このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。
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2013年1月19日土曜日

山行記 : 2013年1月2日~4日 燕岳 総括



(この記事は「装備(行動食)編」の続きです。)


今回の山行は、積雪期登山の初心者である僕が、北アルプスの厳冬期を安全に体験するということを最優先課題としておこなったのだが、結果、あいにくの天気にも関わらず、トラブルらしいトラブルもなく終了できたことが何よりの収穫だった。

僕が特に臆病なだけなんだろうけど、どんな季節であれ、登山は怖い。
いつも出発直前まで最悪の状況ばかりを考えてしまい、だいたいストレスでお腹を壊す。
でも、「次、どこに登ろうかなー」と考えているときや、実際に登り始めたあとは、楽しくてしかたないことのほうが圧倒的に多い。(もちろん例外はある。)

今回の山行も、2日目、中房温泉から出発したあともしばらく、不安で不安で仕方がなく、下山することばかりを考えていた。
が、合戦小屋以降は、楽しくて楽しくて仕方がない。天気が悪いのにだ。

さすがの入門ルートだけあって、危険箇所はほぼ皆無といって良かったし、中房温泉と燕山荘というしっかりした宿があるので、より危機回避オプションが豊富で安心感のある山行だった。
が、一度常念山脈の稜線に出ると、厳冬期の北アルプスの怖さを垣間見ることができたのも、良い経験になった。
実際その日、その稜線の2、3km先では、2名の遭難者が出たのである。

その遭難者が無事に救出されて本当によかった。
もし不幸な結果に終わっていたら、きっと自責の念に駆られたに違いない。

「北アルプス遭難:大天井岳2人救助 荒天、テントにくるまり 寒さと強風しのぐ /長野」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130105-00000113-mailo-l20

いつか厳冬期の北アルプス縦走をしたいと思っているので、今回の身近な遭難事故は僕にとって強い戒めとなった。

今回はあいにく燕岳の姿を見ることができなかったので、来年にでも、今度こそその雪化粧姿を拝みに行きたいと思う。


なお、下山時に同行させていただいた同宿の男性2人にも、この場でお礼を申し上げたい。
おかげで大変楽しい山行となりました。


(完)


山行記 : 2013年1月2日~4日 燕岳 装備(行動食)編



(この記事は「装備(ギア)編」の続きです。)


今回は、行動食について記録を残しておきたいと思う。

あまりに気温が低いところでは、食物も凍るし、そもそも落ち着いてゴハンを食べていたら体が冷えてしまう。
なので、昼飯は基本的に行動食で済ませることにして、けっこうなボリュームの行動食を持っていった。


とりあえず、甘いものとしょっぱいものを、それぞれ百円ショップで買ったジップロックもどきに入れる。
こうしておくと、グローブをしたままでも食べやすい。


甘いものは、ピーナツチョコとドライマンゴー。
このドライマンゴー、酸化防止剤も漂白剤も使ってないやつなので、発色は悪いが安心して食える優れもの。

甘いものを食べるとしょっぱいものも食べたくなるのが人の性なわけなので、しょっぱいものはミックスナッツとビーフジャーキー。
こちらは、酒のつまみにもできるという優等生だが、今回ナッツとジャーキーをいっしょに入れてみて初めて気づいたことがあった。
ナッツにジャーキーの匂いが移って、けっこう嫌なことになる。やっぱり別々の袋に入れなきゃいけない模様。

また、最近お気に入りの「一本満足バー」。


CMが流れるとイライラするが、商品自体には満足。
ブラックのほうが本当は好きなのだが、ミルクチョコのほうが安売りしていたので、今回はミルクチョコを持っていった。

他に予備の食料として、極寒でも凍りようがないカロリーメイトと、うっかりビバークになったら飲もうと思って粉末のオニオンスープを持っていった。

結果としては、今回のルートは1日の行動時間が比較的短いため、十分にこれだけで対応できた。
まあ、結局は、2日目は燕山荘に到着してからビーフカレーを注文して食べたし、3日目は下山して天ザルを食べたので、これだけしか食べていないわけではないのだが。


(「総括」につづく)


2013年1月14日月曜日

山行記 : 2013年1月2日~4日 燕岳 装備(ギア)編



(この記事は「装備(ウェア)編」の続きです。)


前回のウェア編に引き続き、主だったギアについても記録を残しておく。


■ 登山靴

BOREAL (ボリエール) 「アルワ」

3年前にさかいやスポーツで購入したとき、「八ヶ岳ぐらいまでは問題ないです」と言われていた。
であれば、燕岳ぐらいは問題なかろうと思い、引き続き使用。
実際、全く冷えは感じなかった。

ところで、1つ気になることが。
「アルワ」は購入当時は税込で5万円ぐらいしたのだが、今ロストアローのサイトを見たら、なんと今のモデルは4万円を切っている!
今5万円出せば、ゲイター一体型の登山靴が買えるではないか!
すごく悔しい。


■ ゲイター

Lowe alpine (ロウアルパイン) 「マウンテンゲイター」

なかなか頑丈で、アイゼンのツメで引っ掛けても破れない。
3/4丈の登山ズボンを履いてこのゲイターを着ければ、-10℃でも問題ない。


■ アイゼン

GRIVEL (グリベル) 「エアーテック ニュークラシック」

雪靴でない重登山靴にも着用するつもりで購入したので、ワンタッチタイプでなくストラップで固定するこちらを使用している。
爪がやや短めなので歩くきやすく、登攀を含まない山歩きには非常に好都合だ。
このタイプはストラップが緩んだりしないか心配だが、ちゃんと締めておけば緩むようなことは無い。
また、アンチスノープレートがよく効いていて、雪ダンゴになることもない。


■ ピッケル

CASSIN (カシン) 「X-CLASS」


以前、さかいやスポーツで安売りしていたのを購入したもの。
日本での展開は無いモデルのようだ。
確実に氷を捉えそうなピックに惹かれて購入したが、燕岳レベルではあまり使い道が無かった。
ただ、Bマークがついているシャフトなので、岩場を登るような強度は無いと思っておかなければならない。
まあ、僕の登山スキルで行ける範囲を考えれば、これで充分。


■ カメラ

OLYMPUS (オリンパス) 「Tough TG-625」

普段はiPhoneのカメラ機能で撮影をしているのだが、さすがに-20℃ではまともに稼働しないだろうと考え、低温に強いカメラを調達。Amazonで安売りしていたのでポチっとしたのだ。
実際に使ってみたところ、たしかに、-20℃の環境でも動いたが、ポケットに入れて温めておかないと、-10℃まで下がらなくてもすぐにバッテリーが切れてしまった。(ポケットに入れて温めると、バッテリーは復活した。)
意味ねーじゃん。


■ アイウェア

mont-bell (モンベル) 「PLアルパインゴーグル グラスイン」

メガネをつけたままでも装着可能なゴーグル。
グラス面が二重になっていることと曇り止め加工により、曇りにくいというのがウリのようで。
実際は、若かりし頃にスノーボードで使っていたゴーグルよりもはるかに曇りにくくは感じたが、それでも全く曇らないということではなく、やはり雪面の微妙な凹凸は見極めにくかった。やむを得ないのだろうけど、、、

ジャンクションプロデュース 度付きサングラス

僕は思いっきり視力が弱い。
左右共に0.1に満たず、しかも中途半端に乱視も入っており、さらに、視神経の形状から緑内障のリスクがあるためコンタクトレンズの使用があまり推奨されないような状態だ。
このため、視力の矯正には常に頭を悩ませている。
普段はメガネで生活しているが、日差しを遮らなきゃならないようなシチュエーション(特に雪目のリスクが発生する雪山登山)では、サングラスをかけなければならない。
で、オークリーの度付きサングラスを作ることも考えたが、アホみたいに高くて断念。
そんなときに見つけたのがこのサングラスだった。
特にカッコいいサングラスではないが、税込でも1万円ちょっとで、替えレンズが5枚も付いてくる大盤振る舞い。
トレランのときに使うと重くてズレやすいのが難だが、僕のような目の人間には大変ありがたいアイテムだ。


■ 水筒

・THERMOS (サーモス) 「山専ボトル FEK-500FEK-800

サーモスの山専ボトルといえば、高価で性能が良い保温ボトルの代名詞だ。
それを、なんと今回、500mlサイズと800mlサイズをそれぞれ1本すつ持っていった。
500mlサイズにはコーヒーを入れてザックのサイドポケットへ、800mlサイズには白湯を入れザックの本体の中へ、それぞれ収納しておいた。
で、何がすごいって、2日目に中房温泉を出発する前に作ったコーヒーが、ザックのサイドポケットに入れておいたにもかかわらず、6時間以上経って燕山荘の談話室で飲んでみたらちゃんとホットコーヒーのままだったということ。すさまじい保温力。買ってよかった。

ところで、みんなはTHERMOSを「サーモス」って呼ぶ?「テルモス」って呼ぶ?
日本法人の正式名称は「サーモス」らしいんだけど、ドイツ語読みの「テルモス」のほうが、僕にとっては馴染みのある呼び方なので、どうしても「テルモス」と言ってしまうのだ。


■ ワカン

エキスパート・オブ・ジャパン 「スノーシューズ」

ワカンのド定番である、エキスパート・オブ・ジャパンのスノーシューズを持っていったが、結局使用せず。
サラサラでフカフカの新雪だったが、トレースがついていたし、そのトレースの幅が非常に狭くてアイゼン歩行すら気をつけなければならないような幅だったので、ワカンの出動する機会は無かった。



(「装備(行動食)編」につづく)



2013年1月13日日曜日

山行記 : 2013年1月2日~4日 燕岳 装備(ウェア)編



(この記事は「[3日目] 燕岳山頂を見ずして下山」編の続きです。)


今回の燕岳山行における装備について、記録を残しておきたい。
まず、今回はウェアについて。


■ アウターレイヤー


アウトドアリサーチの冬山用ハードシェル。
野外に居るときは基本的に着続け。
ベンチレーターでの温度調整がしやすく、厚手の素材感で安心感もあった。
が、やはり素材がゴアテックスなので、透湿性はそれなり。2日目に合戦小屋でジャケットの内側を見たら、排出されない湿気が凍りついていた。
また、これは購入時から分かっていたことだが、身長166cmの僕にはSサイズでもデカイ。
いくらインナーを着ることを想定したとして、いくらなんでもデカすぎる。
もうちょっと小さいサイズのハードシェルの購入を検討したい。

・mont-bell (モンベル) 「ライトアルパインダウンジャケット」

モンベルのダウンジャケット。800フィルパワーのダウンを使っていて、ボリュームもけっこうあるのに安い。やはりモンベルは、僕のような安月給のサラリーマンにはありがたい存在だ。
ダウンジャケットは行動中に着ることはないが、宿での停滞時に使用した。
万が一のビバーク時にも、ダウンジャケットが無いとキツいだろう。
もう3年ほど使っているのでややヘタってきているが、まだまだ現役。


■ ミドルレイヤー

・Columbia (コロンビア) 超薄手のフリース

普通のフリースを行動中に着ると、汗をかいてしまう。
でも、ベースレイヤーとハードシェルだけでは心もとない状況もあるだろう。
このフリースジャケットは激薄なので、普通のフリースよりも調節がしやすい。

というわけで、2日目の合戦小屋から上と、3日目、それぞれの行動中に着用した。


UNIQLO (ユニクロ) フリース フルジップジャケット

おなじみのユニクロのフリース。
コロンビアのフリースでは心もとないこともあるだろうと思って持参。
宿で停滞中に着用。
バカにできないクオリティ。


■ ベースレイヤー

mont-bell (モンベル) 「スーパーメリノウール ハイネック」(厚手)

2日目、3日目に着用。
さすがにとても暖かい。
2日目の合戦小屋までは、ファイントラックのフラッドラッシュアクティブスキンと、このベースレイヤーと、ハードシェルだけで充分だった。
ハーフジップなので、暑ければジッパーを下げて体温調整をすることもできる。

mont-bell (モンベル) 「スーパーメリノウール ハイネック」(中厚)

1日目に着用。
ファイントラックのフラッドラッシュアクティブスキンと、このベースレイヤーと、ハードシェルだけで宮城ゲートから中房温泉まで歩いたが、最後の2~3kmは寒さを感じた。が、ハードシェルのベンチレータを閉め忘れていたということも間違いなく影響しているだろうから、なんとも言えない。


■ ドライレイヤー

finetrack (ファイントラック) 「フラッドラッシュアクティブスキン」(Tシャツ)

最近ファイントラックが提唱している「ドライレイヤー」という概念。
汗をかいても汗戻りしないため、汗冷えしないという機能を謳っている。
実際のところはどうなのか。
3日間使ってみて、たしかに汗戻りが少ないという印象を持った。
今回使用したのはTシャツタイプだった(長袖が品切れだったので)が、来月あたりは長袖の方を準備しておきたいと思った。


■ ボトムズ

mont-bell (モンベル) 「アルパインパンツ」

オーバーパンツは価格が高い。
どのメーカーのものも、購入にちょっと勇気の要る価格だ。
そんななかで、コスト対スペックで考えたときに、どうしてもモンベルに食指が伸びてしまう。
実際に、2日目、3日目、強風の中-20℃を下回る状況でも使用したが、非常に調子が良かった。
寒さも感じず、汗ムレも無かった。
満足。

Mountain Hardwear (マウンテンハードウェア) 「パワーストレッチタイツ」

2日目、3日目、オーバーパンツの下はこれだけを履いていた。
昨シーズンに購入したが、その時点で僕が行くような山ではオーバースペックだったが、今回の燕岳ではちょうど良かった。

・UNIQLO (ユニクロ) 「ヒートテック タイツ」

1日目、ノースフェイスの3/4丈のパンツの下に履いていた。
昨シーズンの厳冬期の雲取山でも、ヒートテックのタイツで十分だったので、-10℃ぐらいまではいけるだろうと。
実際、1日目の環境下では特に問題を感じなかった。
ただし、トップスのベースレイヤーにヒートテックを使うのはオススメできない。(3年前の年末の西伊豆で死にそうになったことがある。)


1日目に使用。
冬とはいえ、-10℃までなら下にヒートテックを履いて、あとはゲイターをつけてしまえば寒くはない。
雪靴を履いている時に普通の登山用パンツを履くと、裾がもたつくので、それならいっそ3/4でいいじゃないかと。
去年の2月の雲取山でも、4月の金峰山~国師ヶ岳縦走でも、過不足を感じなかったし。


■ ソックス


3日間ともこのソックスを使ったが、ちゃんと毎日替えた。だから荷物が増えるのだ・・・。
登山靴の性能もあったのだろうけど、足の冷えは全く感じなかった。快適。
ただ、より気温の低いところに行くならば、アルパインソックスのほうがいいんだろうなーと思う。


■ グローブ

Mountain Hardwear (マウンテンハードウェア) 「ハイドラエクストグローブ」

2日目、3日目に使用。過不足の無いパフォーマンスだった。
本当は同じメーカーのタイフォングローブを買おうと思っていたのだが、品切れでこちらを購入した。
タイフォングローブがどうなのか分からないが、今回の山行にはハイドラエクストグローブで不満は感じなかった。インナーとアウターが一体型なので、インナーが汗ムレで濡れてしまった場合、ちゃんと乾くんだろうかと不安に感じていたが、全くの杞憂に終わった。
というのも、ちょっとムレてきたなーと思った際には、手をグーパーグーパーすると、それによってムレが強制的に排出できたのだ。
これがドライQの実力かと、驚いた次第だ。

・UNDER ARMOUR (アンダーアーマー) 薄いグローブ

1日目は、このグローブだけを使用し、2日目、3日目はハイドラエクストグローブの下に着用した。
無くてもいいけど、あれば便利という程度か。


■ ヘッドウェア

・Mountain Hardwear (マウンテンハードウェア) ニットキャップ

普通のニットキャップ。2日目、3日目の行動中にかぶりっぱなし。
持参したバラクラバが薄手のため、バラクラバを着用したあとも、その上からかぶっていた。


一言でいうと、大失敗。
本編にも書いたが、鼻や口を覆わないことを前提にしているバラクラバは意味が無い。
このニンジャクラバも鼻や口を覆えないわけではないが、呼吸穴が空いていないので、覆うと息苦しくて無理。
下山してすぐに、バラクラバを買い直した。



以上、主だったアイテムについては改めてレビューを別途アップしたいと思うが、いったんはこんなところだ。
こうしてみると、モンベルのアイテムの多さが目立つ。やっぱりモンベルはコストパフォーマンスが高いからなぁ。。。



(「装備(ギア)編」につづく)



2013年1月9日水曜日

山行記 : 2013年1月2日~4日 燕岳 [3日目] 燕岳山頂を見ずして下山



(この記事は「[2日目その2]燕山荘にて」編の続きです。)


例によって山の朝は早い。

特に燕山荘の朝は、朝飯前に燕岳の山頂に登っておこうという人が、5時ぐらいに出かけて行ったりする。
この日の朝食は6:15からだったので、6:00まで寝てやろうと思っていたのだが、ガサガサゴソゴソと周りがうるさくて寝てられない。
そんなにみんなが早くから動き出すほど天気が回復したのだろうか。

期待を胸に6:00を過ぎた頃に布団から這い出して、外を覗いてみた。


残念ながら、昨日と何も様子が変わったように見えない。
少なくとも、どこに山頂があるのかも見えないし、風も強いままだ。

チッ!


失望しつつ食堂前のストーブにあたって待機。
もうこの時点で、山頂まで行こうという気は失せていた。

元々ピークハントにはあまりこだわりが無いので、条件の悪い時にそんな目と鼻の先の山頂に出掛けていかなくてもいいじゃないか、と。

実を言うと、夏の晴れた日に来たときにも、燕山荘まで来るともう満足して、燕岳山頂まで行く気がしなくなるという傾向がある。ましてや、天気の悪い冬の日においておや、である。


6:15、朝食。

品数が多くて嬉しい。
しかも、冬でもゼリーが付く。
このゼリー、チープな感じだけど、すごく好きなんだよなぁ。


朝食後、今日の行動をどうするかしばし考える。
天気予報の感じだと、おそらく今日もう1泊すれば天気が回復して眺望も良くなるはず。
そして、予備日は2日間用意したので、延泊する余裕もある。

実はこの年末年始はずっと天気が悪かったそうで、燕山荘の泊り客にも、12月29日からずっと滞在しているのに一度も燕岳の姿をまともに見れていないという人もいたぐらいだ。
それを、1日延泊するだけで拝めるならば安いものだとも思う。

だが、僕はそうしなかった。
なんだか今回はすでに、とても満足してしまったのだ。
うんざりとか、お腹いっぱいとか、そういう気持ちではなく、心の底から満足したのだ。
山に来て、ここまで満足感を味わったのはいつ以来だろう。


そんなわけで、荷物をまとめてさっさと下山することにした。

7:44、燕山荘を出る。

ガスの向こうにぼんやりと朝日が見える。
昨日よりは天気が回復している証拠だ。
風も昨日よりは弱いが、気温は手元の温度計で-20℃を下回っている。

燕岳はうっすらと見えるが、山頂までは見ることができない。

またいつの日か、雪の燕岳を見に来よう。
その時は好天に恵まれますように。

燕山荘の裏に回り、下山路に向かう。
裏に回ると、燕山荘の冬季小屋の入口がある。

表銀座を大天井方面からたどってくると、まず最初に目に入るのがこの冬季小屋の入口だ。
(中房温泉から上がってきてもそれは同じなのだが。)
そういえば、僕が出発しようとしているタイミングで、燕山荘の受付に男性が1人やってきて、
「昨日、小屋の入口が分からなくて、やむを得なく冬季小屋を使ってしまいました。」
と自己申告していた。
たしかに、昨日のあの荒天のなか、強風に煽られていると、回り込んだ反対側に入口があるなんて考えることができないのかもしれない。でも、1度でも燕山荘に来たことがあれば、反対側に入口があることなんて分かりそうなもんだけどなぁ。

この位置からは、表銀座の稜線が見える。

天気が良ければ、この稜線の向こうに大天井と槍ヶ岳が見えるのだが、残念ながらガスの向こうだ。
そして、この稜線の先には、昨日助けを求めて燕山荘にやってきた男性の連れ2人が、助けを待ってビバークしているのだ。
昨日よりマシな天候とはいえ、僕の力では助けに行ったところで、ミイラ取りがミイラになってしまう。
心が痛むが、山岳救助隊に任せて下山することにする。

下山は、昨日登ってきたところ、夏には展望台になっている場所のすぐ横から。
昨日は撮影する余裕が無かったが、案内板も出ている。

そして、これが急登とフィックスロープ。

下りは、特にピッケルに頼らなくても問題なく下りることができた。

急坂を下りきって合戦ノ沢ノ頭の手前で来し方を振り返る。

今日は燕山荘がはっきり見える。
薄いガスの向こうは青空が広がっているようにも見える。きっと今日は、燕山荘から良い景色が見えるに違いない。
ちょっと残念な気はしたが、またの機会にとっておくことにして、先を急ぐことにする。
向かう先は、まだまだ樹木のまばらな尾根道だ。

8:14、合戦小屋に到着。


合戦小屋の前に昨日あった足あとは、一晩で見事に消え去っていた。

8:33、富士見ベンチ到着。

ほんの少しだけ道標の頭が見えていたので、掘り起こしてみた。
といっても、サラサラの雪をピッケルのブレードで掘るだけなので、これが限界。

標高を下げるごとに、陽光が強くなっていく。
黄色いゴーグルでは雪面の反射がキツくなり、サングラスに換装する。

そんな日差しが、昨日までの雪をかぶった木々を照らして、さわやかに眩しい。
パウダーシュガーみたい。(月並み)
画像の真ん中あたりには、中房温泉の建物も見えている。
実は、僕はここから見る中房温泉の姿が好きだ。

8:54、第三ベンチに到着。

ここまで標高を下げると、気温もグンと上がって-15℃。

北側には、東餓鬼岳や清水岳がはっきり見える。

ということは、上の方ではきっと、燕岳もきれいに見えているに違いない。
たった1時間の差だったかー。。。
慌てるナントカは貰いが少ないと言うが、まさしく今日の自分にその言葉を贈りたい。アデュー!

第三ベンチから先を急いでいると、後ろから、
「追いついた!」
と、声をかけられた。
見ると、中房温泉で相部屋だった男性2人である。うれしい再会だ。
そこからはその2人と即席パーティとなり、3人で下山する。

9:14、第二ベンチに到着。

そのまま素通りである。

9:26、第一ベンチに到着。

2時間かからずにここまで来てしまった。
昨日の苦労が嘘のようだ。

昨日の朝見た、第一ベンチのテントは撤収されていて、人の気配は無かった。

このあとすぐに、山岳救助隊とすれ違う。
少し言葉を交わして別れた。
これから大天井の遭難者の救助に向かうそうだ。
随分ゆっくりなスタートだなぁと思ったが、『PEAKS』の2013年1月号に富山県の山岳警備隊の話として
「コースタイム2時間の登山道を隊員は40分で駆けつける」
と書いてあったので、きっと長野もそうなのだろう。だとすれば、正午ぐらいには現場に到着できるのではないだろうか。
しつこいようだが、僕としては無事を祈ることしかできない。

9:50、登山口に到着。

気温は-8℃。

あとは林道を下るだけ。

アイゼンを外し、ピッケルをしまって、雪をかぶったアスファルトの林道を3人で下る。

単独行の気楽さもいいが、連れと雑談などしながらの楽しさも、また良いものだ。
特に、退屈な林道歩きでは大変うれしいものである。

林道からは、前衛の山々の間から、表銀座の稜線が顔を出していた。
嗚呼、綺麗だなぁ。
また来ようと強く決意した次第だ。

3時間ほど歩いて宮城ゲートに到着。
あらかじめ迎えをお願いしていたタクシーに乗り穂高駅へ。

こうして僕の初めての厳冬期北アルプス山行は終了した。






帰りの松本駅から見た常念岳、カッコ良かったなぁ。。。




(「装備(ウェア)編」につづく)



2013年1月8日火曜日

山行記 : 2013年1月2日~4日 燕岳 [2日目 その2] 燕山荘にて



(この記事は「[2日目 中房温泉~燕山荘]」編の続きです。)


燕山荘に入ると、受付をするでもなく、アイゼンを外すでもなく、ザックを下ろすでもなく、ただ椅子に座り込んでしまった。
一気に力が抜けてしまったのだ。
できればこのままボーーーッとしていたい。

が、当然そんなわけにもいかないので、とりあえずザックを下ろし、雪を払い、アイゼンを外し、受付で手続きをした。

僕が雪を払ったり、アイゼンを外している時に、まさに僕の目と鼻の先の受付では、小屋番の兄ちゃんに一人の登山者が何かを訴えていた。
その人の姿は、まさに今着いたばかりで、装備も全く解いていない。
聞き耳を立てていたわけではないが、脱力した僕の耳に入ってくるその登山者の訴えは、ただならぬ内容だった。

曰く、大天井の手前の稜線上で連れの女性が低体温症で動けなくなり、救助を求めて自分がここまで来たのだ、と。

疲れ果てていた僕は、事の重大さが理解できず、
「そりゃ、こんな荒天で表銀座歩いたら、遭難もするわなー。。。」
と、ボンヤリと考えるに留まったが、受付で熱いお茶をいただいて人心地つくにつれ、状況が飲み込めてきた。

おいおい、あんなところで停滞って、大丈夫か?!
いや、大丈夫じゃないじゃん!

僕にとって、初めて身近で起こった遭難事故だ。
だからといって、僕にできることは何も無い。
こんなことを言ってはナニだが、僕では、救助に向かってもあんな稜線を歩いたら、500mも行かないうちに自分が遭難してしまう。


その後、小屋のスタッフの案内で、自分の寝床に荷物を下ろす。
どうやら今日の客の入りでは、本館だけで事足りる上に、カイコ棚のような寝床の4畳スペースに2~3人という、ゆとりある割り振りのようである。

荷物を置き、着替えをして、談話室(?)に移動。

夏場に食堂として使っているスペースを半分に割って、南側はそのまま食堂、北側には4脚のコタツを置いて憩いの場として解放されているのだ。いうなれば、談話室みたいなものだ。
コタツにはなんとミカンまで用意されており、自由に食べて良いという。まさに楽園!

また、そこには大画面テレビも置かれていて、僕が部屋に入ったタイミングでは、箱根駅伝の日体大のアンカーが1位でゴールする寸前だった。
まさか日体大が優勝とは。全くノーマークだった。
何から何まで至れり尽せりで、とろけそうになる。

夕飯は17:30ということで、それまではこの部屋で、テレビを見たり、本を読んだり、同宿の人と雑談したり、うたた寝したりと、のんびりと過ごしていた。


が、すぐそばで、救助を求めて燕山荘にたどり着いた遭難パーティのメンバーが、安曇野署と遭難状況について電話で話をしている。
聞き耳を立てているわけではないのだが、至近距離すぎて全部丸聞こえで、良心の呵責を覚える。
どうやら相当マズイ状況のようだ。
自分には何をしてやることも出来ない、それが歯がゆい。島崎三歩のようなスーパーマンだったらすぐにでも助けに行けるのに。
スーパーマンどころか、登山者としては並以下である自分が呪わしいばかりだ。


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ここで、燕山荘の年末年始営業の様子を紹介したい。

まず、1月3日時点での燕山荘で最も目を引くのは、談話室の手前に張り出されている、宿泊客の書き初めだ。

この書き初めは、いつでも誰でも、好き勝手なことを書けば良い。
この張り出された書き初めの下に、書き初めを行う台が置かれているので、気が向いたらそこで書けば良いのだ。

なお、餅つきは1月2日までだったようで、僕は参加できなかった。残念。

トイレは夏場と同様に使用できるが、水道は全く利用できず。手を水で洗う代わりに、アルコール消毒液が置かれている。
また、500ml目安で200円でお湯を分けて貰えるので、テルモスを持参している場合にはぜひ利用したいところだ。

昼食も、14時までは絶品なカレー各種やその他の軽食なども適価で提供してくれるので、何泊も停滞するようなことになっても安心だ。


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17:30、夕食の時間。

相変わらず美味しいし、洋ナシのコンポートも疲れた体に嬉しい限りだ。

夕飯後は、消灯時刻である21時まで、持参した本を読み耽る。
今回の本は、塩野七生『ローマ人の物語』の文庫版24、25、26巻の3冊だ。正月休みのうちに、そこまでは読み切りたい。

25巻を読み終わったところで、この日は就寝。
明日はいよいよ下山だ。


(「[3日目] 燕岳山頂を見ずして下山」編つづく)




2013年1月7日月曜日

山行記 : 2013年1月2日~4日 燕岳 [2日目] 中房温泉~燕山荘



(この記事は「[1日目] 中房温泉まで」編の続きです。)



冬だろうと、山の朝は早い。

中房温泉の朝食は6:00からだ。
食事を取りながら、食堂のテレビで天気予報を見る。新潟や石川が大雪、長野はやや小降りの雪の予報。
ということは、燕岳のあたりは普通に雪が降るだろうと考えたが、風の強さが分からない。
とりあえず、合戦小屋まで行って考えることにする。そこまでなら、怪我や遭難のリスクは小さいし、合戦小屋からなら時間的にも十分に中房温泉まで引き返せる。
唯一の心配事はトレースが夜のあいだに埋まっていないかだが、その場合はラッセルしてみて考えよう。

そんなわけで、7:00に宿を出発。
雪はやっぱり降っているが、勢いはやや弱い。

7:06、登山口。

この日の日の出は7:00なのだが、谷間なので晴れていたとしてもまだ太陽は見えない時刻ではないだろうか。
『枕草子』でいうところの「冬はつとめて」とは、まさにこの状況か。
気温は、手元の温度計で-8℃ぐらい。

まだこの時点ではアイゼンを付けなかった。
どうせアイゼンの歯が引っかかるような雪質ではないだろうし、滑落するような場所もしばらく無いだろうから。

合戦尾根の最初のランドマークは第一ベンチ。
無雪期ならば登山口から30分でたどり着ける場所だが、合戦尾根のなかで一番傾斜がキツい区間でもある。(あくまで主観としてだが。)

登山口を出て5分、早くもサラサラの雪に足を取られはじめる。


深みにハマる、ということではなく、傾斜が急なところでは、サラサラの雪が積もっていると足場が確保できずに、まるでアリ地獄のようにズルズルと滑ってしまうのだ。

それでも、そのまま粘ること30分、さすがに無理と諦めてアイゼンを装着。
まだまだ全然第一ベンチまでたどり着けず。


相変わらず雪はシンシンを降り続けるも、トレースが分からなくなっているようなこともなく、急斜面でジタバタしなくてはならないという1点を除いては非常に快適だ。
それにしても、こんなサラサラの雪を歩くのは初めてなので、スピードが思うように上がらない。
少し焦る。

7:56、第一ベンチ到着。

登山口から50分もかかってしまった。
先が思いやられる。

第一ベンチでは、テント泊している人がいた。
僕が通りかかると、通気口からこちらを見ている様子だったので挨拶をした。

ちなみに、雪の深さはこんな感じ↓。

ちなみに、無雪期の第一ベンチの看板はこんな感じ↓。

まだまだ積雪は大したことない、というところか。

再びトレースを追って第二ベンチへ。
なんの変哲もない雪のトレースを歩くだけの緩やかな登りなので、楽。

8:29、第二ベンチに到着。

雪が、第一ベンチより深くなっている。
気温はまだ-8℃のまま。

再び歩き出し、第三ベンチを目指す。

9:11、第三ベンチ到着。

道標はほとんど埋まっていた。
この先、道はどんどん雪深くなっていく。

次のランドマークは富士見ベンチ。
が、行けども行けども富士見ベンチの道標にたどり着かない。
地形としては、このあたり↓が富士見ベンチのはずなんだが・・・。

行けども行けども、道標が見つからない。
そんなにモタモタ歩いているつもりはないのにたどり着かないということは、場合によっては燕山荘到着を諦めて引き返さなければならないかもしれない。
心が折れそうになる。

おっかしーなー、、、この石より手前に富士見ベンチがあったような気がするんだけどなー。。。

すると、その先で出会った下山者にすれ違いざまにざまに
「もうずぐ合戦小屋ですよ、がんばってください」
と声をかけられる。

え。

びっくりして問いただした。
「え! 富士見ベンチはどこ行っちゃったんですか?!」

すると、その下山者が言うには、富士見ベンチの道標はおそらく雪に埋まってしまっていたのだろうと言う。

マジか!

そうなると、俄然自信が湧いてくる。きっと上まで行ける!
実際、そこから10分もしないうちに、ついに合戦小屋が見えてきた。

合戦小屋は、半分ぐらい雪に埋まった状態だった。

小屋前の広場と荷揚げ用のケーブル。

これが夏にスイカを食べた場所と同じだとは、とてもピンと来ない。
ちなみに夏だとこんな感じ↓。(少し寄りの画像だが。)
(2011年7月撮影)

強風に煽られるような天候ならここで引き返すつもりだったが、どうやら大丈夫なようだ。
このまま燕山荘まで問題なく行けると判断した。

さて、そんなわけでここからは風を遮るものがほとんどない尾根歩きとなる。
夏ならまだまだ樹林帯なのだが、今の季節は背の低い樹木が全部雪の下になってしまって、風を遮ってくれるほどの密度は無い。
なので、ここからはさらに防寒対策をしなければならない。

上半身は、ここまではウールのベースレイヤーとハードシェルだけだったが、ハードシェルの下に薄手のフリースを着込む。
もちろん、フリースを着るためには、アウターであるハードシェルを一度脱がなくてはならない。
気合一発、ハードシェルを脱ぎ、フリースを着て、もう一度ハードシェルを着る。
とても寒い・・・。

さらに、頭にはニットキャップを被っていただけだったのを、バラクラバも身につけた。

加えて、ゴーグルも装着。

この時、グローブを装着したままではフリースが着れないため、ほんの1分程度素手になって作業をしたのだが、そのあと10分程度、指先がギンギンに痛み、まさに厳冬期の北アルプスの厳しさを身をもって味わった。
本当に凍傷になるかと思った。。。

そんなトラブルはあったものの、なんとか身支度を終え、再び登り始めた。

写真の暗さからも察していただけると思うが、天気はずっと悪いまま。

降っているのか、それとも積もったのが風に舞っているのか分からないが、唯一露出している鼻と唇に雪が容赦なく叩きつけられる。
僕の持ってきたバラクラバは薄手のものなので、鼻や口に穴が空いておらず、鼻や口を覆うと苦しくて歩けなくなるのだ。
しくじった。

次第に、まばらだった木々も稜線上からすっかり姿を消し、風を遮るものが何も無くなった。

それと同時に、ルート上はサラサラの雪ではなく、クラストした場所が大半を占めるようになった。

写真で見ると薄暗い感じだが、僕自身は黄色いゴーグルをしていたため、肉眼で見える風景は真っ黄色だった。
そのゴーグルもうっすらと内側が曇り、視界が効かないほどではないにしろ、雪面の微妙な凹凸が見えにくくなってきた。
ルート上はクラストしていてアイゼンがよく効き、非常に歩きやすいのだが、少しでもルートを外すと股のところまでハマってしまう。視界が悪いながらも、慎重に見極めながら歩かなくてはならない。

まばらな枯れ木の枝に雪が吹き固まっているのが、やけにキレイに感じた。
もはや写真では背景に同化して、わけが分からないな・・・。

こうして小さなピークを2つ越え、12:06、いよいよ燕山荘が視界に入ってきた。
写真だとよく分からないかもしれないが、真ん中のピークの上に建っているのが燕山荘だ。

ちなみに夏はこんな感じ↓。

このあと夏道だと、ここから燕山荘の直下をいったん北側に巻いて、燕山荘と燕岳の間から稜線に出るのだが、なんと冬場は、燕山荘に向かって直登し、夏ならば展望台として使われている場所のすぐ脇に出るのだ。

さすがにこの急登(というか、夏の印象ではほぼ崖)には、無造作にフィックスロープが垂らされていた。
が、こっちはアッセンダーどころかハーネスすら持ってきていないので、どうしたらいいのか分からない。せっかくなのでロープを持って登ろうとしたが、滑って無理。
仕方がないので、ロープを全く使わずに、ピッケルで登った。その方が確実で安全な気がする。

この急登を登りきり、冬季小屋の入口あたりまでたどり着いた瞬間、稜線の向こうからの西風をまともに食らった。

そう、これが最後の洗礼なのだ。

一瞬にして鼻の穴の中まで凍り、軽くパニックになる。
このままでは鼻が凍傷になってしまう! 鼻が真っ黒になってしまうのはイヤだ!
慌ててバラクラバで鼻まで覆うと、今度は息苦しくて無理。
バラクラバを上げたり下げたり、手で顔を覆ってみたりしながら、なんとか燕山荘の入口前までたどり着く。

12:52、燕山荘に到着。

残念ながら、燕岳の姿はガスと舞い散る雪の向こう。

こんな寒い強風の中でアイゼン脱いだりモタモタするのはイヤだなーと思っていたら、他の登山者たちがアイゼンを穿いたまま入口を入っていく。
まさか、と思って中を覗いてみると、なんと土間にベニヤ板が敷かれていて、アイゼンで入っても大丈夫なようにしてくれていた。
さすが燕山荘。心の底からありがとう!
遠慮なく、アイゼンのままで入らせていただく。

こうしてこの日の行程は終了した。


(「[2日目 その2] 燕山荘にて」編へつづく。」)

2013年1月6日日曜日

山行記 : 2013年1月2日~4日 燕岳 [1日目] 中房温泉まで



(この「計画概要」編の続きです。)


元旦は丸一日を費やして、燕岳山行の準備をして過ごした。

厳冬期の北アルプスは初めての経験だ。
とはいえ、合戦尾根のピストンで、しかも燕山荘泊まり。ルートも燕山荘のスタッフがトレースをつけてくれているし、至れり尽せりの登山なわけだから、遭難なんかしたら末代までの恥になる。
そんな簡単なルートだと分かっていても、やっぱり不安が募る。

何か忘れ物があるんじゃないか、とか、装備に不備があったらどうしよう、とか、そんなことばかり考えてしまう。

翌朝、夜明け前に自宅を出発し、新宿発7時ちょうどのスーパーあずさに乗車。
10時半前には穂高駅に到着。

駅前には、少数ながらも登山者と思われる人の姿もある。

ここからタクシーで宮城ゲートまで。
タクシー代は3,300円。

「宮城」は「みやぎ」ではなく「みやしろ」と読む。
東北人にとっては「みやぎ」なんだけどねー。

中房温泉まで続く林道は、冬場は一般車両の通行止めがされており、中房温泉の手前12kmの地点にある宮城ゲートまでしかタクシーで乗り入れることはできない。もちろん、バスもない。
なので、中房温泉まで12kmの林道歩きをしなければならないのだ。
ちなみに、穂高駅から宮城ゲートまでは約9km。

10:50、宮城ゲートを出発。

気温は約5℃。

標高差にして約700m上の中房温泉まで、舗装された緩やかな上り坂がここから延々と12km続く。

ゲートを出てすぐは、うっすらと雪が積もった道の真ん中だけが除雪されていて、車の轍が残されている。

ゲートが封鎖されているといっても、この先には発電所があったりするので、全く車が通らないってこともないので、轍もついているのだ。

このようにアスファルトが透けて見えていたり、所によっては露出しているような場所もあったが、そのような場所はゲートから1kmも歩くとほとんど無くなり、雪と氷に覆われてくる。


それでも、しっかりラッセル車が入っているようで、ツボ足になる心配は皆無。


12:03、玉垂トンネル到着。
宮城ゲートから中房温泉までの間にある3つのトンネルのうちの1つ目だ。
時間もちょうど昼時なので、このトンネル内で昼ごはんを食べている登山者が何組かいたが、それを尻目に僕は先を急ぐ。
朝食と夕食は宿で出してもらえるわけなので、昼食は行動食しか用意していないからだ。

トンネルの中と外とでは、地面に雪が有るか無いかぐらいしか違わないのだが、休憩をするにはその違いが大きい。
トンネルの出口から見ると、こんな具合。

林道の山側には、場所によっては立派なツララができていた。
その中でも、玉垂トンネルのすぐ先では、特に激しいツララが見られた。

このあたりは標高がまだ低いので、融けたり凍ったりを繰り返すことでこんな状態になるわけだ。
標高を上げていくと、もはやこのような風景は見られなくなる。

12:15、観音峠に到着。

観音峠には芳男地蔵菩薩の祠がある。

登山者の安全祈願と、山道を作るにあたって亡くなった方を祀っているそうだ。

12:27、2つ目のトンネルである東中小屋澤洞門に到着。

トンネルといっても、いわゆる「洞門」なので、谷側は壁ではなくコンクリートの柱になっている。
箱根駅伝の5区、6区で登場する箱根の函嶺洞門みたいな造りなのだ。
その洞門を見て、今頃箱根駅伝を走っているであろう選手に思いを馳せる。すでに東洋大の柏原選手は卒業して、前日の実業団駅伝に出場していたので、今年の5区は誰が走るのだろうか。気になって仕方がないが、ワンセグすら入らない山の中。自分は自分の山を登るだけだ。


宮城ゲートを出るときにも既に降っていた雪が、次第に本降りになってくる。
レミオロメンの「粉雪」が頭の中を回りそうになったが、それを意志の力でねじ伏せて先を急ぐ。
そんなベタな展開を、自分に許してはいけないのだ。

12:40、3つ目のトンネルである猿渉沢洞門に到着。

このトンネルを過ぎたあたりから、いよいよ手元の温度計が0℃を指し始めた。

雪も相変わらずシンシンと振り続けて、ザックの雨蓋に積もっていく。

13:11、信濃坂のピークに到着。

このあと、少しの距離だが下り坂が続き、体力的には一息つける。
退屈な林道歩きに嫌気が差していたところなので、良いアクセントだ。

坂を下り終えたあたりで、数匹の猿に出くわした。(写真は撮れなかった。)
猿たちは体に雪を積もらせながらも、雪の上をのそのそと歩いていた。
昨年9月にこの辺りをタクシーで通った時に見かけた群れの個体だろうか。
その時にタクシーの運転手さんが言っていたとおり、この季節になっても里に下りずに山で暮らしているんだなー。

次第に雪は勢いを増していく。

谷筋なので、幸いにして風はあまり無い。

14:06、有明荘に到着。

もちろん、営業していないので人の気配は無し。
気温は手元の温度計で-2℃。

ここまで来れば、本日の目的地である中房温泉はもうすぐそば。
このウンザリする林道歩きも終わりということだ。

そしていよいよ、14:25、中房温泉前のロータリーに到着。

このあたりは温泉ということもあって、地熱の影響で雪が融けている。

そして、登山口にある日帰り入浴場と公衆トイレ。

夏場は登山者でゴッタがえしている場所だが、さすがに今日は誰もいない。

そこから道を挟んだ松の下には、テントが2張。

寒そうに見えるが、実は地熱のおかげで暖かいのだそうだ。といっても、所詮は冬なのだが。

さらに奥に進み、14:30、ついに中房温泉に到着。

目安の時間としてだいたい4時間と言われている、この12km。
3時間40分で歩いたのは、まあ、こんなもんかなと。3時間半を切りたかったところだが、止むを得まい。


ザックやら体やらに積もった雪を入口で念入りに払い、受付を済ませる。
部屋は相部屋で、僕と同様に明日燕山荘に向かうという男性2人と同宿となった。

部屋にはテレビがあったが、地上波が映らないため箱根駅伝の結果は分からず。
携帯電話の電波は、auは弱め、softbankは壊滅、docomoはバリバリ。


冷えた体を風呂に入って温め、夕飯を終えたら、同宿の2人と雑談。
外では雪が降り続いている。この分だと明日になっても天気は回復しなそうだ。
不安を覚えながら、21時には就寝。


(「[2日目] 中房温泉~燕山荘」編につづく)