連絡を取っていなかった相手ではありますが、かつては大変お世話になった方なので、今、大変ショックを受けています。

その方が亡くなった山は、そんな山でいちいち死んでいたら命がいくつあっても足りないような山です。
が、現実問題として、亡くなってしまいました。


僕が知っているその方は、登山などとは無縁なタイプだったのですが、この10年で何らかの心境の変化でもあったのかもしれません。
昨今のブームで登山を始められた方には、やはり10年前は「まさかあの人が登山なんて」と周りから言われるようなタイプの方も多いのではないでしょうか。

そういった方の多くは、誰かから体系的に登山のノウハウを教わったわけではなく、ショップの店員さんやネットの情報などの断片的な知識を寄せ集めて山に向かっているのでしょう。

かく言う僕も、高校時代に山岳部だったとはいえ、岩や雪に関しては一切教育を受けておらず、このままでは命が危ないと痛切に感じています。


そのような未熟な登山者(もちろん僕も含め)が、やって大丈夫なこととダメなこととの見極めを誤ることは十分に有りえ、その判断の誤りが事故や遭難につながるわけです。
「せっかく来たのだから」
と、つい、能力や装備が十分でないままに一歩を踏み出してしまうことが誰にでもあるだろうと思うのですが、その一歩が命取りとなることも多々あるのです。


おそらく、僕のこのブログをわざわざ読まれるような方々は、ある程度しっかりと情報収集をされる方が多いのではないかと思いますので、このブログで呼びかけたところで、本当にリスクのある人々には届かないかもしれませんが、それでも、ここで訴えかけずにはいられません。
登山を嗜むのなら、遭難だけは避けなければならない、と。

もちろん、遭難をしたくてする人はいないでしょう。
きっと、亡くなった僕の知人もそうだったに違いありません。

遭難を100%回避することは難しいかもしれません。100%回避するには、山に行かないという選択肢しか考えられないというのが本当のところではないかと思います。
でも、遭難する可能性を極小化することは可能だと思っています。
それには、正しい知識とスキルを身に付け、正しい判断力を養うことが必要だと思うのです。


残念ながら、ロッククライミングや雪山登山に関する技術指南書はそう多くありませんが、無雪期の一般ルートを歩くための指南書は山ほどあります。
まずはそれを読み、そこに書いてあることを実践してみることが重要ではないかと思います。

多くの初心者は、あまり指南書を注意深く読みません。書いてあることを話半分に受け流し、結果、あらぬ失敗をしてしまいます。そもそも読みもしない人もいるでしょう。
結果、そのような人は、己の経験からしか学ぶことができません。
でも、それではイカンのです。
実際に遭難をしなければ遭難の恐ろしさを理解できないというのであれば、その人が遭難の恐怖を理解した時点ですでに手遅れです。

本来ならば、身近に指南してくれる造詣の深い経験者でも居てくれればいいんでしょうけど、そういう先輩に恵まれない方も多いに違いありません。
それならばどうすれば良いのか。

僕は、大量に本を読みました。
高校山岳部で培った知識は、20年近くも前の知識です。その間に、登山の常識もいろいろ変わりました。その古くなった知識をリバイズするために、大量に本を読んだのです。
おそらく、登山関連の書籍だけで、現時点までで100冊程度。その他に、雑誌は毎月の3誌に加え、隔月やら季刊やらの雑誌も含めれば年に50冊は読んでいます。
また、その書籍や雑誌に書いてあることを、比較的危険の少ない山やコースで試し、経験を積んでいきました。

では、実際にどんな本を読めばいいのか。
これを機会に、現時点で僕が考えるおすすめの本を以下に挙げさせていただきます。(敬称略)
なお、これは無雪期の一般ルートを歩くという範囲に限定したものなので、岩や雪に関しては含みません。


<山歩きに関する総論として>
高橋庄太郎 『トレッキング実践学

<テント泊>
宮川哲 『テント泊山行

<山の天気>
猪熊隆之 『山岳気象大全

<読図>
平塚晶人
入門講座 2万5000分の1地図の読み方
2万5000分の1 地図の読み方 実践上達講座

<病気と怪我>
野口いづみ 『山の病気と怪我

<遭難の原因と分析>
羽根田治
ドキュメント 道迷い遭難
ドキュメント 単独行遭難
ドキュメント 滑落遭難』(文庫版
ドキュメント 気象遭難』(文庫版
ドキュメント生還 山岳遭難からの救出
トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』(文庫版


また、トレイルランナーの中には、荷物を減らすために無茶な装備の削り方をする方が散見されます。特にロード上がりの方に多いようです。
「天気が良い日じゃなければ行かないので、雨具は要りません」
とか、
「行動時間が短いので、ヘッドライトは要りません」
とか、
「途中で1箇所売店があるので、水は500mlで十分です」
とか、自殺行為としか思えないような装備計画のランナーのいかに多いことか。
僕も半分はロード上がりみたいなもんなので、ロードの人たちがこのような発想になるのも分からないではありません。
が、走ろうが歩こうが、山は山です。リスクの在り方もそうは変わりません。
むしろ、歩くよりも走る方が怪我のリスクが高まります。
怪我をして身動きが取れなくなった時に、救助を待つとして、その間、雨具も無い、水も無い、ましてや防寒具や食料も無いなんて状態で、いったいどうやって命をつなぐのか。
10分程度で救急車が来てくれる下界とは全く環境が違うということを頭に叩き込んで山に入らなくてはいけません。


オッサンの居酒屋での説教みたいにダラダラと長くなってしまいましたが、遭難は起こしてほしくないし、多くの遭難は避けられるはずだということを理解して欲しいと思い、書きました。
未熟者が偉そうなことを言ってしまった向きもありますが、どうかご容赦いただきたく。


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