(この記事は「【5日目】 将監小屋~飛龍山~雲取山~奥多摩小屋」編の続きです。)
山の朝は早い。
縦走6日目、ついに最終日。
これまでの中で一番標高が低い朝だ。気温もこれまでに比べて暖かい。
おかげで、5時過ぎには起き上がることができた。
朝飯を食ってテントの外に出ると、朝焼けの空に富士山が浮かび上がっていた。
日が少しずつ高くなり、6時過ぎには朝焼けも僅かに名残を残すのみとなった。
この頃にはもうテントの撤収に取り掛かることができていた。今日は早く出発できそうだ。
と思っていたら、問題発覚。
なんと、テントのポールを通すスリーブ(筒状の部分)に、ハサミムシが10匹以上入り込んでいたのだ。
こんな細長い筒状の中に入ってしまったハサミムシをどうやって追い出せばいいんだ。。。
結局、叩いたり引っ張ったり絞ったりしながら、なんとかすべてのハサミムシを追い出すことに成功したが、それだけで30分もかかってしまった。
なんとか撤収が完了して出発できたのは6:58だった。
それでも、今回の山行では最も早い出発である。
出発して1分でヘリポート到着。
引き続き石尾根を下る。
視界良好。昨日見ることができなかった連なる山々の姿が、遠くまで見渡せる。
7:17、ブナ坂に到着。
標識。
そこから、七ッ石山の北西斜面を登る。
西のほうには、昨日歩いた飛龍山。
七ッ石山の山頂直下まで登ると南アルプスがよく見えた。
7:30、七ッ石山山頂に到着。
実はこのとき、予定通りに石尾根を通って奥多摩駅前まで歩くのか、さっさと鴨沢に降りてしまって楽をするのか、迷っていた。
今日はこのあと武蔵五日市で宴会があるので、風呂に入る時間も考えると、13時までには何としても奥多摩駅前に着いておきたい。
その時間との兼ね合いを考えるに、石尾根を歩いて下山するのはなかなかシビアだ。しかも、六ツ石山から先は、ダラダラと長いばかりで退屈なルートが続くので、あまり気持ちが乗らない。
それに対して、鴨沢ならば昼前には奥多摩駅前に到着できる。
それに、なんといっても非常に楽ができる。
とはいえ、なんとなく鴨沢に下りると、なんだかちゃんと縦走した感じがしない。
うーん、、、
悩んだ結果、石尾根を下る決意をした。
ここで鴨沢に下りてしまったら、もう一回やり直しをしなきゃいけないような気になるだろうし。今回できっちりケリをつけよう。
それならば、急がないと宴会に間に合わなくなってしまう。
さっさと七ツ石山を下りる。
七ツ石神社を経て、
7:37、石尾根と七ツ石小屋の分岐に到着。
石尾根のこの尾根は、何度歩いても気持ちが良い。
7:45、七ツ石小屋への分岐その2に到着。
今の気分としては、この分岐がしつこい客引きに見える。
そっちには行かないってもう決めたんだよ!
振り切って先を急ぐ。
千本ツツジの手前で、今年の6月に写真を撮った場所であることを思い出し、同じ場所から撮影してみた。
今回の山行での写真。
今年の6月に撮った写真。
木々の葉っぱがスッカスカで、やはり秋なんだなぁと思い知らされる。
来年の春が来ればまた、新緑のトンネルが現れるに違いない。
千本ツツジの手前では、ところどころで展望の開けた場所があり、その都度富士山が姿を現す。
やっぱり富士山はデカイなぁ。
千本ツツジあたりから見た高丸山と日蔭名栗山。
現在時刻は8:00ちょうど。
あの稜線をキレイにたどっていったら、とてもじゃないが13:00に奥多摩駅前にたどり着くことは不可能だ。
やむを得ない。千本ツツジから巻き道に下り、鷹ノ巣山だけピークを踏むことにしよう。
ということで、巻き道を歩き始める。
少し残念な気分ではあるが、実は植生の濃い巻き道のほうが、森の生き物たちの気配が濃いのだ。鳥のさえずりも非常に近い距離で聞こえる。
ところどころ笹が生い茂る場所もあったが、さすがの石尾根、道幅も十分で、笹を掻き分けなければならないような状態は皆無だった。
また、真新しい橋などを見ても、このあたりの手入れがいかに行き届いているかを推し量ることができる。
野趣満点な場所を歩くのも楽しいが、手入れの行き届いた登山道を歩くのも楽しい。
8:20、高丸山と日蔭名栗山の最鞍部のあたり。
ここは尾根道と巻き道がここまで接近している。
もちろん、このまま日蔭名栗山も巻く。
先に進むと、古臭い看板が打ち捨てられていた。
昭和臭がプンプンするが、そんなに長い間、ペンキの色も色あせずに残り続けるものなのだろうか。特に、黒のペンキよりも褪色の激しい赤のペンキが、ちゃんと読み取れる状態のままであることに違和感を感じた。
うーむ。。。
8:46、巳ノ戸ノ大クビレに到着。
このすぐ先に鷹ノ巣山避難小屋がある。
避難小屋のベンチには、先客が2組いた。
ここまでの巻き道でも2~3組の登山者と出会ったし、平日でも人影がちらほら見かけるのはさすが奥多摩、さすが石尾根。
避難小屋前のベンチで10分ほど休憩を取り、再び歩き出す。
小屋のすぐ先に分岐があり、一方は峰谷へ、一方は石尾根へ向かう。
もちろん、迷わずに石尾根をたどる。
峰谷に下りても、林道歩きは苦痛だし、バスの本数も少ないし、何も良いことは無い。
ここで、うっかり尾根道ではなく巻き道に入ってしまい、慌てて引き返すというハプニングがあり、10分弱のロスが発生する。
マヌケすぎる。
ここから鷹ノ巣山の山頂までは地味に距離があり、しかもなかなか斜度もキツイ。
けっこう登った気になる山だ。
最後のバックストレートを登り、
9:21、鷹ノ巣山の山頂に到着。
鷹ノ巣山の山頂からの展望は、相変わらず素晴らしい。
富士山と三頭山。
南アルプス。
御前山とか大岳山とか、そっちのほう。
いつまでも見飽きない風景ではあるが、先を急ぐ身なので早々にまた歩き出す。
下り斜面は、広い防火帯の道。奥に見えるのは水根山。
ホンキの山火事の際には、きっとこの程度の防火帯などモノともせずに延焼するのだろうが、無いよりはマシなのだろう。
水根山の手前の分岐で、何のためらいも無く巻道に下りる。
巻き道は相変わらずの樹林帯だが、やはり秋を感じさせる。
登山道の両側の細い枯れた木がなんなのかは分からないが、その木に引っかかった赤い葉が、まるでモズの早贄のようだ。
このあたりでリスを見かける。
すばしっこく、写真を撮るのが間に合わなかったのでリスの種類までは特定できず。
外来種のタイワンリスとかだったらショックだなぁ。。。
9:41、榧ノ木尾根への分岐に到着。
ここから、少し下りが続く。
9:52、再び分岐に到着。
この分岐も榧ノ木尾根に向かう道なのだが、途中で水根沢林道にも抜けられる。
が、もちろん、これもパスして石尾根を下る。
なんてことのない巻き道歩きだが、先ほどのリスの続き、今度はシカが現れた。
これも、写真撮影を待ってくれずに走り去ってしまったのだが、山行中ずっと色濃く気配を感じていたシカの姿を、最終日にしてやっと目にすることができた。
これが猟師なら、かなり腕の悪い部類に入るだろう。
先に進むと、次第に登山道に栗が目につくようになってきた。
あれ、これって、クマに出くわすパターンじゃないか??
10:16、尾根道と巻き道が合流。
このすぐ先が、将門馬場と呼ばれる平たい場所なのだが、ここに来て100mぐらい前方を四ツ足のズングリした生き物が登山道を横切った。
一瞬クマかと思ったが、それにしては小さすぎる。
すると、同じような生き物がワラワラと大量に通り過ぎていった。
ああ、ニホンザルの群れか。
ざっと20頭程度だろうか。大きいのから小さいのまでいろいろいる。
下手に刺激すると面倒な相手なので、群れが通り過ぎるのをその場で待ったのだが、1頭だけどうしても登山道を横切らずに留まっているのがいた。
あんまり待っててもしかたないので、イザというときのためにクマ避けスプレーだけ準備して進んだ。
1頭残っているサルとの最接近はした距離は20m程度だろうか。
これがその時の写真だ。
分かりづらいと思うが、赤丸で囲ったところに、サルがこっちを見て座っている。
仲間のサルも、登山道を挟んで反対側からこちらの様子を伺っている。
興奮している様子も無いので、特に心配なさそうだ。
道は次第に、尾根道から六ツ石山の北側斜面をトラバースする道への変わる。
このトラバースが、「あれ? こんなに長かったっけ?」と思うほど、延々と続く。
10:39、やっとトラバースを終えて六ツ石山分岐に到着。
このあたりにも、クマやサルやリスが好みそうなクリの実がゴロゴロと転がっている。
尾根を引き続き下ると、祠が見えてくる。
いまだに何を祀っているのか分からない・・・。
10:48、見覚えのある倒木が目に入る。
今年の2月に、ここでアイゼンを外して下ったら、この下の杉林が凍結していてエラい怖かった記憶がある。
特に見所も無いので、どんどん下っていく。
そして、道端の栗がその量をどんどん増していく。
嫌だなー。。。
後日、知り合いのベテラン登山者と話をしていたら、今年はドングリが不作で、逆に栗が豊作だとのこと。そのせいで、標高の低い登山道近くにクマが出てきて困る、と言っていた。
11:05、やっと三ノ木戸山への分岐に到着。
ここで、コースタイムを確認するために山と高原地図を見る。
僕が持参した2010年度版の地図では奥多摩駅前までで1時間半ということになっている。
で、なんの気なしにiPhoneに入れておいた山と高原地図アプリの奥多摩の地図を見てみたら、同じ区間が2時間10分になっていた。
え。
なんだこりゃ?!
1時間半なら予定通りだが、2時間10分だとタイムオーバーだぞ!
コースタイムって、版によってそんなに大幅に変わるものなのか??
混乱しつつも、とにかく先を急ぐ。
ほどなく杉の植林帯に入る。
ここが、冬場は凍結ポイントになる。
ところどころ栗の木も混じっているらしく、前にも増してイガ栗が落ちている。
このあたりは、南アルプスでクマに出くわした時の地形に似ているので、余計にイヤだ。
びくびくしながら、この栗街道をひたすら歩く。
11:57、稲荷神社に到着。
ここまで来れば、登山道はもうすぐ終わりだ。
木々の隙間から下界も見えてきた。
12:04、ついに登山口が見えた!
12:05、登山口に到着。
いろいろな生き物にであったが、クマには出会わずに済んだ。
ほっと胸をなでおろす。
あとはアスファルトの道を歩いて奥多摩駅まで日帰り温泉に入るばかり。
ケータイの電源を入れて、本日の宴会の合流時間についてメールを売っていると、後ろから1台の乗用車が近付いてきて、僕の横に止まった。そして、運転していたオジサンが窓から顔を出し、
「乗ってくか?」
と声をかけてくれた。
奥多摩駅前まで歩こうと思っていたので丁重にお断りしたが、人の温かさに触れた思いがしてありがたかった。
要塞のような奥多摩の住宅地も懐かしく感じた。
12時半前に、いつもの三河屋に到着。
こうして5泊6日の地味な縦走が終わった。
日帰り温泉に入り、昼飯を食べて、武蔵五日市に向かった。
(「総括」編に続く。)
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