このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2015年9月28日月曜日

山行記 : 2015年9月19日~22日 立山縦走 2日目その1 立山三山縦走(雄山まで編)




(この記事は「1日目 テント場確保」の続きです。)


山の朝は早い。

例によって僕は寝つきが悪く、睡眠も浅く、血圧も低いので、起きてからしばらく脳がまったく機能しなかった。
もちろん、そんな状態でテントの外に這い出る気力も無く。前日のうちに沸かしてテルモスに詰めておいたお湯でアルファ米をもどし、無理やり腹に収める。
やっぱり起き抜けのメシはツラい。

脳も胃も、起動に時間がかかるのだ。

そうは言っても、いつまでもダラダラとしているわけにはいかない。
今日は立山三山縦走の日。
雷鳥沢キャンプ場を出発して、別山、立山、浄土山と巡ってみくりが池温泉に直行するのである。
コースタイムは「山と高原地図」の2013年度版で約7時間半と、そこそこの時間である。連れのことを考えれば、このコースタイムで歩ききるのはなかなかしんどいだろうから、出発時刻を早めて、少しでも前倒しで行動しておきたいところだ。

僕の装備はアンプレース25に詰め込んだ。
連れはサブザックではなく、大きなザックをペチャンコにして背負った。

立山三山はエスケープルートもそこそこあるので、ヤバかったら途中で降りるという選択もできるし、このルートの稜線上だけでも3箇所も営業小屋があるので、いざというときに安心である。
が、それでも、3,000m級の稜線をナメてはいけないので、一通りの装備は担ぐ必要がある。(と、僕は思っている。そう思っていない人もたくさんいることが後で分かったが、僕はそんな無駄に怖い登山はしたくない。)


5:38、雷鳥平キャンプ場を出発する。
もう日の出の時刻ではあるのだが、雷鳥沢は立山に遮られてまだ日が登らない。

出発してすぐに、雷鳥沢を渡る。

雷鳥沢を渡って左に向かうとすぐに、別山乗越と大日方面との分岐が現れる。

分岐に生えていたシラタマノキの葉っぱには、霜が降りていた。
どうりで寒いわけだ。

登山道沿いの草木も、針葉樹以外はすっかり色付いていた。

ナナカマドは、実も葉っぱも真っ赤。

赤いナナカマドと白い立山。

早朝の紅葉の写真は、僕のコンデジと腕では、再現がなかなか難しい。

うーむ。。。


剱御前小屋を目指す。

なんだか、印象派の絵画のような風景が広がる。

尾根に出ると、登山道沿いの紅葉がすばらしい。

富山、石川方面は雲海に覆われている模様。

立山の、厳しくも長閑な稜線。

ナナカマドとカエデの競演。

雷鳥沢キャンプ場を出て、約40分。もうキャンプ場がこんなに遠くに見える。

6:36、浄土山の稜線から、その向こうの山の山頂がヒョコっと頭を出した。
どこの山なのか、しばらく悩んで、薬師岳だろうと見当をつけた。
こちらの標高をどんどん上げていくと、だいぶその姿が露になってきた。
うん、間違いない、薬師岳だ。双耳峰みたいに見えたのは、北薬師と薬師のピークだろう。

6:56、石段が現れる。

アオノツガザクラなんかも、まだ咲き残っていた。

大日三山も、それぞれの山頂が見えるようになってきた。

7:01、メッセージの記された大きな石があった。
1年前にはこんなの見た覚えがないので、最近記載されたのだろうか。浮石なのだろうから、おそらく最近なのだろう。
それにしてもキレイに書かれている。小学校のときに図工の成績が5段階の「2」だった僕には、きっと書けない。

7:05、剱御前小舎に到着。
ここで、ペットボトル飲料を1本買ったのだが、その際、入り口に貼られたお知らせに戦慄が走る。
なんと、普段は外来の休憩スペースとして提供されている土間も客室として使用しているため、宿泊者以外は小屋の中で休憩することができないということなのだ。
昨年、一昨年と2年連続シルバーウィークに来て、その都度、小屋の中で休憩をさせてもらっていたのだが、そのときだってこの界隈は充分に混んでいた。今年の混雑はその比じゃないということか。おそろしい・・・。

ついでに、トイレにも寄る。
どうもお腹の調子があまり思わしくない。
しかし、この程度のことはよくあるので、この時点では全然気にしていなかった。

ところで、この剱御前小舎がある別山乗越に、ゼッケンを付けた通過者のナンバーを確認している男性がいた。
ゼッケンを付けた人たちの装備はいかにもトレランだが、トレランにしてはザックが少し大きめだ。どちらかというと、トランスジャパンやOMMのような装備感である。
気になって仕方ないので、何のレースなのかを聞いてみたところ、これだった模様。
そうか、レースじゃなくてツアーなのか。
こんな感じなら、オレでも行けそうだなー。

さて、この別山乗越まで来ると、剱岳を見ることができる。
ここからしばらくは、剱岳を眺めながらの山歩きだ。
1年前、ひどい渋滞に悩まされながらも絶好の天気に助けられて登頂した剱岳。一緒に行った2人はその後、会社経営に追われて登山には行っていない。責任の軽い気楽な者のみに許された娯楽・登山。しみじみとありがたさを感じる。

7:22、別山乗越を出発する。小屋の裏に、別山へのルートがある。左に行くと剱岳方面、右へ行くと別山方面だ。
休憩している間に、薄いガスであたりが包まれてしまった。
剱岳も薄いガスの向こう。

なんだかこのまま本当に浄土に行けそうな雰囲気だ。

7:27、剱御前小舎の裏の小ピークに到着。
こういう薄いガスの中で見るケルンは、なかなかの迫力である。

ピークから向かう先を見ると、先行者のシルエットがカッコいい。
果たしてここは、現世なのだろうか。

ピークを素通りして、先を急ぐ。
これ、ホントに登山道なんだろうか。やっぱりリアル浄土に行っちゃうんじゃなかろうか。

そして、極めつけは、先行者のブロッケン現象。
うっかり間違えて、「ドッペルゲンガーだ!」と叫んでしまったことは内緒だ。

そんな幻想的な状況も、実はそれほど長続きせず、7時半を回った頃には再び快晴の空が戻ってきた。まだ冥途に行くには早すぎたらしい。

そんなわけで、明瞭に姿を現した剱岳と源次郎尾根。
剱岳と剱御前。
大日三山と地獄谷。

7:41、またもや大きなケルン。

別山に向けて、まだまだ稜線は続く。

右手には雄山。
この雄山の姿も、別山のピークに近付くごとに、その角度を変え、すばらしい稜線になってくる。

7:56、イワヒバリと間近で対面。
今回の山行で唯一認識できた野鳥は、イワヒバリだけだった。

7:58、別山の山頂に到着。
写真右側、石垣で囲われているのは祠だ。
正面に回りこむとこんな感じ。

ここから別山北峰までピストンする。

鞍部には、大きなケルン。
広い尾根だから、おそらく道しるべなのだろう。

8:07、別山北峰の山頂に到着。

ここからの眺めが大変すばらしい。
動画をご覧ください。



しばらく眺めを堪能しつつ、小休止。
軽く行動食を食べてから出発する。

別山に戻り、そこから南に下る。

ここからは、浅間山と思われる山から、噴煙と思われるものが確認できた。
浅間山って、今も噴火続いてるんだっけ・・・?

室道方面の眺め。

振り返ると、奇岩の山である。

前方には、厳つい稜線。
意外と岩っぽい。
が、特に危険箇所は無い。

その先は山容がなだらかになる。
険しく尖った稜線も良いが、このような広く緩やかな稜線も気持ちが良い。

稜線の東側、カールの中にいくばくかの雪も残っている。

大日三山もよく見える。

稜線に生えるダイコンソウの葉も真っ赤っか。

真砂岳への稜線と真砂乗越。

真砂乗越からの後立山。

8:59、稜線上に首の無い石仏が。
なぜ日本人は、石仏と池に五円玉を納めたがるのか。

この角度からの室堂方面は初めて見るので新鮮な感じ。

なだらかな稜線だが、道はややガレている。

山腹をトラバースして、なだらかに稜線を目指す登山道。

9:10、内蔵助山荘方面への分岐に到着。

稜線に上がると、またしてもケルン。

進行方向方面には、内蔵助カールと、ものすごい角度の斜面に張り付く雪。
この内蔵助カールの氷河は2013年に「氷河」に認定されたようです。

ところで、「氷河」とは何なのか。誰が認定するのか。
どうやら「氷河」に明確な定義があるわけではないようだが、「ずっと溶けないこと」と、その溶けない雪渓が「じわじわ動いていること」の2点が観測された場合に、日本雪氷学界で認定している模様。
(分かりやすい記事があったので、リンク貼っておきます。→「常識を覆した立山の氷河~温暖氷河とは~」)

稜線から東側を覗き込むと、内蔵助山荘の屋根が見えた。

来し方を見ると、別山の向こうに、剱岳が見えていた。
「呼んだ?」みたいな顔の出し方だ。

9:21、真砂岳の山頂に到着。
山頂には「神社」とだけ小さく書かれた謎の石柱が。
実は、山頂が地味すぎて、当初ここが山頂だと理解できなかった。

真砂岳からはノッペリとした稜線。
9:24、大走りへのショートカットルートが現れる。

その先は、なだらかだが殺伐とした稜線。

9:26、2860ピークに到着。

ピークのケルンと大日三山。
同じくケルンと別山と剱岳と

2860ピークから富士ノ折立への稜線は、鋭角でカッコいい。
それにしてもこの雪渓(氷河だそうだが)は、どうやってこの急斜面に居残り続けているのだろうか。

9:32、大走りへの分岐が現れる。

そのすぐ先には、「クラノスケカール」と書かれた道標。
たしかにこの辺りからは、内蔵助カールが見渡せる。

顕著な稜線を富士ノ折立に向かって登っていく。
まさにここからが、立山の「立山」な部分だ。

稜線から見た室堂方面は、まるで箱庭のよう。

真砂山方面は、あくまでなだらか。

次第に道は険しくなり、岩がゴツゴツとしてくる。
この辺りから次第に他の登山者とのすれ違いが多くなってくる。
おそらく、一ノ越あたりから上がってきた逆回りの登山者達なのだろう。
しかも、クラブツーリズムのツアー登山がやたらと多く、20人も30人も連なって歩いている。
そのたびに道を譲ったり譲られたりするのだが、立山に団体ツアーで登山に来るような人たちなので、道の譲り方も不慣れなようで、こちらとしても非常に気を使う。

稜線近くまで上がると、道はいったんなだらかになる。

鞍部に出た後、今度は富士ノ折立に上る。
少し上がったところから鞍部を見ると、休憩中の人がいっぱいだ。

富士ノ折立に上がるルートは岩場なのだが、途中にある一抱え以上もある岩を差して、すれ違ったオジサンが
「これはさっき落ちてきたばっかりの岩だから、気をつけて」
と言う。
その岩がこれだ。(写真左下)
たしかに、岩の表面が茶色い。最近まで地面に接していたということだろう。
試しにちょっと触ってみたが、ビクともしない。
こんな落石を食らったらイチコロだ。想像もしたくない。

10:22、富士ノ折立のピークに到着。
眺望が最高である。

まず、黒部ダム方面。

雄山方面。

動画も撮ってみた。


ピークが狭いので、あまりのんびりする間もなく、鞍部に下りる。
鞍部から見上げると、食べこぼしたお菓子に群がるアリのように、登山者たちが群がっていた。
恐るべしシルバーウィーク。

そろそろ腹が減ってきたのだが、大汝山で休憩することとして、もう少し歩く。
かなり岩っぽい道。

10:42、大汝山の休憩小屋の裏手に到着。
屋根の上に見えるのが、大汝山の山頂。

ここまできて、小屋の表には回らず、ここでランチ休憩とした。
眺めがなかなかなのである。
15分ほどのんびりする。
僕がこのとき食べたのは、1つで600kcal以上ある、下界では絶対食わないロールケーキである。
激しく胃もたれしそうだったが、それを、出発前にテルモスに淹れたコーヒーで流し込む。重い。

ランチ休憩を終え、休憩小屋の正面に回りこむ。
ひどい混雑。
裏手で休憩しておいて良かった。

大汝の休憩小屋の入り口はこんな感じ。
入ってすぐに、ドリンクが冷やしてある。
これって、もしかして、雪渓の・・・?

我々はもう休憩を終えた身なので、先を急ぐことにする。

せっかくなので、大汝山の山頂にも寄っていこう。

ここで、ヘリコプターの爆音が近くで聞こえた。
荷揚げかと思ったら、カラーリングがレスキュー隊だった。
管轄から考えて富山県警だろう。
今日もまたどこかで遭難者が出たのだろうか。

11:06、大汝山のピークは、順番待ちの列ができていた。
待つのもなんなので、ここはパスすることにした。

縦走路に戻る際には、こんな絶景が目に飛び込んでくる。

いよいよ次のピークは、盟主である雄山だ。

岩っぽいところだが、登山道はちゃんと整備されている。

富山・石川方面は、この時間になってもまだ分厚い雲海。

11:22、雄山を目前にして、道端で古銭を発見。
寛永通宝である。
裏は無地だったので、一文銭だ。(良貨なら裏に「文」の文字が入っているのだが、無地ということはビタ銭ということだ。)
おそらく、江戸時代の参拝者が納めたのだろう。
もちろん、バチが当たりそうなので、持ち帰ったりはしない。きっと今日も、あの場所に置かれていることだろう。

さて、いよいよ雄山の祠が近付いてきた。
この頃になって、立山三山を時計回りに周回するのは逆周りなのか?と思うようになる。
さっきから、祠も休憩小屋も背後からアプローチしてる気がする。

山頂の祠からは、高頻度で太鼓の音が聞こえる。

いったん山頂を巻き、山頂の南側に出る。

売店の前は、人、人、人。

せっかくここまで来たからには、当然ご祈祷してもらうのだ。
まずは、受付で祈祷料を払い、お札を貰う。
ここで、受付の方に
「こちらでお並びになってお待ちください」
と言われ、
「あ、みんなまとめてご祈祷していただく感じですか?」
と問うたところ、
「まとめてというか、皆様ご一緒にということですね」
と、しっかり訂正された。
粗忽者で恥じ入るばかりだ。。。

さて、いよいよ自分の番である。
ご祈祷の様子なんかアップするとバチが当たりそうなので、自粛。
ただ、ものすごい混雑で、ものすごい頻度で祈祷しなきゃならない神主さんはかなり疲弊されていたご様子。
標高3,000mでの重労働(?)である。それだけでも、頭が下がる思いだ。

ご祈祷が終わり、石段を下る。

もちろん、赤いお札はザックに付けて、ドヤ顔で鈴をリンリン鳴らしながら歩くのである。
さあ、ここからがこの縦走の後半戦だ。


(「2日目その2 立山三山縦走(負けられない戦い編)」につづく)