このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2013年1月6日日曜日

山行記 : 2013年1月2日~4日 燕岳 [1日目] 中房温泉まで



(この「計画概要」編の続きです。)


元旦は丸一日を費やして、燕岳山行の準備をして過ごした。

厳冬期の北アルプスは初めての経験だ。
とはいえ、合戦尾根のピストンで、しかも燕山荘泊まり。ルートも燕山荘のスタッフがトレースをつけてくれているし、至れり尽せりの登山なわけだから、遭難なんかしたら末代までの恥になる。
そんな簡単なルートだと分かっていても、やっぱり不安が募る。

何か忘れ物があるんじゃないか、とか、装備に不備があったらどうしよう、とか、そんなことばかり考えてしまう。

翌朝、夜明け前に自宅を出発し、新宿発7時ちょうどのスーパーあずさに乗車。
10時半前には穂高駅に到着。

駅前には、少数ながらも登山者と思われる人の姿もある。

ここからタクシーで宮城ゲートまで。
タクシー代は3,300円。

「宮城」は「みやぎ」ではなく「みやしろ」と読む。
東北人にとっては「みやぎ」なんだけどねー。

中房温泉まで続く林道は、冬場は一般車両の通行止めがされており、中房温泉の手前12kmの地点にある宮城ゲートまでしかタクシーで乗り入れることはできない。もちろん、バスもない。
なので、中房温泉まで12kmの林道歩きをしなければならないのだ。
ちなみに、穂高駅から宮城ゲートまでは約9km。

10:50、宮城ゲートを出発。

気温は約5℃。

標高差にして約700m上の中房温泉まで、舗装された緩やかな上り坂がここから延々と12km続く。

ゲートを出てすぐは、うっすらと雪が積もった道の真ん中だけが除雪されていて、車の轍が残されている。

ゲートが封鎖されているといっても、この先には発電所があったりするので、全く車が通らないってこともないので、轍もついているのだ。

このようにアスファルトが透けて見えていたり、所によっては露出しているような場所もあったが、そのような場所はゲートから1kmも歩くとほとんど無くなり、雪と氷に覆われてくる。


それでも、しっかりラッセル車が入っているようで、ツボ足になる心配は皆無。


12:03、玉垂トンネル到着。
宮城ゲートから中房温泉までの間にある3つのトンネルのうちの1つ目だ。
時間もちょうど昼時なので、このトンネル内で昼ごはんを食べている登山者が何組かいたが、それを尻目に僕は先を急ぐ。
朝食と夕食は宿で出してもらえるわけなので、昼食は行動食しか用意していないからだ。

トンネルの中と外とでは、地面に雪が有るか無いかぐらいしか違わないのだが、休憩をするにはその違いが大きい。
トンネルの出口から見ると、こんな具合。

林道の山側には、場所によっては立派なツララができていた。
その中でも、玉垂トンネルのすぐ先では、特に激しいツララが見られた。

このあたりは標高がまだ低いので、融けたり凍ったりを繰り返すことでこんな状態になるわけだ。
標高を上げていくと、もはやこのような風景は見られなくなる。

12:15、観音峠に到着。

観音峠には芳男地蔵菩薩の祠がある。

登山者の安全祈願と、山道を作るにあたって亡くなった方を祀っているそうだ。

12:27、2つ目のトンネルである東中小屋澤洞門に到着。

トンネルといっても、いわゆる「洞門」なので、谷側は壁ではなくコンクリートの柱になっている。
箱根駅伝の5区、6区で登場する箱根の函嶺洞門みたいな造りなのだ。
その洞門を見て、今頃箱根駅伝を走っているであろう選手に思いを馳せる。すでに東洋大の柏原選手は卒業して、前日の実業団駅伝に出場していたので、今年の5区は誰が走るのだろうか。気になって仕方がないが、ワンセグすら入らない山の中。自分は自分の山を登るだけだ。


宮城ゲートを出るときにも既に降っていた雪が、次第に本降りになってくる。
レミオロメンの「粉雪」が頭の中を回りそうになったが、それを意志の力でねじ伏せて先を急ぐ。
そんなベタな展開を、自分に許してはいけないのだ。

12:40、3つ目のトンネルである猿渉沢洞門に到着。

このトンネルを過ぎたあたりから、いよいよ手元の温度計が0℃を指し始めた。

雪も相変わらずシンシンと振り続けて、ザックの雨蓋に積もっていく。

13:11、信濃坂のピークに到着。

このあと、少しの距離だが下り坂が続き、体力的には一息つける。
退屈な林道歩きに嫌気が差していたところなので、良いアクセントだ。

坂を下り終えたあたりで、数匹の猿に出くわした。(写真は撮れなかった。)
猿たちは体に雪を積もらせながらも、雪の上をのそのそと歩いていた。
昨年9月にこの辺りをタクシーで通った時に見かけた群れの個体だろうか。
その時にタクシーの運転手さんが言っていたとおり、この季節になっても里に下りずに山で暮らしているんだなー。

次第に雪は勢いを増していく。

谷筋なので、幸いにして風はあまり無い。

14:06、有明荘に到着。

もちろん、営業していないので人の気配は無し。
気温は手元の温度計で-2℃。

ここまで来れば、本日の目的地である中房温泉はもうすぐそば。
このウンザリする林道歩きも終わりということだ。

そしていよいよ、14:25、中房温泉前のロータリーに到着。

このあたりは温泉ということもあって、地熱の影響で雪が融けている。

そして、登山口にある日帰り入浴場と公衆トイレ。

夏場は登山者でゴッタがえしている場所だが、さすがに今日は誰もいない。

そこから道を挟んだ松の下には、テントが2張。

寒そうに見えるが、実は地熱のおかげで暖かいのだそうだ。といっても、所詮は冬なのだが。

さらに奥に進み、14:30、ついに中房温泉に到着。

目安の時間としてだいたい4時間と言われている、この12km。
3時間40分で歩いたのは、まあ、こんなもんかなと。3時間半を切りたかったところだが、止むを得まい。


ザックやら体やらに積もった雪を入口で念入りに払い、受付を済ませる。
部屋は相部屋で、僕と同様に明日燕山荘に向かうという男性2人と同宿となった。

部屋にはテレビがあったが、地上波が映らないため箱根駅伝の結果は分からず。
携帯電話の電波は、auは弱め、softbankは壊滅、docomoはバリバリ。


冷えた体を風呂に入って温め、夕飯を終えたら、同宿の2人と雑談。
外では雪が降り続いている。この分だと明日になっても天気は回復しなそうだ。
不安を覚えながら、21時には就寝。


(「[2日目] 中房温泉~燕山荘」編につづく)



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