山の朝は早い。
寝つけぬままに日付を跨いでしまった僕は、そのくせ寝覚めが異常に良くて、朝5時からの朝食に余裕で間に合ってしまった。
きっとアドレナリンが出っぱなしになっているのだろう。
朝食は、生タマゴ、焼鮭、等。ゴハンはおかわり自由でフリカケもフリー。梅干があるのも嬉しい。
でも、朝からおかわりは無理。卵かけゴハンを味海苔で巻いて食べるという贅沢三昧の食事を終えて、早々に出発の準備をする。
出発の準備といえばやはりトイレだが、雲取山荘の冬場のトイレは夏場に使う外のトイレではなく、山荘内からスリッパで行ける場所にある。
で、水洗なのは夏用トイレと同じ。冬場なのにスゲー。
水洗だけに臭いもほとんど無く、とてもキレイ。
ただ、男女兼用なので、トイレの撮影は自粛した。
6:20、山荘を出る。
この日の日の出は6:35。
山荘から見る東の空はすでに朝焼け。今まさに日が昇ろうとしている。
このままここでご来光を拝むか、さっさと雲取山山頂を目指すかで少し迷ったが、今日の行程のタフさを考えたら時間を無駄に出来ない。
外のベンチでアイゼンをつけ、さっそく出発する。
案の定、出発してすぐに、木々の間からご来光の日差しが差し込んできた。
もうちょっとちゃんと見たかったなぁ。。。
そんなご来光を尻目に昨日下った道を山頂に向かって登り返し、6:50、雲取山山頂到着。
なんとか朝焼けの時間には間に合った。
もはや太陽は地平線から昇り切っていた。
昨日は少し雲があったが、今朝はそれさえもほとんど無く、素晴らしい展望が広がっていた。
奥秩父の山々。
昨日は見えなかった富士山もドーーン!!
遠くに南アルプスの山々も見える。
冬の朝の澄み切った眺望は、吸い込まれそうなほどにリアルだった。
そこにいる人全てが、その眺望に心を奪われ、ただただ「すごい!」を連発しながら、あふれんばかりの笑みをたたえるばかりだった。
ちなみに、気温はマイナス10℃。
不覚にもバラクラバを持って来忘れて素肌を晒していたのだが、風の無い穏やかな天気のおかげて凍傷にもならず、心行くまで景色を堪能することができた。
10分後、いつまでもこの景色を見ていたいという誘惑を断ち切り、ついに雲取山の山頂を後にした。
避難小屋側に移動しての富士山の眺望もすばらしい。
断腸の思いで、石尾根を下り始める。
振り返ると、朝日を浴びた避難小屋と、いまだ眺望の虜になっている登山者の姿が見える。
ここからブナ坂までは前日の逆ルートをたどる。
ただ、前日に通った巻き道は使わず、全て尾根道を歩いた。
何故か。
それは、富士山がキレイに姿を現していたからだ。
雲取山の山頂から鷹ノ巣山あたりまでの石尾根歩きでは、天気に恵まれればほとんどどこからでも富士山の姿を拝むことができる。
前日に見ることができなかった分までしっかり見てやろうと思い、巻き道を一切使わなかったのである。
僕は登山の対象としての富士山には今のところあまり興味が無いのだが、眺める対象として、やはり心奪われる。日本一の山であるのは間違いない。
そんなわけで、富士山を眺めながらどんどん尾根を歩く。まるで、バーで3つ隣に座ったお一人様の美女をチラチラ見てしまうように、富士山をチラチラ見ながら。
7:40、奥多摩小屋前に到着。やはりここからの眺望も格別だ。
またこの眺めを満喫するためだけに、ここでテント泊しようと思う。
このあたりは、前日通った際には登山道がぐちゃぐちゃだったが、この日はまだ朝の寒い時刻だったので、地面はカチカチに凍っていて歩きやすい。
8時過ぎ、ブナ坂到着。
ここから先は、前日とは違うルートになる。
このまま石尾根縦走路を伝い、そのまま奥多摩駅まで歩くのだ。
まずは七ツ石山のピークを目指す。
ブナ坂から七ツ石山のピークまでは、2、30分の行程だ。
北側斜面なので、地味に積雪が残っている。
8:25、七ツ石山山頂到着。
三角点。
厳冬期だけあって、木々の葉は全部散っており、視界を遮るものが非常に少ない。
おかげで、眺望がとても良い。
ここから石尾根縦走路を、巻き道を使わずにひたすら奥多摩駅を目指して歩くわけだ。
長丁場になるが、覚悟を決めて再び歩き出した。
(つづく)
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