このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2013年8月18日日曜日

山行記 : 2013年8月17日 岩殿山 岩場歩行の最終トレーニング

今年の8月下旬、槍ヶ岳から奥穂高まで、単独行での縦走を予定している。
それはつまり、大キレットと北穂高~涸沢岳という、厳しい岩場を通過することを意味する。
果たして自分は、その難所を独りで無事に乗り切ることができるのだろうか。
考えていても不安は尽きない。

ということで、大キレットに出発する前の最終調整がわりに、岩殿山へ行ってきた。

岩殿山は、JR大月駅前にある標高634mの低山だが、厳しいツラ構えで地元の象徴として君臨する山である。
評判によると、コースタイムが4時間ということで気軽に行ける一方、なかなか険しい鎖場もあるということで、最終調整の場としては大変好ましいところのようだ。

最終調整とはいえ、あまり負荷が小さすぎてもトレーニングにならないので、食材と保冷剤をクーラーバッグに入れて70リットルのザックに突っ込んでいった。
ランチはピクニック風に楽しもうという計画だ。

ルートは、JR大月駅から岩殿山に登頂したあと、尾根を稚児落しへ向い、その先を下って再びJR大月駅へと戻るという周回コース。
一番の見所は、稚児落しの絶壁のようだ。


朝9:38、JR大月駅に降り立ち、今回の連れ1名と合流。
地図と照合して、道を確認する。

9:44、大月駅を出発。

飲食店の連なった路地を東に向かう。

この路地を抜けると、JR中央本線の踏切に至る。
ここから、岩殿山の姿が見える。なかなかの威容だ。

踏切を渡ると東京電力大月支社。
その前を抜けると、一気に岩殿山が近づいたように感じる。
青空に一本の白線は飛行機雲。
このあとすぐに消えたので、上空の湿度は低い模様。今日は安定した晴天が続きそうだ。

ここから先は、「岩殿山」と書かれた道標が、順路を教えてくれる。

9:57、桂川を渡る。

この時すでに暑さで全身汗まみれとなっていた我々は、一瞬、川原に降り立ちたい欲求に駆られるが、誘惑を振り切って前進する。

10:02、岩殿山の入口に到着。

最初の階段を登ると、その先は数百メートル程度、コンクリートの舗装斜面。

この斜面を、どう考えてもこの低山には似つかわしくない70リットルのザックを背負って歩く。
そんな僕の姿を連れが撮影していた。
最近、日帰りでもやたらと出番の多いホグロフスのマトリックス70。
こいつで今年は、冬の北アルプスにも行ったし、丹沢にも、富士山にも、また、仕事の出張にも行った。
ミニマムな造りで軽量な本体ながら、20kg未満の荷物を背負うのなら文句なく使いやすいザックだと思うのだが、現行モデルのマトリックスには60リットルまでしかない。
マトリックス70の代わりにゾロ70という70リットルザックが登場したようだが、背負っていないので性能は知らないけれど、見た目はグレゴリーのトリコニの出来損ないのような印象で好感が持てない。

この先、岩殿山の山頂まで、坂道と階段が半々。
階段は嫌いだ。

10:09、鳥居のような門のような構造物が現れる。
その隣には、岩殿山の歴史について書かれた案内版が立てられていた。
これによると、信仰の山として切り開かれたのが最初のようだ。
登山道の入口に「岩殿城址」と書いてあったので、てっきり城が先かと思ったら、違うようだ。

この場所からは、南側の展望が良く、富士山もはっきり見ることができた。
富士山とかぶるように手前にある山は、たぶん杓子山。
富士山がまるで杓子山の蜃気楼のように見えてしまう。

10:13、「丸山公園」の道標がデカい。
その先すぐに、丸山山頂に建つふれあいの館が見える。
ふれあいの館には有料展示と無料展示があるのだが、いずれに行くにも靴を脱がなければならない。
それが面倒で、結局入るのを止めた。

ふれあいの館が建っている場所は、丸山という山の山頂。
標高444.4mって、そんなに4が並ぶものか???

ここからの展望も、やっぱり南側が開けており、富士山もしっかり見えた。
でも、心なしか富士山にかかるガスがせり上がってきているような・・・。

北側には岩殿山がそびえる。
目の前に迫ると、なかなかの迫力だ。
といっても、あの壁面を登るわけではない。

あまりここに長居する理由も無いので、早々に岩殿山を目指す。
なお、ルート上、トイレはこの先には無いので、ここで済ませておくのが賢明だ。

丸山山頂から岩殿山山頂への道は、ほとんど階段。

手を変え品を変え、階段が続く。
汗をダクダク垂らしながら登る。

相変わらず展望は良いが、富士山には次第にガスが登り始め、八合目から上ぐらいしか見えなくなっていた。

10:35、稚児落しとの分岐に到着。

ここから先も相変わらず階段が続き、10:38、揚城戸跡に到着。
ここは、天然の岩場を切り出して、細い道を通ってしか場内に入れないようにしてある。
攻める側とすれば、厄介な場所だ。
岩質を見ると、砂利と砂を混ぜ込んだコンクリートのように見えるが、いわゆる礫岩で、砂や石や土がものすごい力で圧縮されて固まったものであることが分かる。

ここを過ぎるとすぐに、稜線に出る。
この向こう側に何があるのだろうかと思ったら、イスとテーブルだった。
アンチドラマチックなオチだが、ここからは山頂広場がうかがえる。
この分岐を右に行くと山頂だ。

なお、この山頂側と反対を見ると、何やらルートがありそうな雰囲気。
だが、実際に行ってみると、数十メートルで行き止まりとなり、そこには案内版が立っていた。
この案内板によると、昔はこの先に大きな岩があったが、浸食で落ちそうになってきたので取り払ったとのこと。

10:41、岩殿山山頂広場に到着。

なにかの碑。(乃木希典の歌碑だそうな。)

石碑の横には山頂の標識。
標高634m。
僕は今、東京スカイツリーと同じ高さに立っているわけだ。

富士山はもう、山頂のほんのちょっとだけを残して雲の中。
夏の上昇気流の凄さを思い知った。

山頂は、日差しを遮るものの無く、すさまじく暑い。
立っているだけで汗が吹き出る。
山頂の東側に東屋があるのだが、大量の子供達とその保護者でいっぱいだったので、さっさと山頂を後にする。

稚児落し方面に向かうには、いったん分岐まで降りなければならない。

10:48、分岐に到着。

ここから先は階段が無く、やっとトレイルっぽくなる。

10:58、築坂という場所(?)に到着。

11:00、鉄塔の下を通過。
この最初の鉄塔を過ぎたあたりから、道に岩場が登場し始める。

11:02、最初の岩場。
ここはまだ、鎖ではなくロープがあるだけ。

この先は尾根道。見事に直射日光。

11:06、分岐が現れる。
どうやら、岩場を巻いて稚児落し方面に行く道もあるらしい。地形図には載ってないけど。

11:08、いよいよ岩登りとなる。
下のほうはトラロープだが、上3分の2は鎖。
岩の質が礫岩なので足裏は滑りにくいのだが、手のホールドがなく、体を持ち上げにくい。
仕方なく、ロープや鎖をホールド代わりにする場面もあった。

ここを抜けると、今度はワイドなクラックを垂直に登る。
コの字型の金具は、足を乗せるステップではなく、持ち手として利用する模様。

登りきると、意外と高度感がある。

高度感の分だけ、見晴らしも良い。

稚児落しに向かって、再び尾根歩き。やっぱり暑い。

11:15、兜岩に到着。

ここでは、岩の半ばに切り出されたトラバースの細い道を歩く。
歩けば良いだけなので特に難しいわけではないが、高度感はたっぷり。

道幅もけっこう狭いので、すれ違いは無理。

このトラバースを渡りきると、またもや垂直なクラックが現れる。
ここも、1回は鎖をホールド代わりにしないと登れなかった。

さらに続く、地味な岩。

登りきったところは、ちょっと広めの小ピーク。

岩殿山もよく見える。
岩殿山の裾野には中央道が見えた。
今日はUターンラッシュの日だと思っていたが、まだ午前中だからか、上り車線も空いているようだった。

再び稚児落しに向かって尾根歩き。

11:46、小ピークを越えたところで鉄塔に出食わす。

地図を確認すると、どうやら今しがた通り過ぎた小ピークが天神山だったらしい。

鉄塔の足元からは、大菩薩方面の山々がよく見えた。

それにしても、天神山には何の道標も無かったし、ただの小ピークにしか見えないような場所だったので、本当あれが天神山なんだろうかと疑問に思いながら歩いていると、天神様の祠が現れた。
本当に天神様なのか、念のため中を覗き込むと、たしかに道真公が祀られていたので、間違いなく天神様だ。(ちなみに、浅利天神と呼ばれているらしい。)
ということは、やはりあの小ピークが天神山だったんだろうなぁ。

天神様の前からは南西方面の展望が開けており、花咲カントリークラブが見えた。

再び尾根道歩き。

11:59、ついに稚児落しが見えてくる。

「稚児落し」の名前の由来は、戦国時代まで遡るそうだ。
当時岩殿山に城を構えていた小山田氏は武田勝頼を裏切って武田氏を滅亡させるも、今度は自身が織田信長に攻められる立場となった。
織田に攻められ城を密かに落ち延びるにあたって、当主・小山田信茂の子供、まだ赤ん坊の万生丸が泣き出したため、追っ手に所在を知られることを恐れて、万生丸を崖から投げ落としたそうである。
(参照サイト:相模原郷土の歴史研究会

稚児落しは、下掲のとおり、U字型になっている。
この場所の、赤丸のあたりから見た稚児落しはこちら↓。

ちょうどお昼なので、ここでランチにする。
今回はサンドイッチ。
クーラーバッグに以下の食材を入れて持ってきた。

  • トマト 4個
  • カットレタス
  • スライスチーズ
  • ハム
  • マヨネーズ
  • 卵 2個
これを、パンに挟んで食べる。

まずは、卵をスクランブルエッグに。
フライパンの向こうに写っているのが、今回持参したクーラーバッグ。
保冷剤を3個突っ込んできたが、この時点で保冷剤は一部まだ凍っていた。なかなかのパフォーマンスだ。

いろいろ食材を広げてしまって、やや収拾がつかなくなりつつ、めいめい勝手に食材をパンに挟んで食べる。
食材といっしょにクーラーバッグに入れてきたポカリスエットもキンキンに冷えていて美味い。

たっぷり1時間かかってランチを取り終え、再び歩き出す。

稚児落しをぐるりと回り込んで、下掲の赤丸部分まで来る。
さきほどまでランチを取っていた場所もよく見渡せる。
大絶壁。
日差しは暑いが、風の抜けが良く、快適。

ここから先は、ひたすら樹林帯の中を下るばかり。

砂礫で滑りやすい道を慎重に下っていく。
やはり樹林帯の中では体感温度がグングン増して、再び汗が吹き出してくる。
だが、蚊やアブヤハエ、その他羽虫の類は、今日は全く気にならない。虫除けスプレーをしているわけでもないのに、存在自体を感じなかった。
暑すぎるせいか、季節がもう秋に移ろっているのか、理由は分からないが非常に快適に歩けた。

かなり標高を下げたあたりで、笹が生い茂りはじめる。
が、それもつかの間。

13:57、民家発見。

民家の前まで出ると、そこからは道が舗装されていた。

たしかこの先、吊り橋を渡るんじゃなかったっけ・・・?
吊り橋って、車が通れるような橋なのか?
などと考えながら歩いていると、ちゃんとした橋を渡って、14:06、ちゃんとした舗装道路に出てしまった。

あれー???と思いながら尚も先に進むと、14:10、吊り橋が現れた。
どうやら、吊り橋を渡るのは、今歩いてきた道の途中でショートカットするルートだったようだ。
遠回りをしてしまった模様。

そこから先はダラダラとアスファルトの道をJR大月駅に向かう。
途中で中央道の下をくぐるのだが、すでに上り線は大渋滞。

14:35、駅前の歩道橋の上から岩殿山を望む。

14:41、JR大月駅に到着。

コカ・コーラを飲み干し、本日の消費カロリーを台無しにする。
これだから痩せないんだなー。。。


【総括】

岩殿山から稚児落しの周回コースは、非常に変化に富んで、かつ、展望も良いので、低山ながら非常に楽しい山であった。
都心を出発して登りに行くのであれば奥多摩に行くよりも近いぐらいかもしれないし、アプローチも楽で大変リーズナブルな山でもある。
ここは今後、季節ごとに来たいと感じた。

ただ、大キレットのトレーニングには全くならなかったなー。。。
逆に言えば、アスレチック気分で歩ける山なので、レクリエーションとして大変オススメだ。







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