このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2012年11月9日金曜日

山行記 : 2012年10月8日~ 奥秩父・奥多摩縦走 【5日目】 将監小屋~飛龍山~雲取山~奥多摩小屋


(この記事は「【4日目】 笠取小屋~笠取山~唐松尾山~将監小屋」編の続きです。)


山の朝が早いのかどうか怪しくなってきた縦走5日目。


今日こそ7時には出発するぞと心に誓っていたのだが、昨夜の寝付きが悪かったため、例によって寝坊。
それでも6時前には起床した。

今日は飛龍山、雲取山を経由して、奥多摩小屋のテント場泊だ。

ごはんを食べ、テルモスにコーヒーを満タンにした。
このコーヒーが、今日の行動中の水分補給の命綱になる。
明日の分の飲み物は、遠回りになるが雲取山荘に立ち寄って調達するほかあるまい。

出発前に、土間を軽く掃き掃除する。
営業小屋なのであまり気にしなくても良いのだろうが、管理人さんも居ないところにたった1人で泊まっていると、なんとなく避難小屋にいるような気分になってしまい、形だけでも掃除しておかないと何となく気持ちが悪い。

7:20、いよいよ出発。
朝日を受けて眩しい将監小屋に別れを告げる。

小屋のすぐ目の前の分岐から東へ向かう。

本日もお天気良好。

昨日の午後、急にガスってきた時には天気を心配したが、全くの快晴となって一安心だ。

登山道は、細いなりによく整備されている。
所どころ、なんとなく奥多摩を思い出すような景色で、いよいよ奥多摩に近付いてきたことを感じる。

7:40、将監峠から小屋に寄らずに歩くためのルートと合流。

このあたりから、次第に登山道が細くなり、道の両脇の笹がスネに触れるようになってくる。

次第に谷側の斜面がほとんど崖のような道が多くなる。

今まさに竜喰山を巻いているところなわけだが、昨日見た竜喰山はとんがった急峻な山のようだったので、この斜面の様子も納得である。

ところどころ、沢筋を渡るところには立派な橋が渡されていたりする。同時に、登山道の補強に石垣が用いられているところもしばしば。

こんな感じの風景は、鴨沢から雲取山に向かう途中の七ツ石山の巻き道でも見たような気がする。

たまにイカツイ場所を超えながら飛龍山を目指して南東に向かう。

竜喰山と大常木山を巻いて、飛龍山の手前の大ダルに至るまではずっとトラバース道なので、ほとんどアップダウンのない平坦な道だ。
退屈といえば退屈だが、サクサク歩けて気持ち良くもある。

ひたすらトラバースするのだが、笹が茂っているところも多く、笹で足元が十分に見えないところがある。

登山道にかかっている笹は、最も高い部分でも身長166cmの僕の腰ぐらいまでだったので、歩くには支障が無いのだが、谷側が切り立った崖になっている細い登山道では、足を踏み外さないように十分気を付けなければならない。

このように笹で足元が見えない箇所は、今回の山行では昨日まで無かったのだが、この日は、雲取山の手前の三条ダルミまでの間に何度か行き当たった。

笹が無くても、細い登山道は慎重に歩かなければならない箇所も多く、油断できない。
なかなかワイルドだ。

8:48、稜線の鞍部と登山道がぶつかった。ここが大ダルだろう。

ここから飛龍山には直登するのではなく、登山道は山頂を避けるようにいったん南に向かう。
そんなわけで、またトラバースのような登山道が続く。

9:12、水場に到着。(画像がブレブレでお恥ずかしい。)
ここは清水ではなく湧水のようだ。

ここから、さらに登山道は南を目指す。

9:30、禿岩への分岐に到着。

この分岐の標識を回り込むようにしてすぐの9:32、飛竜権現の分岐に到着。

飛竜権現の祠は非常にこじんまりとしたものだった。
軽くご挨拶をしてから横を抜ける。

ここからは少し、しっかりした角度のある斜面を登るが、それもごくわずかな時間。

そのあとは飛龍山山頂直下までしばらく、ロクにアップダウンの無い道だ。
山頂はもうすぐ近くに見える。

このあたりはシャクナゲが群生しており、きっと6月頃はキレイなんだろなーと。

登山道は、ところどころヤブっぽかったりしながらも踏み跡は明瞭で、迷う心配は感じなかった。

このあたりで、前方のヤブから斜面を降りていく音が聞こえてきた。
あー、きっとあの辺に降りやすいポイントがあるのかなー、などとノンビリ構えながら、音がしたあたりまで来ると、どう考えても人間が歩くような場所ではなかった。
シカか?! クマか?!
クマであってくれるな、と念じながら、クマ鈴を今さらのように一生懸命鳴らしてみた。

その後、少しだけ斜面を登り、山頂に連なる平地に出る。

9:57、飛龍山山頂に到着。

標識。

この山行の後半のハイライトは、まさにこの飛龍山だったのだ。
いつか来よう来ようと思いながら機会に恵まれずに眺めるばかりだった飛龍山に、ついにたどり着いたのだ。

というわけで、感慨深くはあるのだが、特に眺望が良いわけでもないのでさっさと先を急ぐ。

山と高原地図によれば、山頂から東側に降りる道は破線になっているのだが、歩く人が多いのか、しっかりとした登山道になっていた。

この道が破線なら、今日ここまで通ってきた道はほとんどの箇所が破線だ。

10:05、飛竜権現と雲取山をつなぐ登山道に、唐突に合流する。

道標などは特に無いので、ここから山頂に向かおうとすると分かりづらいかもしれない。
登山道はここから北天のタルまで蛇行しながら北東に向かう。

ここから少し進んだところで、東側の視界が大きく開ける箇所がある。
そこからは、おなじみの雲取山と石尾根が見えた。

こちら側から雲取山を見るのは始めてだ。
こんなにキレイな尾根だったんだ。

感動しつつも、雲が多くなってきたのが非常に気にかかる。これ以上下がってこないと良いんだが・・・。

北天のタルまでは、登山道代わりに、人工の橋のような通路が何箇所も渡されていた。

そうこうしているうちに、やはり不安が的中して、どんどん雲の高度が下がってくる。

今回の山行を通して、朝だけ快晴というパターンばかりだったなぁ。。。

10:27、北天のタルに到着。

至近距離で。

雲取山に着く頃には雲が降りちゃってるだろうし、そもそも雲取山には何度も登っているし、このまま三条の湯方面に降りて、お祭りに下山しちゃおうかな。いや、お祭りまで行かず、丹波でもいいんだよな。ブツブツ・・・。
道標を見ていると、そんな良からぬ考えが頭をよぎる。
実は、そんなエスケープルートを選んでしまう可能性もあるかもしれないと思って、将監小屋に貼ってあったバスの時刻表もメモってきてある。
退路の確保の段取りだけは他者に負けない自信があるぜ。威張れた話じゃないけどな。

って、いやいやいやいや、いくらなんでもここまで来てそれは無いだろ!
だいたい、バスに乗ったら隣の人に迷惑だよ、5日も風呂に入ってないんだし!
と、無理やり気持ちを雲取山に向かわせる。


ここから三ツ山に向かう道は、相変わらず笹。

稜線はアップダウンしているが、ここでもまた登山道はトラバースするように刻まれている。
稜線が近いところ(つまり鞍部)では、稜線越しに空も見える。

こんなヤセ尾根も、奥多摩や丹沢あたりによくありそうな地形。

その先も度々、人工の渡り廊下のような登山道を通る。


このあたりからは雲取山が木々の隙間からよく見え、石尾根の登山道まではっきり確認できた。

いよいよ雲取山が近付いてきたことを実感する。

その先は再び笹原を歩く。
こんな、どこが道なのかよく分からないような場所や、

道は分かるものの、足元が見えないところをザクザク進む。

そして、バックストレートのように狼平に向かって伸びる登山道を抜け、

11:45、狼平に到着。
地名のとおり、広くて平ら。

それにしても、なぜ「狼」なのだろうか。
昔はこのあたりにも狼は居たのだろうけど、それと関係があるのだろうか。
そういう伝承に詳しい奥多摩の古老とかと友達になりたいものだ。

狼平を抜けると、再び樹林帯に突入する。
この樹林帯に入って早々、奥秩父の最後の洗礼とも言える倒木が行く手を塞いでいた。

こいつは、これまでの中でもかなり手ごわい部類に入る。
なにせ、登山道の両脇は濃い笹に覆われ、迂回するのも一苦労。
下をくぐるにも、上を跨ぐにも、みっしり生えた枝が邪魔をする。
(結局、笹ヤブの中を迂回した。)

倒木を越えると、その先には広い登山道が伸びていた。

ほどなく奥多摩に入ろうという場所だけあって、このまま整備された登山道が続くのかもとホッとしたが、その考えは甘かった。

やっぱり登山道は細く、笹は茂っていた。
でも、景色はとても快適。
秋の晴れた日に尾根道を歩くのは、非常に気持ちが良い。

12:12、再び倒木に行く手を阻まれる。

水晶山で2日前に見たものよりも、より完成度の高い閉門蟄居パターンだ。
幸い、幹が細かったので、比較的容易に乗り越えられた。
ここまでいったい幾つの倒木を越えてきたのだろう。でも、それももうすぐ終わりだ。雲取山以降の行程には、あまりこういうことはないだろう。そういう意味でも奥秩父は野趣満点だ。

12:30、急に視界が開けた。ついに三条ダルミに到着だ。

三条ダルミからの展望。
多分、三頭山とか、そっちのほう。

頃合も良く、おあつらえ向けにベンチもあるので、ここで昼飯にする。
その後コーヒーブレイク。単なるインスタントコーヒーだけど、生き返る。

雲がだんだん厚くなってきたが、まだ日の光もあり、日向にいる分には非常に暖かい。
このままここで昼寝をしてしまいたい欲求に駆られるが、そうもゆっくりしてられない。
先を急ぐのはもちろんだが、実はこのときに、それなりに便意が迫ってくるのを感じていたのだ。(汚い話で失敬。)
実は将監小屋のトイレにはトイレットペーパーが備え付けられておらず、自分で持参したトイレットペーパーの残りも心もとなかったため、出発前に用を足していなかったのだ。
きっと東京都の公衆トイレである雲取山山頂のトイレにはトイレットペーパーがあるに違いないと睨んでここまでやってきたのだ。

12:50、便意に急かされるように出発する。

登山道は、今日僕がたどってきた道と、三条の湯に下りる道、そして雲取山に向かう道の3本のはずなのだが、方角的にヨモギの頭方面に向かっていそうな道もあった。

そんな道は地図に載っていないんだけどなぁ。
不思議に思いながら雲取山への道を登り始める。

実はここで、雲取山の山頂に行くか、雲取山の西側を巻いて雲取山荘に直接向かうか迷っていた。というよりも、雲取山荘に直接向かってしまいたかった。
山頂のトイレにトイレットペーパーがあるかは、正直微妙だ。が、雲取山荘のトイレには確実にトイレットペーパーがある。しかも水洗で快適なトイレだ。
三条ダルミからそれぞれのトイレへの所要時間はほぼ同じ模様。
うーむ。。。

などと考えながら、12:58、巻き道への分岐に到着。

なんと、巻き道には通行禁止の表示が!
道が悪くてもいいから通らせてくれよーーー! ここまでのルートよりも悪いなんてことないだろうに!
絶望しながら、雲取山の山頂を目指す。

しばらくは普通の樹林帯の道だが、

山頂に近付くにつれて、岩がゴツゴツしてくる。

このあたりまで来ると、便意が耐え難いまでになっていた。
あの向こうにトイレがある。それだけを心の支えに最後の急登を走るように登る。

13:32、山頂手前の避難小屋に到着。

あれ、こんなところに「雲取山 山梨百名山」の標識が!

山頂には東京都、埼玉県のそれぞれが立てた標識があるのだが、まさかこんな外れたところで山梨がこっそりアピールしていたとは!
まだまだ知らないことはたくさんあるものだ。

石尾根には、ほとんど人影もなく。さすが平日。

それはそうと、トイレトイレ!
山頂のトイレは、避難小屋の向こうだ。

この避難小屋の向かって右側で隠れるように写っているのがトイレだ。
避難小屋の入口前のベンチにザックを放り投げて、トイレに駆け込む。

13:33、ついにトイレに到着。

あれ?こんな小さい建物だったっけ?と思いながらも、急いで個室に入ると、





あっ! 紙が無い!





なんてこった!
ロールペーパーホルダーはあるのに、そこにあるべきトイレットペーパーが無いのだ!

くぅぅぅぅ!
やっぱりこんなところまで紙を補給しに来ないかーーー。。。
心の底から無念である。

こうなったら、残り少なくなったトイレットペーパーを使い切ってでもここで用を足すか、あと30分歩いて雲取山荘まで行くか、の二択だ。

僕は後者を選んだ。
明日何があるか分からないのに、ここで使い果たすわけにはいかないのだ。

急いでザックをピックアップし、雲取山荘に向かう。
僕にとっての雲取山山頂は、もはや山荘に向かうための通過点に過ぎなくなっていた。

13:38、雲取山山頂に到着。


山頂には数人の登山者がいた。やはり平日だけあって少ない。
が、いままでの行程を考えれば、僕にとって大弛峠以来の賑わいである。

もうすでに雲取山頂付近はガスっていて、眺望も何も無い。
あったとしても堪能する余裕は無かったが・・・。


ここからは、駆け下りるように、しかして下腹部を圧迫しないように、脂汗をかきながらの道のりだった。
通いなれたはずの道なのに、これほどに雲取山荘を遠く感じたことはなかった。

13:53、ついに雲取山荘の屋根が見えてきた。

しかし、ここで気を抜くことは、人間としての尊厳に関わる、取り返しのつかない重大な事故を招きかねない。
慎重に、かつ、迅速に行動する。

雲取山荘前に到着したら、すぐにベンチにザックを放り投げるようにしてトイレに急ぐ。
きっと、そうとう変な歩き方をしていたと思うが、そんなことを気にしてなどいられない。

13:55、雲取山荘のトイレに到着。

ここで最後のハードル「土足厳禁」。

そう、雲取山荘のトイレは、山荘の外にトイレがあるのに土足厳禁なのだ。
失神しそうになりながら登山靴の紐を解き、足を引っこ抜くようにして脱ぐ。

これで僕はついに自由の身だ!!

ゴールテープを切るかのように個室に駆け込む。
いや、駆け込もうとして、危うく女子トイレに駆け込みそうになった。
まさに猪突猛進状態。

改めて男子トイレの個室に向かう。

個室は2つ。
右か?! 左か?! ええい、ままよ!!
と、右の個室に飛び込む。ズボンを下ろすのももどかしい。

そして、ついに満願成就の瞬間である。


本当に間に合ってよかった。


さて、トイレを出て改めて雲取山荘を見る。

見慣れた風景だが、こんなに空いているのは始めてだ。
冬だって、土日ならもっと混んでいる。
やっぱり平日は空いてていいなー。

その後、雲取山荘でペットボトルのコーラとお茶とスポーツドリンクを購入する。
コーラはその直後に全部飲みきってしまったが。

ここからは、石尾根に抜ける巻き道をたどる。
コースタイムによれば、その巻き道経由ならば小雲取山まで30分だそうな。

巻き道への分岐は、雲取山荘から木の階段を上りきったあたりにある。
14:12、巻き道への分岐に到着。

巻き道は普通のトラバースの登山道で道もよく整備されているが、1箇所だけ、足場の悪いところがあった。

ただの巻き道なので、当然退屈この上無い。どんどんガスも濃くなってくる。
今朝の時点での計算では、もう今頃は奥多摩小屋のテント場でくつろいでいるはずだったのに。
なんだか段々と腹が立ってきて、独り言で文句を言ってみた。それも大声で。
そんな時はとことん間が悪いもので、2人組の山ガールが前からやってきた。きっとヤバイ人だと思われたに違いない・・・。
この巻き道で唯一出会った人たちだったのに。。。とほほ。。。

14:49、石尾根に合流。

雲取山荘を出て、とっくに30分以上経っているが、小雲取山はまだまだ先だ。
用を足して脱力してしまったのか、それともコースタイムがアテにならないのか。

分岐の道標には、植物採取を禁じる旨の警告がぶら下がっていた。

この「指定植物」とは何だろう?
この近辺ではマルバダケブキをせっせと摘んでいるオバチャンなら去年見かけたけど、シカもクマも食わないようなマルバダケブキも指定植物なのだろうか。

と思って調べてみたら、こんな↓決まりがあるようだ。


これによると、この辺りではマルバダケブキも指定植物になっている。
ということは、オバチャン!あなたそれ犯罪ですよ!
とりあえず今は、そんなマルバダケブキも全部枯れの原だけど。

14:52、小雲取山の分岐に到着。

このあたりから富士山を眺めるのが、今回の山行の楽しみの一つにしていたのに、残念ながら全く何も見えず。

今回の山行は、雨には降られなかったけど、午後になると決まってガスってしまったなぁ。。。
無念だ。

15:03、富田新道への分岐に到着。

やっぱりガスが濃い。


ここを下れば、もう奥多摩小屋が見えるはず。

15:14、奥多摩小屋に到着。



テント泊の手続きをして、テント場を物色する。

ガスが濃いので、もしかしたら今晩あたり風が強いかもしれないと考え、谷側を避けて樹林側に幕営することにした。
お隣さんは、20mほど離れたところに幕営している若いカップルだ。そういう地域まで戻ってきたんだなーと、感慨深い。
なにせ、昨日も一昨日も一人ぼっちだったのだ。管理人すらもいなかったのだから。

明日はいよいよ下山だ。
テントの中でしみじみとコーヒーを飲みながら本を読んでいたら、誤ってカップをひっくり返してしまった。
あわわわわ。

慌ててトイレットペーパーを投入してコーヒーを拭き取る。

拭き終わった頃には、虎の子のトイレットペーパーがほとんど無くなってしまった。
嗚呼・・・。
でも、もし山頂でトイレットペーパーを使い切っていたら、このコーヒーに対して為す術もなかったのだ。だからあのガマンは無駄ではなかったのだ。と、自分に言い聞かせる。


もう寝よう。。。
明日は13時までに奥多摩駅前に着きたいのだから。





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