(この記事は「計画概要」編の続きです。)
気乗りしないリベンジ。
出発の前日は丸一日がかりで山行準備をしながら、最後の最後まで行き先を変更しようか迷っていた。
というのも、せっかくの平日なのだから、普段は混んでいて行く気にならないような山に行くほうが楽しいのじゃないだろうか、と。
人気の山でも平日なら空いているに違いない。
例えば穂高。
小屋番さんのブログによれば、今年の涸沢の紅葉は近年に無いすばらしい色付きだそうな。
他の登山客が3連休でぎゅうぎゅう詰めの悪夢を見た直後に、自分だけゆったりと平日山行を味わうのも悪くない。
例えば剱岳。
3,000m未満の山ばかりを登っている僕としては、ここらで3,000m未満の最高峰である剱岳で、冬の訪れの気配を感じながらカニの縦ばい・横ばいをしてみたい。
例えば槍ヶ岳。
平日に行けばハシゴの渋滞に捕まることもないだろうし、表銀座から東鎌を経てアプローチしても日程に余裕があるだろう。
この時期なら雷の心配もあるまい。
例えば裏銀座。
日程的に厳しいため、なかなか行けずにいるロングコース。
あこがれの野口五郎岳だって独り占めだ(たぶん)。
例えば黒部。
断崖絶壁に刻まれた水平歩道の崩落も復旧した模様だし、平日ならすれ違いを行う心配もないだろう。『高熱隧道』の舞台をこの目で確かめてみたい。
ただ、多くの死者を出している山域にひとりでテント泊する度胸が自分にあるかどうかは別な話。
思い切って大キレット。
平日ならば小屋泊でも混むことはあるまいから、思いっきり荷物を軽くして挑むチャンスでもある。
ただ、途中でもし雪が降ってきたら死ぬなぁ。メタファーとかではなくリアルに。
妄想ばかりが広がるが、残念ながら体は1つしかない。
いろいろ考えたが、やはり奥秩父・奥多摩縦走のリベンジを果たさない限り、どんな山に行ったとしてもそれは逃げではないか、という思いが拭いきれない。損な性格だとは思うが、1つ1つ課題をクリアすることでしか前に進めないのだ。
というわけで、当初の計画通り、奥秩父・奥多摩縦走に出発することにした。
我ながら地味な選択だ。こういう人間はどこまでいってもウダツが上がらないに違いない。
10月8日、出発当日の朝。
世間は3連休の最終日だが、僕にとっては1週間弱に渡る山行の始まりの日だ。
残念ながらウキウキはしない。
7:00、スーパーあずさで新宿を発つ。
最近この時間のスーパーあずさに乗ることが多い。先月も2回乗っている。
さすがに今日は3連休の最終日だけあって、自由席にも空席が目立ち、登山者の数も少ない。
韮崎駅で降りてバスに乗り換える。
バスの車中から見た瑞牆山は、青空をバックにそのイカツイ姿を惜しげもなく晒していた。
バスの運転手さんが車内放送で
「瑞牆山がこんなにハッキリ見れるのは滅多にないことです」
と話していた。
さすがオレ=晴れ男。
登山口のある瑞牆山荘には、10時過ぎに到着した。
しかし、ゆっくりしているヒマはない。
今日中に大弛小屋にたどり着かなくてはならないので、急いで出発しなければ。
もろもろ準備をして、10:15、いよいよ出発。
瑞牆山荘から朝日岳までは、無雪期にも積雪期にも行ったことがあるので、特に目新しさは感じることなく歩くことになる。が、何かしらの発見もあるかもしれない。
10:43、稜線に出る。
ここからは、木々の間から瑞牆山を望むことができる。
バスの中から見たときより、背後にガスが迫っているような・・・。あれれ・・。
10:53、富士見平小屋手前の水場に到着。
相変わらずの豊富な水量。
10:56、富士見平到着。
相変わらずの富士見平小屋。けっこう賑わっている。
テント場にも既に数張のテントが。
写真を撮っていると、休憩中の年配の男性が、どこまで行くのかと声を掛けてきた。
大弛小屋まで行くと言ったら、男性は一瞬意味を理解しかねたような表情をして、「今から?」と言った。
もちろん、こっちだってキツいのは百も承知だ。16時には到着する予定である旨を伝えると、男性は何かを諦めたように
「気をつけて。頑張れよ」
と笑顔で言ってくれた。
僕はそれに礼を言って先を急いだ。
今回は日程の関係上、瑞牆山には立ち寄らないので、そのまま金峰山を目指す。
11:38、鷹見岩への分岐に到着。
富士見平小屋の主人がお勧めしているスポットだが、今回もスルー。
果たして、鷹見岩を訪れる日は来るのだろうか。
11:46、大日小屋に到着。
このあたりは紅葉が始まっていて、常緑樹に混じって赤や黄色が目に鮮やかだ。
大日小屋のテント場で休憩を取り、昼食用に持参したコンビニのおにぎりを食べる。
ファミリーマートの栗おこわのおにぎりは美味い。
10分ほどで休憩を終え再び歩き出してすぐ、僕の嫌いな場所が現れる。
この一枚岩は、わりと急な上に、いつも濡れている。
GWに来た時も、7月の梅雨明け後に来た時も濡れていた。
今回も濡れている。
おそらく一年中濡れているのだろう。
つまり、一年を通して滑りやすいのである。
一応、補助のロープが掛けられているが、このロープもいつもビショ濡れなので、不愉快で触りたくない。
濡れていない箇所を慎重に選びながら、滑らないように慎重に登る。
12:21、大日岩の下に出る。
ここは眺望の良い場所なのだが、すでに雲がモクモクで、あまり遠くは見通せなくなっていた。
どうした?オレ=晴れ男!
眺望の無い登山はガッカリだぞ!
12:32、大日岩の分岐に到着。
大日岩にチラっと目をやって、すぐに先を急ぐ。
なんとも忙しないが仕方無い。
尾根から北側を見ると、小川山方面はまだ視界が利く様子だ。
いつもの尾根道を抜け、
13:30、砂払いノ頭の直下に到着。
この急登を登り切ればエッジに出る。尾根向こうに見える空は真っ白、完全に雲がかかっている様子だ。
この登りが地味にキツイ。ザックが重いと、急登がけっこうこたえる。
13:33、砂払いノ頭に到着。
全然眺望が無い。。。
晴れていれば非常に眺めが良い場所なのだが、非常に無念だ。
ここから山頂まで、森林限界を超えた稜線歩きだ。
もはや、ちょっと先すらガスのかかっている状態。
いつもならこの絶壁も、そそり立つように見えるのだが、、、
13:41、このルート唯一のハシゴに到着。
トムソーヤ塾とかで作ってそうな、手作り感満点なハシゴだ。個人的には南八ヶ岳の鉄のハシゴよりも好きだ。
ちなみにこのハシゴ、今年の4月30日にはこうだった↓。
ハシゴを登りきると、目の前に金峰山の山頂が現れた。
こんなに近くなのに、ガスのせいで五丈岩すらうっすらとしか見えない。
山頂直下はかなり紅葉が進んでいるようで、これで晴れていたら本当にキレイだっただろうなぁ。
しばらく進んで、やっと五丈岩がはっきり見えてきた。
金峰山のこの稜線は、いつ見てもキレイだ。
13:55、金峰山小屋への分岐に到着。
もちろん、小屋に向かうワケもなく、そのまま山頂へ。
そうこうするうちにも、ガスがどんどん上がってくる。
五丈岩までもう少し。
来し方を振り返ると、いつもの稜線がガスに見え隠れしている。
せっかくなので、ほぼ同じ場所からほぼ同じアングルで撮った過去の写真も載せておこう。
2010年7月18日。
2012年4月30日。
山は本当にいろいろな表情を見せてくれるものだ。
これだから止められない。
14:27、山頂手前の広場に到着。
五丈岩の真ん前。
今回もまた五丈岩には登らずに過ぎ去ることになる。
果たして、五丈岩を訪れる日は来るのだろうか。
14:32、金峰山山頂に到着。本日のハイライトだ。
だが、眺望は無いし、感慨に浸る暇も無いしで、さっさと通過する。
山頂の向こう側には、今年のGWにうっかり間違ったトレースを追いかけて30分ほどタイムロスした広い尾根がある。
今回もなんとか鉄山と朝日岳は目視できたので、方向感覚がおかしくなることは無かった。
ここからは、大したアップダウンもなく、気付いたら鉄山のピーク直下の標識に出食わした。
15:05のことだった。
ここから少し下ると、またすぐに朝日岳の登り斜面が現れる。
朝日岳の斜面はすっかり色付いていた。
朝日岳の最後の急登を登る。
2010年に来た時には、この斜面にハシゴのように急な階段があったような気がしたのだが、今回それはまったく存在していない。僕の記憶違いだろうか。。。
ともあれ、急斜面を登りきって来し方を眺めてみたが、ガスが濃すぎて金峰山は確認できず。。。
朝日岳山頂に向かう道。
15:41、朝日岳山頂に到着。
そのままさらに東を目指す。
行く手には、大弛峠までにはもう小ピークがいくつかあるに過ぎない。
いざ、進め!
16:09、朝日峠に到着。
朝日峠には、謎のケルンがある。
何かの目印なのかもしれないが、今年のGWに来た時は雪に埋もれていて気付かなかった。
この時点でまだ空は明るく(といっても曇っていたが)、歩くのに支障は無かった。
とにかく先を急ぐ。
16:44、やっと大弛峠に到着。
コースタイムと足しっぱなしにすると16:30に到着することになるので、14分のオーバー。
だが、休憩のことや荷物の重さを考えれば、まあまあではないだろうか。
写真のブレっぷりが疲労と焦りを物語っている。
なんとか大弛小屋にたどり着き、テント泊の手続きをする。
小屋のご主人は、今晩は下界に降り、明日の昼に戻ってくるそうで、僕がテントを立てている最中に下山していった。
テントを立て終わって夕飯を準備しているうちにすっかり辺りは暗くなり、ヘッドライトのあかりの中で袋メシ。
なんとか一日が無事に終わろうとしている。
ふぅ。。。
(「【2日目】 大弛小屋~国師ヶ岳~甲武信ヶ岳~甲武信小屋」編へ続く。)
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