冬山シーズンなのに、仕事に追われるうちに春になってしまった。
無念で仕方が無い。
本当は3月上旬に西穂高のピラミッドピークまで行きたかったのだが、運動不足が腹の周囲にこびり付いてしまった現状ではとても無理だと判断し、年末に燕岳に一緒に行った友人を伴って南八ヶ岳に行くことにした。
予定した行程は以下の通り。
【1日目】
新宿からスーパーあずさで茅野へ。バスで美濃戸口まで。
美濃戸口から美濃戸山荘を経由して、南沢を通って行者小屋へ。
行者小屋で一休みした後に、中山展望台に立ち寄りつつ、赤岳鉱泉に投宿。
【2日目】
赤岳鉱泉から硫黄岳に登頂し、稲子温泉に下山。
連れの歩行スピードを考えると非常に不安の残る行程ではあったが、様子を見ながら都度行程を変更するしか無かろう。
そんなわけで、眠い目をこすりながら新宿を出発し、スーパーあずさで爆睡。
気付いたら茅野に到着する10分前だった。
同じ車両に、アイゼンやピッケルを剥き身でザックに外付けしている登山者がいて、できれば近付きたくないと思っていたのだが、茅野から美濃戸口へ向かうバスの列ですぐ後ろに並ばれてしまった。
ザックをぶつけられないように気を付けねば。
バスの車窓から見る八ヶ岳は、ギリギリ山体が見えているものの、決して好天とは言えないコンディションだった。
10時半、美濃戸口に到着。
えらい賑わっていた。
山荘前には、ツアーの団体、山岳会らしき団体、数名のパーティ、ソロ、諸々コミコミで60人ぐらいいたのではないだろうか。
今晩の宿の混み具合が思いやられた。
登山計画書を提出し、トイレを済ませ、身支度を整えて出発。
気温は高く、道に積もった雪はシャーベット状。
連れはここでチェーンスパイクを装着する。
快適そうだ。
こちらは12本爪のアイゼンしか持ってきていないので、滑らないように気をつけながら歩く。
気温は明らかに高い。
手元の温度計で5℃近くあった。
これじゃゴールデンウィークの陽気じゃないか。
でも、青空はほとんど見えない。
沢沿いには巨大なツララ。
気温の高い日が続いたのだろう。
でなければ、こんな盛大なツララなんかできない。
うーん、雪の状態は大丈夫だろうか。
11:38、赤岳山荘に到着。
赤岳山荘の駐車場前からは、阿弥陀岳だけがポッコリと浮かんで見えた。
なんともハッキリしない天気だ。
赤岳山荘前で小休止のあと、再び出発。
美濃戸山荘前の坂は、雪が溶けて小川のようになっていた。
3月上旬でこんな状態になってるとはなぁ。。。
12時前に美濃戸山荘に到着。
アイゼンを装着。
さあ、ここから本日の宿である赤岳鉱泉まで、どっちのルートで行くか。
眺めが悪ければ北沢ルートを粛々と、眺めが良ければ南沢から行者小屋を経由して阿弥陀、赤岳、横岳を堪能して赤岳鉱泉へ、という腹積もりでいたのだが、なんとも天気が中途半端。
見えそうで見えない、でもたまに見える阿弥陀岳の様子に、
「もしかしたらお天気回復傾向?」
などと根拠の無いポジティブシンキングが頭をもたげてくる。
結局その希望的観測に引っ張られて、南沢に足を踏み入れる。
コースタイム的には、上乗せされる時間は1時間足らず。問題なかろう。
が、この判断が、このあといろいろと計画を狂わせた。
それは後のお話。
南沢に踏み入れると、急に人の気配が薄くなった。
美濃戸山荘まではあんなに人がたくさんいたのに、やはり皆、北沢ルートに行ったのだろうか。
北沢は林道に近いたたずまいだが、南沢はいかにも登山道といったたたずまいなので、歩いて楽しいのは南沢ルートだ。
が、同時に、体力的にキツいのも南沢ルートだ。
そのためか、南沢に入った瞬間から、連れのペースがガクンと落ちる。
これは失敗したかもしれない、という思いが脳裏をよぎる。ここまではいいペースだったから、完全に油断した。
それでも、沢沿いの風景はシンとして、やはり来て良かったと思わせるものだった。
空は基本的に曇天模様だが、たまに雲が切れて、青空が見える。
こんな青空を見せられると、否が応でも期待が高まる。
天気予報では、明日は晴れだということだった。その天気予報にすべてを賭けて、寝不足を押して今回の山行を強行したのだ。
12:37、南沢ルート一番の急勾配、無雪期ならば階段状になっている坂に至る。
連れの足が完全に止まった。
励まし励まし、先を急ぐ。
美濃戸山荘からのペースが遅すぎて、このままでは赤岳鉱泉に日のあるうちにたどり着けない。
沢の上に積もった雪が不思議な形状に残っている。
それを横目に、ひたすら雪の道を歩く。
行動時間が長くなるにつれ、だんだん僕も睡眠不足がじわじわ効いてきた。眠い。歩きながら寝てしまいそうだ。
14:03、南沢のランドマークである大岩を通過。
そう、本来ならばもう、行者小屋手前の広い水無しの川原に出てなきゃいけない時間帯だ。
結局、見晴らしの良い場所に出ても、曇っていて何にも見えず。
うーむ、勝手に期待したこちらが悪いのだが、非常に残念だ。
が、かろうじて一瞬、赤岳が見えた!
横岳らしきものも、なんとなく見えた。
このまま好転するかと思いきや、雪がチラついてきたりと、なんともハッキリしない天気だ。
挙句の果てに、さらに雲が低くなってきた。
もういい加減ウンザリしてきたところで、行者小屋到着。
時刻は15:08。
行者小屋は、昨シーズンから土日営業を開始しているので、入り口の前はしっかり雪かきもされている。
テント場にはすでにいくつかのテントが立っていた。
すでに我々はすっかりウンザリしてしまっており、今から赤岳鉱泉まで歩く気力も萎えてしまっていたので、赤岳鉱泉の予約をキャンセルして行者小屋に泊まれないか、行者小屋の受付で相談してみた。
すると、快諾していただけた。
まったく以って申し訳ないとともに、大変ありがたい。
早速受付を済ませ、寝床に案内していただく。
寝床は、半個室のような場所を2人で占有できる広々空間。
コタツもあって、快適であった。
無雪期の混雑具合からは創造もできないほどの贅沢な広さだ。
夕食までは、小屋に置かれている本を引っ張り出してきて、ビールを飲みながらパラパラと眺める。
が、結局、明日の行程について連れと相談することがメインになり、本はほとんど放置。
果たして本当に明日は晴れるのだろうか。
17:45、夕食の時間。
カレーはおかわり自由。具沢山で激ウマ。
満腹になったら、明日の朝にすんなり出発できるよう、荷物をまとめ、その後はコタツで持参したウィスキーをチビチビ舐めながら読書。
と思ったが、結局読書には身が入らず、小屋においてあった植物図鑑を連れと眺めながら、高山植物の話をしているうちに、抗い難い睡魔に襲われ、よろよろと寝床にたどり着くと同時に寝落ち。
いろんな意味でグダグダののんびりした初日が終了した。
(「2日目」につづく)
0 件のコメント:
コメントを投稿