仕事が忙しすぎて、去年までのようなペースで山に行けない。
先月なんて、丹沢に日帰りで1回行っただけで終わってしまった。
オレの奥多摩よ、オレの八ヶ岳よ、オレの安達太良山よ。
1月に行こうと思っていた山々が果てしなく遠く感じる。
そして、2月。
状況は何も変わらず、むしろ悪化しているかもしれない。
それでも、せめて1度は山に行っておかないと、僕はきっと酒に溺れる。
最近、強いお酒を飲むと心が落ち着くという状態になっており、このままでは廃人まっしぐらではないかと危惧している。この状況に歯止めをかけられるのは、山しかない。
そんなわけで、仕事の合間を縫うように、友人を誘って近場の軽い山に行くことにした。
そのターゲットとなったのが金時山だ。
実は金時山には行ったことが無かった。
箱根は若かりし頃に当時付き合っていたコと温泉に1泊してケンカ別れをした思い出があり、それ以来あまり足が向かないままに年老いてしまった。
それでも数年前に、強羅から箱根湯本まで、箱根駅伝のコースを駆け下りたことはある。が、その際も、その後半月ぐらい謎の体調不良に悩まされ、やはり箱根方面は方角が悪いのだと再認識した経緯もある。
そんなわけで金時山にはなかなか足が向かなかったのだが、東京に暮らす登山者として、一度は訪れなければならない山のような気はしていた。
仕事に影響が出ない程度の負荷しかかけられない現状では、金時山ぐらいがちょうど良いのではないかと思い立ったのだ。
朝7:30、新宿を小田急の高速バスで出発する。
約2時間バスに揺られ、到着したのは乙女峠バス停。
目の前にはふじみ茶屋。
名前のとおり、富士山の眺望が良い。
茶屋の脇には金太郎。さすが金時山。
この金太郎の尻を子供に撫でさせると良い子に育つそうで。
ふじみ茶屋ではダンゴが売られているのだが、普通のモチ米のダンゴではなく雑穀なんだそうで。
1本注文しただけなのにお茶まで付いてきて至れり尽くせり。
気温は2℃。
そこそこ寒い。
だが、雪はほとんど残っていない。
完全に観光気分だが、この先は山頂まで高低差200mちょいの登山道を登る。
9:54、登山口を出発。
登山口を入ってすぐ、地面を雪が覆い始める。
林道歩きのうちはスパイクなどは着けずに歩く。
凍結箇所も多く、気が抜けない。
9:58、林道から登山道に入る分岐に至る。
登山道の様子を見て、スパイクチェーンのチェク用を決めた。
さすが北側斜面。木道の上が凍ってカチカチのツルツル。こんなもんスパイク無しじゃ歩けない。
が、積雪は非常に薄いので、すこし開けた場所ではほとんど無し。
10:24、道標が立っていた。
よく見ると「金時山までここから約1Hour」と書いてあった。
なぜそこだけ英語???
その後も北側斜面の地表は、薄いながらも雪と氷に覆われていた。
10:35、乙女峠に到着。
峠はなぜか多くの人で賑わっていた。
その大半は、どこかの高校の山岳部といった風情。
峠にあるのは、廃屋と
展望台。
その向こうには富士山。
峠からほんの少し上がると、ベンチもある。
そこから見えるのは箱根の山。
乙女峠から金時山へは、ひたすら尾根歩き。
日差しの当たる場所も多く、そういう場所は見事に泥濘。
こういう場所は、軽アイゼンで歩くのはことのほか苦痛だが、チェーンスパイクだと違和感無し。
ただ、どっちにしても泥だらけになる不快感は変わらない。
尾根歩きとはいえ標高は低いので、樹林帯なのだが、葉の落ちた木々の間からは箱根の山や芦ノ湖が見える。
夏山ではこうはいかないわけで、冬の低山歩きのご褒美と言えよう。
標高を上げるごとに、登山道は泥しか無くなる。
いいかげんウンザリして、チェーンスパイクを外した。
その後も引き続き泥んこ。
いわゆる「田んぼ」である。
一歩歩くごとに、ねちゃっ、という音が足元から聞こえる。ストレス。
そんな泥んこ登山道を歩き、11:01、長尾山山頂に到着。
やっぱり泥。
ここまでが泥んこだったので完全に油断したのだが、山頂の向こう側は雪だった。
だが、かなり腐っていたので、チェーンスパイクは不要と判断。そのまま進んだ。
すると、下り斜面になった瞬間、凍結していた。
今思えばここでチェーンスパイクを再装着すべきだったのだが、このときは、泥だらけの靴を触るのが嫌でそのまま進んでしまった。
無駄に怖かった。
鞍部の手前で、前方に金時山が見えてきた。
鞍部に差し掛かるところで、注意を促す看板が立っていた。
「急峻で岩場の多い」ことと猪の鼻とが頭の中で結びつかなかったので、Wikipediaを見てみた。
(引用ここから)---
金時山は粘性の高い金時山溶岩から構成されており、他の古期外輪山とは異なる地質を有する。このため、山頂付近の傾斜が非常に強く、遠くから見るとひときわ高い峰が天を突いているように見える。この姿が、顔から急に突き出たイノシシの鼻のように見えるため、かつては猪鼻嶽(いのはなだけ)や猪鼻ヶ嶽(いのはながたけ)と呼ばれていた。
(引用ここまで)---
なるほど。
鞍部は非常に狭くて細いヤセ尾根で、切り立った場所だった。
しかも足元は凍結箇所も多い。
そんなところで向かい側からトレイルランナーの5人パーティがやってきた。
こちらが先に行っても通れないぐらい細い道が続いているので、ここでこちらが道を譲ることにしたのだが、こともあろうに、トレイルランナーたちは走って通り過ぎていった。
なにやってんだよ!
こんな切り立って狭くて凍結しているところを、しかも道端には登山者(我々)が立っているにもかかわらず走るとは、なんたる心得違いか。
コケたら自身だけでなく他の人(我々)まで巻き込んで事故になる可能性もある状況で、なぜ凍結箇所を走る!
実は最近トレラン界では、トレイルランナーに対するマナーと安全の啓蒙活動が盛んだ。
なぜなら、鎌倉アルプスでのトレラン大会中止を皮切りに、かなり風当たりの強い状態が続いているからなのだ。
それがついに、国レベルの環境問題と認定され、環境省が「国立公園におけるトレイルランニング大会等の取扱いについて」という説明会を開くに至った。
内容はこちらのページなどをご覧いただきたいのだが、こんなもん行政が乗り出す前にちゃんと考えてしまるべき内容だろうというところなわけで。
僕は登山もトレランもやるので、今回の説明会の内容には意義を感じる一方で、こんなことを行政に言われなきゃならない情けなさが込み上げてくる。
スノーボードも日本に入ってきたばかりのころは、安全性やスノーボーダーの素行の悪さなどが問題視されていたが、行政が乗り出す前にソフトランディングした経緯がある。
それが出来なかったトレラン界は、今後よりいっそうの啓蒙活動が求められるだろう。
閑話休題。
鞍部でトレイルランナーたちをやり過ごしたあと、今度は上りが始まった。
えらく道が細い。
その先にはちょっとした岩場も。
岩の質を見て、ここも火山であったことを思い出す。
ゴツゴツの道が続く。
次第に稜線の樹木がまばらになり、見晴らしの良い箇所も現れた。
青空も、次第によく見えるようになってきた。
足元は固まった雪。氷。
11:35、金時山の前の小ピークを通過。
いよいよ金時山の山頂が見えてきた。
11:45、山頂到着。
山頂には記念撮影用のマサカリが置かれている。
完全に観光地のノリだが、持ってみると意外と重く、凶器としてもなかなかの破壊力がありそうだ。
山頂には2軒の茶屋が立っている。(写真はそのうちの1軒。)
展望は見事。
富士山と、
箱根。
この絶景の中でいよいよ、担いできたランチを食べる。
今回のメニューは鶏鍋。
が、この山頂のテーブルは全部「火気厳禁」「コンロ禁止」の文字が。
マジかよ! 尊仏山荘なんて、山荘内のテーブルでもコンロOKなのに!
そんなわけで、ガスストーブ適地を探して山頂を彷徨い、やっと見つけた溶岩の上。
空腹にイラつきながら、セッティング完了だ。
煮込む。
食う。
うまい。
もはや、下界で鍋を食う意味が分からない。
山頂には野良猫親子の姿も。
猫飼いたい。犬も飼いたい。
山頂はポカポカ陽気で、風も穏やかだった。
この日東京では暴風だったようなので、その差に驚くばかりだ。
あまりの陽気の良さに、予定時間を大幅にオーバーしてのんびりしてしまった。
帰宅後に仕事をしなければならない僕としては、あまりのんびりしてばかりもいられないのだ。
13:44、下山開始。
下山ルートは南斜面なので、チェーンスパイクを着けずに出発した。
早速泥濘。
それでも日陰には凍結も。
凍結箇所が急な斜面だと、やはりちょっと怖いが、
泥の箇所と交互に現れるため、どうしてもチェーンスパイクを履く気になれない。
そうして20分も歩くうちに凍結箇所は無くなり、ひたすら泥濘となった。
14:06、金時神社分岐に到着。
多くの人はここから金時神社方面に降りるのだろうが、我々はその先の矢倉沢峠から降りることにしていたので、そのまま稜線を歩く。
峠が近づくにつれて全容を現す明神ヶ岳。
これはこれで歩いてみたい稜線だ。
が、今日は帰宅後に仕事が待っているので、これ以上足を伸ばすことはできない。無念だ。
14:30、うぐいす茶屋跡に到着。
ここから仙石に降りる。
ここから先は平凡な登山道。
関東近郊の低山の稜線を外したところでよく見受けられるような風景が続く。
14:46、登山道終了。舗装道路に出る。
この道をしばらくたどるとバス通りにぶつかり、ローソンが現れる。
このローソンの前にバス停があるのだが、このバス停は極端にバスの本数が少ない。
隣の仙石バス停まで行けば極端に本数が多くなるので、1区間歩くことにした。
バスは箱根湯本行き。
箱根湯本で温泉に入って帰宅。
2月唯一の登山はこうして終了した。
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