山の朝はやっぱり寒い。
3日目である10月10日の朝は、4時半には目が覚めて、なんとかそのまま朝飯を食い始めたものの、寒くて食が進まない。
テント内の気温は、3度ぐらい。
5時すぎに、僕以外の唯一のテント泊の人がテントをたたんでいる気配がしたが、とてもじゃないけど僕には寒くて無理。
シュラフに潜ってみたり、また起き上がってみたりを繰り返しているうちに夜が明けた。
木々の間から垣間見える朝焼け。
この写真は当然テントの中から撮ったもの。下半身はシュラフに入ったまま。
今朝はややのんびりな出発で良いと思っているので、余計に体も動かない。
というのも、前日の夜に今後の行程を散々考えた結果、以下のように変更したのだ。
【3日目】
甲武信小屋 → 破風山 → 雁坂峠 → 古礼山 → 雁峠 → 笠取小屋
【4日目】
笠取小屋テント場 → 笠取山 → 唐松尾山 → 山ノ神土 → 将監小屋
【5日目】
将監小屋 → 飛龍山 → 北天ノタル → 三条ダルミ → 雲取山 → 奥多摩小屋
【6日目】
奥多摩小屋 → 七ッ石山 → 鷹ノ巣山 → 奥多摩駅前
つまり、鋸山や大岳山はパスして、電車で武蔵五日市に向かうことにした、というわけだ。
これが今の僕の実力だと思うしかない。
というわけで、コースタイム通りなら本日の行動時間は7時間程度。
7時ぐらいに出れば良いだろうと考えてモタモタしていたら、撤収完了が7:30になってしまった。
慌てて出発する。
出発を急いでいる時に気付いたのだが、甲武信小屋の脇に「荒川源流の碑」が建っていた。
忘れていたが、甲武信ヶ岳は大分水界なので、荒川の源流をたどるとここまで至るのだ。
分水嶺好きの僕だが、急いでいたので近くまで行かずに遠くから写真を撮って終わり。
本当の大分水界に立った昨日、まったく失念していたことが悔やまれる。
いよいよ出発。
足元を見たら立派な霜柱が。
そりゃ寒いわけだよ。。。
さあ、いよいよ登山道に入る。
巻き道なんか通るかよ!
まず目指すのは木賊山のてっぺんだ!
歩き出してすぐ、崩落箇所のような禿げた場所に出る。
そこには風速計のようなものが設置されていたが、特に何かが記載されるような仕組みも見当たらないため、刹那的にクルクル回るだけのように思われる。
願わくは僕も、こんな毒にも薬にもならず、見晴らしの良いところでくるくる回るだけの人になりたいものだ。でも、それはそれで苦労も多いに違いない。なにかの役に立つわけでもないのに、ただただくるくる回るというのは、自身のレゾンデートルと疑うようなハンパな人間には務まらない仕事だ。
社畜の一人として敬意を払わずにはいられない。
そんな風速計さんが佇むこの場所は、なんとも展望の良い場所である。もう、窓際族の鏡!
まずは近場から、甲武信ヶ岳。
国師ヶ岳と、昨日たどった稜線。その向こうには金峰山。
奥秩父の前衛の山々と富士山。
最近、鼻毛の白髪率がハンパなくなってきた僕としては、早くこの風速計さんのような着地点を見つけたいと思う次第だ。
そこからさらに少し登ると、今度は本格的なザレ場が現れた。
さすがに禿げているだけあって見晴らしが良い。
しかも甲武信ヶ岳側に向いている斜面だけあって、甲武信ヶ岳の眺望はこれ以上無いぐらいに素晴らしい。
左は甲武信ヶ岳。右は三宝山。
『日本百名山』のなかで、深田氏は三宝山を甲武信ヶ岳よりも「堂々としている」と表現しているし、一等三角点は甲武信ヶ岳ではなく三宝山が設置されている。
でも、日本百名山に選ばれたのは三宝山ではなく、甲武信ヶ岳なのだ。
つまりは、三宝山は「惜しい」山なのだ。
今回は時間の都合上立ち寄れなかったが、そのうち十文字峠とセットで訪れてみたいと思う。
7:52、木賊山山頂に到着。
山頂は特に展望もなく、登山道の途中のベンチのような雰囲気だが、不似合いなほど立派なデカい三角点が置かれている。
ここに三角点を置いて、果たして計測はどのように行っているのだろうか。測量実務を全く知らないので、見当もつかない。
山頂から東斜面を降りるとすぐに、鶏冠山への分岐が現れる。
が、道標には「鶏冠尾根」ではなく、「鶏冠尾根通行止」とわざわざ書かれている。
こんな道標初めて見た。
その上に、鶏冠尾根方面へのルートにはロープが貼られた上に、打ち捨てられたトタンの看板には「熟達者以外危険です。」の警告が。
これは、いわゆる立入禁止区域ということではなく、単なる警告ということなんだろうか。
もちろん今回のルートからは外れているので踏み込もうとは思わなかったが、入って良いなら、登攀を覚えて再び訪れてみたいものだ。
7:56、戸渡尾根への分岐に到着。
この戸渡尾根に降りると徳ちゃん新道をたどって容易に人里に降りることができる。
人里に降りれば、少なくともおいしいご飯と快適な寝床は保証されているわけで、一瞬気持ちが下山に傾く。徳ちゃんは罪作りな人だぜ。
とはいえ、よくよく考えてみたらそれ以上の良いことが下界に待ってるわけでもないので、予定のコースをそのまま歩く。
8:00、木賊山の巻き道と合流。
巻き道と徳ちゃん新道が直結してると甲武信小屋の荷揚げも楽だろうになぁと思うものの、地形の問題もあるのだろうから仕方ないのかもしれない。
そのまま快適な尾根道を下る。
木々の間から富士山が見えて得した気分になる。
富士山の雪は、まだ山頂にちょこっとだけ。あと1ヶ月もすれば、冠雪の見栄えも良くなるのだろう。楽しみだ。
さて、こんな快適な尾根道だが、やっぱり倒木が。
もはや奥秩父名物と言っても過言ではない倒木だが、今回のは幹だけでなく、見事に枝葉もついたままで倒れていた。これを越えるのはなかなか大変だ。
枝にひっかかりながら、なんとか踏み越えて先を急ぐ。
間もなく、登山道の前方の視界が開けてくる。
見えているのは雁坂嶺だろうか。左手に見切れているのはおそらく破風山だろう。
にしても、この斜面の斜度で、樹木が今までと同じように生えているのなら、こんなに前方の視界は開けない。笹原でもあるのだろうか、と思って歩いていたら、禿げて見晴らしの良い高台に出た。
富士山も見える。
やっぱり富士山が見えると得した気分になる。
ここから少しの間、背の低い草木と立ち枯れた樹木が続くため、開放感がある道が続く。
やっぱり富士山が見えて得した気分。
それにしても、徹底的に立ち枯れているので、このまま禿山になってしまうのではないかと心配になる程だ。
これが『奥秩父 山、谷、峠 そして人』に書いてあった、近年、樹木が枯れて笹ばかりになってしまっているという件だろうか。
などと考えていたら、「笹平」という標識に出食わした。
なんだ、この辺はもともと笹ばっかりの土地なのね・・・。
すこし安心する。
この標識の場所から見下ろすと、鞍部に建つ破風山避難小屋が見える。
8:42、破風山避難小屋に到着。
小屋の裏には薪が大量に積んである。
小屋の目の前に、トサカ山林道への分岐がある。
その先にはやっぱり富士山。
東には、これから登る破風山。
破風山への登山道は、途中まで笹原で、樹木はまばらにしかない。しかもけっこう立ち枯れている。
来し方を振り返ると木賊山。
すこし標高を上げてから、また木賊山を見るとこの眺め。
破風山の西側斜面は疎林が続く上に、斜面がそこそこ急なので、西側に対しての眺望がとても良い。
さらに山頂に近づくにつれて、樹木の背丈も低くなり、
さらに眺望が良くなる。
前衛の山々と、その向こうに南アルプス。
手前に木賊山。向こうには国師ヶ岳と金峰山。
破風山の南側の尾根。その向こうの雲海に浮かぶ孤島のような山はどこだろう? 大菩薩かな?
さらにゴツゴツした登山道を登る。もしかして、あれが頂上だろうか。
と思ったら、これは見事な偽ピーク。
どうりで早いと思ったんだよなー。。。
とはいえ、ここまで登ると、非常に眺めが良く、ついつい足を止めて見入ってしまう。
遠くまで広がる雲。
木賊山に対しても、やや上から目線。
ただし、この偽ピークから先はしばらく樹林帯が続き、視界が遮られる。
9:25、破不山歩道という道との分岐に到着。
どうも柳避難小屋に向かう道のようだが、例によってわざわざ「通行止」の道標。
一瞬ここが山頂かと思ったが、ここから1分ほど先だった。
というわけで、9:26、破風山山頂に到着。
山頂の標識。
山頂の標識その2。
気持ちの良い疎林の山頂だ。
が、さっさと先を急ぐ。
山頂直下の東側斜面からは広瀬湖が眼下に広がる。
登山道は岩でゴツゴツ。
見晴らしの良い尾根からは、
大菩薩嶺が。
って、大菩薩嶺だよね、これ? この、真ん中でとんがってるやつ。あれ、違う??
とりあえず、下山して1週間後に大菩薩に駆け登らなきゃならないのを思い出して、沈む。
東破風山の尾根も岩がゴツゴツ。
それにしても、この尾根道は展望が良く、今日のような天気が良い日に歩くのはなんとも気持ちが良い。
3日目にしてやっと眺望に恵まれたというところか。
9:56、東破風山の山頂に到着。
標識。
引き続き、疎林な東側の斜面を下る。
相変わらず岩っぽい。
ここで1人の登山者と出会う。
彼はソロで、奥多摩駅を出発して瑞牆山荘を目指すという。つまり、僕と同じコースを逆にたどっているということだ。まさかこのタイミングで、僕と同じようなことをやっている人が居ようとは。
嬉しくなってしばらく立ち話をして別れる。
東には、次の山である雁坂嶺がそびえる。
時計はもう10時を回ったところ。
天気予報が正しければ夕方から天気が崩れるということなので先を急がなければならない。
が、本当に崩れるのか??
台風の時ならともかく、平常時に、この雲の様子で急転直下天気が崩れるなんてことがあるんだろうか。
崩れるにしても、今の空に流れるのは高層雲ばかりなので、今晩ってことではないのではないだろうか。
などということを考えながら、尚も疎林の尾根道を歩く。
下山した今振り返ってみても、天候に恵まれたこの日のこの尾根歩きが一番快適だったように思う。
やはり山は快晴が気持ち良い。もちろん、悪天候でしか見れない景色があることも承知の上で、だ。
雁坂嶺に近づくと、次第に樹林が濃くなってきた。
と思ったら、すぐに立ち枯れてしまった。
縞枯れが見たけりゃ、北八ヶ岳まで行くまでもなく、奥秩父で十分だと思った。北八ヶ岳みたいに便利じゃないけど、その分静かだ。車で乗り付けるピクニック気分の家族連れとも無縁なので、よりじっくり山を楽しめる。
10:42、雁坂嶺の山頂に到着。
標識。
山頂は眺望も良く、その眺望を楽しむためにか、ベンチも用意されている。
そのベンチからの眺望。
奥には南アルプスも見える。
山に来て良かったと思う瞬間だ。
が、まだ時刻も早いので、休憩することなくそのまま出発。
ここからは進路を南東に取り、雁坂峠を目指す。
その南東斜面もまた、奥秩父名物の倒木が何箇所も登山道を塞いでいた。
しかも、幹だけの倒木が1本道を塞いでいるような単純なものではなく、様々な複合技を繰り出してきて、我々登山者を飽きさせない。
これ↓は、まとめて複数本が1箇所に倒れているという複合技の例。
こんなんどうしろっていうんだ、、、、
なんとかクリアして先に進む。
引き続き疎林の尾根を下る。
と、すぐまた倒木。
これも複数本の倒木だ。なかなかやるじゃないか。。。
倒木さえ無けりゃ快適な尾根道なのに・・・。
ここで、シカの足跡を登山道上で発見する。
分かりにくいかもしれないので、シカの足跡に赤線を入れてみたのが下図。
そういえば、登山道に落ちているシカの糞の頻度とボリュームが多くなってきたように感じる。
たしかにこの辺は稜線以外は急な坂になっていて歩きづらいので、動物たちも登山道を歩くのだろう。
そう、歩くのはいい。別にこの土地は人間だけのものじゃないのだから。
でも、こんなに糞を撒き散らさなくてもいいじゃないか。
犬や猫は、道の真ん中に糞をしたりしないぞ。タヌキなんか、自主的にトイレを決めて、そこ以外では糞をしないんだぞ。
なのに、なんだ、シカはそこらじゅうに出しまくりやがって。ウマやらシカやらは、どこだろうと関係なく歩きながら糞をしやがるので厄介だ。チッ!
実際、このあたりから飛龍山ぐらいまで、登山道もずーーーっとシカの糞だらけだった。
雁坂峠に向かってどんどん標高を下げていくと、目の前に水晶山が現れた。
雁坂峠はあの山の手前にある。
11:10、ついに雁坂峠が見えた。
あたりは広い範囲で笹原だ。
11:12、雁坂峠に到着。
標識。
峠とは大概その近辺の一番の鞍部にあるものであり、もちろんこの雁坂峠も例外ではないのだが、それでも標高は雲取山の山頂より高い。
峠には、雁坂峠の歴史を解説した看板と、
付近の植生を解説した看板が建てられている。
この手の看板は、ガイド本にもネットにも載っていないような詳しい情報が書かれているので、登山の楽しみの一つだったりする。
これから向かう水晶山を見ると、途中まではやはり笹が多く樹木はまばらなようだ。
空には飛行機雲。
随分立派な飛行機雲だが、その長さを考えると、発生後わりと早めに消えているようだ。
飛行機雲がなかなか消えないときは、上空の湿度が高く、雨になりやすいと聞いたことがある。
飛行機雲がこんなにサクっと消えるのに、ホントに今晩雨になるんだろうか。
水晶山に向かって進路を南に取り、再び歩き出した。
しばらくは笹原なのだが、きちんと登山道の笹が刈り払われていた。
どなたの仕事か分からないが、ただただ頭が下がる。
が、残念ながらここでも奥秩父の例に漏れず、名物の倒木は容赦なく道を塞いでいた。
草刈機よりチェーンソーを担ぎ上げるのが大変、ということだろうか。
それにしても、奥秩父の倒木は容赦ないなー。。。こんなに疎林のところでもこれだけ倒木が道を塞いでいるのだから、驚きだ。
その疎林を通して来し方を見る。
よくもまあ、飽きもせずエッチラオッチラ歩いてきたものだ。
ここからほんの少し標高をあげるだけで、視界を塞ぐ樹林が全く無いポイントが現れる。
さらに左に目を転じると、木賊山のほうまで見える。
画像の真ん中に写っているイカツイ尾根は鶏冠尾根。行ってみたい気持ちを掻き立てられるような存在感だ。
11:30、雁坂小屋への分岐に到着。
雁坂小屋へは雁坂峠からもアプローチできるが、水晶山側からのアプローチも確保されている。
当初の予定では、昨晩は雁坂小屋(のテント場)泊りだったのだが、今日このタイミングではわざわざ立ち寄る理由もないので、先を急ぐ。
行ってみたい小屋ではあるんだけどなぁ。残念。
このあたりから先は、次第に樹林が濃くなる。
どんどん濃くなる。
そして、だんだんカオスに。
このままどんどんワイルドになっていくんだろうかと思っていたら、そんなことはなかった。
再びよく整備された登山道になる。
水晶山の山頂は、そんな樹林の中にあった。
11:53、水晶山の山頂に到着。
山頂からの展望は無い。全くの樹林の中だ。
山頂には立派なベンチがいくつかあったのだが、そこでは、測量の仕事をされている方々が数名休んでいらしたので、お邪魔にならないようそそくさと先を急ぐ。
山頂から南斜面を下り始めてすぐ、また新しいパターンの倒木が登山道を塞いでいた。
ワザとだとしか思えないぐらいの厳重な塞ぎ方。
こんな倒木、ほかでは見たことない。
そういえば時代劇とかで、閉門蟄居を命じられたお侍さんの家の門って、こうやって塞ぐよね。
さて、標高を下げていくと、次第に木陰にコケが増えてきた。
三角点もこの通り、すっかりコケむしている。
そんなコケ類の中で、この近辺でたまに見かけたのだが、コケに混じって何か黄色い物体が生えていた。
これは一体なんなのだろう。
そのまま鞍部から登り返し、12:15、古礼山の山頂を巻く道への分岐に到着。
なぜか巻き道側を指している板が折られてしまっており、道標としての役目を果たせない状態になっていた。
12:22、古礼山の山頂に到着。
標識その1。
標識その2。
古礼山の山頂は南側が開けており、非常に眺望が良い。
が、少しモヤがかかってしまって遠くまでは見通すことができなかった。
本当は南アルプスや富士山がよく見えるらしいのだが、、、
眺望を期待して、ここで昼ごはんを食べようと思ってここまで来たのだが、非常に残念だ。
なんにしても、もう腹が減ってしまっていたので、ここで昼ごはんにする。
ベンチなどは無いので、適当な岩に座って食べていると、展望が開けているだけあって、風が強く、だんだん体が冷えてきた。
あんまりゆっくりもしてられない。
正味10分程度で昼ごはんを切り上げ、再び歩き出す。
古礼山を東南東に向かって下る。
そこには、疎林と笹原が広がっていた。
12:38、なにやらベンチの設置された場所があった。
ここからの風景も、山頂とあまり変わらない。
12:42、巻き道と合流。
笹原の尾根道を進む。
この笹原は、急に樹林帯に切り替わる。
でも、すぐに樹林を抜けて、再び笹原へ。
眺望はやはり良くて、大菩薩が見える。
たぶんあれが燕山だろう、というピークが見える。
なんだか奥多摩あたりにありそうな景色の中を進み、
13:19、燕山山頂に到着。
下の方にゴルフ場のような場所が見える。
地図を見直してみても、あんなところにゴルフ場は無い。
あの方角にあるのは、雁峠のはず。でも、峠にしては、最鞍部よりもやや小高いような。。。
うーん。。。
とりあえず、前に進む。
10分ほど歩くと東側の展望が開け、笠取山が見えた。
ここまで来ると、登山道沿いの木々はまばらになり、荒れた笹原が中心となる。
やはりシカの食害が深刻なのか、樹木は防護ネットで覆われていた。
そりゃ、登山道がシカの糞だらけになるぐらいだもん、食い物も足りなくて何でも食っちゃうわなー、、、
ここからは、いよいよ雁峠が見えてくる。
でも、峠の向こうにやはりハゲてるところがあるんだよなー。あれはいったい何なんだろう??
さらに下ると、よりはっきりと雁峠の様子が見えてきた。
13:39、雁峠に到着。
標識。
峠付近の植生の案内板。
この雁峠からは、南西方面に亀田林業林道が伸びており、バス通りまで2時間半で降りられる。
相変わらず、下山の誘惑に駆られる。
イカンイカン、せっかくここまで来たのに、逃げ帰るわけにはいかんのだ。
が、おそらく今後もエスケープルートが現れるたびに心が揺れるに違いない。
エスケープルートへの思いをなんとか断ち切って、南東に向かう。
今夜の寝床である笠取小屋まではあと30分だ。
この時点で僕は、笠取小屋に着いたら、テントではなく小屋泊にしようと思っていた。
今晩から天気が崩れ、明日いっぱい雨の予報だと聞いていたからだ。
前にも書いたが、僕は雨の中でのテントの撤収はやったことがないし、考えただけで気が重くなる。
なので、小屋に泊まってゆっくりしようと考えていたのだ。
しかし、この後、その考えが非常に甘かったことを思い知る。
もちろんこの時点ではまだ、そんなことになろうとはツユ知らずモタモタと歩いていた。
13:42、前方になにやらオンボロな小屋が見えてきた。
これが雁峠山荘か!
僕が持っている2010年度版の山と高原地図では単に「無人」と書かれているだけだが、ちょっとこれは廃屋にしか見えないような・・・。
日が暮れてからこの前を通ったら、きっとオバケ屋敷にしか見えないんだろうな。。。
この雁峠山荘については、僕はこれ以上近づかなかったのだが、Youtubeで動画レポートをアップされている方がいらしたのでリンクを貼っておく。
雁峠山荘動画
とりあえず、ここに泊まるぐらいならツェルトでビバークしたほうがナンボかマシというものだ。
そんなわけで、先を急ぐ。
左手に見える笠取山は思ったよりもとんがっていて、あれを明日直登するのかと思うとテンションが下がる。
このあたりは、これまでに増してシカの糞だらけ。地雷原を歩いているような気分だ。
足跡もそこらじゅうにたくさんある。
13:51、笹原に出た。これが燕山から見えたゴルフ場みたいなところか。
北西のほうには、今日歩いてきた古礼山や燕山の姿が見える。
空には綿菓子のような雲。
この曇って、雨が近い時にできる雲だっけ??
雁峠分岐の手前の小さなピークには、てっぺんになにか看板が立っていた。
何の看板なのか気にはなったが、面倒だったのでスルーした。
この小ピークを左に見ながら、前方には雁峠分岐が現れる。
13:56、雁峠分岐に到着。
ここから笠取小屋までは、広い林道を歩く。
この道は、すぐに不思議な作りの道になった。
というのも、ほとんど隙間なく丸太が埋められているのだ。
これだけの丸太を敷き詰めるのは、たいへんな労働だったに違いないと思うのだが、正直歩きにくい。いったい何のためにこんなふうにしたのだろうか。
なお、この道は小さな重機が通るのか、道幅ギリギリにキャタピラの跡があった。
こんな木道(というのだろうか)を15分ほど歩くと、笠取小屋にたどり着く。
14:04、笠取小屋が見えてきた。
笠取小屋の手前には、東京都が設置した立派な公衆トイレがある。
このトイレはちょっと珍しい方式のバイオトイレで、建物の裏に浄化するためのフカフカの特殊な土を敷いてある場所があり、その一角が立ち入り禁止になっている。
このトイレの、道を挟んだ向かい側には手洗い水もある。
トイレの横には駐車場があり、山仕事の人の車が停めてあった。
ここからなら、車が通れる道をたどって帰れるのか。。。
またもやムクムクとエスケープ欲求が首をもたげる。
それをどうにか誤魔化して、いよいよ笠取小屋の前に立った。
あれ・・・、これはどこから入るんだろう・・・?
まさ、、、か、、、閉まってるとか??!!
ちょうどそこにいた男女2人連れの登山者に聞いてみる。すると、
「笠取小屋の営業は週末だけじゃないかな?」
とのこと。
うわーーーー、やられた! そこまでチェックしてなかった!
確かに、山と高原地図の欄外の情報にも「週末のみ」って書いてある。
明日の朝雨が降ってたら、どうやって撤収すりゃいいんだろう、、、
絶望しつつ、もしやと思いauのケータイの電源を入れると、なんと電波が3本立った。
キタコレ!
さっそくEZwebにつないで、ピンポイント天気予報を見る。
なんと、今晩も明日も晴れマーク!
予報が変わった! 逆転サヨナラホームランのようなドンデン返しだ。
さすがオレ=晴れ男。
これなら小屋に泊まる理由は無い。ありがとう神様。
どころで、テントはいったいどこに張ればいいのだろう? あと、お金はどうやって払えばいいんだ??
小屋の入り口に管理人さんの連絡先電話番号が貼ってあったので、電話してみる。
すると、管理人さんがいない時の幕営は無料だそうで、また、テントは「好きなところに張っていい」ということだった。こりゃまたラッキー。
ほかに登山者もいないようだし、テーブル脇の一等地にテントを張る。
テントを張りながら、iPhoneで音楽を最大音量で流してみた。一人野外レイブ状態。
すげー解放感。こんなことならスピーカー持ってくりゃ良かったよ。
ただ、笠取小屋でビールを買おうと思っていたのが実現できず。
今日もアルコール抜きだ。
それにも増して困ったのは、水。
笠取小屋の水場は小屋から近いし、水量も豊富なのだが、付近にあまりにもシカの糞が多く、生で飲むのに抵抗を感じる。
なので、本当は飲み水としてミネラルウォーターを調達したかったのだが、、、
致し方ないので、煮沸して使うことにする。明日の行動中の飲み水まではなんとかなるので、明日将監小屋で調達しよう。
とりあえず、汲んだ水でお湯を沸かし、持参した粉末のミルクティーを飲んでのんびりする。
ベンチからは大菩薩が見える。
持参した文庫本を読みふけっているうちに、次第にガスが上ってきた。
冷えてきたのでテントに退散。
今日はこれにて閉店ガラガラ。
(「【4日目】 笠取小屋~笠取山~唐松尾山~将監小屋」編につづく)
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