このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2013年1月9日水曜日

山行記 : 2013年1月2日~4日 燕岳 [3日目] 燕岳山頂を見ずして下山



(この記事は「[2日目その2]燕山荘にて」編の続きです。)


例によって山の朝は早い。

特に燕山荘の朝は、朝飯前に燕岳の山頂に登っておこうという人が、5時ぐらいに出かけて行ったりする。
この日の朝食は6:15からだったので、6:00まで寝てやろうと思っていたのだが、ガサガサゴソゴソと周りがうるさくて寝てられない。
そんなにみんなが早くから動き出すほど天気が回復したのだろうか。

期待を胸に6:00を過ぎた頃に布団から這い出して、外を覗いてみた。


残念ながら、昨日と何も様子が変わったように見えない。
少なくとも、どこに山頂があるのかも見えないし、風も強いままだ。

チッ!


失望しつつ食堂前のストーブにあたって待機。
もうこの時点で、山頂まで行こうという気は失せていた。

元々ピークハントにはあまりこだわりが無いので、条件の悪い時にそんな目と鼻の先の山頂に出掛けていかなくてもいいじゃないか、と。

実を言うと、夏の晴れた日に来たときにも、燕山荘まで来るともう満足して、燕岳山頂まで行く気がしなくなるという傾向がある。ましてや、天気の悪い冬の日においておや、である。


6:15、朝食。

品数が多くて嬉しい。
しかも、冬でもゼリーが付く。
このゼリー、チープな感じだけど、すごく好きなんだよなぁ。


朝食後、今日の行動をどうするかしばし考える。
天気予報の感じだと、おそらく今日もう1泊すれば天気が回復して眺望も良くなるはず。
そして、予備日は2日間用意したので、延泊する余裕もある。

実はこの年末年始はずっと天気が悪かったそうで、燕山荘の泊り客にも、12月29日からずっと滞在しているのに一度も燕岳の姿をまともに見れていないという人もいたぐらいだ。
それを、1日延泊するだけで拝めるならば安いものだとも思う。

だが、僕はそうしなかった。
なんだか今回はすでに、とても満足してしまったのだ。
うんざりとか、お腹いっぱいとか、そういう気持ちではなく、心の底から満足したのだ。
山に来て、ここまで満足感を味わったのはいつ以来だろう。


そんなわけで、荷物をまとめてさっさと下山することにした。

7:44、燕山荘を出る。

ガスの向こうにぼんやりと朝日が見える。
昨日よりは天気が回復している証拠だ。
風も昨日よりは弱いが、気温は手元の温度計で-20℃を下回っている。

燕岳はうっすらと見えるが、山頂までは見ることができない。

またいつの日か、雪の燕岳を見に来よう。
その時は好天に恵まれますように。

燕山荘の裏に回り、下山路に向かう。
裏に回ると、燕山荘の冬季小屋の入口がある。

表銀座を大天井方面からたどってくると、まず最初に目に入るのがこの冬季小屋の入口だ。
(中房温泉から上がってきてもそれは同じなのだが。)
そういえば、僕が出発しようとしているタイミングで、燕山荘の受付に男性が1人やってきて、
「昨日、小屋の入口が分からなくて、やむを得なく冬季小屋を使ってしまいました。」
と自己申告していた。
たしかに、昨日のあの荒天のなか、強風に煽られていると、回り込んだ反対側に入口があるなんて考えることができないのかもしれない。でも、1度でも燕山荘に来たことがあれば、反対側に入口があることなんて分かりそうなもんだけどなぁ。

この位置からは、表銀座の稜線が見える。

天気が良ければ、この稜線の向こうに大天井と槍ヶ岳が見えるのだが、残念ながらガスの向こうだ。
そして、この稜線の先には、昨日助けを求めて燕山荘にやってきた男性の連れ2人が、助けを待ってビバークしているのだ。
昨日よりマシな天候とはいえ、僕の力では助けに行ったところで、ミイラ取りがミイラになってしまう。
心が痛むが、山岳救助隊に任せて下山することにする。

下山は、昨日登ってきたところ、夏には展望台になっている場所のすぐ横から。
昨日は撮影する余裕が無かったが、案内板も出ている。

そして、これが急登とフィックスロープ。

下りは、特にピッケルに頼らなくても問題なく下りることができた。

急坂を下りきって合戦ノ沢ノ頭の手前で来し方を振り返る。

今日は燕山荘がはっきり見える。
薄いガスの向こうは青空が広がっているようにも見える。きっと今日は、燕山荘から良い景色が見えるに違いない。
ちょっと残念な気はしたが、またの機会にとっておくことにして、先を急ぐことにする。
向かう先は、まだまだ樹木のまばらな尾根道だ。

8:14、合戦小屋に到着。


合戦小屋の前に昨日あった足あとは、一晩で見事に消え去っていた。

8:33、富士見ベンチ到着。

ほんの少しだけ道標の頭が見えていたので、掘り起こしてみた。
といっても、サラサラの雪をピッケルのブレードで掘るだけなので、これが限界。

標高を下げるごとに、陽光が強くなっていく。
黄色いゴーグルでは雪面の反射がキツくなり、サングラスに換装する。

そんな日差しが、昨日までの雪をかぶった木々を照らして、さわやかに眩しい。
パウダーシュガーみたい。(月並み)
画像の真ん中あたりには、中房温泉の建物も見えている。
実は、僕はここから見る中房温泉の姿が好きだ。

8:54、第三ベンチに到着。

ここまで標高を下げると、気温もグンと上がって-15℃。

北側には、東餓鬼岳や清水岳がはっきり見える。

ということは、上の方ではきっと、燕岳もきれいに見えているに違いない。
たった1時間の差だったかー。。。
慌てるナントカは貰いが少ないと言うが、まさしく今日の自分にその言葉を贈りたい。アデュー!

第三ベンチから先を急いでいると、後ろから、
「追いついた!」
と、声をかけられた。
見ると、中房温泉で相部屋だった男性2人である。うれしい再会だ。
そこからはその2人と即席パーティとなり、3人で下山する。

9:14、第二ベンチに到着。

そのまま素通りである。

9:26、第一ベンチに到着。

2時間かからずにここまで来てしまった。
昨日の苦労が嘘のようだ。

昨日の朝見た、第一ベンチのテントは撤収されていて、人の気配は無かった。

このあとすぐに、山岳救助隊とすれ違う。
少し言葉を交わして別れた。
これから大天井の遭難者の救助に向かうそうだ。
随分ゆっくりなスタートだなぁと思ったが、『PEAKS』の2013年1月号に富山県の山岳警備隊の話として
「コースタイム2時間の登山道を隊員は40分で駆けつける」
と書いてあったので、きっと長野もそうなのだろう。だとすれば、正午ぐらいには現場に到着できるのではないだろうか。
しつこいようだが、僕としては無事を祈ることしかできない。

9:50、登山口に到着。

気温は-8℃。

あとは林道を下るだけ。

アイゼンを外し、ピッケルをしまって、雪をかぶったアスファルトの林道を3人で下る。

単独行の気楽さもいいが、連れと雑談などしながらの楽しさも、また良いものだ。
特に、退屈な林道歩きでは大変うれしいものである。

林道からは、前衛の山々の間から、表銀座の稜線が顔を出していた。
嗚呼、綺麗だなぁ。
また来ようと強く決意した次第だ。

3時間ほど歩いて宮城ゲートに到着。
あらかじめ迎えをお願いしていたタクシーに乗り穂高駅へ。

こうして僕の初めての厳冬期北アルプス山行は終了した。






帰りの松本駅から見た常念岳、カッコ良かったなぁ。。。




(「装備(ウェア)編」につづく)



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