このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2012年12月1日土曜日

角幡唯介 『アグルーカの行方』

以前、探検家でノンフィクション作家である角幡唯介さんの書作を何冊か紹介してきたが、その角幡さんの最新刊である『アグルーカの行方』は、これまでとは少し趣が変わり、山ではなくて北極圏が舞台だ。


僕は寒いのが苦手なので、アラスカの山だの北極探検だの南極マラソンに行く人達の気が知れないのだが、せっかくの角幡さんの著書なので、出版される早々に読んでみた。

タイトルになっている「アグルーカ」。聞きなれない言葉である。
それは何を意味するのか。
答えは、序章に入る前のページに、端的に記載されている。
(僕はその記述に気付かずに読み進んだため、かなり後になってからその意味を知るまで、いろいろなことを脳ミソの棚に上げっぱなしにしておかなければならなかった。)

19世紀、この「アグルーカ」と呼ばれた男を含むイギリスの探検隊が北極圏で全滅、その理由は現在でも明確になっていない。
その「アグルーカ」の足跡を辿る旅を描いたのが本書だ。
旅といっても、荷物を満載したソリを人力で引っ張っての徒歩での旅だ。
しかも場所は北極圏。読んでるだけで底冷えする。

本書の後半には、その旅の途中の様子を写した写真が掲載されている。
そういう本の作りになっていると、僕の悪い癖で先に写真を見てしまうのだが、いきなり目に飛び込んできたのは男性の口から真っ赤なツララが垂れ下がっている写真だった。
その男性こそ、著者だ。
本文を読み始めて早々にその理由は書かれていたのだが、正直なところドン引きだ。こんな目には絶対に遭いたくない。。。


本書には僕にとって、随所に発見が散りばめられていたが、それらの中で比較的小さなトピックを紹介すると、極地で肉体労働(つまり、ソリを引きながらひたすら歩くとか)をする場合、1日の摂取カロリーが5000kcalでも足りないという事実に驚いた。
5000kcalだってたいへんな量なのに、それ以上の食料を持ち歩くなんて想像もできない。


本書を読んでも極地探検に行きたいとはとても思えなかったが、雪山登山にも通じるところがあり、非常に示唆に富んだ内容であった。
もちろん、読み物としても非常に読ませる作品であり、さすがだなぁと唸る次第だ。


なお、著者本人は、本書が書店で一般書扱いではなく登山コーナーに置かれていることを嘆いていた。(本人のブログより)


ちなみに、『考える人』2012年11月号に掲載されている著者と沢木耕太郎氏との対談で、本書の構成に関する著者の意図なども披露されているので、興味のある方は是非。


0 件のコメント:

コメントを投稿